2021年のマーケティングトレンドは? ~2021年も続く「バーチャル」への注目、「ウェルネス」「サステナビリティ」「インクルージョン」は今後も重要~

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。

インテージ知るGalleryで毎年ご紹介している、来たる年におけるマーケティングのキーワード。Stylusが翌年の生活者やマーケティング、テクノロジーの新潮流を予想する「Look Ahead」では、2020年、新型コロナウイルス感染拡大により我々が直面した大きな生活の変化はもはや一過性のものではないことが強調されています。ロックダウン、外出自粛で注目された「バーチャル」は、2021年のキーワードとしてもさまざまな業界・場面で登場。また、コロナ以前から重要度が高まっていた「ウェルネス」「サステナビリティ」「インクルージョン」は来年も重要な概念であり続けることになりそうです。

【目次】

【プロダクト・デザイン】変わりゆく「家」の概念

新型コロナウイルス感染拡大により外出がままならない中、我々の生活の中で「家」の重要性が増しています。家で過ごす時間が増えたことで、家は、一息ついたり仕事をしたり運動をしたり遊んだり、とあらゆる活動の場としてこれまで以上にさまざまな役割を期待されるようになりました。世界各地でロックダウンが繰り返される中、全方位型の室内空間へのニーズが顕在化したと言えそうです。
家具のブランドにとっては、これは大きな機会と見ることができるでしょう。家庭的な居心地の良さと、多機能でユーザーフレンドリー、心身の健康の向上を助けてくれるといった役割が家具にも求められることになりそうです。
また、2021年にはバイオフィリア*の概念に基づいたデザインにも注目です。イギリスの建築家Thomas Heatherwick氏がデザインしているような、テクノロジーとグリーンで満たされたプランターをマージしたデスク・システムはその一例です。
*1980年代にアメリカで提唱されたバイオフィリア(人間には、本能的に自然とつながりたいという欲求がある)という概念

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こういった高性能な商品を求める傾向は、家具だけには留まらないでしょう。企業は、合理的なスマートホームのインフラを提供するために、デバイスの互換性を高める必要に駆られることになりそうです。また、パンデミックにより急増したeコマースの利用に対応し、家庭でのリサイクルやリユースに適したパッケージの採用も進めていく必要が出てくるでしょう。

【小売】「地元」のコミュニティを育む

パンデミックとBlack Lives Matter運動を経て、「地元」の概念は大きな飛躍を遂げました。生活・仕事の場が大都市から移っていくことで、「ミクロポリタン」(小都市居住者)が生み出されました。これまでは大都市のフラッグシップストアに注力してきた企業も、今後は地域ごとに住民が自分ゴト化できるような、分散化した施策が求められることになりそうです。
2021年は、企業がコミュニティを育むことが期待される年となるでしょう。そのためには、超ローカルなスポーツのスポンサーとなったり、データに基づき本部の方針よりも地元の嗜好を優先させる「ブランドシップ」(従来の旗艦店よりも、さらにブランドの伝統やDNAを強調した店舗)の運営、ローカルなカルチャー・プログラムの提供、「我が町のヒーロー」が地元に恩返しする、といった施策が考えられます。
例えば、アメリカのスケートボードのブランドVansは、ロサンゼルスの繁華街にある店舗の上階を、コミュニティを育み、カルチャーを共有するスペースとして提供。地元のクリエイターたちがキュレートするワークショップやトークイベント、展示を開催する場となっています。

また、Nikeもさまざまな取り組みを行っています。2019年の例になりますが、イーストロンドンのHackneyで開催されたスポーツイベントを、地元でフィットネスを楽しむグループと一緒に盛り上げました。また、2020年7月にはNike Experienceのアプリユーザー向けに、「デジタルで可能になったプレイグラウンド」と定義づけた新しい形態のショップを広州にオープンしています。広州のショップでは、地元のスポーツ選手や専門家、インフルエンサーが主催するバスケットボールの試合やワークショップを開催しているとのことです。

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「極度につながった」地域社会を実現する上では、テクノロジーも重要な役割を果たすことになるでしょう。2020年にWalmartがNextdoorとコラボしたのはその先駆けと言えます。地元の人どうしがモノやサービスを交換できるマッチングアプリNextdoorは、パンデミックのさなかに食料品の買い出しや子どもの世話など助けを必要としている隣人どうしをマッチングするHelp Mapをリリース。Walmartは、隔離中の人がNextdoorを通じて、近所の人に買い出しを頼めるようにしました。2021年は、ブランドが後押しするサービスを通じて、スマートシティが地域社会と「出会う」ことになりそうです。

【テクノロジー】通過儀礼もバーチャルに

ロックダウンや外出自粛の間、入学式や卒業式、結婚式といった人生のマイルストーンとなるライフイベントは、オンライン化を余儀なくされました。これは一過性のものではなく、持続的な変化となりうるでしょう。ビデオゲームのMinecraftが卒業式を開催したり、「あつまれ どうぶつの森」内での結婚式など、ゲーム上のバーチャルな世界でのライフイベント開催、企業が人生の1ページにどういった役割を果たすことができるかを示唆していると言えそうです。

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2021年には、これまでのビデオチャットから、より没入感があってダイナミックで共有可能な、シームレスで一体感のあるインターフェースやバーチャルリアリティのイベントなどへの進化が見られるでしょう。
また、お祝いごとだけではなく、喪失感や悲しみへの対処も、バーチャルで行われるようになるでしょう。アメリカでは、子どもたち向けに「グリーフ・キャンプ」がバーチャル開催され、身近な人を失った子どもたちに、悲しみへの対処を学ぶ機会を提供する例が見られます。また、死後にSNSアカウントの閉鎖や写真の保存などを代行するGoodTrustや、AIを活用して、対話型で家族の歴史や思い出を共有できるサービスHereafterといったスタートアップも登場しています。
心理学者は、人生において「過渡期」であることや新しいライフステージへの「入口」にいることを自覚することが心身の健康にいかに重要であるかを指摘しています。企業はオンライン上でのライフイベント開催を積極的にサポートしたり主催したりすることを通して、こういった人生の大切な瞬間に立ち会うことが可能となるでしょう。

【ファッション】女性向けファッション一辺倒からの脱却

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現在我々を直撃しているパンデミックにより、ファッション業界も大きな影響を受けました。これまでは女性向けのファッションがフォーカスされ、シーズンごとに新しいコレクションを発表することがスタンダードになっていましたが、これからは変わりゆく生活者のニーズにより応えた形にシフトすることになるでしょう。
その結果、2021年には「アクティブ」「ホームウェア」「睡眠」「アウトドア」といったキーワードで表されるような、ライフスタイル重視型のファッションが浮上することになりそうです。
さらに、売り場そのものを見直し、ジュエリーやメンズウェア、子ども服など、これまでは女性向けのファッションほどには注目されてこなかったものの、実は高いポテンシャルを持っている分野にも注力する必要が出てくるでしょう。
また、このトレンドは、結果的にサステナブルであるとも言えます。生活者が、衣類を、そしてお金をどう使うのか、より真剣に、慎重に考えるようになることで、これまでのような目まぐるしく移り変わるサイクルから脱却し、よりシーズンレスなモデルにシフトしていくことになるのではないでしょうか。

【食品・飲料】防衛線としての「食」

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健康への意識が高まる中、体の活力や免疫力、さらには精神的・感情的なレジリエンス(回復力)において、「食」は最前線の防衛線として改めて評価されています。我々が摂取するものは、日常生活における「保護シールド」としても見られるようになるでしょう。特に、腸の健康は、免疫との関係が深いことから、より一層注目を集めることになりそうです。
また、科学者のコミュニティからも、メンタルヘルスの重要性がさらに強調されることになるでしょう。幸福感を呼び起こすセロトニンの受容体は、90%が腸にあることが既に明らかになっていることから(ScienceDaily, 2019)、企業からの注目も高まりそうです。

【美容】「less」の訴求

ビューティの世界では、商品や価値、イノベーションの概念について、大きな変化が起こりつつあります。象徴的な例として、イギリスのエコなビューティ・ブランドLushがポートフォリオから150のアイテムを廃番にすると決定したことが挙げられます。パンデミックにより、生活者・企業ともこれまでどおりの生活やビジネスがままならない中、一時的に立ち止まり、新しい方向性にリセットする必要に迫られています。スロービューティの謳う「less」と「clean」という考え方は、withコロナ時代の「立ち止まり」「リセットする」マインドセットとも合致し、ビジネス的にも大きな機会となっていきそうです。
企業は、効率のよい多機能型の商品と、時短ができ即効性の高い少数精鋭のラインナップをより重視していくようになるでしょう。例えば、韓国のAmorepacificが発売した新しいブランドEnough Projectは、一切の不要なものを取り払って、ベーシックにフォーカスすると宣言しています。Enough Projectでは、年齢や性別で区別せず、すべての人が必要とする本質的なものを提供することを目指しているとのことです。

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天然資源や廃棄物、地球とのつながりへの配慮がますます重要になっていく中、サステナビリティがキーとなっていくでしょう。また、「clean」でナチュラルな美容は、植物の治癒力への着目や、免疫力を高める食と美容の境界線が曖昧になる中、より一層注目されていくことになりそうです。

【メディア/マーケティング】カルチャーを作り変える視点の転換

2021年は、メディアとエンターテイメントが生まれ変わる年となりそうです。これまで当たり前とされてきた物の見方に異議が唱えられ、多様性に富んだクリエイティブな視点により映画やテレビ、音楽などが再構成されることになるでしょう。新時代のクリエイティブは、これまであまり取り上げられてこなかったり、ステレオタイプで描かれることが多かった人々を、より繊細に多面的に描こうとしています。
例えばHBOとBBCで放映された「I May Destroy You」は、原作者で共同監督も担当したMichaela Coelの実経験に基づき、女性たちの、性被害も含めて生々しい経験を探求した、タブーを打ち破る作品となっています。

また、ビヨンセが製作総指揮・脚本・監督を務め、出演もしているビジュアルアルバム「Black is King」も象徴的な例と言えます。音楽やダンス、衣装、ヘアスタイル、セットから、アフリカ大陸と世界中に散らばったアフリカ人たちの文化の豊かさや美しさが感じられる本作では、黒人の王子の成長の旅路を描くことを通して、アフリカの豊かな文化と伝統を称えています。

視点が大きく変わったことで、マーケティングや広告も大きな影響を受けることになるでしょう。例えば、サニタリーナプキンなどのフェミニンケアのグローバルブランドBodyformは、「WombStories」(子宮のストーリー)と名付けたキャンペーンを行い、称賛されました。「WombStories」では、これまでタブー視されたりステレオタイプで描かれることも多かった「月経」にまつわるリアルな体験をさまざまな角度で描いています。
マーケティングや広告に新しい視点を取り入れることはビジネス的にも重要である一方で、クリエイティビティを刺激し、伝統的な物の見方を超えて、より複雑な感情やストーリー、パーソナリティを掘り下げる機会にもなるのではないでしょうか。


新型コロナウイルス感染拡大は未だ収束が見えませんが、そんなときだからこそ、企業も人々の暮らしや人生に寄り添い、よりよい社会、環境の実現に向けて取り組むことが求められていると言えそうです。

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