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Pokémon GOは、生活をどう変えたか?

※この記事は2016年8月のリリース記事を再構成したものです

Niantic社が開発したスマートフォン向けゲームアプリPokémon GOは、任天堂のゲーム機の世界にしかいなかったポケモンがリアル社会に登場したことで、爆発的な人気を博しました。先行した海外同様、日本でもリリース開始からの3日間で1,000万以上ダウンロードされ、社会現象にもなっています。
従来のポケモンゲームとの大きな違いは、Pokémon GOが位置情報を活用していることです。ポケモンが出現する場所、アイテムを獲得できる場所、バトルできる場所などゲームの舞台が私たちの日常生活の舞台とシンクロしているのです。このゲームの特性から、Pokémon GOを楽しむために、ユーザーはあちこちに移動するようになったといわれています。
では、このPokémon GOを楽しんでいるのはどのような人たちなのでしょうか。また、特定のポケモンや珍しいポケモンは、いわゆる“聖地”と呼ばれる特殊な場所に出現しますが、そうした“聖地”はユーザーの行動にどのような影響を与えたのでしょうか。さらには、アプリ内外におけるユーザーの消費行動はどのように変化したのか調べてみました。

 

誰がPokémon GOを利用しているのか?

最初に、誰がPokémon GOを利用しているのか、i-SSPのスマートフォンアプリ接触ログを用いてPokémon GOのユーザー層を確認しましょう。
Pokémon GOの利用率をトラッキングすると、7月26日時点で27.5%まで跳ね上がったT層(15~19才の男女)の利用率はその後ゆるやかに低下しましたが、7月30日以降はほぼ23%で推移し、一定の落ち着きを見せています(図表1)。
一方、F1層(20~34才の女性)は、配信開始直後の立ち上がりこそ緩やかでしたが、その後じわじわと上昇し、7月31日時点でM1層(20~34才の男性)と同程度の利用率になっています。

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図表1 メディアターゲット区分別Pokémon GO利用率の推移

Key Point 1

Pokémon GOの利用率は、T層(15〜19才の男女)では緩やかに低下し、23%程度で一定の落ち着きを見せた。一方、F1層(20〜34才の女性)はじわじわと増加し、7月31日時点でM1層(20〜34才の男性)と同程度となっている。

Pokémon GOには、人を動かす力があるか?

ユーザーの根強い支持を集めるPokémon GOですが、実際に人を動かし、特定の場所に集める力はどれほどあるのでしょうか?
そこで、ポケモンの“聖地”として知られる鶴舞公園(名古屋市昭和区)に着目し、株式会社ドコモ・インサイトマーケティングが提供する「モバイル空間統計®」の速報集計値を用いて検証してみました。

夜になっても減らない滞在者、その多くが“聖地”巡礼者

鶴舞公園の周辺1km四方における滞在者数を、配信開始前の土曜日(7月9日・16日)と、配信開始翌日の土曜日(7月23日)とで比較すると、昼過ぎから夜間にかけて滞在者数が増加、18時台には平常時を2,500人ほど上回る滞在人口が観測されました(図表2)。
この増えた人口すべてがPokémon GOのユーザーとはいえませんが、23時台になってもなお2,000人近くの前週差を維持していたことから、これは“聖地”への巡礼者が大半を占めていたと推測することができそうです。

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図表2 鶴舞公園周辺の時間帯別滞在人口推移

18時台は幅広く、22時以降は20代男性が目立つ

もう少し詳しく見てみましょう。滞在者の属性を、配信開始前週の7月16日と配信開始翌日の7月23日とで比較したところ、18時台は20~40代の男女を中心に幅広く増加しています。それが22時台になると30~40代の増加幅は小さくなり、反対に20代男性は増加幅が大きくなります(図表3)。
ファミリー層などは、この時間にはすでに帰宅していることを考えると、鶴舞公園の周辺に日没以降集結したのは、その多くが“聖地”巡礼する20代男性だったことがわかります。

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図表3 鶴舞公園周辺滞在者の性年代別構成

周辺市区町村からの流入が増加

Pokémon GOには、確かに人を動かす力がありそうです。では、“聖地”に集まってきたユーザーはどこから来たのでしょうか。遠くから巡礼に来ている人はどれくらいいるのでしょうか?
「モバイル空間統計」は、性・年代同様、契約上の利用者の居住地を基本属性として利用できます。そこで、このサービスを利用して、鶴舞公園に滞在する人の居住地分布を確認してみました。
まず、配信開始前週の7月16日18時台です。この時点では、滞在者全体の65%を地元の昭和区と中区が占めています。しかし、配信開始翌日の7月23日18時台は地元比率が54%に減少、かわって名古屋市の周辺区や名古屋市以外の市町村からの流入者が5~6%程度増加しました(図表4)。
さらに、夜間の22時台では、周辺区や名古屋市以外からの流入者がほぼ倍近くに増加しています。このことから、周辺市区町村からの吸引力が明らかに上昇していることが見てとれます。

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図表4 鶴舞公園周辺滞在者の居住地分布

Key Point 2

“聖地”の一つである鶴舞公園(名古屋市)では、7月23日の夕方から深夜にかけて、周辺エリアの滞在人数が前週を2,000人前後上回る状況が続き、集客力の高さがうかがえる。

アプリ内でどれほど課金しているか?

ここまででPokémon GOが根強い支持を集めていること、鶴舞公園など一部のスポットが強い集客力を持つことを検証してきました。人の流れが変化すれば、ビジネスにも何らかの波及効果があるもの。そこで、Pokémon GOの経済効果を調べるために、Pokémon GOユーザーにこれまでにアプリ内でいくらお金を使ったかをネットリサーチしました。

結果は、「アプリ内でお金を使っていない」が90.5%に(図表5)。ほとんどのユーザーは、無料のまま楽しんでいるようです。

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図表5 アプリ内での課金状況

Key Point 3

ユーザーの9割以上はアプリ内でお金を使わず、無料のまま楽しんでいる。

リアル社会では、どんな商品・サービスを購入したか?

アプリ内ではお金を使わない人がほとんどのPokémon GOユーザー。では、リアル社会ではどうでしょうか? Pokémon GOは電池消費量が激しいことからモバイルバッテリーを購入したり、コラボレーションしているマクドナルドで飲食したり、“聖地”に行くための交通費など、さまざまなところでお金を使っていそうです。

リアル社会における消費額は、アプリ内の課金と異なり、ユーザー本人でも自覚しにくい側面があります。そこで、まずPokémon GOを楽しむために行った場所や活動内容を質問し、次に、それらの場所や活動中に購入した商品・サービスをたずね、最後にそれらをふまえたうえでPokémon GOを楽しむために費やした金額を聞くという、3段階の手続きを取りました。

Pokémon GOを楽しむために、どこで何をしたか

まず、Pokémon GOを楽しむために行った場所や活動内容です。

調査結果では、「家族や友人とPokémon GOについて話した」「いつもより遠回りして歩いた」「ふだん行かない場所に出かけた」などが上位にきました(図表6)。これは、身近な人たちと話題にしたほか、Pokémon GOをきっかけに行動が変化したと推測できます。

なお、Pokémon GOとローンチパートナーシップを締結している日本マクドナルド株式会社(日本マクドナルド株式会社ニュースリリース)が展開するマクドナルド店舗に行ったと回答したユーザーは19.4%。ショッピングモールやスーパー、コンビニエンスストアなどに行ったと回答したユーザーもそれぞれ6~8%程度見られました。

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図表6 Pokémon GOを楽しむために行った場所と活動内容

Pokémon GOを楽しむために、何を購入したか

次に、それらの場所や活動中に購入した商品・サービスを複数回答で質問しました。コンビニエンスストアやスーパーなどでは、「飲み物」(8.6%)、「モバイルバッテリー」(6.6%)、「軽食」(3.5%)がトップ3になったほか、日焼け・虫刺され対策商品や暑さ対策用品などを購入したと回答するユーザーが約2%いました(図表7)。

レストランやファストフードでの「飲食代」(5.7%)や、電車賃や有料道路料金などの「交通費」(2.9%)も見逃せません。

なお、リアル社会で「お金を使っていない」と回答したユーザーは78.6%でした。

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図表7 Pokémon GOを楽しむために購入した商品・サービス

Pokémon GOの経済効果、リアル社会では2週間で100億円超

最後に、リアル社会におけるPokémon GOの経済効果を見てみましょう。ここでは、リアル社会で何らかの消費をした21.4%のユーザーに対して、これまでの回答内容をふまえたうえで、Pokémon GOを楽しむために費やした金額をたずねました。

結果は、1人当たりの平均利用金額が4,016円。内訳は「コンビニ、スーパー、家電量販店などの小売店」で2,048円、「レストランやファストフード店などの飲食店」で965円、「交通機関、宿泊施設、有料Wi-Fiなどのその他サービス」に1,003円でした(図表8)。

スマートフォン本体やモバイルバッテリーなど高単価な商品も含まれていますが、小売店においても、飲食店や交通費等を上回るインパクトが示された形です。

調査時点でのPokémon GOユーザー数は約1,200万人と推計されます。このうち21.4%がリアル社会で何らかの消費行動を行い、1人当たりの平均利用金額が4,016円であるとすると、Pokémon GOは配信開始約2週間で103億円程度の関連消費を生み出したと考えられます。

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図表8 リアル社会での関連消費金額

Key Point 4

アプリ内課金以外にお金を使ったユーザーは2割を超え、1人当たり平均利用金額は4,016円となった。配信開始2週間の経済効果は100億円を超える。

若年層を中心に圧倒的な人気を誇るPokémon GOは、鶴舞公園のような“聖地”やイベント等によって、一部のスポットにはかなり強い集客力があります。また、身近な人との会話を増やす、外出が多くなった、などユーザーの行動も大きく変化させています。特に消費においては、アプリ内での課金だけでなく、リアル社会での消費にも広がりが。Pokémon GOの経済効果、今後どこまで広がっていくでしょうか。


今回の分析には、i-SSPモバイル空間統計、そしてインターネット調査を用いました。
i-SSPとは、インテージの主力サービスであるSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ i-SSP(読み方:アイエスエスピー)/シングルソースパネルは株式会社インテージの登録商標です。

モバイル空間統計とは、ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを利用して作成される、人口統計情報を提供するサービスです。ドコモの携帯電話ネットワークは、基地局エリア毎に所在する携帯電話を周期的に把握しています。この仕組みを利用して携帯電話の台数を集計し、ドコモの普及率を加味することで人口を推計することができます。本サービスにより、地域の人口分布や、性別・年齢層別・居住地エリア別の人口構成などを知ることができます。
※「モバイル空間統計」は株式会社NTTドコモの登録商標です。

インターネット調査は、下記の設計で実施しました。
調査方法 インターネット調査
調査地域 全国
対象者条件 インテージ・ネットモニター“キューモニター”のうち、16~69才男女個人のPokémon GO利用経験者
サンプルサイズ n=1,335
調査期間 2016年8月3日(水)~8月6日(土)

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