示唆 【ブランド・コミュニティにおける顧客間コンフリクトのマネジメントⅦ】

この記事では、2017年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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1. コンテンツビジネスに対する示唆

本研究の結果から、コンテンツビジネスとそれ以外の産業に対して、実務的示唆を導き出すことができる。

コンテンツビジネスに対しては2つの示唆がある。第1の示唆として、ヘビーユーザーに優遇措置をとることで潜在顧客の反発を抑えるだけでなく、新規顧客を獲得することができる。ヘビーユーザーへの優遇措置とは、例えば、企業がヘビーユーザー向けコンサートチケットの先行販売やヘビーユーザー限定イベント、グッズ販売を行うことが挙げられる。こうした試みを企業が実行することにより、ライトユーザーと差別化され、ヘビーユーザーとしてのプライドを保つことが可能になる。これにより、彼らのライトユーザーに対する妬み感情は軽減し、反発を抑えられると考えられる。さらに、これまでの企業が行ってきたヘビーユーザーへの優遇措置は彼らの離反を防ぐためのものであった。しかし本研究より彼らを優遇することは反発を抑え、新規顧客獲得を容易にするものであり、将来を見据えた戦略であるといえる。

第2の示唆として、ライトユーザーにラベリングをすることでヘビーユーザーがライトユーザーの正当性を認識することができる。ラベリングとはある事物や状況に命名することで、その事物や状況をカテゴライズし認知や記憶しやすくするものである(Becker [1973])。

ライトユーザーに対するラベリングとして、例えば、ライトユーザーがファンコミュニティに入る際に、企業が作成した試験を実施し、彼らに対してコミュニティ内の規範や価値を問うというものが考えられる。試験を通過したライトユーザーに証明書を与え、ラベリングを行う。これにより、まずライトユーザーがコミュニティの規範、価値を理解することができ、彼らに正当性獲得の機会を与えることができる。さらに、証明書を与えることで、彼らが正当性を獲得しているか否かをヘビーユーザーが知覚することが容易になる。

2. 他の産業における示唆

他の産業であっても、強力なブランド・コミュニティであれば、同様の示唆を得ることができる。つまり、強力なブランド・コミュニティがあるブランドでも顧客間コンフリクトがおこると、新規顧客がブランド・コミュニティ内に入ってくることができなくなるため、そのマネジメントが重要になる。例えば、Apple製品は強力なブランド・コミュニティを持っている。Apple製品のブランド・コミュニティは顧客間で製品知識を補完したり、アクセサリの一部を貸し借りしたりと顧客にとって非常に魅力的である。こうした顧客同士で影響を与えあうコミュニティ内で反発が生じると、ヘビーユーザーの離反にとどまらず、潜在顧客の態度にも負の影響をもたらす場合があることが本研究を通して明らかになった。したがって、これ以後は強力なブランド・コミュニティを持つブランドにおける顧客間コンフリクトのマネジメントについての示唆を述べる。

第1の示唆として、ヘビーユーザーがライトユーザーに反発する場合でも、潜在顧客にユーザーの多様性を訴求することで潜在顧客の態度が高まるであろう。例えば、広告によってユーザーの多様性を訴求するとで、ブランド・コミュニティ内の様々な顧客の存在を示すことができる。潜在顧客がユーザーの多様性を知覚すると、そのコミュニティはどんな人も受け入れてくれると感じ、潜在顧客自身もコミュニティに入りやすいと認識するであろう。

第2の示唆として、製品の認知度が低い時はターゲットを明確にして新奇性を訴求することで潜在顧客の態度が高まる。反発がない時とは、ブランドがあまり認知されておらず、ライトユーザーが少ない時と考えられる。市場拡大前はライトユーザーが少ないからこそ、反発は少ないだろう。こうした段階のブランドの場合、多くのライトユーザーがコミュニティに入ってくる市場拡大後のように、ユーザーの多様性を訴求するのでは潜在顧客の態度は下がってしまう。画一的なイメージを訴求することで、ターゲットにイメージが明確に伝わり、潜在顧客の態度は高まるのであろう。したがって、ブランド・コミュニティの規模によって、広告の訴求点を変化させることが重要である。

【続きへ】Ⅷ 本研究の意義

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