With コロナ、With 国際的スポーツイベント

この記事は、インテージが生活者理解の拠点として立ち上げた、生活者研究センターセンター長 田中宏昌による「Withコロナの新しい日常」に関するコラムの第12弾です。

【目次】

  1. はじめに
  2. 不安と楽観~矛盾する行動
  3. 安心・安全な買い物行動と利便の享受~まとめ買いとネットシフト~
  4. 新しい日常~文化の交差点

1.はじめに

2021年8月8日、57年ぶりに東京で開催された国際的スポーツイベントが閉会式を迎えました。
連日、繰り広げられてきたアスリートたちの熱戦に向かって声援を送っていた人も多いのでは、と思います。もちろん私もそのひとりでした。今回もテレビだけでなく、インターネットによる動画配信が充実していました。印象的だったのが、サッカーで解説(英語)のありなしを選択することができた配信です。無観客であったことから普段であれば響き渡る声援や鳴り物なども一切なく、ボールを蹴る音や選手同士や選手とレフリーとのやり取り、コーナーキックの際の選手の息遣いや迫力あるボールを蹴る音など、臨場感ある音を通じて選手たちの躍動や熱量を感じることができました。

2.不安と楽観~矛盾する行動

さて、内閣府が景況感の把握のために実施している調査に「景気ウォッチャー調査※1」があります。この景気ウォッチャー調査はさまざまな仕事に従事する約2000人に現在と将来における景気の実感を質問し、指数化して発表をしています。
最新の調査結果(7月データ:8月10日リリース)では、現在の景況感をあらわす「景気の現状DI」は各業界ともに急速な回復基調だった動きは全体、家計動向が鈍化、企業動向、雇用は一転して悪化に向かっています。将来的な景況感をあらわす「景気の先行きDI」も各業界ともに総じて悪化に転じました(図表1)。

図表1
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前回調査のタイミングではワクチン接種による収束の兆しも見られたはずですが、7月には感染力の強いデルタ株を主とする感染拡大の第5波が全国的な傾向として明らかとなりました。また、4回目となる緊急事態宣言が東京、神奈川、千葉、埼玉、そして大阪で発令され、北海道、石川、兵庫、京都、福岡の5道府県にはまん延防止等重点措置が適用されています。それぞれの施行期間も当初の8月22日までが、8月31日へと延長されました。デルタ株のこれまでにない感染スピードに煽られるように、各都道府県知事も県外移動の自粛をアナウンスし、行楽や帰省の自粛を訴えました。景気ウォッチャーの動きは「経済の回復への足どりがまた重くなる」、そうした空気の表れのように映ります。

感染拡大の第5波を受け、感染不安も再び上昇に転じています。また、「今後3ヵ月では」と少しだけ先の見通しについて尋ねている今後の家庭の暮らし向きについては、「今より悪くなる」が再び上昇に転じています。先ほどの景気ウォッチャーの先行きIDと同じような傾向と言えます。「節約意識」については若干低下していますが、これまで同様に6割付近を推移しています。(図表2) 

図表2
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8月10日、国家公務員の年間のボーナス支給額は4.30カ月分となり、年間給与は平均で6万2000円減る見通しとなることが新聞等で報道されていました。また、民間のボーナスの支給水準も同様にマイナス傾向です。日本経済団体連合会(経団連)が8月5日に発表した最終集計では、20年夏と比べ8.27%の減少となっています。長びくコロナ禍により、幅広い業界・業種がコロナインパクトを受け、リーマン・ショック直後の09年夏(17.15%減)以来の大きな下げ幅となりました。※2
本来であれば、ボーナスシーズン、そして、レジャーシーズンということで、消費も活発になるタイミングではありますが、感染拡大の第5波、さらにはボーナスをはじめとした収入の減少といったことを考えるとお財布の紐の開け閉めについては慎重にならざるを得ないように思います。

また、「飲食店での食事」や「テーマパークや繁華街・人が集まる場所への外出」、さらには「国内旅行」といった不特定多数の人との接触リスクが心配される場所への外出行動については不安が再び高まっています。図表3

図表3
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一方で、さまざまな報道で目にする街中での人流の増加との矛盾を感じるのではないでしょうか。先日所用により、平日朝の通勤時間のタイミングで電車を乗り継いだことがあったのですが、乗車率は定員乗車の100%程度(例:座席につくか、吊り革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる)といった状況でした。以前と比較して明らかに人の出は多くなっていたように感じます。また、男女を問わずそれなりの人数が吊り革や手すりにつかまっていたことにも大きな変化を感じました。

コロナ下での生活者の心理を研究しておられる筑波大教授(臨床心理学)、原田隆之先生は「五輪の開催でコロナを軽く見る『楽観バイアス』が強まり、人出の増加、感染対策の軽視につながった可能性はある。心理的な影響は無視できない」と指摘していることが新聞で紹介されていました※3。久しぶりに乗車した電車の中の変化した風景を想い出し、重ね合わせながら記事に目を通しました。

3.安心・安全な買い物行動と利便の享受~まとめ買いとネットシフト~

感染拡大の第5波を目の当たりにしながら、生活者のお買い物行動はどのような変化があったか、インテージの買い物行動履歴データから探っていきましょう。

1週間総買い物回数を見てみると、6月中旬以降、新規感染者数の増加に伴い、スーパーにおける買い物回数は再び減少へ向かっています。一方で通販(ネット)の購入回数は増加に転じています(図表4)。また、1回あたりの平均買い物金額はスーパーもネットも比較したコロナ前の水準を上回ったまま推移しています(図表5)。これまでもコロナ下において、たびたび確認されてきた感染拡大不安に連動した「スーパーのまとめ買いシフト」と「買い物のネットシフト」です。
コロナ慣れや「楽観バイアス」のためか外出行動は緩みもみえますが、スーパーにおける日々の買い物については「できるだけ回数は少なく、まとめて」という動きに再びシフトしています。

 図表4
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図表5
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「買い物のネットシフト」に関するデータをみてみると、宅配型のネットスーパー、通販型ともに依然として基準とした昨年の平時を上回ったまま推移しています(図表6)。

図表6
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最近数か月における動きを眺めてみると特に既存のスーパーが行っている宅配型のネットスーパーが好調のようです。大手スーパーの「ライフ」もオリジナルのモバイルアプリのリリースやネット対応店舗を増やしたり、Amazonと協業することで生鮮品や総菜の宅配サービスの充実を図るなど、積極的な取り組みを進めていましたが、6月からは対象エリアに新しく京都も加わり着実に拡大をしています。ライフをはじめ各社の今後の動きに注目したいと思います。

また、チャネル別の購入品目別の売上を見てみると、通販(ネット)での購入金額だけは「飲料」、「食品」、「雑貨」、さらには「化粧品」とすべての品目で基準としたコロナ前を上回る金額となっています。特にどのチャネルにおいても苦戦している「化粧品」は多少の減少が見られましたが、依然として基準を上回る購入金額を維持しています(図表7)。

図表7
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以前、「お買い物のネットシフト」について、コロナ下にネットによる買い物を経験した人が、「非接触」以上に「隙間時間にいつでも=タイムフリー」、「配達による荷物フリー」、そして、買い物時間の節約による「可処分時間の増加」などのメリットを享受し、利用し続ける人が一定数いるはず、と書きましたが。ライフ&Amazonをはじめとしたネットスーパー側のサービスの充実と上記のような生活者の習慣の変化を鑑みると、今後は生鮮を含めたさまざまな品目における買い物は「ネットシフト定着」と見立てた中でのマーケティング戦略の立案がカギになりそうです。

4.新しい日常~文化の交差点

熱戦が続いたスポーツイベントも終わりました。テレビやインターネット上でライブ配信や録画配信さまざまな視聴方法が用意されていたことから、普段はあまり観たことのない競技もたくさん観ることができました。そして、競技種目が持つ独自の文化も興味深いものがありました。
今回から新規に採用されたスケートボードでは耳にiPodをつけて音楽を聴きながらプレイする姿には驚きました。そして、さらに誰かの競技が終わると選手同士がお互いを称えあい、ハグをしたりヘルメットをポンポンと叩いたりする姿に新しい感動を憶えました。特に大技に失敗した選手に対し、他の選手が言葉をかけにいくさまは、カルチャーとしての豊かさを感じました。
その一方、武道の持つ、自己への向き合い方や相手への敬意を「姿」として表す部分にも胸を打たれました。数十年前、ケンカ空手、牛殺しの大山倍達に憧れて道場に通ったことのある私としては、武道館に棲む「武士(もののふ)」を今に見た想いでした。
競技だけでなく、それぞれの競技種目が持つ文化や文化が創りだす立ち居振る舞いもまた新しい発見であり、醍醐味でした。

コロナ下においても新しい日常が生まれています。
新しい日常は新しい文化や新しい立ち居振る舞いでもあるはずです。見逃すことがないよう目を凝らし、耳を澄ましたいと思います。

おわり


※1 内閣府 景気ウォッチャー
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2021/0810watcher/menu.html

※2 日経新聞 「官民ともにボーナス減 国家公務員は2年連続」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA103CL0Q1A810C2000000/?unlock=1

※3 読売新聞 朝刊 特別面(6) 「検証 Tokyo2020」(2021.8.10)

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生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

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生活者研究センター センター長
田中 宏昌(たなか ひろまさ)

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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