2020年のマーケティングトレンドは? ~注目は、「責任ある選択・行動」と「ウェルネス」~

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。

インテージ知るGalleryで毎年ご紹介している、来たる年におけるマーケティングのキーワード。2020年は、日本ではオリンピックイヤーとして大きな経済効果が期待されていますが、グローバルのビジネスやマーケティングの分野ではどのようなトレンドが予想されているのでしょうか。本記事では、Stylusが翌年の生活者やマーケティング、テクノロジーの新潮流を予想する「Look Ahead」の中から、「食品・飲料」「美容」「ファッション」「旅行・観光」「小売」「テクノロジー」の6つの分野における注目すべきトレンドをピックアップしました。

※2019年のマーケティングにおけるキーワード記事はこちら
※2018年のマーケティングにおけるキーワード記事はこちら
※2017年のマーケティングにおけるキーワード記事はこちら

【食品・飲料】 食トレンドのキーワードは「直感」と「価値観」

一切の動物性食品を口にしないビーガンがトレンドとなっていましたが、そのトレンドにも変化が見られそうです。ポスト・ビーガンとして、「原則的にはベジタリアンではあるけれども、たまに肉・魚も食べる」というフレキシタリアン(flexitarian)があります。2020年にはその傾向がさらに進化し、何か特定の食事法だけを実践するというよりも、直感的に、その日の気分や体調によってさまざまな食事法を取り入れる「ブレンダタリアン(blendatarian)」が生まれるでしょう。既にこのトレンドは、「クリーン」「ダーティ」「レイジー」といったモードに従って実践できるケトジェニックダイエットで見られています。

2020trends_01_ls_1010_keto21.jpg

ロンドンを拠点とするアンチ・ダイエットの栄養士Laura Thomasによる『Just Eat It』の出版といった例に見られるように、こういった動きは今後さらに活発になりそうです。『Just Eat It』では、ダイエット文化を一刀両断にし、直感的な食生活を提唱しています。生活者は、飲食について「プラスマイナスゼロ」的なアプローチを取るようになり、「自分を甘やかす」スイーツやスナックの人気にもつながるでしょう。

同時に、「食」はより個人の価値観や倫理観に基づいて「選択」するものとなりそうです。「何を食べているか」の選択が、アイデンティティや道徳観、さらにはステイタスの表現行動となるのです。とりわけ、食品の生産から消費までの全過程で使用される水の総量を示すウォーター・フットプリントや、土壌の健康、動物の福祉への関心の高まりは、スーパーマーケットの棚にも変化をもたらすかもしれません。そして、ブランドは、パッケージングやラベリング、ブランディングで、こういった問題に対応していくことになるでしょう。

2020trends_02_foods.png

【美容】 「おばあちゃんの美容法」を現代風に仕立て直す

2019年は、サステナビリティ熱の高まりによりエコの観点から「美容」が見直され、大量消費文化からの転換期を迎えた年となりました。2020年は、より一層シンプルで実用的、且つ環境によい商品への需要が高まると予想されます。水を使用せずに製造された長持ちする石鹸や、かつての牛乳瓶のように「容器を回収してリサイクルする」システムなどが例として挙げられます。

2020trends_03_beauty1.png

この流れにより、生活者が使う商品の数は減少することになるでしょう。実際、Mintelが2019年に行った調査によれば、イギリスの女性の28%は、日々のスキンケアで使う商品の数を減らしたとのことです。使う商品を減らしつつ、より洗練された多機能の商品が選ばれるようになりそうです。

大きな流れとして「おばあちゃんの処方」が脚光を浴びることになると予想されます。グローバル化の恩恵により、どこか遠い文化の古めかしいアイディアが掘り出されて、現代の文脈の中で活用されることになりそうです。ニューヨークを拠点とするウェルネススタジオThe Wellが東洋と西洋の療法を融合させたり、アメリカのブランドCodexがインドとパタゴニアからもたらされた治療効果のあるハーブを使った商品を展開しようとしたりしているのは、こういった流れに沿った例と言えるでしょう。

【ファッション】 「サステナビリティ」はファッション界の新ルール

2020年は、ファッション業界のオペレーションが完全に見直される年となりそうです。そして、その変化はボトムアップで起こることでしょう。

サステナブルな行動がより一層重視されるにつれ、業界で必要とされるスキルも大きく変化しそうです。これにより、教育に変化がもたらされ、エンジニアリングにヒントを得た課題解決が注目を浴びるでしょう。London College of Fashion(LCF)の修士コースFashion Futuresのように、デザインを履修する際のカリキュラムも時代に合ったものに変わっていくと予想されます。

既にファッション業界で働いている人たちは再トレーニングを受けることにより新たな機会を得ることになるでしょう。LCFのCentre for Sustainable Fashionは、高級ブランドグループKeringの協力のもと、業界人に向けてサステナブルなファッションデザインやリサーチ、ビジネス実務を学べる入門コースをスタートしました。

2020trends_04_fashion.jpg

「新しく製品を生産してくれるな」という要求もある中で、廃棄物を素材とするなど、古いものを再活用することが求められるようになります。こういったさまざまなチャレンジがある中、Teemillのように、使用済み製品の再生技術を活かして、他のブランドが循環型経済のサイクルに乗ることができるよう支援する企業も登場しています。

【旅行・観光】 マス・ニッチ市場のニーズに応えた旅行デザインを

2020年、人生の主要な節目に意義深い旅をしようという「ライフスタイル・トラベル」への関心が高まるでしょう。例えば、出産直前や産後のリカバリー、閉経、離婚、定年退職といったタイミングです。これにより、ハネムーンなど既に確立されている「通過儀礼」も、現代の生活者のマインドセットに合わせた形に再定義され、改めて活性化することになりそうです。

マス・ニッチ市場を狙い、サンフランシスコのスタートアップModern Elder Academy(Airbnbの重役Chip Conleyが設立)は、中年に差し掛かり、平穏と視点の転換を求めるミレニアル世代に向けて、ウェルネス・リトリートの提供を始めました。

また、旅行者の文化的・社会的・感情的ニーズへの対応も進められています。こういった動きの中には、ハラル・フレンドリーな旅行(2030年までに約3,000億円市場になる見通し)やLGBTQiコミュニティに向けた取り組みも含まれます。これからは、1人旅の人や、体の自由がききにくくなるベビーブーム世代にとっても旅行しやすい時代になるでしょう。こういったセグメントに対応した、インクルーシブで助けとなってくれる商品やサービスが注目されます。

【小売】 「レガシー」の再発見

2020年は、レガシーを活かした小売戦略が最高潮に達するでしょう。文化的なカリスマ性とコネクションが人を惹き付けるこの時代だからこそ、「遺産」や「伝統」が大いに活用されることになるのです。サステナブルな生活を送るべく、なるべくモノを買わないようにしよう、セカンドハンドのモノを買うようにしようという潮流が見られますが、「モノ」を買うにしても楽しみだけでなく投資性を求めるGen Zにとっては、「モノ」が背後に持つ豊かなストーリー性は、購買に向けて心を動かす原動力となりうるのです。「ビンテージ」という言葉が、現代的な感覚と高い専門性を示すために「アーカイバル(archival)」という言葉に置き換わっていることも、そういった価値観の転換を示していると言えるでしょう。

グローバルのメディアや小売の現場では、2019年に早くもこういった動きの兆しが見られました。イギリスのカルト雑誌「The Face」の復刊もその1つです。また、Louis Vuittonは2019年夏に、160年にわたるレガシーを紹介する「ミュージアム体験」を提供しました。アーカイブから持ち出された180点ものアイテムが「Art Meets Fashion and Origins: A Tradition of Modernity」などそれぞれにテーマ性のある10部屋に展示され、象徴的なモノグラムのアイテムは川久保玲、シンディ・シャーマン、フランク・ゲーリーといったファッション、アート、建築のアイコンたちにより再設計されました。

2020trends_05_retail1.png

ロンドンのAlexander McQueenの旗艦店の最上階には「アーカイブされた作品」に囲まれた中でトークイベントやワークショップを開催できる、ブランドのクリエイティブスタジオを模したスペースが設けられました。

2020trends_06_retail2.png

また、中古の高級ブランド品を引き取り委託販売するMUSÉEが北京中心部にオープンした旗艦店では、アクセサリーはアート作品として扱われ、ショップ店員がキュレーショナル・コンサルタントとして接客。ラグジュアリーなリセールの殿堂となっていると言えそうです。

このように、2020年はレガシーが、深みと創造力、革新性をもって捉えなおされる1年となるでしょう。

【テクノロジー】 テックにも「エシカル」が求められる時代に

2019年は、テクノロジーの巨人たちが、モラルの欠如に対して説明責任を求められた年でした。2020年は、テクノロジーが、人々がよりサステナブルでエシカルな生活を送れるよう支援する第一歩を踏み出す年となるでしょう。生活者にとっては、クリーンで環境に負荷をかけない生活を送るにはどうしたらよいかを考えても分からないことだらけなのです。「紙袋ってビニール袋よりエコなんだっけ?」「ゴミゼロのお店って本当に環境にいいの?」「ビーガンって環境にやさしいの?」など、疑問は尽きません。

アプリやサービスを使って日々の生活にまつわる個人データを分析することにより、生活者が最もシンプルな解決方法を見つけることをサポートし、ストレスなくサステナブルな生活を送れるよう助けてくれることになるでしょう。

Googleがthe California Academy of Sciencesと協力して作ったインタラクティブ・ツール「Your Plan, Your Planet」はこういった動きの兆しと言えるでしょう。「Your Plan, Your Planet」を通して、ゴミやエネルギー使用を減らして環境によい生活をするためには、日々のどういった行動を変えていけばよいのかを学ぶことができます。これからのサービスでは、粒度の細かい個人データを使うことで、生活者に個別の行動プランを提供してくれるようになるでしょう。

イギリスとニュージーランドで利用可能なアプリCoGoは、気候変動、動物の福祉、脱プラスチックなど、自分の価値観を登録すると、その価値観に沿った商品やサービスを提供している企業を教えてくれます。

また、Boschが開発した「eco-tree」は、車のデータを分析することにより、燃料やエネルギーの消費を減らしてエコな運転ができるよう、運転習慣・行動を変えることを促すアプリです。「eco-tree」では、環境によい運転をすれば木が成長して赤いリンゴを実らせるのですが、もし環境によい運転をしなければ、木は成長を止めてリンゴは落ちてしまいます。このように、運転者の行動を可視化することによって、よりサステナブルな行動を促そうという試みです。

ブランドにとっては、最先端の技術を使って、自らのエシカルな選択・行動を拡げるよい機会となりそうです。Stella McCartneyがGoogleとコラボして、自身のサプライチェーンの環境負荷を数値化しているのもその一例と言えるでしょう。

テクノロジー偏重の風潮への反動として、「人間らしさ」の尊重と、人間を取り巻く社会・世界の課題への対応が求められた2019年。その大きな流れは2020年にも受け継がれるでしょう。2020年のマーケティングには、生活者が心身ともに健康で充足した生活を送れるよう助けることに加え、社会・世界における課題の解決に向けて、個人がサステナブルな選択をし行動をとることができるよう支援することが求められることになりそうです。

転載・引用について

本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。本レポートの内容を転載・引用する場合には、「インテージ調べ」と明記してご利用ください。お問い合わせはこちら

【転載・引用に関する注意事項】
 以下の行為は禁止いたします。
・本レポートの一部または全部を改変すること
・本レポートの一部または全部を販売・出版すること
・出所を明記せずに転載・引用を行うこと
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる可能性がある利用を行うこと

※転載・引用されたことにより、利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。
※この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません。

関連記事