無作為抽出法(前述)で「全国から3,000人選ぶのと、ある都市で3,000人選ぶのとで、サンプルの代表性は同じです」といったら、たいていの人はそんな非常識なと思うにちがいない。先に、この方法は全体から部分をクジ引きのようにして選ぶ方法で、ナベから一部分をすくって味見するようなものだと説明した。それなら、ナベの大きさと味見の量は無関係なはずで、上の話はちっともおかしくない。要は、ナベの中身をよくかきまぜてから部分をすくうことに尽きる。
ところで、一都市からの抽出ならともかく、わが国の総人口から3,000人をクジ引きみたいにして選びなさいというのは、いかにも無理難題と思われるのだが、なんと、それを可能にするのが、表題の多段抽出法なのである。このケースを例にとって工夫してみたのが次の3段抽出法である(図参照)。
これで30×5×20=3,000人がまちがいなく選ばれた。各段階の抽出は、コンピュータで乱数を発生させ、あとは名簿(区市町村、町丁、住民票)を用いればそれほど大変な作業ではない。
図・全国からの3段抽出法

実はこの方法の最大のメリットは、対象者を訪問面接する際に調査員の移動距離が少なくてすむことである。対象者が地点ごとにまとまっているからだ。
しかし、段階ごとにくりかえし抽出することで、サンプルの代表性が落ちるのではないかという、別の心配が生ずるであろう。それは大丈夫、というのは抽出や訪問面接の手間や経費が節約できて、それで全体の費用が浮いた分だけサンプルの対象者数を多くすることができるからである。精度を高めるためには、各段階に おける抽出数の最適配分法が研究され、そしてこの方法がコスト的に最善なことが証明されている。