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海外調査の基本~海外で定量調査を行う際の注意点は?

海外の市場でモノやサービスを売っていく上で、海外での市場調査は欠かせません。一方で、生活者が置かれている環境、価値観は、国によって大きく異なり、調査の文化も変わってきます。
たとえば図1はアジア各国でどのような調査手法が取られているかを示しています。日本で調査案件の半数近くをオンライン調査が占めているのに対し、ベトナムでは面接調査が約7割を占めています。新興国ではオンライン調査をかけられる人が都市部に集中していたり、社会階層が偏っていたりとサンプリングバイアスが大きいこともあり、従来手法の方が有効なケースが多いのです。

このような日本との違いを踏まえた上で調査を企画・実施し、結果を読み取ることがその国の市場理解につながります。この記事では、インテージのこれまでの海外調査の経験に基づき、海外で定量調査(WEBに限らず訪問や郵送などの従来手法を含む)を行う時の留意点を日本との違いに注目して紹介します。

図1

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SECとは?海外での調査設計のポイント

海外調査で対象者条件を設定する際に出てくる、日本と異なる条件として、“SEC”があります。SECとはSocial-Economic Classの略で社会経済クラスを表します。貧富の差が大きい国で調査を行う際にはSECを考慮することが必須です。SECはたとえば図2の様に分類されます。

図2

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SECは主に収入で定義されますが、収入はある程度あっても大家族だから生活レベルは低いといったケースも出てきます。このため、家の外観や所有している耐久消費財、支出実態などで定義することもあります。
対象者条件としては、SEC以外にも“民族”といった属性が出てくるのが日本との違いです。

また、日本で定量調査を行う場合、すでに存在している統計データなどを基に「特定の条件を満たす人」の出現率を設定して調査設計を行いますが、海外ではこのような情報はあまりありません。事前に出現率調査が必要な場合もあり、スケジュールや費用にも影響してくるので要注意です。

WEB調査を行いたい場合は、前述のサンプリングバイアスを踏まえて商材や調査課題、対象地域などを考慮し、WEBでの実施が適切かどうかを判断するようにしましょう。

適正な質問量はどのくらい?調査票作成のポイント

●調査票作成のポイント

海外で定量調査を行う際の調査票作成のポイントは、調査ボリュームを適正な調査時間に抑えることです。国にもよりますが大体20分前後で回答できるボリュームがいいでしょう。長すぎるといい加減な回答が増えて回答品質が低下したり、中止率が増加することで得られる回答に偏りが生じたりといった問題が発生します。高いコストをかけて海外で調査を行うということで、一度にいろいろ聞きたくなってしまうのが人情ですが、適切な回答を得る上では抑えましょう。
また、複雑な分岐やマトリクスなどの凝った作りの調査票は、多くの場合、対象者が理解できません。必ず現地の視点を通し、現地の人にとって単純明快な構成にしましょう。

●翻訳のポイント

調査票を多言語に翻訳する場合は一旦日本語から英語に翻訳し、各国の現地語に翻訳します。この場合図3の様なプロセスが必要です。
英訳する時点で日本語ならではのあいまいな表現がクリアになり、翻訳会社に日英両方の原稿を入稿することで不適切な訳が減らせるというメリットがあります。
一言語の場合は日本語から現地語に訳すことになりますが、どちらの場合も重要なのは日本語に対して適切な英語、現地語の表現がない場合は日本語表現にこだわらず、フレキシブルに現地に合わせた表現を採用することです。

図3

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回答特性の違いをどうとらえる?調査後に注意すべきポイント

●WEB調査データのポイント

WEB調査に限った話なのですが、調査が終わった段階でまず必要なのはデータのクリーニングです。海外では日本のような回答精度はなかなか得られません。分析に耐えうるデータにするためにはデータクリーニングが必要であるということを覚えておいてください。

●データの見方のポイント

海外調査でよくあるのが「購入意向を聞いても、回答が『とても買いたい』に偏って、本当に買う気があるのかが結局わからない」という状態です。
図4は過去の調査から日本、中国、タイ、ベトナムで食品・飲料や日用雑貨・化粧品の様々な商品の購入意向をまとめた『ノルム値データベース』のデータです。日本では「どちらでもない」といったニュートラルな回答をする人が多く、「買いたくない」「まったく買いたくない」といったネガティブな回答も一定見られるのに対し、タイやベトナムはそれらの回答は少なく、「とても買いたい」という最もポジティブな回答が食品・飲料ではほぼ4割を占めています。この傾向の違いを踏まえてデータを見ていく必要があります。

図4

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そこでおすすめなのが「1.データを相対化する」見方と、「2.データを複層的にみる」見方です。

1. データを相対化する

例えば図5の様に、ある商品の購入意向のTOP2(非常に買いたい+買いたい)が日本、中国、タイ、ベトナムそれぞれの国で65%だとします。この65%という数値の絶対値を鵜呑みにするのではなく、ベンチマークとする競合商品の購入意向と比較することで、それぞれの国の購入意向のデータとして高いのか低いのかを相対的に判断します。図5の場合は日本の結果が最もよかったという解釈になります。新商品やリニューアル品を投入する場合は、ベンチマーク商品と比べて同等以上の評価を獲得していることが望ましいです。競合をどこにするのかといったKPIは事前に設定しておきましょう。

図5

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2. データを複層的にみる

各国の都市で「購入意向が高かった人は実際に買ったのか」、ということをある商品について追跡調査をした結果が図6です。たとえば、日本で事前に「とても買いたい」と答えた人のうち68%が実際に購入した、といったことを示しています。

このデータによると、日本やタイ(バンコク)、インドネシア(ジャカルタ)では購入意向が高いほど実際に購入する人が多いという結果だったのに対し、中国(上海)、ベトナム(ホーチミン)で事前の購入意向に関わらず実際に購入していることがわかります。これらの国では、購入結果のデータのみ見ていては読み誤る可能性があることを示唆しています。

図6

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読み誤りを避けるためには、回答傾向の違いを踏まえつつ、複数の指標を組み合わせてデータを見ることをおすすめします。

もう一つ、データを読むうえで大事なことがあります。それはこちらの記事(「海外調査の基本~海外でインタビュー調査を行う際の注意点は?」)でも紹介した現場カンです。その国の生活の現場に対する感覚や勘を身につけて調査結果を捉える力のことです。
例えば定量調査を基に、以下のようなレポートを作成したとします。
【中国でも「子どもの感性や個性を重んじる子育て」傾向が。
 ●中国は激しい詰め込み式教育&競争社会であるが、若い世代を中心に従来式教育の弊害が叫ばれ始め、意識の変化が見られる。
 ●そもそも若いママ達は自分達も「自由」や「個性」を求める世代。】

一方で、とある小学生の1週間を調査してみると、図7の様なものでした。変化が起きているとはいえ、日本人の目から見るとまだまだ詰め込み式と感じるのではないでしょうか?

図7

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データでは同じ傾向に見えても国によってその基準は異なり、実際に起こっている事象ももちろん異なります。現場カンを磨きながらデータに埋もれている真実を捉えることが市場理解につながります。

海外調査で気を付けるべき点は、まだまだたくさんあります。たとえばスケジュール。従来手法が中心の海外調査では、日本でのWEB調査に慣れた身には考えられないほどの時間を要することがあります。すべてにおいて日本での当たり前は通じないことを意識し、細かく確認を取ることが重要です。

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