Study 2 【ライブコマースの利用体験が商品選好に与える影響とそのメカニズムの解明Ⅳ】

この記事では、2018年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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Study1 では、アーカイブ放送とモール型ECサイトを利用した場合に比べ、LCの生放送を利用した場合の方が、商品選好が高くなる結果となった。そのため、LCは商品選好に影響を与えることが判明した。

この結果を踏まえ、2つ目のリサーチ・クエスチョンを再掲する。

RQ 2 商品選好に影響を与える場合、その要因は何か

上記のリサーチ・クエスチョンを解明するにあたり、仮説を設定するためのプレ調査を行う。

1. プレ調査

プレ調査を実施することによって、LCのリアルタイムの双方向コミュニケーションが商品選好に影響を与える要因について探る。

(1) 要因抽出

本節では、LC独自の要因が商品選好に影響すると考えたために、定性調査から商品選好に影響を与えるLCの要因を抽出する。Study 1で行った実験の被験者に対して中立型のLCを利用してもらい、その印象について回答してもらった。

調査概要は図表 9のとおりである。

■図表 9 調査概要

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デプスインタビューより以下の回答が得られた。(図表 10)

■図表 10 調査概要

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(デプスインタビューより一部抜粋)

これらの回答をもとに我々はLCの印象に関する質問を29項目に集約した。

(2) 因子分析

続いて、LCの商品選好を高める因子を抽出する為に、Webアンケートおよび紙面においてStudy 1でLCを利用したグループの被験者に限定し、7点尺度を用いてLCの印象に関する29の質問項目をもとにアンケート調査を実施した。そして、その結果を用いて探索的因子分析を行った。

概要は図表 11のとおりである。

■図表 11 因子分析 調査概要

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■プレ調査 因子分析 調査票

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因子分析を行う前に、今回のプレ調査が適切であったかを確認するために項目分析を行なった。

まず、29項目全ての平均値と標準偏差を算出した。その値を用いて、確認したところ得点分布の偏りを示す、天井効果およびフロア効果は見られなかった。これより、全ての項目をこれ以降の分析の対象とした。

■プレ調査 因子分析 結果

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今回の因子分析では、推定法として最尤法を採択し、因子数の決定には固有値1以上を基準とするガットマン基準を用いた。さらに、回転法は因子間の相関を考慮し、プロマックス回転を使用した。因子負荷量の採用基準は0.40以上とし、十分な因子負荷量を示さなかった項目を除外しつつ因子分析を繰り返し、8因子が抽出された。回転後の最終的な因子パターンと因子間の相関は以下を参照されたい。また、最終的に抽出した因子が全分散を説明する割合は約86%であった。

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ここで、クロンバックのα係数を用いて質問項目が各因子を十分に説明できているかを検証した。この分析では、一般的にα係数が0.80以上であれば信頼性が保証されるが、今回はすべての因子でα係数が0.80を超えたため、信頼性は問題ないと考えられる。

■図表 12 抽出された因子の観測変数と質問項目

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観測変数から抽出された因子については、質問項目を加味した上で、第1因子から順に、「親近感」因子、「エンターテイメント」因子、「他者評価」因子、「信頼」因子、「参加・共創」因子、「商品理解」因子、「自己肯定」因子、「透明・中立」因子と命名した。(図表 12)

本節では、2つ目のリサーチ・クエスチョンを解明するにあたり、プレ調査で抽出した因子を用いて、以下8つの仮説を設定する。

仮説 2-a :「親近感」因子は、商品選好に正の影響を与える。
仮説2-b :「エンターテイメント」因子は、商品選好に正の影響を与える。
仮説2-c :「他者評価」因子は、商品選好に正の影響を与える。
仮説2-d :「信頼」因子は、商品選好に正の影響を与える。
仮説2-e :「参加・共創」因子は、商品選好に正の影響を与える。
仮説2-f :「商品理解」因子は、商品選好に正の影響を与える。
仮説2-g :「自己肯定」因子は、商品選好に正の影響を与える。
仮説2-h :「透明・中立」因子は、商品選好に正の影響を与える。

2. 本調査

(1) 調査内容

仮説を検証するために本調査を実施する。被験者には、LCサービス「CHECK」において、LCを視聴してもらい、その後にWebアンケートを実施した。質問項目は、先ほどの因子分析より抽出した8因子の観測変数と、商品選好を評価する4項目である。

なお、選好の評価項目はこれまでと同様に Chae and Hoegg [2013]の研究を参考にした。商材は、Study 1と同様にプレ調査を実施し、性別間の対象商品自体に対する男女間の選好に差がないものとして、DEEBOT社のロボット掃除機「SLIM 2 薄型ロボット掃除機」を選定した。(図表 13)

調査の概要は図表 14の通りである。

■図表 13 本調査 商品画像

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(出典:「CHECK」)

■図表 14 本調査 調査概要

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■本調査 商材選定

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■本調査 抽出因子と観測変数

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■本調査 重回帰分析 調査票

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(2) 検証結果

実験Ⅱの回答を集計し、重回帰分析を実施した。重回帰分析を行うにあたり従属変数として、Chae and Hoegg [2013]の選好を測る4項目の平均値を用いた。また独立変数には、各因子の観測変数の平均値を適用した。重回帰分析の投入法は、ステップワイズ法を利用した。

重回帰分析の結果は、図表 15の通りである。

■図表 15 モデルの要約

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(出典:下記結果より筆者作成)

■本調査 重回帰分析 結果

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a 予測値: (定数)、親近感。
b 予測値: (定数)、親近感, 商品理解。
c 予測値: (定数)、親近感, 商品理解, 他者評価。
d 予測値: (定数)、親近感, 商品理解, 他者評価, 信頼。

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a 予測値: (定数)、親近感。
b 予測値: (定数)、親近感, 商品理解。
c 予測値: (定数)、親近感, 商品理解, 他者評価。
d 予測値: (定数)、親近感, 商品理解, 他者評価, 信頼。

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■a 従属変数 選好

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a 従属変数 選好
b モデルの予測値: (定数)、親近感。
c モデルの予測値: (定数)、親近感, 商品理解。
d モデルの予測値: (定数)、親近感, 商品理解, 他者評価。
e モデルの予測値: (定数)、親近感, 商品理解, 他者評価, 信頼。

■図表 16 標準化係数

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注)5%水準で有意

(出典:分析結果より筆者作成)

分析の結果「親近感」因子、「他者評価」因子、「信頼」因子、「商品理解」因子のみが抽出され、商品選好に影響を与えることが判明した。
さらに、4因子全てについてt値は絶対値で2を越え、有意確率は5%水準で有意である。

よって、仮説2-a、仮説2-c、仮説2-d、仮説2-fが支持され、仮説2-b、仮説2-e、仮説2-g、仮説2-hが不支持となった。

支持されたパス図を掲載する。(図表 17)

■図表 17 支持されたパス図

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(分析結果より筆者作成)

3. 考察

本節では8つの仮説検証結果について、それぞれ考察する。まず、「親近感」因子、「商品理解」因子、「他者評価」因子、「信頼」因子は商品選好を形成する要因として支持された。対して、「自己肯定」因子、「エンターテインメント」因子、「参加共創」因子、「透明・中立」因子は商品選好に影響を与える因子として支持されなかった。

はじめに、支持された因子について考察する。

① 親近感

また、水師・西尾[2017]によると、消費者が所属組織に親近感を感じると、所属する商品の購入意図が大きくなると述べている。以上から、視聴者が番組に対して親近感を抱き、商品選好に影響を与えたと考察する。

② 商品理解

LCでは、実際に商品の使用方法や詳細部分について、動画での訴求が行われており、配信者が視聴者側からのコメントでの問いかけに応じて即座に疑問点を解消することができる。以上のことから、配信者と視聴者のリアルタイムの双方向コミュニケーションが商品理解を深め、その結果、商品選好が上がったと考えられる。

③ 信頼

Keeling [2010]は「商品選好を高めるためにはユーザーからの信頼の向上が有効である。」と述べている。LCにおいて、視聴者は疑問点があればコメント機能を用いて質問をすることができる。そのため、気になったことを即時に解決できることが視聴者の信頼感を向上させ、商品選好に影響を及ぼしたと考えられる。

④ 他者評価

Leibenstein (1950) は、周囲が採用しているから自分も採用したいと思う気持ちを「バンドワゴン効果」としている。さらに、「バンドワゴン効果は需要の増加によって仲間・帰属意識が働くことで発生する」と述べている。

LCにおいて、視聴者は他の視聴者に対して仲間意識が働き、他の視聴者のコメントを閲覧することで、評価に同調する可能性が示唆される。つまり、他の視聴者の評価を参考にすることが、商品選好に影響を与えると考える。

次に、支持されなかった因子についても考察する。

① エンターテインメント

LCでは、「内容が面白い」「視聴することが楽しい」「思いがけないことが起こる楽しさがある」といったLCでしか提供できない番組・コンテンツとしての面白さが商品選好に影響するのではないかと考えた。

しかし、これは面白さの感じ方は人によって様々であるために、面白い、楽しいという感じ方に個人差が生まれてしまい、本研究の実験内容では商品選好に直結することはなかったと考察する。

② 透明・中立

透明・中立の要素のみでは選好に繋がらなかったものの、信頼を通して選好につながるのではないかと考えた。つまり、LCのコメント機能により、視聴者は商品に対する質問を投げかけることができ、配信者は質問に即座に回答する。このリアルタイムの双方向コミュニケーションが存在することで視聴者は情報の透明性を感じ、サービスに対して信頼を抱き、商品選好に影響を及ぼしたのではないかと考察した。

③ 参加・共創

LCの印象に関するプレ調査において「自分が大いに関わっている気がする」との意見があった。LCを利用する中でコメントをし、それに対してリアルタイムで配信者からのリアクションが得られるという状況は、自分自身がその番組に参加し一部になっていると感じるのではないだろうか。そのような「参加」から引き起こされる感情は、配信者や他の視聴者との繋がりを認識し、番組を「共創」しているという実感を得ると考えられる。

しかし共創と選好についての仮説は不支持となった。LCにおける共創とは、番組に参加し番組を共に創るということであるため、視聴者に番組に対しての好感は与えたものの、商品選好に直接的な影響は与えなかったと考えられる。

④ 自己肯定

自己肯定に関して、Study2のプレ調査において「コメントが読み上げられて嬉しかった」という意見が散見された。そこで、コメントを読み上げられたことに対する好感は自分を認めてくれたという認識に繋がり、それが商品の選好に影響を与えていると考えた。しかし、コメントを読むかどうかは配信者に委ねられており、コメントを読み上げられたことに対する好感は商品に対してではなく、実際にコメントを読む配信者個人に対して向けられたと考えられる。そのため、コメントを読み上げられたことで得られた自己肯定は商品選好に対して直接の影響はないものと考察した。

以上8つの因子について考察を述べてきたが、支持された因子は既存のECにも存在している要素と考えられる。しかし、インタビューを行っていく中で「自分の名前を放送中で読んでくれて嬉しかった」「皆で番組を作っている気分になる」などの「自己肯定」「参加・共創」因子につながる回答を多く得られていた。このようにLCのリアルタイムの双方向コミュニケーションならではと言える要素が今回の検証では不支持となってしまった。

我々はこれらの不支持となったリアルタイムの双方向コミュニケーションから導出される4因子も支持となった因子を介して間接的に商品選好に正の影響を与えているのではないかと考えた。

以上のことから我々は、因子間の関係性に注目し、次のStudy 3で商品選好に影響を与えるメカニズムについて検証を行うこととした。

【続きへ】Ⅴ Study 3

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