Study 1 【ライブコマースの利用体験が商品選好に与える影響とそのメカニズムの解明Ⅲ】

この記事では、2018年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

目次はこちら


前章の既存研究を踏まえ、本研究における仮説の設定を行う。ここで仮説設定を行う前に本調査での目的を明確にするため、1つ目のリサーチ・クエスチョンを再掲する。

RQ 1. LCの利用体験は、商品選好に影響を与えるのか

1. 仮説設定

リサーチ・クエスチョン1を解明するにあたり、仮説を設定する。

先述の既存研究から、ライブ環境下のコミュニケーションが経験価値を高めることが分かった。さらに経験価値が商品価値を高め得ることが明らかになった。したがって、ライブ環境下のコミュニケーションが商品価値を高めると考えられるのではないだろうか。

以上のことを踏まえ、以下の仮説を設定する。

仮説1 LCの利用体験は、商品選好に正の影響を与える

2. 調査内容

(1) 調査方法

本研究では調査方法として実験を採用する。なぜなら、リアルタイムの双方向コミュニケーションの過程を想定するアンケート形式に比べ、結果を正確に測定することが可能であると判断したからである。

本研究における検証の目的は、購買意思決定までにリアルタイムのコミュニケーションが存在するかどうかで商品選好に影響を及ぼすのかを検証することである。そのために、ライブコミュニケーションが存在するLCとライブ性は介在しないが動画での商品訴求をするLCの録画放送である「アーカイブ放送」とモール型ECサイトの代表としてAmazonを利用する場合の商品選好の差を確認する。

(2) 実験の留意点

本実験における留意点は、3点ある。1点目は、B to Cの中立型LCを利用することである。これは、B to Cのインフルエンサー型では、インフルエンサーに対する事前知識の有無が存在すること、C to C型では、主に中古品が販売されているという現状があるからである。これらの外部要因の影響を排除するためにB to Cの中立型LCを採用した。

2点目は、配信者に対する事前知識と対象商品に対する事前知識の差を排除することである。そのため、実験の被験者から、配信者の事前認知者と対象商品に対する事前知識の保有者は排除した。

(3) 商材選定

今回の実験では、商材として、中立型LCの「CHECK」の番組で紹介されたレコルト社の鍋とブラウン社の電動歯ブラシを採用した。(図表 6)

■図表 6 商材選定 商品画像

kantogakusei2018-3_06.png

(出典:「CHECK」より引用)

これらの商材を選定した理由は以下の2点であるある。1点目は、他の媒体と比較検討するためにLCとAmazonに代表されるモール型ECサイトの双方で販売されている商品であること、2点目は被験者の性別間で対象商品自体に対する商品選好の差がないと考えたためである。特に2点目については、男女間の選好差を排除するために、事前に商品選好を問い、平均値の差の検定を行った。商品選好を測る質問項目はChae and Hoegg [2013]の研究より、「Like(好き)」「good(良い)」「favorable(好ましい)」「appealing(魅力的である)」を引用する。なお、評価方法も同様に、Chae and Hoegg の研究を参考に9点尺度を用いた。平均値の差の検定の結果、男女間の商品選好に有意な差は見られなかった。

■プレ調査 平均値の差の検定 鍋

kantogakusei2018-ho_04_01.png
kantogakusei2018-ho_04_02.png

■プレ調査 平均値の差の検定 電動歯ブラシ

kantogakusei2018-ho_05_01.png
kantogakusei2018-ho_05_02.png

(4) 実験方法

続いて、実験方法について述べる。まず被験者を、LCを利用するグループ、アーカイブ放送を利用するグループ、モール型ECサイトを利用するグループの3つに分けた。なお、LCの番組内で商品を販売する配信者を事前に認知していた被験者は、配信者への事前認知が選好に影響することを避けるために、モール型ECサイトを使用するグループに振り分けることにした。3グループの被験者には、LC、LCのアーカイブ放送、モール型ECサイトのいずれかを使用してもらった後に、対象商品に対する選好をWebアンケートで評価してもらった。商品選好の測定方法は、商材選定の際と同様である。

3. 本調査

(1) 本調査概要

以上の事項に留意したうえで、仮説検証のための実験を行った。調査概要は、図表 7の通りである。

■図表 7 本調査概要

kantogakusei2018-3_07.png

■本調査 調査票

kantogakusei2018-ho_06.png

(2) 検証結果

回答を集計し、商品選好の平均値について一元配置分散分析を実施した。商品選好平均値と各平均値の差は図表 8の通りである。

■図表 8 商品選好平均値

kantogakusei2018-3_08_01.png

電動歯ブラシ

kantogakusei2018-3_08_02.png

(出典:以下の分析結果を基に筆者作成)

■本調査 一元配置分散分析 結果(鍋)

kantogakusei2018-ho_07.png
注)全て5%水準で有意

■本調査 一元配置分散分析 結果(電動歯ブラシ)

kantogakusei2018-ho_08.png
注)全て5%水準で有意

商品選好平均値は、LC、アーカイブ放送、モール型ECサイトの順に高くなっている。また、全ての平均値の差について1%水準で統計的に有意な差がみられた。

以上の結果より、仮説1は支持された。

4. 考察

Study 1より、LCの生放送を利用した場合はアーカイブ放送、モール型ECサイトを利用した場合よりも商品選好が高くなることが分かった。

まずLCの生放送・LCのアーカイブ放送と、モール型ECサイトでは、購入までの手続きは同じであることから、動画訴求が消費者の商品選好に影響を与えたと考えられる。

さらに、LCの生放送とアーカイブ放送では、LCの生放送の方が商品選好は高くなることが分かった。アーカイブ放送では、都合の良い時間に視聴することができるがコメント機能は利用できない。したがって、LC独自のリアルタイムの双方向コミュニケーションが選好に影響を与えていると考えられる。そしてOu et al [2014]では、ECサイトにおいてリアルタイムの双方向コミュニケーションが付与されると、「買い手と売り手間の双方向コミュニケーションによって信頼がより増すために、買い手の購買意思が強化されうる」と述べられている。つまり双方向のコミュニケーションには、買い手の購買に対する意思決定に影響を与えると示唆している。また、コミュニケーションに関してB Li et al.[2018]は「双方向性は、リアルタイムのコメントを通じて、他の視聴者に対して自分の考えを表現できるため、視聴者間でも生じる」と述べている。

以上のことから、LCにおけるリアルタイムの双方向コミュニケーションは消費者の意思決定に影響を与え、加えてそれは視聴者同士でも生じると考察できる。ここで我々は、LCにおけるリアルタイムの双方向コミュニケーションが、商品選好にどのように影響を与えているのかを探ることとした。

【続きへ】Ⅳ Study 2

【目次へ】


本レポートに関するお問い合わせはこちらへお願いいたします。

関連記事