仮説設定 【ブランド・コミュニティにおける顧客間コンフリクトのマネジメントⅣ】

この記事では、2017年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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本研究は、正当性を活用してヘビーユーザーがライトユーザーへ反発するメカニズムと、その帰結をモデル化する。
ブランド・コミュニティを規定する要素の中でも「儀式と伝統」は正当性と大きく関係があると考えられる。なぜならこの2つはコミュニティ内に共有される決まり事によって定義されるからである。そのため、ライトユーザーは正当性を獲得することで、ブランド・コミュニティのメンバーとして認められるものと考えられる。したがって以下の仮説を提唱する。

仮説1:ライトユーザーが正当性を獲得しているとき、獲得していないときに比べて、ヘビーユーザーの反発は小さくなる。

しかし、ユーザーがコミュニティに参加する前に、コミュニティ内の暗黙の了解を把握することは困難である。コミュニティの新規メンバーは、正当性を獲得しないままコミュニティに参加するため、ほとんどが反発を受けることになる。だが現実には、すべての新規メンバーがコミュニティから反発されるわけではない。

そのため、正当性の無い状態でブランド・コミュニティに参加しても反発を和らげる要素があるものと考えられる。その要素があるために、新規メンバーはコミュニティ内で暗黙の了解を把握していなくても、コミュニティのメンバーから反発を受けずに済む。この作用がある要素として、親密性が考えられる。
人間は親密性を感じる人に対しては寛容に対応するものである。実際に友人や恋人のような親密に思っている相手には怒りを感じても許しやすい傾向にある。一方で見知らぬ人のような親しくない間柄では許しにくい傾向にあることも分かっている(McCullough [2001], 日比野・吉田 [2006])。したがって以下の仮説を提唱する。

仮説2:ライトユーザーが正当性を獲得していないとき、ヘビーユーザーとライトユーザーの間に親密性があると、ヘビーユーザーの反発は親密性が無いときよりも小さくなる。

ブランド・コミュニティでは、コミュニティのメンバーである期間が長いほど、格の高いメンバーであるとみなされる傾向がある。ブランドを長期的に愛好しているメンバーほど製品の購買回数も多くなり、ブランドを経済的に支援しているからである。そうした自負からか、ヘビーユーザーはメンバー歴が浅いライトユーザーを格下としてとらえがちである。

企業がすべての顧客に平等に対応すると、ヘビーユーザーはライトユーザーに対して不公平だと感じる。投資額が異なるにもかかわらず、ヘビーユーザーはライトユーザーと平等の購買機会しか与えられないためである。こうした状況は、ヘビーユーザーのライトユーザーに対する羨望を誘発する。

ヘビーユーザーはライトユーザーに羨望を感じたとき、ライトユーザーに正当性があっても反発すると考えられる。羨望には良性の妬みと悪性の妬みが存在する。良性の妬みは自分自身を高めるなどポジティブな働きがある。一方、悪性の妬みを感じると、優れた相手を貶めたり傷つけたりすることや,相手が何かで失敗することを望むようになる(Neu [1980], Van, Zeelenberg and Pieters [2009])。ライトユーザーに悪性の妬みを感じたヘビーユーザーは、例えライトユーザーが正当性を獲得していても反発行動をとるだろう。したがって以下の仮説を提唱する。

仮説3:ライトユーザーが正当性を獲得しているとき、ヘビーユーザーがライトユーザーに羨望を抱くと、ヘビーユーザーの反発は羨望を抱かないときよりも大きくなる。

仮説1、仮説2、仮説3をモデルとして示したものが図3である。このモデルについてはStudy1で吟味する。

■図3 Study1の概念モデル

ヘビーユーザーの反発は、減少はしても完全にはなくならない。なぜなら、ブランド・コミュニティの外にいる人間に、暗黙の了解を完全に周知させることは難しいためである。そのため、仮に企業が周知を促したとしても、すべてのブランド・コミュニティの新規メンバーが規範を熟知してコミュニティに参加することはあり得ない。

反発行為を目にした潜在顧客は、自身も反発されることを恐れてブランドから離れてしまうかもしれない。潜在顧客はヘビーユーザーよりもライトユーザーに似ている。自身と似たライトユーザーがヘビーユーザーから反発されている様子を見たとき、潜在顧客は「ブランド・コミュニティに参加したら自身も反発されるかもしれない」と考えるだろう。よって以下の仮説を提唱する。

仮説4: 潜在顧客がヘビーユーザーのライトユーザーに対する反発を見たとき、ブランドに対する態度は下がる。

しかし、潜在顧客が反発行為を気にしなくなれば、企業は反発の悪影響を気にせずに済む。新規メンバーがコミュニティへの参加をためらわなくなれば、ヘビーユーザーの不快感を反発で発散させつつ新規メンバーも獲得できる。そのためには、潜在顧客が反発の影響は小さいと考えるか、自身は反発されないと思ってもらう必要がある。

メンバー同士の同質性が高いブランド・コミュニティに対して、潜在顧客は参加をためらうと考えられる。グループのメンバーがグループの同質性を高めようとすると、そのグループは排他性の高い集団となってしまう(長谷川 [2014])。このことを経験的に知る潜在顧客は、メンバーの同質性が高いコミュニティを排他性が高いコミュニティだと判断し、反発を恐れてブランド・コミュニティに参加しない可能性がある。

ブランド・コミュニティのユーザーが多様であれば、潜在顧客は反発を気にしないであろう。つまりブランド・コミュニティの同質性を下げることで、ブランド・コミュニティが排他的になることを防げられると考えられる。したがって以下の仮説を提唱する。

仮説5:ヘビーユーザーの反発があるとき、潜在顧客がユーザーに多様性を感じると、ブランドに対する態度は多様性を感じない時よりも高くなる。

仮説4と、仮説5をモデルとして示したものが図4である。このモデルについてはStudy2で吟味する。

■図4 Study2の概念モデル


【続きへ】Ⅴ Study1

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