はじめに 【ライブコマースの利用体験が商品選好に与える影響とそのメカニズムの解明I】

この記事では、2018年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

目次はこちら


1. 研究背景

中国で爆発的に人気を集めているサービスがある。それは「ライブコマース」である。ライブコマース(以下、LC)とは、配信者が商品を紹介し、視聴者が商品に対する質問等をコメント機能を用いて投稿し、配信者がそのコメントに対し、回答するというリアルタイムでコミュニケーションをとりながら商品を販売するサービスである。このLCは中国では社会現象と言えるほどの広がりを見せており、年間で50億円売り上げた配信者もいるほどである。さらに化粧品メーカーのメイベリンニューヨークは、中国のECサイト「Weibo」においてLCを用いたことで2時間で1万本の口紅を売り上げた。実際に羽田空港にて中国人を対象に調査を行ったところLCを知っている、利用したことがあると答えた人は30人中26人とその実態を伺える。このように、LCは中国において多くのユーザーを惹きつけ、売り上げを伸ばしている。(図表 1)

■図表 1 中国におけるLCの拡大傾向

kantogakusei2018-1_01.png

(出典:iResearch社の調査を参考に筆者作成)

一方で日本においてもLCは台頭し始めている。有名人やインフルエンサーのライブストリーミング放送を運営している株式会社Candeeは2016年にLCアプリ「Live shop!」の配信を開始した。「Live shop!」ではアイドルなどの有名人による配信を行っている。また、フリーマーケットアプリを運営する株式会社メルカリも2017年にインフルエンサーだけではなく、一部の一般ユーザーも配信できる「メルカリチャンネル」を開設した。これらのことからも日本企業のLCに対する関心の高さが伺える。

しかし、未だ日本においてLCは浸透していない。日本におけるLCの現状を調査した「ライブコマースに関する調査」(株式会社マクロミル [2018])によると、LCについて「知っている」と回答したのは29.7%と回答者の約3割であった。さらに、「知っている」と答えた人の中で「視聴したことはない」と答えた割合は58.9%で「ライブコマースを知っているが、商品の購入はしたことはない」と答えた割合は86%であった。つまり、殆どの人はLCについて視聴・購入をした経験がないのである。

■ライブコマースの使用率

kantogakusei2018-ho_01.png

■購入経験率

kantogakusei2018-ho_02.png

ところが、LC利用経験者の84.7%が「今後どの程度利用したいと思うか」という質問に対して「今後もライブ配信を視聴し、買い物をすると思う」と回答した。(図表 2)その理由として「商品の詳細がリアルタイムで質問し確認できるから」「実際のショップ店員のように、話をしながら買い物ができるから」「出品者とのコミュニケーションが楽しいから」との理由が挙げられた。(図表 3)

■図表 2 LCに対する継続購買意向(n=400)

kantogakusei2018-1_02.png

(株式会社マクロミル「LCに関する調査」を参考に筆者作成)

■図表 3 LCで買い物をする理由(n=400)

kantogakusei2018-1_03.png

(出典:株式会社マクロミル [2018]「LCに関する調査」より引用)

我々はこの現状からLCの「利用体験」に注目した。昨今のスマートフォンの普及に伴ってECサイトの発達は著しい。ECサイトは場所や時間を選ぶことなく自分のペースで買い物をすることを可能にしている。さらに、ECサイトはサイト自体の種類が豊富であり、扱っている商品の種類は多く、バラエティに富んでいる。一方、LCは消費者が生配信の時間に合わせて買い物をする必要があり、品数もECサイトに比べてかなり少ない。しかし、なぜ消費者は再び利用したいと思うのだろうか。

そこで、本研究においては日本では参入段階のLCの利用体験に着目し、LCを利用した商品訴求が消費者に与える影響とそのメカニズムの解明を目的とする。

2. 研究意義

日本におけるLCはいまだ参入段階であるが、中国では爆発的な人気を集めている。したがって、LCには通常のECサイトとは異なる、独自の要素があり有用性のあるサービスであると考える。LCが視聴者にもたらす影響を解明することで、適切なLCの利用方法が明らかになると考える。ここに本研究の研究意義があるといえる。

3. 現状分析

(1) ライブコマースとは

LCは次世代のECと言われており、ECの一種で動画形式のサービスである、LCはリアルタイムで動画を配信する生放送に加えて、過去に放送したLCをアーカイブ放送として視聴することもできるのである。さらに、LCは「タレントや出品者がライブ動画を配信し、視聴者がリアルタイムで質問やコメントをしながら商品を購入できるサービス」(株式会社マクロミル [2018])と定義されている。

LCは、配信者が20~30分の一回の配信で1つまたは2つの商品について説明をする。現在のサービスで扱われている商材は衣服・化粧品が多い。「Live shop!」を運営している株式会社Candeeに取材を行ったところ、女性の方がファッション・メイク・アクセサリーなどのアイテムにおいてECの活用率が高いためであるとの回答が得られた。実際に「Live shop!」のメインユーザーは20~25歳の女性であり、その実情が分かる。

■購入データサマリ

kantogakusei2018-ho_03.png

(株式会社Candee調べ)

画面上には視聴時の視聴者数やコメント数が表示され、配信時の盛り上がり状況が分かる。(図表 4)

そして視聴者は商品に対して何か疑問があればコメント機能を使ってコメントをすることができる。コメントが画面上に反映され、配信者がそのコメントを読み上げて返答してくれる。視聴者はその商品を気に入れば、画面上から直接購入ページにアクセスでき、容易に購入することができる。

このようにLCの最大の特徴として、購買意思決定までにリアルタイムの双方向コミュニケーションが存在していることが挙げられる。

■図表 4 LCの詳細

kantogakusei2018-1_04.png

(出典:CHECK 「幸せ!いい香りのボディケアアイテム♡」を参考に筆者作成)

(2) ライブコマースの分類

LCには、B to C型とC to C型がある。本研究では、便宜上B to C型の中でもインフルエンサー型と中立型の二つに分ける。(図表5)インフルエンサー型とは主にインフルエンサーが配信者として商品を販売する形式である。先ほど述べた「Live shop!」はB to C型であり、有名アイドルがデザインした服や、インフルエンサーが海外から買い付けた商品を販売している。つまり、配信者=出品者であることが多い。

さらに、B to C型にはインフルエンサーの影響力に頼っていないものもある。これを本研究では中立型とする。その代表的な中立型のサービスは「CHECK」である。「CHECK」は、2018年に株式会社エブリーとKDDI株式会社が共同で立ち上げたLCサービスである。中立型は配信者が企業から請け負った商品を紹介するサービスである。つまり、中立型においては配信者≠出品者の関係が成り立つ。例えば調理器具の商品を扱った放送においては、配信者が説明書片手に実際に使用してみせるといった場面もあり、第三者目線で商品を使った率直な感想を教えてくれる。

一方、C to C型では一般人が買い付けた商品、またはハンドメイドの商品、さらには自分が使わなくなった商品を一般の視聴者に向けて販売するというサービスである。C to C型においては配信者=出品者との関係と配信者≠出品者の関係の両方が存在する。代表的なサービスが「メルカリチャンネル」である。「メルカリチャンネル」では一般ユーザーが配信をしている。

■図表 5 LCの分類

kantogakusei2018-1_05.png

(筆者作成)

4. 問題提起

ここまでの現状分析でLCの認知率や利用率は低いもののLCの継続購買意向は非常に高いこと、LCにはリアルタイムの双方向コミュニケーションが存在することが分かった。この継続購買意向の高さはLC特有の利用体験によって商品自体の選好が上がったことが理由なのではないだろうか。

我々は次の二つのリサーチ・クエスチョンを提示する。

RQ 1. LCの利用体験は商品選好に影響を与えるのか
RQ 2. 商品選好に影響を与える場合、その要因は何か

【続きへ】Ⅱ 既存研究

【目次へ】


本レポートに関するお問い合わせはこちらへお願いいたします。

関連記事