【駐在員コラム】Vol.14 モバイル決済普及によるデジタル社会の加速

【目次】

世界一のモバイル決済国

日本では、2019年10月に消費税が10%になりました。この増税に伴い支払額の5% or 2%をポイントやキャッシュバックで還元するなど、日本においてモバイル決済を含むキャシュレス決算が加速化される事が予想されます。
私が駐在している中国(上海)においては、2014年頃から政府主導のもと、モバイル決済の利用が急速に拡大しています。
下図にあるように、モバイル決済額は、2014年から15年のわずか一年で、約4倍に増加し、2012年に83兆円だったモバイル決済額は、2017年には約40倍の3,246兆円にまで達しています。
また、利用者数は約6億人に達するという発表もあり、モバイル決済サービスの改善や消費者意識の変化に伴い、モバイル決済サービスはさらに普及し、取引規模は引き続き成長していく見通しにあるといいます。

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※ iiメディアリサーチ(艾媒諮詢)の資料を抜粋 単位:兆円

一方、日本市場においては、2017年度の日本国内モバイル決済市場規模は1兆256億4,800万円、2023年度には4兆円に拡大する予想となりましたが(株式会社矢野経済研究所発表)、中国と比べると圧倒期に小さな市場であることが分かります。
このように中国では、日本などの先進国を超える勢いでモバイル決済の利用が急拡大しており、ありとあらゆる社会経済に深く浸透し、日常生活に必要不可欠なインフラとなっています。

モバイル決済が普及した背景

モバイル決済が普及した背景としては。以下の3つの理由があるといわれています。

理由①PCよりも安価なスマートフォン

中国では、パソコンによるインターネットの普及が先進国のように進んでいないので、パソコンが普及する前に、スマートフォンが普及したというのが背景にあります。
なぜなら、パソコンを購入するとなると、4,000元~6,000元が普通ですが、スマートフォン(中国製)のものであれば、2,000元で購入することができ、多くの中国人が利用することが可能となったのです。

理由②現金が信用されていなかった

中国では、政府が取り締まりを強化していても、偽物や不正取引が後を絶ちません。同様に偽札も流通していて、日本のように現金に対しての信用がありません。
そういった背景で急激に導入が進んだのがモバイル決済(QRコード決済)です。
もともとはSNSユーザー間で個人間送金※を行うことも見据えて開発されたアプリサービスでしたが、さらにQRコードによる店舗決済機能が加わり、爆発的に中国で普及するようになったのです。

※ 個人間送金について
中国では、eコマース最大手のアリババが提供する「アリペイ」と、テンセントが提供する「ウィーチャットペイ」の両ブランドがモバイル決済をリードし、個人間送金の手段としても重宝されています。手数料の無料限度額を超えない限り、個人間送金の手数料は発生せず、いつでも送金をすることができます。中国では、食事代の割り勘や、お年玉やご祝儀を渡す際も、モバイル個人間送金を使うことがあります。

理由③モバイル決済(QRコード)の導入は事業者にとっても簡単

日本の多くの方が利用しているSuicaのようなIC決済であれば、端末の導入や審査で、個人店が導入するには参入障壁が高いといわれています。
一方、QRコード決済導入に事業者が用意するのは「スマホ」と「QRコードを印刷した紙」で事足りるため、導入は事業者にとって簡単なのです。

このように、誰もが持ち歩くことが可能となったスマートフォンで、大手ファストフード店から街中の小さな露店まで至るところで行われるQRコード決済によるキャッシュレス化。これは全て、今、中国で起きていることなのです。中国は今や「デジタル大国」となっており、実際に中国に行き、その先進性に驚く日本人は多くいます。

モバイル決済普及によるデジタル社会の加速

現在中国では、現金を持ち歩く必要が全くないといってよいほどスマートフォンによる決済が浸透しています。
ほぼすべての店でキャッシュレス決済が可能です。スーパーやデパート、ホテル、レストランではもちろん、タクシーの料金を支払う時も、レンタサイクルに乗る時も、公共料金や家賃を払う時なども、生活のありとあらゆるシーンで、スマートフォンに「微信(wechat)」か「支付宝(Alipay)」というアプリが入っていれば、QRコードをスキャンするだけで送金や支払いが可能です。これは水を一本だけ買いたい時など、小さな露店であっても、同様です。

このようにモバイル決済サービスの誕生によって、現金を持たずに外出することは今や中国人、駐在している我々にとっても日常的なことになりました。私も外出時に財布を持ち歩くことはなくなりました。
最後に、私が普段どのような時にモバイル決済を利用しているかを紹介します。

~珈琲の購入~

会社の最寄りの駅に着いたら、アプリを利用して事前に珈琲を注文しておきます。
店に着いたら品物を受け取れるので、待ち時間はありません。もちろん支払いはモバイル決済で購入時に支払う形となります。

日本のスターバックスで珈琲を購入したことがある人ならわかると思いますが、お店には、会計するスタッフ、珈琲を作るスタッフなど、随時4~5名いて、珈琲を購入するまでには、混んでいるときは10~15分程度かかる時もあるかと思います。
私が利用しているluckin coffee(瑞幸珈琲)は、お店のスタッフはいつも2人で、珈琲ができるのを待っているお客さんはいません。注文された品物を準備するスタッフと注文票の内容を確認し、出来上がった商品を並べて置くスタッフとで運営しています。非常に便利で効率的な仕組みだと感心しております。

luckin coffee(瑞幸珈琲)https://www.luckincoffee.com/

2018年に1月にオープンしその年には国全土で2,000店を突破しました。また7月には中国史上最速でユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える未上場企業)の仲間入りを果たしました。

注文から支払いまでの流れは以下です。

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⑤ 珈琲の引き換え
商品が用意できるとアプリに通知が届き、アプリに表示されるQRコードを、店舗に設置されている読み取り機に自分でかざして商品を受け取ります。

~飲食店での支払い~

昼食は会社の近くの飲食店に行きますが、ほとんどの店が、モバイルを利用して注文し会計も同時にする形となります。ですので、飲食店のホールスタッフは、顧客が注文したものを配膳するだけなのです。

最初に利用する際は少し戸惑いましたが、オーダーのミスや会計間違いなどもなく安心ですし、お店側にとっても、スタッフの負担軽減や雇用費の減少に繋げることができ、非常に効率性の高い仕組みであれると感心しております。

注文から支払いまでの流れは以下になります。

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~タクシーの手配~

私が駐在している上海では電車やバスなどの公共機関、タクシーなども非常に安く利用できます。但し、タクシーは路上でなかなか捕まらないケースもよくあり、通常はアプリを利用してタクシーを手配します。

タクシー手配の流れ。

① 現在地と目的を入力するとおおよその時間と金額が表示される
② タクシーを手配した後、乗車地までドライバーがどのくらいで到着するのか時間が表示される
③ 乗車後は目的地まで乗り、到着後に自動的にモバイル決済される

このアプリでは、降車後にタクシー運転手のマナーなどを評価するシステムもあり、タクシードライバーの運転マナーの向上にも繋がっているのです。

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このように、あらゆる支払いにモバイル決済を利用できるようになり、ライフスタイルには新しい変化がもたらされています。

近年、中国が国家として、デジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでいます。モバイルペイメントの普及は、デジタル社会の進展における重要な一環であり、中国人のライフスタイルに大きな変化をもたらしながら、社会全体の利便性と効率性の向上に貢献し、社会を大きく変えようとしているのです。

著者プロフィール

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齊藤 勝彦(さいとう かつひこ)

上海駐在歴4年 40代 男性リサーチャー
これまでに日本、海外(主なアジア)で1,000本以上のプロジェクトを経験。
製品の上市に関わるプロジェクトは、領域を問わす20製品以上。
国内外を問わず、医師や患者のインサイト調査、市場予測調査、ポジショニング作成のワークショップを複数実施
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