【わかりやすい】「働き方改革」とは。変わる5つのこと、目的・概要まとめ

政府の重要政策のひとつである「働き方改革」で、何が変わるのでしょうか。
「働き方改革」については期待の声がある一方で、「労働時間が短くなれば残業代なくなり収入が減るのではないか」「人手不足問題を解消できるのか」といった不安の声も聞かれます。
「働き方改革」の目的や概要、いつから始まるかなどを、わかりやすく解説するとともに、期待できることと懸念を「生の声」を交えながら紹介します。

【目次】

「働き方改革」とは?

「働き方改革」は政府の重要政策のひとつに位置づけられていて、多様な働き方を可能にする社会を目指しています。
日本の人口は2008年をピークに減少に転じています。人口が減れば、労働力不足となります。この労働力不足を解消させる為、働き手を増やし、出生率を上昇させ、労働生産性を向上させる必要があります。これを実施させようとする政策が「働き方改革」です(*)

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働き方改革実現進会議が提出した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が2018年6月29日に可決・成立し、2019年4月から施行されます。
この法律は、「長時間労働の是正」、「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」、「多様な働き方の実現」という3つが柱になっています。

*:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_1.html

働き方改革で変わること

雇用と労働を所管する厚生労働省では、3つの柱を持つ「働き方改革」の実現に向けて、下記の7つを具体的な取組みとして挙げています。

(1)非正規雇用の待遇差改善
(2)長時間労働の是正
(3)柔軟な働き方ができる環境づくり
(4)ダイバーシティの推進
(5)賃金引き上げと労働生産性向上
(6)再就職支援と人材育成
(7)ハラスメント防止対策

その中で、ニュースで取り上げられることの多い(1)~(5)に絞って解説していきます。

(1)非正規雇用の待遇差改善

総務省統計局の労働力調査<2018年7~9月期平均(速報)結果で「役員を除く雇用者5618万人のうち,正規の職員・労働者は,前年同期に比べ65万人増加し,3500万人。非正規の職員・労働者は68万人増加し,2118万人」と公表されています。つまり、雇用者の約4割は非正規雇用労働者が占めていることになります(*1)。
一方で、厚生労働省や政府は、日本の働く現場には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者という労働者の間に「不合理な待遇差がある」と断定しています。厚生労働省はこれを解消するために、非正規雇用労働者の処遇改善と、非正規雇用労働者から正規雇用労働者への転換の支援を推進しています。

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非正規雇用の待遇差が改善され、非正規雇用労働者の正規雇用労働者化が進むと、労働者はどのような雇用形態を選択しても同一の賃金を受け取ることができるようになります。
つまり、雇用形態に囚われない自由な働き方を選択できるようになります。 非正規雇用労働者の正規雇用労働者化や処遇改善の取り組みを実施した企業には、一人当たり50~70万円ほど「キャリアアップ助成金(*2)」 を受けることが可能になります。

*1:https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/index1.pdf
*2:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

期待されること

これまでは、非正規雇用労働者には能力アップにつながる教育訓練などを実施してないなど、非正規雇用労働者を戦力と見なしてこなかった企業が多くありました。
働き方改革が進めば、企業はすべての労働者に対しキャリアアップ支援や有期実習型訓練を行っていくことになるので、非正規雇用労働者でもスキルアップや地位向上を期待できます。
また企業にとっても、非正規雇用労働者が戦力アップすれば事業を拡大でき、収益への好影響を期待できます。

懸念点

非正規雇用労働者は、正規雇用労働者と比べると、賃金が安く、賞与や退職金の支払い対象外とされているのが一般的です。正規雇用労働者が増えることは、企業としては「人件費」の負担が増えることになります。
又、非正規雇用労働者を育成していく上での手間という負担も増えることになります。

(2)長時間労働の是正

長時間労働はときに、過労死という形で人の命を奪います。また心の病気や心臓の病気などを引き起こすこともわかっています。
労働基準監督署は「2017年度1年間に、長時間労働がうたがわれる25,676事業場に対し、監督指導を行っていますが、このうちの70.3%の18,061事業場で労働基準関係法令違反」が見つかっており、長時間労働の是正は難しいことが分かります。法令違反があった18,061事業場のうち、違法な時間外労働があったのは11,592事業場でした。月80時間を超えるものは、そのうち8,592事業場(74.1%)もありました(*1)。
それ以外の違法労働時間数は以下のとおりです。
うち月100時間超:5,960事業場(51.4%)
うち月150時間超:1,355事業場(11.7%)
うち月200時間超:264事業場(2.3%)

働き方改革の中で、時間外労働の上限について、「月45時間、年360時間を原則とし、臨時で特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度に設定」等、労働時間に関する制度の見直し(施行:2019年4月、中小企業は2020年4月)がされています(*2)。

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労働者の安全と衛生を守る立場の厚生労働省と労働基準監督署は長年、労働時間問題の解決に取り組んできましたが、「働き方改革」が本格稼働することでその施策は加速するでしょう。

*1:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00800.html
*2:https://www.mhlw.go.jp/content/000335628.pdf

期待されること

長時間労働の是正によって、労働者は健康リスクを減らすことができます。また、労働時間が短くなれば、プライベートの時間が長くなるので「豊かな人生」を送ることができます。
適正なワーク・ライフ・バランスを取り戻した労働者は、労働意欲がわくことが期待されます。「やる気」がある労働者が多い会社は生産性が向上するので、企業にもメリットをもたらすことが期待されています。

懸念点

人口減少と少子高齢化によって、建設、介護、飲食、運輸などの業界で人手不足が深刻化しています。長時間労働が禁じられると総労働時間がますます減ってしまいます。総労働時間の減少は、企業の競争力を弱めてしまいかねません。
そのため長時間労働の是正は、そのほかの働き方改革事業と並行して進める必要があります。

(3)柔軟な働き方ができる環境づくり

日本人の労働者にとって、企業が用意した職場で働くことと、平日の午前9時から午後5時まで働くことは、なじみがある働き方です。
しかし勤務場所と労働時間を限定することは、「柔軟ではない働き方」であり「硬直した労働形態」であるため、労働意欲がありながら労働に参加できない人を増やしています。子育て中の人や親の介護をしている人が、退職を余儀なくされることは珍しくありません。
その解決策としてテレワークという働き方が注目されています。厚生労働省の「雇用型テレワークの現状と課題」(*1)によると、事業者と雇用契約を結んだ人が自宅などで働く形態を「雇用型テレワーク」といいます。同省も「テレワークは時間と空間の制約にとらわれることなく働ける」と高く評価しています。
また、厚生労働省の調査によると、企業側もテレワークを推進することで、生産性の向上や自己管理能力の向上、労働者の健康的な生活の確保などを期待していることが分かりました。

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国土交通省による「平成29年度テレワーカー人口実態調査」(*2)では「テレワーカー制度に基づく雇用型テレワーカーの割合は前年度調査比1.3ポイント増の9.0%」と公表されています。今後、更にテレワーカーで働く人は増えることが予測されます。

企業が労働者にテレワークを認めれば、柔軟な働き方ができるようになり、これまで労働に参加できなかった人も働けるようになります。

*1:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000179560.pdf
*2:http://www.mlit.go.jp/common/001227706.pdf

期待されること

テレワークの働き方が拡大すると、通勤や移動時間が大幅に削減されるので、自由な時間や家族との交流時間を増やすことができます。
厚生労働省の調査によると、労働者はテレワークに対し、次のようなメリットを期待していることが分かりました(*)

  • 仕事の生産性の向上、効率化
  • ストレスの減少
  • 時間管理に対する意識の高まり
  • 自律性の向上
  • 顧客サービスの向上

また、テレワークの働き方が拡大すると、働き手が増えることになります。

*:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000179560.pdf

懸念点

テレワークは会社に来ない働き方なので、労働者の管理監督に懸念を示す企業はまだ多いのが現状です。また、働く側にとっても、自分で仕事の分配や時間配分を考える必要性があり、テレワークの権利行使に踏み込めないということもあるようです。

(4)ダイバーシティの推進

ダイバーシティとは多様性という意味です。日本人は長らく「夫が正社員で働き、妻が専業主婦になって家庭を守る」という労働観念を持っていて、そしてその考えを未だに持ち続けている人もいます。
そこで働き方改革では、女性が活躍できる社会を実現したり、子育て支援を拡充したりしようとしています。

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経済産業省では「新・ダイバーシティ経営企業100選」という事業を展開し、女性の幹部登用を積極的に行う等、社内のダイバーシティ化に取り組んでいる企業を表彰しており、平成29年度には21社が受賞しました(*1)。
表彰されることで企業イメージが上がれば、企業は人材確保でもビジネスでもメリットを享受できるはずです。
ダイバーシティ化のなかでは、外国人労働者の受け入れも政府内で議論されています。国内の外国人労働者は、2008年の約49万人から2017年には約128万人へと2.6倍に増えています(*2)。
さらに2018年12月には、外国人労働者の受け入れを拡大する法律「出入国管理法改正案」が成立しました。これにより、特定1号の外国人(一定の技能、在留上限5年、家族の帯同認めず)が、試験に合格することによって特定2号(熟練技能、事実上の永住、家族の帯同認める)に「昇格」することができるようになります。受け入れ業種も、建設、介護、外食、農業、宿泊など14種類に増えます(*3)。

*1:http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/index.html
*2:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0220/shiryo_04.pdf
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3870138007122018SHA000/

期待されること

さまざまな事情から働きたくて働けるのに働けない人や、能力を発揮できる機会を与えられていない人がいます。ダイバーシティの考え方が推進されれば、企業にとっては優秀な人材の獲得やイノベーションの創出などのメリットがあり、働く側にとっても仕事のやりがいや収入が保障され、プラスになると考えられます。

懸念点

女性・外国人といった属性の違いはもちろんですが、物事の考え方、嗜好、価値観、宗教、LGBT(性的少数者)など、様々な多様性があります。ダイバーシティを推進していく上では、そうした差異を認めながら適切にマネジメントして、企業の成長に結びつけていく必要があります。

(5)賃金引き上げと労働生産性向上

2018年の最低賃金時間額(全国加重平均額)は874円(*1)ですが、働き方改革実行計画には、最低賃金を全国加重平均で時給1,000円になることを目指す、と明記されていて、厚生労働省もこの方針を指示しています(*2)。

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賃金の引上げは労働者の生活を豊かにしますし、個人消費が増加して日本経済を潤します。ただ賃金を引き上げるために労働時間を増やしたのでは、長時間労働の是正に逆行します。
そこで労働時間を減らしながら賃金を引き上げるために、労働生産性を向上させなければなりません。それで賃金の引き上げと労働生産性の向上は、セットで推進していくのです。

*1:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
*2:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/minimum/minimum-01.html

期待されること

賃金引き上げは多くの労働者にとってメリットになることです。企業も、労働者の収入が増えれば購買力も上がるため、ビジネスチャンスが増えることになります。
また労働者と企業が協力して生産性を向上させる方法を考え、それを実行すれば、国際競争力が高まります。賃金引き上げと労働生産性向上は、日本経済の強化につながるのです。

懸念点

賃金引き上げは企業の体力を一時的に奪います。また、労働生産性の向上が賃金の引き上げペースに追いつかなければ、その企業はコスト高体質になり経営を圧迫することになります。
また労働生産性を上げるにはIT投資やAI(人工知能)の導入など、コストがかかります。これもコスト高体質を助長しかねません。

【実例】「働き方改革」に関する意識調査をしてみました

株式会社インテージは2018年11月に、働く人を対象に働き方改革に関する意識調査を実施しました。

「働き方改革」は賛成?反対?

「働き方改革」について「賛成、反対、どちらともいえない」で回答を求めたところ(Total:n=1,151)、賛成は約3割で反対の約1割を上回ったのですが、しかし「どちらともいえない」が約6割と半数以上を占めています。働き方改革の有効性を期待している層がある一方で、判断つきかねている人が多いことがわかりました。
この設問の回答を男女別にみると、男性では働き方改革に賛成する人が比較的多い傾向がみられました。さらに性年代別に細かくみていくと、男性20代、30代が約4割と高く、女性では20代が3割を超えており、若い人で賛成する人が多い傾向が見られます。
賛成の多さは、「働き方改革」によって改善されることを強く望んでいることの表れといえそうです。

Q:「働き方改革」について、あなたのお考えに近いものをお選びください<性年代別>

次に、職業別に見たところ、「どちらともいえない」と賛成・反対を決めかねている方が「専門職/派遣・契約社員」でやや多い傾向が見られました。

Q 「働き方改革」について、あなたのお考えに近いものをお選びください<職業別>

「働き方改革」に期待できること

「働き方改革でどのようなことが期待できるか」の設問は、以下のような結果になりました。
最も多かった回答は「長時間労働・過重労働が是正され、健康な状態でいられる」が4割見られました。長時間労働是正への期待は、この職業で長時間労働に苦しんでいる人が多いことの裏返しではないでしょうか。
「専門職/派遣・契約社員」では「長時間労働・過重労働が是正され、健康な状態でいられる」や「高齢になっても働き続けることができる」に加えて、「非正規雇用でも正規雇用と同等の待遇で収入面で安定した生活ができる」など、総じてどの項目も高い支持となっており、「働き方改革」による改善は期待されているようです。

Q あなたは、「働き方改革」でどのようなことが期待できるとお考えですか。

働き方改革の実施状況

「あなたの会社では働き方改革が実施、検討されていますか」の設問では「何らかの改善が講じられている(「実施されている」「検討されている」)」が3割を超えていました。しかし「わからない」が4割弱と最も多い割合でした。
「何らかの改善が講じられている(「実施されている」「検討されている」)」について、職業別に見た場合、「会社員/会社役員・管理職/公務員・団体職員」では4割弱であるのに対して、「専門職/派遣・契約社員」では2割程度と半数程度であり、「専門職/派遣・契約社員」では「何らかの改善が講じられていない」状況にある人が多いことが分かります。

Q あなたの会社では、「働き方改革」が実施(あるいは検討)されていますか。

【事例】実施されている働き方改革<自由回答>

「あなたの会社では働き方改革が実施されていますか」の設問で「実施されている」と回答した人に、どのような施策が実施されているのか尋ねました。
その自由回答のなかから、代表的なものを紹介します。

  • 「残業が削減され余暇や自己啓発にあてる時間が増え明日につながる」(50代男性)
  • 「システムの合理化が進んでいる。正規と非正規の格差を是正、ワーク・ライフ・バランスの適正化の推奨、定年後の継続雇用の実施にも取り組んでいる」(50代女性)
  • 「有休が非常に取得しやすい。産休・育休がきっちり取れて、キャリアに支障をきたさない」(20代女性)

実際に「働き方改革」が実施されている企業に勤める人では、自由な働き方で働きやすくなった印象を感じている人が多いようです。

まとめ

「働き方改革」は労働人口の減少、少子高齢化、社会保障費の膨張など、深刻な社会問題を解決するための一手段です。同時に、企業の業績を向上させる手段でもあり、働く人のQOL(生活の質)を高めるにもなりそうです。
2019年4月以降、働き方改革の改正法の適用開始が始まり、企業は法改正に対応した労務管理の準備を進めているはずです。自分の会社ではどのように働く環境が変わるのかを、確認なさってはいかがでしょうか。

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今回の分析は、自主企画のインターネット調査のデータをもとに行いました。
調査地域:全国
対象者条件:20~69 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015 年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2017 年度の構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n=2,057
調査実施時期: 2018 年11月22 日(土)~2018 年11 月26 日(月)

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