Study2 【ブランド・コミュニティにおける顧客間コンフリクトのマネジメントⅥ】

この記事では、2017年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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1. 実験計画

Study2においては、仮説の経験的妥当性を吟味するために、「アンとケイト」を用いたウェブ実験を実施した(※1)

Study2は、被験者をランダムに、4つのグループに分けた2×2の被験者間実験である。1つ目の独立変数は反発であり、ヘビーユーザーがライトユーザーに対して「反発をしている」/「反発をしていない」の2つのカテゴリーである。2つ目の独立変数は知覚多様性であり、潜在顧客がコミュニティの「多様性を知覚している」/「知覚していない」の2つに分けた。

グループの振り分けにはStudy1のウェブ実験と同様にランダム割当になるよう、誕生月を使用した。

実験の流れは以下の通りである。研究に一貫性を持たせるためにStudy2も「三代目J Soul Brothers」を題材にした。はじめにシナリオとは関係なく、潜在顧客のみを抽出するために「三代目J Soul Brothers」に関する商品の購買の有無の回答を得た。

次にシナリオとして、被験者が「三代目J Soul Brothers」に興味を持ち、インターネットで「三代目J Soul Brothers」について検索をしたという状況を提示した。その際、「三代目J Soul Brothers」のヘビーユーザーがライトユーザーに対して反発しているコメントを見るシナリオと、反発のないコメントを見るシナリオを用意した。反発ありのシナリオを見せたグループには「三代目J Soul Brothers」のファンコミュニティ内で特定のファンに対して不快感を抱いた経験がある人は全体の35%を占めているということも提示した(※2)。 さらに「三代目J Soul Brothers」のファンの多様性を示すシナリオと、多様性を示さないシナリオを用意した。最後に「三代目J Soul Brothers」に対する「態度」の回答を被験者全員から得た。

実験3の流れは図9に示される通りである。

■図9 実験3の流れ

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2. 実験3

(1)被験者

Study2は潜在顧客を対象にした。ウェブ実験は2017年10月25日から26日の2日間に、10代から30代の全国の男女を対象に実施した。被験者は332人であるが、そのうち、購買経験のない266人を抽出した。さらに同じ回答を続けており、シナリオをよく読んでいないと判断されるものを除外したため、有効回答数は179であった。

(2)測定尺度

分析に用いる構成概念の質問項目は、先行研究をもとに設定した。「態度」の質問項目にはMitchell and Olson [1981] の測定尺度を用い、7点リカート尺度で測定された(α=0.95)。

■態度に関する質問項目

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■提示した4つのシナリオ

三代目J Soul Brothersに関連する商品の購買経験のない回答者を、誕生月ごとにランダムにA、B、C、Dの4つのグループに分類してそれぞれのシナリオを提示し、態度に関する質問項目について回答してもらった。

【シナリオA】
以下の仮想のストーリーを読み質問にお答えください。あなたは三代目J Soil Brothersに興味を持ったとします。SNSでこのグループについて調べていると、以下のようなコメントを見ました。

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あなたは三代目J Soil Brothersについてどう思いますか?最も当てはまるものを選んでください。

【シナリオB】
以下の仮想のストーリーを読み質問にお答えください。あなたは三代目J Soil Brothersに興味を持ったとします。SNSでこのグループについて調べていると、以下のようなコメントを見ました。

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さらに調べていくと、三代目J Soil Brothersには小さな子どもからご年配の方まで幅広いファンがいることを知りました。あなたは三代目J Soil Brothersについてどう思いますか?最も当てはまるものを選んでください。

【シナリオC】
以下の仮想のストーリーを読み質問にお答えください。あなたは三代目J Soil Brothersに興味を持ったとします。SNSでこのグループについて調べていると、以下のようなコメントを見ました。

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また、三代目ファンを対象に調査をおこなったところ、 特定のファンに対して不快感を抱いたことがあると答えた人は全体の35%を占めました。あなたは三代目J Soil Brothersについてどう思いますか?最も当てはまるものを選んでください。

【シナリオD】
以下の仮想のストーリーを読み質問にお答えください。あなたは三代目J Soil Brothersに興味を持ったとします。SNSでこのグループについて調べていると、以下のようなコメントを見ました。

kantogakuseix-x19.PNG
また、三代目ファンを対象に調査をおこなったところ、 特定のファンに対して不快感を抱いたことがあると答えた人は全体の35%を占めました。さらに調べていくと、三代目J Soil Brothersには小さな子どもからご年配の方まで幅広いファンがいることを知りました。あなたは三代目J Soil Brothersについてどう思いますか?最も当てはまるものを選んでください。

(3)マニピュレーション・チェック

まずマニピュレーション・チェックを実施した。反発のマニピュレーション・チェックは鈴木・小川 [2005]、杉山・坂本 [2006] の被受容感尺度を用い、7点のリカート尺度で測定した(α=0.96)。被受容感尺度を反発の代理の尺度として用いた理由は、被験者がヘビーユーザーのライトユーザーに対する反発を見た際に、ライトユーザーがコミュニティ内においてヘビーユーザーに受け入れられている、と被験者は感じないと考えたからである。t検定を実施した結果、1%水準で有意だった(反発なし:M=3.55, 反発あり:M=2.68, t(177)=4.48, p=0.00)。また多様性のマニピュレーション・チェックではファンの属性に多様性がどの程度見られたかを問う質問項目を設けた(α=0.88)。反発と同様に7点リカート尺度で測定した。t検定を実施した結果、片側検定を見たところ5%水準で有意だった(反発なし:M=4.38, 反発あり:M=4.78, t(177)=-1.78, p=0.03)。

したがって、グループ間に平均値の差があることが確認されたので、マニピュレーションは成功したものと判断される。

■マニピュレーション・チェックに用いた質問

仮想のシナリオを踏まえて、以下の質問に答えてください。

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(4)分析結果

仮説4は、反発の主効果が有意であることが示されれば仮説が支持されたとみなされる。仮説5はヘビーユーザーがライトユーザーに反発している時における知覚多様性の単純主効果が有意であること、また、ヘビーユーザーがライトユーザーに反発している時に潜在顧客が多様性を知覚した時に多様性を知覚しない時よりも潜在顧客のコンテンツに対する態度が高くなることが示されれば、仮説が支持されたとみなされる。

]分析の結果、反発の主効果は非有意だった(F(1,175)=0.52, p=0.47)。同じく知覚多様性の主効果も非有意だった(F(1,175)=0.01, p=0.91)。一方で、有意な交互効果と単純主効果が確認された。反発と知覚多様性の交互効果が1%水準で有意であった(F(1,175)=16.32, p=0.01)。また反発なしにおける知覚多様性の単純主効果は10%水準で有意であった(多様性なし:M=4.42, 多様性あり:M=3.97, t(175)=-1.76, p=0.08)。

さらに反発ありにおける知覚多様性の単純主効果は5%水準で有意であった(多様性なし:M=3.84, 多様性あり:M=4.61, t(175)=2.22, p=0.03)。グラフは図10に示される通りである。

■図10 実験3の分析結果

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以上の結果から、ヘビーユーザーがライトユーザーに反発している場合、潜在顧客がコンテンツのユーザーに多様性があると知覚したほうがしていないときに比べて、潜在顧客の態度を上昇させることがわかった。一方で、ヘビーユーザーが反発していない場合は潜在顧客がコンテンツのユーザーの多様性を知覚しないほうが態度を高めることがわかった。

3. 考察

実験3では、有意な単純主効果と交互効果が確認された。すなわち、ヘビーユーザーの反発があるとき、潜在顧客が、ユーザーが多様であると感じていないと、潜在顧客のブランドに対する態度が下がるといえる。

よって仮説4は棄却されたが、仮説5は支持された。ヘビーユーザーが反発していても、潜在顧客がコンテンツのユーザーに多様性があることを知覚すると、そのコンテンツは様々な人を受け入れてくれると感じ、コミュニティに入ることが容易であると認識したことで、潜在顧客の態度は上がったと考えられる。一方でヘビーユーザーが反発していないときに潜在顧客がコンテンツのユーザーに多様性を感じると、潜在顧客のコンテンツに対するイメージが薄れすぎてしまうことで態度が低くなってしまったのではないかと考えられる。


※1
株式会社マーケティングアプリケーションズが提供するアンケートサービスである。インターネット調査モニターにはおよそ746万人がいる。

※2
Study1の実地調査で「正当性なし」シナリオに割り当てられたヘビーユーザーの中で、反発が4点以上の回答者の割合がおよそ35%だった。

【続きへ】Ⅶ 示唆

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