2019年のマーケティングトレンドは?~キーワードは人間性、多様性、サステナビリティ~(メーカー・サービス編)

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。

インテージ知るGalleryで毎年ご紹介している、来たる年におけるマーケティングのキーワード。2019年、ビジネスやマーケティングの分野ではどのようなトレンドが予想されているのでしょうか。Stylusでは毎年年末に「Look Ahead」と題して、生活者やマーケティング、テクノロジーの新潮流を紹介しています。今回は、「食品・飲料」「美容」「ファッション」「旅行・観光」の4つの業界での注目すべきトレンドをピックアップ。「テクノロジー」が脚光を浴びた2017年・2018年に対し、2019年は、心身の健康や、気持ちや価値観といった内面への洞察も含めた「人間性」や「多様性」が大きなキーワードとして浮かび上がってきています。さらに、社会や環境とのつながりを考える「サステナビリティ」にも注目です。

※2018年のマーケティングにおけるキーワード記事はこちら
※2017年のマーケティングにおけるキーワード記事はこちら

【目次】

食品・飲料:食通たちの次なる探求

「腸活」が既に広く知られる言葉となりつつあるように、2019年も食通たちが求めるのは、ほとんど医学的なアプローチとなるでしょう。現代の食通たちは、健康意識が高いと同時に、クリエイティビティにも高い関心を示しています。2018年にはフレーバーに着目したビーガン食や、「菌活」という言葉も生まれたようにプロバイオティクス豊富な飲料が注目を集めました。肉や魚を食べない「ベジタリアン」の中でも、卵や乳製品、はちみつも含めた一切の動物性食品を口にしない「ビーガン」に向けて、フレーバーを損なわずに植物性の素材だけで仕上げたさまざまな食品が登場しています。

例えば、ニューヨーク発のLavvaが展開している東南アジア産のピリナッツを用いたヨーグルトや、オーストラリアのメーカーCoYoやアメリカのCalifia Farmsが発売しているココナツとアーモンドでできたヨーグルトや発酵乳飲料のケフィアは、動物性の素材を使わずになめらかで濃厚な口あたりやリッチなフレーバーを再現しています。また、カナダのケベックを拠点としローフードを提供するImpressは、ビーガン向けに100万ものプロバイオティクスを含むフルーツ味の飲料を発売しました。

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また、ワシントンのシェフTrap Landry氏がオープンした「菌活」レストラン「Anthes Ferments」では、発酵させたニンジンジュースやサイダー、ビール、コンブチャ(紅茶きのこ)が提供されています。

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2019年にはこういった傾向がさらに強まり、科学的な研究に基づいたフレーバーの革新が追求されていくことになるでしょう。また、炭水化物を少なく脂質を多く摂取する「ケトジェニックダイエット」など食事に基づくダイエット法は、効果に加えて健康的な方法であることもより一層求められるようになりそうです。さらに、健康と環境への影響を考慮して肉食を減らそうという「減量主義者(reducetarians)」のような考え方が生まれる昨今、先進的なブランドは、食品ロスの削減や環境負荷の低減といった課題への対応も含め、サステナビリティへの関与を高めることにも積極的になっていくことでしょう。

美容:多様性の進化と深化

2018年はR&BシンガーのRhiannaによる美容ブランド「Fenty Beauty」により、美容の面でも多様性が注目された1年となりました。Fenty Beautyは「インクルーシブ」「クリエイティブ」「エシカル」を旗印に10代やミレニアルをターゲットにしています。Rhiannaは「Fenty Beautyは、肌の色、パーソナリティ、価値観、文化や人種を問わず全ての人のために作ったの。誰もが自分向けだと感じられるようにしたかったのよ」と言っています。その言葉を象徴するように、Fenty Beautyのファンデーション「Pro Filt’r Soft Matte Longwear Foundation」はさまざまな肌色に合わせて40色ものカラーバリエーションがあります。さらには、女性向けだけでなく男性向けのメイク商品も展開されています。

Fenty Beautyの影響により、さまざまなブランドが「インクルーシブ」であることを意識した商品を展開するようになりました。例えばEstee Lauderは、最大61色という圧倒的なカラーバリエーションのファンデーションを発売しました。2018年には始まりに過ぎなかったこういった傾向は、2019年には肌の色や年齢といった外見的な「インクルーシブ」から、個々の人間性を形づくる気持ちや価値観、好みと言った内面に関心が移っていくと見られます。化粧品ブランドM・A・Cの「#WhatsYourThing」キャンペーンには多様なモデルがキャスティングされていますが、広告が焦点を当てているのは彼女たちの肌の色や年齢ではなく、濡れツヤ肌かマット肌か、ほぼノーメイク状態かフルメイクかといった「好み」についてです。

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また、イギリスの小売Bootsの広告「Faceless」でもさまざまな肌の色や年齢、体型の女性たちに加え、義足のモデルも登場していますが、「どう見えるかだけじゃない。どんな気持ちになるかってこと」をメッセージに、モデルたちの「顔」が登場するのはエンディングのみです。

マーケティングの分野では、これまで社会的弱者やマイノリティとされてきた人々も含めて、すべての人々の価値を認め、社会に包含していこうという「インクルーシブ」が近年注目されています。「インクルーシブ」を実現しようという取り組みが進むにつれて、より一層多様な声が聞かれるようになるでしょう。

その一例が、イギリスのメディアグループDazed Mediaが新しく立ち上げたプラットフォーム「Dazed Beauty」です。「Dazed Beauty」は美の概念を変革する力を通して自分らしさや自己表現、クリエイティビティを発揮することを称え、「理想的な美」の境界を打ち破ることに熱心なミレニアルやGen Zをターゲットにしています。障がいを持ちトランスジェンダーでもある17歳のモデルでアクティビストのAaron Philipに象徴されるように、あらゆる形の美を受け容れ、脱構築し、実験的な試みをする場として、すべての人に向けたプラットフォームであろうとしているのです。

ファッション:業界の垣根を破壊する

ファッション業界で影響力を行使するのにもはやファッションの専門家である必要はなくなり、革新と破壊をもたらしてくれる存在に対して急速に門戸が開かれるようになりました。建築学で学位を取り、音楽プロデューサーKanye West氏の右腕として頭角を現したVirgil Abloh氏が、デザイナーとしての正式な教育を受けていないにも関わらずLouis Vuitton Menswearのデザイナーに就任したのはその一例です。

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さらにはファッションブランドの「オープン・ソース化」を示すコラボレーションのさまざまな事例も見られるようになりました。例えば、NikeのAir Jordanと米Vogue誌の編集チームは、スポーツウェアとハイファッションというお互いの感性を持ち寄り、Air Jordanを「編集」しました。Vogue誌編集版Air Jordanには、編集長Anna Wintour氏の「承認」のサインである「AWOK」の文字が入り、「edited by VOGUE」のタグが付いています。

また、ファッション業界では、これまでは想像もつかなかったような異業種とのコラボが注目を集めています。例えば、WikipediaとAdvisory Board Crystals(ロサンゼルスのストリートウェアのブランド)のコラボでは、背中に巨大なWikipediaのロゴをプリントした長袖のTシャツを発売しました。

また、UberとCharlotte Olympia(イギリスのラグジュアリーなシューズブランド)のコラボでは、キラキラしたウルトラハイヒールの代金695英ポンド(日本円で約10万円)の中に、500英ポンド(日本円で約7.2万円)分のUberのクレジットが含まれています。「ヒールが高ければ高いほど、気分がよくなる」がモットーのCharlotte Olympiaのハイヒールを履き、パーティのはしごをして足が疲れても、Uberで車を呼んで帰れるから安心ということです。

このような思いがけない異業種コラボは、2019年にもファッション界の重要なテーマであり続け、ビジネスとしての成功にもつながることが期待されています。既に地位を確立していようとも、「これまでどおり」に物事を進めると望ましくない結果となるかもしれません。今っぽいブランドであるためには、こういった「思いがけなさ」が重要となるのです。

旅行・観光:脱・世代「別」

2019年は、世代「別」の訴求ではなく「世代間をつなぐ」ことが旅行・ホスピタリティ業界の1つのトレンドになりそうです。例えば、ベビーブーム世代の祖父母たちと孫たちだけで楽しむ「1世代スキップ」した休暇や、祖父母・両親・孫たちが一緒に楽しむ「3世代の休暇」への対応が注目されています。南アフリカの動物保護区Shamwari Game Reserveにあるリゾート施設Riverdene Family Lodgeでは施設を作り変え、年代問わず一緒に楽しむことができ、元気いっぱいの孫たちとゆっくりしたい祖父母たちなど身体面での異なるニーズにも応えたスペースを提供するようになりました。

脱・世代「別」のトレンドとしてもう1つ注目されるのが、新たな「エコ意識の高い旅行者たち」です。さまざまな世代から成るこのグループはサステナビリティへの関心が高く、環境だけではなくより広い意味での「エシカル」な問題に思いを巡らしています。

こういったニーズに応えようと、オランダのホテルグループEHPCは、社会参加を通して地域社会とつながることを目指しています。例えばEHPC運営のデザインホテルW Amsterdamに隣接するX BANKは、オランダのアートやファッション、デザインを取り扱うブティックでありギャラリー、イベント会場を兼ねた700m2のスペースです。顧客からの、イノベーティブなデザインやユニークな試みに触れたいという期待に加え、地域社会をサポートしたいという要望に応えて、地域のクリエイティブ・コミュニティの発展を支えています。

また、2021年ノルウェーにオープンする予定のホテルSvartは、エネルギーの消費よりも創出が多い、世界初のポジティブ・エネルギー・ホテルです。スヴァルティセン氷河と北極圏の自然を360°楽しめるSvartでは、通常のホテルよりも年間のエネルギー消費を85%削減し、さらにはホテルの建造と運営に必要なエネルギーをまかなえるだけの電力を、太陽光発電により生み出しています。

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こういったサステナビリティを追求した観光地は、エシカル意識の高い旅行者たちにとって聖地となるでしょう。2019年、ホスピタリティ・ブランドがこういった旅行者たちを惹きつけるには、自身のサステナビリティに関する取り組みをよりはっきりと力強い言葉でコミュニケーションしていく必要があると言えそうです。

Stylusは「2019年は“人間”の年になるだろう」と予想しています。オートメーションやフェイクニュースボットの脅威や情報過多・SNS疲れが顕在化し、テクノロジー偏重に警鐘が鳴らされた2018年。2019年は、その反動として「人間らしさ」の尊重と、人間を取り巻く社会・世界の課題に対する対応が求められる1年となりそうです。

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