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デプスインタビューの特徴と実践のコツ

市場調査・マーケティングリサーチの手法として活用されている「デプスインタビュー」。実際にやってみたいけど、どのような課題に向いているのか、インタビューまでにどのような準備が必要なのか、詳しいことがわからない。そんな方向けに、デプスインタビューの特徴や、メリット、デメリット、実施時の注意点や活用するためのコツなどを、わかりやすく解説します。


デプスインタビューとは

デプスインタビュー(depth interview, 深層面接法)は、対象者とインタビュアが一対一で対話するインタビュー手法で、定性調査の代表的な手法のひとつです。

略称はDI。ほかに、1on1インタビュー、IDI(インデプスインタビュー)と呼ばれることもあります。

対象者とインタビュアが一対一で行うことで、表層的な情報収集ではなく、対象者の生活・行動実態を深く、詳細に掘り下げて聴取できることや、質問への答え・反応に応じて、生活・行動実態の裏側にある理由・動機・願望・不満・価値観など、対象者の深層にインタビュアが深く入り込んで質問し、明らかにしていくことができるのが、デプスインタビューの最大の特徴です。

デプスインタビューのメリットとデメリット

デプスインタビューのメリット、デメリットを解説します。

デプスインタビューのメリット

デプスインタビューには、以下のようなメリットがあります。

  1. 一対一のインタビューで一人あたりに十分に時間をかけられるため、例えば、商品やサービスの購買行動・ブランド選択行動のプロセス、ブランドのスイッチやロイヤリティ形成のヒストリー、ライフスタイル・ライフステージの変化などを、詳細に聴取することで、より鮮明にすることができます。
  2. 行動の裏側にある、対象者の顕在化したニーズ、価値観、対象者自身も認識していなかった潜在的なニーズを明らかにすることができます。
  3. 病気のことやお金のことなど、人前では話しづらいプライベートなテーマ・内容でも取り扱うことができます。
  4. 一対一なので、他者の発言によるバイアスを避けることができます。同じく定性調査の手法で、一度に複数の対象者を集めてインタビューを行う「グループインタビュー」の場合、周りの人の意見に左右されてしまうケースもあります。

デプスインタビューのデメリット

一方で、以下のようなデメリットもあります。

  1. 一人ずつインタビューを行うため、インタビューに要する時間とコストはグループインタビューを上回り、サンプル単価が高くなります。通常は一人あたり60分~90分程度のインタビュー行うことが多く、サンプル数が多い場合は、1週間程度のインタビュー期間が必要になることもあります。
  2. 一人ずつ時間をかけて聴取するため、収集する情報量も多くなります。そのため、それら多くの情報を含めた詳細な分析を行う場合には、分析・レポート作成期間もある程度余裕を持ったスケジュールをとることが必要です。

グループインタビューとの違い・使い分け

デプスインタビューと並んで定性調査の代表的な手法である「デプスインタビュー」との違いをまとめると、以下のようになります。

 デプスインタビューグループインタビュー
1インタビューあたりの対象者数1人5~6人程度
対象者の発言・反応
  • ほかの対象者の意見に左右されることはない
  • 対象者がお互いに発言に刺激され発言が活性化する「グループダイナミクス」が期待できる。ただし、他の人の意見に影響される可能性もある
インタビュー時間
  • 60分~90分のケースが多い
  • 120分~150分の長いインタビューを行う場合もあるが、対象者が疲労する。また一人の時間が多くなるほど、日数・費用もかさむ
  • 120分のケースが多い
目的
  • 対象者から個々に実態や意識等に関して詳細に情報を収集して、ターゲット層の価値観を構造的に把握する
  • 短期間で、対象者の反応とその根拠を把握する
  • 異なる属性のグループを設定し、グループ間の反応の違いを検証する
テーマ
  • 人前では話しづらいテーマ、自慢話やコンプレックスに関わるテーマでも、一人ずつなら話せる
    (例)病気、お金(貯蓄・金融資産、個人向けローン、など)、仕事に関わるテーマ
  • 人前では話しづらいテーマには向かない
他の定性調査手法との組み合わせ
  • CLT(会場テスト)後のインタビュー、ホームビジット(家庭訪問)、エスノグラフィー(行動観察)と組み合わせることもできる
  • 他の調査手法と組み合わせるケースは少ない
オンラインでのインタビュー
  • PCやスマートフォンを使ったオンラインインタビューも可能
    (対面のインタビューに比べ情報量は落ちる)
  • PCやスマートフォンを使ったオンラインインタビューも可能
    (対面のインタビューに比べ情報量は落ちる。また通信品質に注意が必要)
  • 複数の対象者によるチャット形式のインタビューも可能

デプスインタビューを実施するには

デプスインタビューを実施するまでにはどのようなステップがあるのでしょうか。具体的なステップを紹介します。

Step 1.  調査の目的・課題を整理し、調査仮説を立てる

まず、行わなくてはならないことは、調査の目的・課題を整理し、調査仮説を立てることです。
(これはデプスインタビューに限らず、あらゆる調査に共通します)

調査目的:どういうアクションのために調査を行うのか?
調査課題:目的達成のために、何を明らかにする必要があるか?

を明確にしておきましょう。

また、課題をクリアするうえで、商品やコンセプトやデザインの作り手、コミュニケーションの送り手が「こうではないか?」と考えた仮説を確認しておきましょう。その仮説が、ターゲットとなる生活者の意識との間でどのような共通点/差異があるのかを、インタビューの中で検証することが必要です。仮説がクリアになっていないと、「どのような人を対象者とすればよいのか」「何を聴けばよいのか」が定まらず、意味のある調査になりません。

Step 2.  対象者を集める(リクルート)

調査目的、課題、仮説にもとづいて、対象者条件を定義し、リクルートをします。テーマに合った条件を満たすことは前提ですが、デプスインタビューの場合はさらに考慮しておくべきことがあります。

デプスインタビューは、インタビューの相手が一人である(一人しかいない)こと、意識・価値観を深掘りすることから、対象者として、以下のような要素も満たしていることが理想的です。

  • 積極的に話せる、質問に対してたくさん話せる
  • 使用する商品・ブランドについて詳しく語れる(そのカテゴリー・商品・ブランドへの関与度が高い)
  • 自分の購買行動、生活の変化を遡って語れる
  • 自分を内省・自己分析し、選択・購入行動の裏側にある自分の嗜好や欲求を語れる

例えば、あるアルコール飲料「X」という商品に関するデプスインタビューの場合、

「そのカテゴリーの商品の中で、Xを週に●回以上(または500ml缶で●本以上)飲んでいる」
「そのカテゴリーの商品の中で、時々は他の銘柄Y、Zを併用していてもよいが、Xが主飲用銘柄である」

といった、ユーザーの行動実態が明確にわかる条件に加えて、

「そのカテゴリーの商品の中で、明確な商品選択基準を持っている(惰性で「なんとなく」選択していない)」
「Xの好きなところを、具体的に五つ挙げることができる」
「Xのブランドイメージとして思い浮かぶキーワードを、五つ挙げられる」

のように、そのカテゴリー・商品・ブランドへの関与度が高いかどうかを判断する条件を加えることもあります。

Webリクルートで集めると、Webアンケートの選択肢回答だけでは上記の要素が十分にはわからない場合もあるため、自由回答(OA)の質問を設けてその回答内容を見て判断したり、電話リクルートの際に上記のような要素を満たしている人かどうかを判断したりすることで、対象者選考の参考にすることもあります。

Step 3.  インタビューフローを作る

インタビューフローとは、調査目的を満たすインタビューを実施するために、インタビューの中で投げかける質問内容や質問の順番をあらかじめ明記した、いわばシナリオのようなものです。インタビューは、デプスインタビューもグループインタビューも、必ず事前にインタビューフローを作成し、調査関係者の間で合意をしたうえで、インタビューフローにもとづいて進められます。

デプスインタビューの現場では、実際に何人かインタビューを行った反応をもとに、追加・変更が必要であれば、その後のインタビューで質問を追加したり、質問の順番を変更したりすることがあります。

インタビューフローに盛り込む質問は、単に購入実態や意識を詳しく深掘りすればよいわけではありません。デプスインタビューのフロー作りで特に大切なのは、以下の2点です。

  • 調査課題をクリアするため、調査仮説を検証するための、適切な質問構成、質問内容になっているか?(デプスインタビューに限らず、あらゆるインタビュー調査に共通します)
    例えば、「X」という商品の利用頻度が増えた要因を明らかにしたい時に、ブランドイメージや味の特徴
    について詳しく質問をし続けることで、バイアス(先入観)を与えてしまい、ブランドイメージや味の特徴
    が理由であるかのような発言を誘導してしまうことがあります。
  • 対象者の答え・反応に対して、その理由や背景、気持ち・本音などの「深層」部分を深掘りする質問や「仕掛け」を用意しているか?
    例えば、「店頭でパッケージが目に留まったので、思わず手に取ってみた」という回答があった時、その事実をさらに深掘りする質問が必要となります。
  • どういう店頭だったのか、どういう時間帯だったのか、何を購入しようとしていたのか
  • パッケージのどんな部分が目に留まったのか
  • そのパッケージが目に留まった時、どんなことを感じたのか、なぜ手に取ってみたくなったのか
  • 手に取ってみて、どんなことを感じたのか、なぜ買ってみようと思ったのか

実際のインタビューフローは、このような感じです。

インタビューフローのイメージ図

Step 4.  インタビューを実施する

デプスインタビューは、テーマ、対象者の出現率、スケジュール、調査予算などにより変動しますが、10~15人程度のサンプル数で実施するケースが多いです。

サンプル数が少ない場合は5~8人程度、多い場合は20~30人程度(CLT(会場調査)と組み合わせ、アンケート評価を行った後にインタビューを行う場合もあり)の場合もあります。

インタビュー実施時間が限られていると、1日に1~2人ずつの実施で長い調査期間を要するうえに、インタビュー結果全体を振り返りにくくなります。

そのため、土日など休日を使って1日に5~6人を集中的に実施したり、複数のインタビュアを用意できれば2~3ライン同時インタビューをするケースもあります。調査設計段階で、インタビューを効率的に実施するスケジュールを組んでおくことが大切です。

デプスインタビューで本音を引き出すコツ

デプスインタビューで対象者の本音を引き出すコツはいろいろありますが、特に大切と思われるものをご紹介します。

1.対象者に適度に共感・同調することで、心理的距離感を縮める

「この人なら、安心して話せる」という気持ちを持っていただくことが大切です。仮に対象者と自分の見解が異なっていても、ギャップ・対立を感じさせないようにしましょう。

2.謙虚な聞き役になる

インタビュアが話しすぎたり、対象者を誘導してしまうことがないように気を付けましょう。聞き役として対象者に話してもらう雰囲気を作れば、多くを語る中で本音も引き出しやすくなります。

3.対象者の反応を観察して、質問を投げかける

対象者の何気ない反応・態度、発言の中の言葉に注意しましょう。それらは対象者自身も無意識でいることも多いのです。「さっき、こんな発言がありましたが・・・」と触れることで、その言葉の真意など、本音を引き出す機会が生まれます。

4.投影法、ラダリングなどのテクニックを使う

対象者の潜在意識を探るために、「投影法(projective method)」や「ラダリング法(laddering)」と呼ばれる技法を使うのが効果的です。投影法にも、言語連想法、文章完成法、擬人化法、描画法など様々な種類があり、連想やメタファー(metaphor, 隠喩)をつうじて深層心理を探ることができます。また、ラダリング法は、「なぜ?」を繰り返し質問することで対象者自身の価値構造を深掘りすることができます。

デプスインタビューのまとめ方

デプスインタビューのアウトプットの特徴は、インタビューで聴取した発言やインタビュー前のアンケート・日記、対象者が撮影した写真、インタビューで記入したシート、などの膨大な情報を整理し、その個人データをもとに分析を行うことです。
それらの個人データは、以下のようなアウトプットとして整理することができます。

depth-inteview_02.png
depth-inteview_03.png

最後に

以上ご説明をしてきたように、デプスインタビューでは、生活者の行動実態・深層心理・意識構造を探るために、より深い質問の投げかけが必要とされます。

グループインタビューでは、インタビュア(モデレータ)は複数の調査対象者が一同に集まっているグループをいかにコントロールしながら全員の意見を引き出せるかが重要となります。その一方で、デプスインタビューでは、一人の対象者にどれだけ深く入り込んで詳細な情報を引き出せるかが重要となります。

「ペルソナ」や「カスタマージャーニー」といった分析が注目されるようになってから、生活者の行動実態・深層心理・意識構造を詳しく理解することの重要性が高まってきました。その結果、一人の人の行動・意識・生活背景を深掘りするデプスインタビューのニーズも高まっています。

デプスインタビューを成功させるには、ここでご紹介をしたような実施手順や注意点をご参考になって、調査対象者の「深層」部分の情報を引き出せるよう ’deep dive’ をすることが大切です。


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