【駐在員コラム】Vol.12 インドネシアの体調不良「masuku anggin(マスックアンギン)」とその対処

10月、日本では寒くなってきた季節かと思うが、インドネシアでは年中暑い。インドネシアには季節としては乾季と雨季しかなく、気温はあまり変わらない。気温があまり変わらないため気候を理由に体調を崩す人は少ないだろうと当初思っていたが、雨季への変わり目の10月はインドネシアでも体調を崩す人が多い。体調を崩した人は「masuk anggin(マスックアンギン)」と言いながら早々と帰っていく。

【目次】

「masuk anggin(マスックアンギン)」身体には風が入る?

インドネシアの「masuk anggin」という言葉は風邪を指す言葉かと初めは思っていたが、2年半暮らしていて風邪より広い症状を指すことが分かってきた。風邪を引いた場合も、肩が凝った場合も、車に酔った場合も「masuk angin(マスックアンギン=風が入った)」とインドネシアの人は話している。悪寒がするという感覚に近いと生活していて思うが、対処法が独特だ。「JAMU(ジャムゥ)」というインドネシアの漢方薬を飲む、マッサージをして貰う、お祓いして貰う、などがある。

「JAMU(ジャムゥ)」インドネシアの漢方薬

ウコン、生姜などを煮出して飲む習慣がインドネシアにはある。種類は豊富で各身体の不調に対して、それぞれに効くとされる「JAMU(ジャムゥ)」がある。伝統的には根菜や香辛料を煮出して、それをボトルに詰め売り歩く女性がいるのだが、「masuk angin(マスックアンギン)」の際は手っ取り早くワルン(インドネシアの小さな売店)で袋売りされている「TOLAK ANGIN(トラックアンギン)」または類似品の「ANTAGIN(アンタギン)」を飲む人が多い。
インテージインドネシアのスタッフの多くも風邪を引いても西洋薬は飲まずに、「JAMU(ジャムゥ)」で対処している。私も風邪を引いているとスタッフから「TOLAK ANGIN-トラックアンギン」の小袋を手渡されるため、自然と飲む習慣がついた。お湯に溶かすと、生薬と強いミントの香りがして、とても温まる。

道端で売っている伝統的な「JAMU(ジャムゥ)」と「masuk anggin(マスックアンギン)」の時に飲む、袋売りされている「JAMU(ジャムゥ)」の「TOLAK ANGIN(トラックアンギン)

① 道端で売っている伝統的な「JAMU(ジャムゥ)」
② 「masuk anggin(マスックアンギン)」の時に飲む、袋売りされている「JAMU(ジャムゥ)」の「TOLAK ANGIN(トラックアンギン)」

代表的な伝統的JAMUとしては、以下のようなものがある。

Kunyit asam(クニットアッサム)
原料:ウコン、タマリンドとパームシュガーで煮詰めたもの
効能:内臓の炎症の鎮静や滋養強壮に良いとされている
Beras Kencur(ブラスクンチュール)
原料:バンウコンとパームシュガーを煮詰め、米殻と混ぜたもの
効能:喉や胃が荒れたときに良いとされている
Wedang Jahe(ウェダンジャヘ)
原料:生姜とパームシュガーを煮詰めたもの
効能:風邪のときに良いとされている

インドネシアでのマッサージの不思議

インドネシアでのマッサージは日本より未病を対処するためという意味合いが強い。そのため、人々の生活の身近にあり、マッサージの種類も豊富。また未病のためという意味合いが強いため子供から大人までマッサージを受ける。なかでも、ケロカンと呼ばれるコインを身体にこすり付けて行うマッサージは「masuk angin(マスックアンギン)」を引いたときに行う人が多い。
また、一部のマッサージ師は病人の身体から「angin(アンギン=風)」を出すために、ゲップをする。インドネシアでの生活で慣れないことの一つだが、確かに身体の悪い部分を押して貰っているときに限りマッサージ師がゲップをするので、私は日に日に信じかけている。

症状の分だけ市場が広がる

日本で家庭薬メーカーの担当をしていた際に、先輩方から、症状の分だけ市場があるし、新しい訴求をしているブランドはその市場に大きな影響を与える可能性があると教わったが、正しくその通りだなと、インドネシアで生活をしていて思う。近年では、インドネシアの漢方薬である「JAMU(ジャムゥ)」がお洒落なカフェで提供されたり、マッサージ師もGOJEK(ゴジェック-インドネシア発の配車アプリで、近年ではバイクやタクシーの手配だけでなく食品やサービスのデリバリー事業も展開している)でデリバリーされたり、独自の発展を遂げている。

カフェでお洒落にパッケージングされている伝統的なJAMU(ジャムウ)とレストランでモクテイル(アルコール不使用のカクテル)として提供されているソーダ割のJAMU(ジャムウ)。

③ カフェでお洒落にパッケージングされている伝統的なJAMU(ジャムウ)
④ レストランでモクテイル(アルコール不使用のカクテル)として提供されているソーダ割のJAMU(ジャムウ)。アルコールを飲まないイスラム教が8割を占めるため多くのレストランでモクテイルは提供されており、JAMU(ジャムウ)をアレンジするレストランも増えている。

インドネシアの未知な文化であったものが、手に取りやすい形に発展し、インドネシアにいる駐在員には人気。日本人駐在員だけではなく、欧米人にも人気なことからコールドプレスジュースやタピオカミルクティのような世界的な大流行をする日も近いのでは、と私は密かに思っている。

著者プロフィール

Indonesia_map.png
渡部 七海(わたべ ななみ)

インドネシアには2年半、海外生活はその他ルーマニア、アメリカ、カナダと計13年目に突入。
現インテージヘルスケアからスタートしたため、特にドラッグストアの商材に関心がある。
駐在員コラムの記事一覧はこちら

関連記事