With コロナ ~日常化する新しい日常~

この記事は、インテージが生活者理解の拠点として立ち上げた、生活者研究センターセンター長 田中宏昌による「Withコロナの新しい日常」に関するコラムの第9弾です。

【目次】

  1. 緊急事態宣言、再びGWを直撃・・・
  2. 第4波襲来と生活者の「不安」の再燃
  3. 新しい日常~お買い物行動
  4. 新しい日常~食卓のシーン~
  5. むすびに

1.緊急事態宣言、再びGWを直撃・・・

2021年4月25日、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象に、3回目となる緊急事態宣言が発令されました。当初は5月11日まで、となっていましたが、5月31日までの延長が決まりました(5月8日時点)。
昨年に引き続き、今年もさまざまな「注意や自粛」が求められるゴールデンウィークとなりました。私は趣味で自転車(主にロードバイク)に乗っているのですが、毎年この時期は多摩川サイクリングロードを地元川崎の等々力緑地付近から、文字通り「鮎」のように上流に向かって遡上して、春景色の奥多摩まで走ることを楽しみにしていました。しかしながら、多摩川サイクリングロードは東京都と神奈川県を縫うように走っており、春の風に乗って気持ちよく走っているとうっかり東京都に入ってしまうことになります。そのため、今年のGW期間中は神奈川県多摩区のJR南武線と小田急線が交差する登戸の多摩水道橋をくぐり抜け、すっかり葉桜に変化した川崎市営稲田公園のあたりでUターンをすることで、県外移動を避け、「神奈川県内」で完結するぼっちサイクリングを楽しみました。
この稲田公園の近くの河原には、雑誌dancyuの表紙にもなった「たぬきや」という名物居酒屋がありました。83年続くお店は木造平屋建てで、店外はもちろん、店内のどこに座っても多摩川の風が感じられる建物でした。「天国にいちばん近い酒場」、「天国酒場」とも呼ばれたこの「たぬきや」も2018年秋に惜しまれながら閉店してしまいました。ドブ漬けの瓶ビール、セルフサービスのモツ煮込みを多摩川の風に吹かれながら楽しんだのもいい思い出です。

「たぬきや」の記憶。

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(写真)筆者撮影 (雑誌)著者私物

2.第4波襲来と生活者の「不安」の再燃


図表2

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図表3
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暮らし向きへの不安や節約意識を反映するデータとして、もうひとついつものデータも紹介しておきましょう。内閣府が景況の測定のために毎月観測している「景況ウォッチャー」をみてみると、現在の景況感をあらわす「景気の現状DI」は新しい年に入り、第3波感染拡大が緩やかに鎮火に向かい、ワクチン接種の光がのぞいたタイミングに合わせて回復の動きをみせていました。しかしながら、同じように回復の動きをみせていた将来の景況感をあらわす「景気の先行きDI」は2月には頭打ちになり、3月では再び減少に向かっています。第4波、そして、変異株へのシフトなど、再びの不安に呼応したデータに見えます。(図表4)


図表4
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行動に関する不安についても、「不安」の再燃と同期して、3月下旬から再び不安が高まっています。中でも感染リスクが高いとされ、営業時間の短縮やお酒の提供を見合わせるなど、さまざまな自粛が要請されている「飲食店での食事」については大きく増加しています。(図表5)

長びく新型コロナの影響を受け、近所の行きつけの居酒屋さんがFacebookやTwitterで悲痛な声をあげています。 臨時のお持ち帰りメニューに活路を見出そうとするお店、休業してしまうお店さまざまです。どこも夫婦で営んでいるこじんまりとしたしたお店ばかりなのですが、3回目の緊急事態宣言ではこれまで以上にダメージが大きいようでSNSの声はますます弱々しいものになっています。時折、お持ち帰りメニューを買うくらいしか応援もできませんが乗り越えてほしい、と心から願っています。

一方で、「テーマパークや繁華街・人が集まる場所への外出」や「国内旅行」といった不特定多数の人との接触リスクが心配される場所への外出行動については、4月後半においては僅かながらですが不安は減少しています。
実際に3回目の緊急事態宣言の発令後、テレビのニュースではすっかり見慣れた渋谷や銀座など都市部の人出に関する情報が報道されていましたが、昨年同時期の1回目の緊急事態宣言時と比較すると、どのエリアにおいても人出は多くなっていました。また、観光地では、人で溢れかえった軽井沢銀座の映像がしばしば映し出されていました。ネットニュースでは旧軽井沢ホテル音羽ノ森の鈴木健夫社長は「前回(のGW)は7割ぐらいキャンセルがあったが、今回はキャンセルが少ない状況」と語っており、おとといからきょう(5/1~5/3)にかけては、ほぼ満室、との記事も目にしました。
また、記事中には「ステイホームしたかったが限界だった。子どもだけでなく大人もストレス」、「来るのに抵抗はあったが、ずっと子どもたちが遊べないのはかわいそう」といった東京や神奈川からやってきた家族連れの方の声が取り上げられていました。※1

図表5

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たびたびの行動規制や外出自粛により、子どもも大人もみなストレスを感じており、「どこかへ行きたい」、「いつもと違う景色の中で思いきり楽しみたい」と感じていることと思います。私も多摩川サイクリングロードを走っているときに「一人だし、自転車だから人との接触は少ないから奥多摩まで・・・」という誘惑にかられたことを吐露します。しかしながら、テレビのニュースやYahoo!のトップページの広告にもたびたび登場している国立国際医療研究センター 忽那賢志先生の姿が頭をよぎり、稲田堤のたぬきや付近で折り返して帰路につきました。 GW明けの新規感染者数が減少に向かうとともに、新型コロナワクチンの接種が進むことを期待したいですね。

3.新しい日常~お買い物行動

第4波の拡大に合わせて、政府・自治体からは在宅勤務やリモートワークの活用が要請されています。新規感染者が多く発生しているエリアによっては「出勤者制限7割」といった目標を掲げている自治体もあるようです。アンケートの結果もそうした動きに連動して4月下旬のアンケートでは4人に1名が在宅勤務を利用しているとしています。男女別にみると、男性は在宅勤務が増加していますが、女性においてはわずかながら減少しています。また、緊急事態宣言が先行して発令されたエリアでも4月になると在宅勤務の活用が増加しています。こちらも男性は増加していますが、女性は減少しています。男性の方が在宅勤務やリモートワークに対応可能なオフィスワークに従事している割合が高いことが背景にあると思われます(図表6)。

図表6

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さて、生活者のお買い物行動はどのような変化があったか、インテージの買い物行動履歴データから探っていきましょう。1週間総買い物回数を見てみると、3月中旬以降、新規感染者数の増加に伴い、買い物回数は再び減少へ向かっています(図表7)。また、1回あたりの平均買い物金額は増加の傾向が見て取れます(図表8)。これまでもコロナ下において、たびたび確認されてきた感染拡大の不安に連動したスーパーの「まとめ買いシフト」です。さまざまな感染防止策を講じているとは言え不特定多数の人との接触リスクがある外出をできるだけ減らすことを考えると、日々の買い物も「できるだけ回数は少なく、まとめて」になっていきます。
緊急事態宣言下、生活者の買い物行動はまたしても警戒モードにあるようです。

図表7
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図表8
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さらに、スーパーなど、外出を伴う買い物の抑制が起きている時期は、ネットでの買い物行動が活発になることも、この間の分析で明らかになっています。データをみてみると、宅配型のネットスーパー、通販型ともに年が明けてからやや減少傾向にあるものの、依然として基準とした昨年の平時を上回ったまま推移しています(図表9)。
特にこのコロナ下においては、既存のスーパーが行っているサービスが好調のようです。「楽天西友ネットスーパー」や「イオンネットスーパー」、「イト―ヨーカードー」など、この間、利用者を大きく伸ばしているようです。また、「ライフ」もEC事業の強化に力を入れており、オリジナルのモバイルアプリのリリースやネット対応店舗を増やすほか、Amazonと協業することで生鮮品や総菜の宅配サービスの充実を図り、2021年は50億の売上を目指すと発表されています※2
ライフはリアル店舗での買い物客向けの新型コロナ感染対策や店舗や従業員さんに向けた休暇取得や緊急特別感謝金の支給などコロナ下における各種施策においても高い評価を得ています。EC事業への強化も含め、今後の動きに注目したいと思います。

また、チャネル別の購入品目に目を向けると依然として、ネットでの購入は勢いがあり、「飲料」、「食品」、「雑貨」、さらには「化粧品」とすべての品目で基準としたコロナ前を上回る金額となっています。特にどのチャネルにおいても苦戦している「化粧品」はコロナ下においても好調な売れ行きを維持しています。(図表10
今後もワクチンが普及し、感染者の発生が落ち着くまではネットの活用は続くものと思われます。また、コロナ下にネットによる買い物を経験した人が、「非接触」以上に「隙間時間にいつでも=タイムフリー」、「配達による荷物フリー」、そして、買い物時間の節約による「可処分時間の増加」などのメリットを享受し、利用し続ける人も一定数いるはずです。新しい日常、新しい暮らしの兆しがここにも現れているように思います※3

図表9
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図表10
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4.新しい日常~食卓のシーン~

買い物行動の変化を見てきましたが、感染防止のための行動自粛、外出自粛の動きは私たちの食卓の風景にも景況を与え続けています。
家の中での食事(内食率)に関するモニタリングデータをみると2021年(黄緑色の線)は2019年、2020年と比較して高い位置を推移しており、家の中での食事が以前よりも多くなっていることを物語っています。2021年1月以降のデータをみると、年が明けて緩やかに減少していた内食が第4波の拡大が明らかになってきた4月に入ると再び増加モードに入ります。在宅勤務やリモートワークの活用増加や外食利用の敬遠などの影響が色濃く表れています。
特に平日の夕食については昨年4月に迫るような数字となっており、飲食店における20時までの営業時短要請があったことから多くの方が帰宅後に家で食事をしている様子が浮かびます。休日の夕食についても、平日には及ばないもののやはり高い内食率となっています(図表11・12・13)。
3回目の緊急事態宣言が5月31日まで延長となり、飲食店における20時までの営業時間短縮の要請も継続します。また、外食の楽しみでもあるお酒の提供も禁止されていることから、家の中での食事はしばらくこのまま、が続きそうです。

図表11
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図表12
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図表13
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家の中での食事が続いているため、家ごとにさまざまな工夫も生まれて新しい日常を作り出してもいるようです。社内のメンバーや友人の話を聴いていても

  • これまでは料理をしなかった旦那様や子どもが料理をするようになった。
  • さらには旦那さまや子どもが買い物に率先して行ってくれるようになった。
    (そして、こっそり&ちゃっかりと自分が食べたいモノも買ってくる・・・)
  • 作り置きや冷食の活用が進んだ。
  • 3食(朝・昼・夜)から2食(朝・夜)、あるいは2.5食(朝・軽食・夜)になった。

などなど、さまざまな食の変化が生まれているようです。

また、家の中での食事に飽きて、外のお店の味を楽しみたい人は、出前館やUber Eatsなどのフードデリバリーサービスを利用している人も多いようです。インテージが保有するアプリログのデータをみても、これらのサービスの利用は依然として活発で、特に出前館の利用率はより高いものになっています(図表14)。
最寄り駅の元住吉駅前には東西に商店街が伸びており、多くの飲食店がひしめいています。コロナ下において、飲食店の横で大きな黒いリュックサックを脇において、配達するお料理が出来上がるのを待っているUberの配達スタッフの姿を本当に多く見かけるようになりました。
さまざまなお店がデリバリーサービスに対応することによって、これまでは「出前」に対応していなかったお店のお料理もわが家まで届くことになりました。また、自前の配達スタッフが準備できなくて、店先でのお持ち帰りのみに頼っていたお店も、販売の機会を拡大することが可能になりました。
食の充足を願う生活者と活路を求める飲食店をつなぐ素晴らしいサービスの出現と定着、と言えそうです。

図表14
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5.むすびに

私ごとではあるが私には80歳になる父と、77歳になる母がいます。足腰の弱りや血圧など、年齢なりに気になることはありますがそれなりに健康なのではないか、と思っています。

全国的に新型コロナウイルスのワクチン接種もはじまりましたが、私の両親も年齢的に優先接種の対象となっています。そして、二人が暮らす街ではワクチン接種の予約は2021年5月6日(木)9時開始とのことでした。同じような年代の親戚が暮らしており、予約が先行していた町から漏れ伝わる情報では「予約の電話がつながらない」、「サーバーがダウンした・・・」などなど、不穏な情報が舞い込んでいました。

運が悪いことに私の両親はネットには疎いことから、ネット予約を手伝うことにしました。幸いなことに1時間ほどで二人が希望する日付で第1回目のワクチン接種を予約することができました。その後、さまざまな知人・友人から、さらにはニュースから年老いた両親に変わって、子ども夫婦や子どもが予約確保に奔走している、という話を耳にしました。

コロナ下に生まれた新しい日常に「デジタル弱者の情報収集やサービス利用に関する身内サポートの強化」があると考えています。歳のいった両親に対して、LINEを使って日々の健康状態を確かめたり、政府や自治体がリリースするネット上の最新の情報を取りまとめて共有したりを、子ども夫婦や孫、さらには親せきが積極的にサポートする動きです。
これまでのように気軽に里帰りもできないことから、「せめてテレビ電話で孫の顔をみせたい!」と郷里の両親に使い慣れ手に馴染んだガラケーをスマホに持ち替えさせたり、iPadなどをプレゼントして、テレビ電話の使い方をレクチャーした方も多いのではないでしょうか。

間接的ではありますが、家族の絆を核とした「家族で育む暮らしのデジタルシフト」といった新しい日常はこんなところにもあるのかもしれませんね。


おわり


※1 SBC信越放送

「自粛の限界」も…大型連休の軽井沢で観光客賑わう 長野」

※2 インプレス ネットショップ担当者フォーラム

EC売上100億円めざすライフがアプリ「ライフネットスーパーアプリ」

※3 買い物行動の変化

「With コロナ ~コロナ禍をデータから振り返り、これからを眺める~【前編】」もぜひあわせてお読みください。インテージのメンバーがコロナ下の買い物行動の変化を自らが集めたデータと自分の暮らしから読み解いています。

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生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

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生活者研究センター センター長
田中 宏昌(たなか ひろまさ)

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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「出典:「インテージ 知る Gallery」●年●月●日公開記事」

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