【駐在員コラム】Vol.19 ロックダウン後のインド国内線移動と隔離施設 体験レポート

【目次】

ロックダウン後の国内線搭乗プロセスの変化

インド国内のロックダウンが開始されたのが3月25日。その前日の3月24日にバンガロールからデリーへ移動した。その時は国内線の最終便ということもあり、各地へ戻る人でバンガロールの空港は込み合っていた。その後約2か月間、インド国内のフライトは欠航状態が続き、5月末になってから限られた便数で再開されていた。

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(写真1)3月24日のバンガロール空港。ロビーは搭乗客であふれ、ソーシャルディスタンスは保たれていなかった

再開から1月ほど経った6月25日、デリーからバンガロールへ戻るために、Indira Gandhi International Airport Terminal 3へ向かった。朝6時前の到着ということもあったのかもしれないが、見送りに来る家族・友人がおらず、空港は以前よりも人影が少ない印象を受けた。インドの空港ではセキュリティのため、ターミナルへ入るためにはチケットの控えと身分証の確認が必要となるのだが、そこでいくつかの変化が見られた。まず、セキュリティチェックの前に荷物をUV除菌する機械がゲート各所に設置されており、手荷物含めてすべての荷物を通す必要があった。また、建物へ入場する直前には、接触を最低限にするため警備員がクリアボードの内側にスタンバイをし、乗客はボード越しに身分証とチケットの控えを提示するプロセスになっていた。

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(写真2)入館前に荷物のUV殺菌を行う
(写真3)IDとチケット控えをクリアボード越しに提示・確認

ターミナルへ入り、チェックインカウンターへ行くと、足元にはソーシャルディスタンスを保つためのラインが引かれており、それよりも近い距離で立っていると空港職員が離れるようにと指示をしていた。預け荷物がある場合は、チェックインカウンターに行く前にセルフチェックインの機械でタグを印刷し、自身で荷物へ張っておく必要があり、カウンターでは預け荷物にバッテリーなどが入っていないかの口頭確認と荷物の重さを計測するだけであった。

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(写真4)チェックインカウンター前の様子

手荷物チェックや金属探知機でのボディチェックは今までと変わらないプロセスであった。その後、搭乗ゲートへ向かうと、シートは一席ごとに着席禁止のシールが張られ、マスクだけでなくフェイスシールドや防護服を身に着けた搭乗客が待機していた。フェイスシールドとマスクは飛行機搭乗時に必須となるため、各航空会社から搭乗口で配布された。

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(写真5-6)搭乗ゲート前の待合スペース
(写真7)搭乗前に配布されたPPEキット

ロックダウン以前であれば、朝のデリーからバンガロールへの便は多くのビジネス客で満席となるのだが、まだロックダウンが明けて間もない時期であることに加え、バンガロールのあるカルナータカ州がデリーからの渡航に制限をかけていたため、機内には20名程度の乗客しかいなかった。フライト中は機内での飲食のサービスはなく、乗客もトイレの使用を極力避けていたのか、機内で移動する人はほとんどいなかった。

ここで渡航規制について簡単に説明をすると、私が搭乗した6月25日の時点では、新型コロナの罹患者数が多い地域からカルナータカへ渡航する場合に、一定期間の施設・自宅待機が必須となっていた。インド国内で最も罹患者数が多いマハラシュトラ州(州都はムンバイ)からの移動者には1週間の施設隔離と1週間の自宅隔離、首都のデリー及び南部のタミルナドゥ(州都はチェンナイ)からの場合は3日間の施設隔離と11日間の自宅隔離が必須であった。また、カルナータカ州へ到着後の足取りがトラッキングできるよう、事前に専用のサイト・アプリ(Seva Sindhu)で住所・連絡先などを登録しておく必要もあった。このアプリはAndroidのみ用意されていたため、iPhoneユーザーはウェブサイトで登録した情報を印刷して持参した。

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(写真8-9)機内の様子。CAも防護服を着用している

着陸後の検査体制と隔離施設

着陸後、ターミナルビルへ入ると、まずは体温チェックを行い、隔離の条件に応じたスタンプを押すためのブースへ移動した。ここでは、デリーやムンバイなどの施設隔離が必要な地域と、それ以外の地域からの乗客で別々のブースが設けられており、要隔離地域からの乗客をきちんと施設(ホテル)へ移動させるよう配慮されていた。

スタンプはHome quarantine(自宅隔離)とInstitutional quarantine(施設隔離)の2種用意されており、隔離期間と合わせて、搭乗券と左手にスタンプを押された。このスタンプのインクにはヘナの成分が入っているのか、肌に色素が定着するため、数日間は手に残ったままになる。隔離期間中に外出をしようにも、スタンプが目立ってしまうので、抑止力としては効果的なのかもしれない。

また、私のような外国人が国内移動をしてくることを想定していなかったのか、このスタンプを押すゾーンで小さな問題が起こった。海外からインドへ入国するには、PCR検査を事前に受けて陰性であることを証明する書類が必要なのだが、国内移動では不要という認識の私は検査を受けていなかった。そのため、初めに応対した係員から、検査を受けていないのであれば空港から出すことができないと言われた。係員レベルまで情報がきちんと伝わっていないのはインドではよくあることなので、とりあえず上役のところへ連れて行ってもらい、改めて国内での移動なのだと事情を説明し、事前に登録した入州の書類を見せると問題なく通過することができた。

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(写真10)到着後の検温スペース
(写真11-12)飛行機に搭乗したエリアの条件に応じて、スタンプを押される

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(写真13-14)左手とチケットに押されたスタンプ。間違えて自宅隔離のスタンプを押され、訂正されている。

その後、デリーからの搭乗客が一か所に集められ、隔離場所となるホテルの説明を受けるためのブースへ誘導された。施設となるホテルは、Non-Star・3Star・5Starのランクのみ選択することができた。しかし、個別のホテルまでは選べないため、例えば5Starを選んだ乗客は全員同じホテルに移動することになっていた。事前にニュースやSNSなどで見る隔離施設の状況は非常に劣悪だったため、指定されるホテルに不安を持っていたのだが、指定されたホテルがインド国内のチェーンホテルだったので、安心して待機場所でしばらく待つことにした。

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(写真15-16)隔離用ホテルの受付とそこで渡される費用の説明用紙。
(写真17)ホテル移動前の待合場所はホテルのクラスごとにシートが分かれている。

全隔離対象者のホテル登録が終わると、係員の誘導に従って移動のためのバスに向かった。観光バスを想像していたのだが、用意されていたのは市バス。運賃は一人300ルピー。クーラーはついておらず窓を開けて走っていくのだが、換気を保つという意味では安全性があるのかもしれない。バンガロールの市内はロックダウン前と比べると少ないものの、かなりの人通り・交通量があり、通常に近い状態まで戻っている印象を受けた。その一方で、マスクをせずに歩いている人や入場制限がされていないように見うけられるスーパーなどを見ると、また感染者数が拡大してしまうのではないかという不安を感じた。

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(写真18-19)隔離用ホテル移動するためのバス。

市内の隔離ホテルに到着すると、チェックインの際に名前や身分証明書の提示に加えて、出発地・搭乗便名・座席番号・バンガロール内での住所などを記入する必要があった。同じ便に搭乗した乗客の中で陽性反応が出た場合にすぐに履歴を終えるようにするための対策と思われる。ホテル内では室外へ出ることが原則禁止され、清掃・タオル交換などのサービスも行われない。食事は朝・昼・夜の3食、インド料理のベジタリアンメニューが付いていた。チキンカレーやケバブなどのノンベジタリアンメニューを食べたい場合は、追加料金を支払うと注文が可能で、支払はコンタクトレスを保つために電子マネーのみ対応していた。そして、食後は、空のお弁当箱を部屋の入口の外に置いておくとホテルのスタッフが回収するシステムとなっていた。なお、3日間のホテル隔離期間中は、検温やメディカルチェックなども全くなく、ホテルの室内で待機しているだけであった。隔離期間が終わってチェックアウトの際にも特に手続きもなく、事前に予約していたタクシーで自宅へ戻ることができた。

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(写真20,21,22)隔離用ホテル様子(室内・室外・食事)

最後に

今回の移動を通じて、空港・ホテルともに新型コロナへの対策として、可能な限り人と人の接触を避けるような対策を進めている様子がうかがえた。しばらくの間は安全の確保が最優先となるため、座席の間隔を保ってフェイスガードやマスクなどで防護対策を取ることが、移動時のデフォルトとなるのだろう。また、空港だけでなく、その他のサービス業においても感染リスクを抑えるために、コンタクトレスの導入が進むことが予想される。例えば、バンガロールにある高級ショッピングモールでは、フードコートの注文を窓口ではなくアプリから行うように仕組みを変えるというアナウンスが出されている。新型コロナの患者数は増加を続けており、with コロナの生活がしばらく続くことが想定されるインド。このようなコンタクトレス化・デジタル化の浸透が安全性を高め、早期の収束、経済活動の活性化をもたらしてくれることを切に祈る。

※ 本稿は2020年6月25日時点の経験を基に執筆している。今後、インド国政府・州政府の対応は変わる可能性があるため、最新情報ではない点をご承知置き頂き、その上で渡航の参考にしていただけたら幸いである。

インドにおけるロックダウン中の変化、そして、ロックダウンを経た今後の変化についてのレポートを以下からダウンロードいただけます。

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著者プロフィール

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中村 亮介(なかむら りょうすけ)

インド在住のリサーチャー。ムンバイ・デリー・バンガロール3都市の駐在を経験。
データに潜む消費者の実像を理解するため、地方・スラム問わずフィールドへ足を運ぶ。
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