Study 3 【ライブコマースの利用体験が商品選好に与える影響とそのメカニズムの解明Ⅴ】

この記事では、2018年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

目次はこちら


先ほど支持された仮説を再掲する。

仮説 2-a :「親近感」因子は商品選好に正の影響を与える。
仮説 2-c :「他者評価」因子は商品選好に正の影響を与える。
仮説 2-d:「信頼」因子は商品選好に正の影響を与える。
仮説 2-f:「商品理解」因子は商品選好に正の影響を与える。

LCを媒介した場合に商品選好が高まる直接的な要因は、「親近感」因子、「商品理解」因子、「他者評価」因子、「信頼」因子の4因子であった。

考察でも述べた通り、今回不支持となった因子も支持となった因子を介して商品選好に間接的に正の影響を与えているのではないかと考察した。

以上を踏まえ、新たにRQ 3を導出する。

RQ 3. LCを利用した場合、商品選好が高まるメカニズムはどのようなものか?

1. 仮説設定

RQ 3を解明するにあたり、仮説2において、不支持であった因子と支持された因子に関連する既存研究のレビューを行い、そこから新たな仮説を設定する。

(1) 自己肯定 ― 自己承認欲求

ソーシャルメディア上のコミュニケーションを通して親密性がどのように形成されるかについての研究を行った石川[2015]は「承認欲求は親密性と正の関連性が示された」と述べている。LCの視聴者は自分のコメントを読み上げられ、回答してもらうと、自分の存在が認められ、自分に向けて魅力を伝えてくれているように認識すると考えられる。このことから、LCのリアルタイムの双方向コミュニケーションは、視聴者の自己承認欲求を満たしていると推察され、視聴者のLCに対する親近感と関連があると考察できる。

以上のことから以下の仮説を設定する。

仮説 3-a :「自己肯定」因子は「親近感」因子に正の影響を与える。

(2) 参加・共創 ― 共創

秋田[1988]は「質問作成が要点への注意を喚起し、理解を促進する」と述べている。つまり、主体的な参加が理解に対して影響を与えていることがわかる。実際に、本研究でも被験者から「商品について理解できた。」などというような回答が得られた。これより、LCでコメントをすることは、商品への理解を深めることにつながっているのではないかと推察した。

以上のことから以下の仮説を設定する。

仮説 3-b :「参加・共創」因子は「商品理解」因子に正の影響を与える。

(3) 透明・中立 ― 両面提示

LCは生放送であるために、編集することができない。実際に、Study2のデプスインタビューで「嘘偽りがないように感じた」といった意見が挙がっており、視聴者はライブ性から情報の透明性を感じていることが分かる。

さらに配信者は商品のメリットだけを一方的に伝えるのではなく、視聴者からのコメントに応じるというリアルタイムの双方向コミュニケーションをとることで視聴者側にとってはメリット・デメリット両方がわかる。これに関してAllen & Hale[1990]は両面提示の説得効果について、反駁情報を添付したメッセージ(反論付き両面提示情報)には説得効果があることを示している。つまり、視聴者にとってはメリット・デメリット両方を教えてもらうことで、商品に対する疑問や配信者に対する不信感が減り、LCに対する信頼感が増すと考えられる。

以上のことから以下の仮説を設定する。

仮説 3-c :「透明・中立」因子は「信頼感」因子に正の影響を与える。

以上3つの仮説を再掲し、作成したモデル図を提示する。(図表 18)

仮説 3-a :「自己肯定」因子は「親近感」因子に強く正の影響を与える。
仮説 3-b :「参加・共創」因子は「商品理解」因子に強く正の影響を与える。
仮説 3-c :「透明・中立」因子は「信頼感」因子に強く正の影響を与える。

■図表 18 想定したパス図

kantogakusei2018-5_18.png

(分析結果より筆者作成)

■プレ調査 共分散構造分析
係数

kantogakusei2018-ho_16_01.png

*:5%水準で有意

標準化係数

kantogakusei2018-ho_16_02.png

2. 検証

これら3つの仮説を検証するにあたり、Study 2の定量調査を利用し、共分散構造分析を行った。結果は図表 17の通りである。

モデル適合度を測る指標として、 GFI, AGFI, GFI, RMSEAを利用した。一般的にGFI, AGFI, GFIはそれぞれ1に近いほど、RMSEAは0に近いほど適合度が高い。今回のモデルはGFIが0.801、AGFIが0.753、CFIが0.910、RMSEAが0.084である。この数値では、適合度が高いとは言い切れないが、複雑なモデルであることを考慮し、本研究では採用することとした。また、記されているパス係数の値は標準化係数を用いている。

■図表 19 共分散構造分析 結果

kantogakusei2018-5_19.png

この仮説の検証に当たって、各因子と商品選好のパス係数の有意確率を確認する。(図表 18) 「自己肯定」因子から「親近感」因子への推定値と「参加共創」因子から「商品理解」因子への推定値は有意水準を満たしており、数値自体も大きい。しかし「透明・中立」因子から「信頼」因子への推定値は、有意水準を満たしてはいるものの、低い値となっている。

以上より、仮説3-a,bは支持され、仮説3-cは一部支持となった。

■図表 20 標準化係数

kantogakusei2018-5_20.png

注)5%水準で有意

(分析結果より筆者作成)

■図表 21 支持されたパス図

kantogakusei2018-5_21.png

(分析結果より筆者作成)

3. 考察

本節ではStudy 3の結果を踏まえ、3つの仮説に 対しそれぞれ考察を行う。

① 仮説3-a
② 仮説3-b

「参加・共創」因子は「商品理解」因子に強く正の影響を及ぼしていることが分かった。
既存研究レビューでも述べたが、やはりたとえ同じ情報量であったとしても、情報を一方的に与えられることと質問をする等自ら積極的にコンテンツに関わり、情報を得るということには大きな差異が存在することが推察される。商品に対して積極的に関与し、疑問を持ち、その後実際にその場で質問をして配信者が回答しその疑問が解決していくという一連のプロセスを体験できることは商品に対する理解を深める大きな理由であると考察する。

③ 仮説3-c

「透明・中立」因子は「信頼」因子に正の影響を及ぼしているが、その値は低かった。

我々は、一方的に商品の良さを伝えるだけでなく、LCを通した商品のメリット・デメリットの両面提示は信頼性を高めうると考えるが、今回の実験の対象としたロボット掃除機などではそもそも視聴者の商品に対する関与度が異なると考える。つまり、商材によって関与度や透明性の重要度が異なるため、信頼に対する影響度に差が生じると考える。

【続きへ】Ⅵ インプリケーション

【目次へ】


本レポートに関するお問い合わせはこちらへお願いいたします。

て関与度や透明性の重要度が異なるため、信頼に対する影響度に差が生じると考える。

関連記事