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新商品の成功確率を高める『新商品需要予測』~課題解決!データサイエンス

統計学や機械学習を駆使してビジネスに役立つ知見を獲得するデータサイエンス。「マーケティングミックスモデリングによる施策最適化」「構造方程式モデリングによるテコ入れ要素可視化」に引き続き、マーケティング領域での課題解決にフォーカスした連載の第3回は「データサイエンスによる新商品需要予測」です。

 

新商品上市を成功に導く道標である「需要予測」

マーケティング担当が関わる業務の中で「新商品の上市(発売)」は非常に重要なプロセスです。生活者の理解を深め、様々な検討を重ねて開発された新商品をリリースし、成功させていくことは並大抵のことではありません。
マーケティング担当はその成功確率を高めるため、開発プロセスの複数のフェーズで「新商品が生活者に受容されるか」を把握し、ときには軌道修正していくことが求められます。

商品開発のステップは業界や企業によって異なりますが、おおよそ図1のように進められます。
新商品の需要予測はコンセプト・プロダクトの開発時(図1の薄いピンクの部分)や上市判断時、生産計画調整・施策プランニング時(図1の濃いピンクの部分)に実行される機会が多いです。前者はまだプロダクトを本格的に開発する前の段階でおおまかに需要予測することを通じて、「どちらの/どの方向性でコンセプト・プロダクト開発をするべきか」を検討します。後者は新商品の需要を精緻に予測していくことを通じて、「本当に上市するに値するか」を判断したり、需要に応じた生産計画調整・販促計画立案につなげていきます 。

図1:主な新商品開発プロセス

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開発のフェーズによって予測の目的も異なりますが、客観的なデータに基づいて生活者需要を予測することは、商品をよりよいものに改善し、より効果的な施策に注力して新商品上市後の売り上げ目標を達成する上で欠かせません。
今回は新商品開発プロセスにおいて、上市判断時・上市直前時に行う新商品需要予測の手法についてご紹介します。

新商品需要予測の考え方

新商品需要予測は図2のように、トライアルによる購入量とリピートによる購入量をそれぞれ推計し、その合算を行います。(上市判断が目的の場合、「トライアルが一定水準獲得できなければ市場に定着できない」という背景を踏まえてトライアル需要のみを予測し、意思決定をすることもあります。)

図2:新商品需要予測の基本的な考え方

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トライアルによる購入量を予測する一般的な方法は、図3のように表せます。新商品Aに関する調査を行い、そこで得られた新商品Aをどれくらい買いたいかといった評価と、どのくらい認知を得られそうかという見込み値を基に予測を行います。

図3:調査結果を中心とした新商品予測

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ただ、この方法は新商品Aに関する情報のみを利用して推計しているため、競合にあたる既存品の影響や「そもそも個別の商品がどのくらいの販売規模を持つ市場なのか」という販売水準の情報が反映されずに予測と実績が乖離するなど、結果の妥当性に課題が生じてしまいます。

この改善策としては、新商品を上市する市場の販売実績データと、既存品と新商品の購入意向を捉えた調査データから、販売量と購入意向の関係性を明らかにし、需要予測モデルを構築した上で新商品の予測を行うというアプローチが考えられます。

また、実際に需要予測を行う場合、調査で得た購入意向のスコアだけでなく、広告や配荷といった販売量に影響する要因も取り込むことで 、予測を精緻化することができます。(図4)

図4:新商品予測モデル

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トライアルに伴う販売量を予測するためには、例えば以下のようなデータを既存品について集め、予測モデルを構築します。

トライアルに伴う販売量予測モデルに使用するデータ(例)

・カテゴリー購入率:どのくらいの人に買われるカテゴリーなのかを示す指標
・認知率:どのくらいの人に認知されているのかを示す指標
・GRP:広告投下量
・トライアル購入意向率:コンセプト提示時にどのくらいの人が買いたいと思うかを示す指標
・販売店率:どのくらいのお店で売られているのかという店頭露出を示す指標
・山積み率:どのくらいのお店で山積み販売されているのかというキャンペーンによる店頭露出を示す指標
・トライアル時の購入量:トライアル時にどのくらいの量を買われるカテゴリーなのかを示す指標

一定の精度で販売量を予測できるモデルを構築できたら、新商品に関するこれらのデータをモデルに投入し、期待されるトライアル販売量を予測します。リピートによる販売量率も同じような考え方で予測値を算出し、最終的な新商品の販売量予測を実行します。

予測の妥当性を高めるためのカギ「シェルフテスト」

トライアル、リピート量の予測においては、「どのくらいこの商品を買いたいと思うか」、という『購入意向率」を指標として用いますが、予測を精緻に行う上では、できるだけ実際の商品選択の状況に近づけて『購入意向率』を測定することがカギになります。

この調査手法としては、シェルフテスト(模擬棚)による購買テストが有効です。シェルフテストでは店頭の状況を模して棚を構築することで、競合製品と比較したときにどの程度新商品を買いたいと思うかを聴取します。
聴取方法は「チップゲーム」と呼ばれる方法を採用します。調査対象者は自身の「商品の買いたい気持ちの強さ」に応じて、持ち点(100点で行うことが多いです)を新商品と競合商品に割り振ります(図5)。たとえば、「新商品Aを買いたい気持ちを100点から割り振るとすると10点、あとは競合商品を買いたい気持ちの方が強い」といった形です。こうすることで、「相対的に見て新商品をどの程度買いたいか」、という対象者の気持ちにおける新商品Aのシェア「マインドシェア」の情報を得ることができます。予測ではこのマインドシェアを新商品Aが取りうる市場シェアに変換します。

図5:チップゲームによるマインドシェア推定

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シェルフテストを使わない場合に比べて競合を加味した購入意向という情報が得られるため、 新商品需要予測の予測精度は一般的に高まります。シェルフテストは実際の棚を使って行う会場テストのほかに、Web画面上に棚を再現して調査を行うバーチャルシェルフテストでも行えます。

大切なことは「変えられる要因を最適化する」こと

新商品需要予測の結果、図6のように予測値が得られます。この結果のように、複数のマーケティング計画値を事前に設定しておくことで、新商品がどの程度の実績を獲得できるか、マーケティング計画値を動かすことによって予測値がどう変化するかをシミュレーションすることができます。

図6:新商品需要予測結果例

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コンセプト検討段階で行う需要予測であれば、予測結果を受けてコンセプトやプロダクト自体を修正することは可能ですが、上市判断時や上市直前においては変えられる要因は店頭施策や広告施策に限定されてきます。この場合、「新商品がどの程度売れるか」という精度ももちろん重要ながら「変えられる要因をどのようにコントロールすれば目標を達成できるか」という視点が重要になります。
たとえば、図7のように、販売店率と認知率の組み合わせでシェアがどう変化するかをシミュレーションすることを通じて、販売店率を高めるための店頭施策、認知率を高めるための広告施策のどちらにマーケティング計画修正の軸を置くかといった検討・判断ができます。

図7:新商品販売シミュレーション

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データにもとづいて新商品需要を予測することは、精度のよい予測をすると同時に、「どのようなアクションが最適な結果を生むか」を捉えることができる点が強力な武器といえるでしょう。

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