おわりに 【ライブコマースの利用体験が商品選好に与える影響とそのメカニズムの解明Ⅶ】

この記事では、2018年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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1. まとめ

我々は、現在中国で急激な広がりを見せているLCが日本に参入してきている動向に着目した。日本では認知度・利用率は高くないという現状であるにも関わらず、継続購買意向が非常に高いというギャップが存在することに疑問を持ち、LCを利用することは消費者の商品選好に影響を与えるのではないかと推察した。そして実験を通してその要因、メカニズムについて検証した。

まず、Study1ではLCの生放送を利用して商品訴求をした場合は、LCのアーカイブ放送およびモール型ECサイトを利用した場合と比較して、商品選好が高くなっていることが分かった。

そしてStudy2ではデプスインタビューと探索的因子分析を通して、LC特有の因子を抽出した。そして、選好を高めている要因を明らかにするため、重回帰分析を行った。その結果、「親近感」「他者評価」「信頼」「商品理解」因子が商品選好に影響を与えていることが分かった。それに対して、その他のLCにおけるコミュニケーションの大きな特徴とも考えられる「自己肯定」や「参加・共創」などの因子が商品選好へ直接影響を与えていないことが明らかになった。そこで我々は不支持の因子も支持された因子を介して間接的に商品選好に影響を与えているのではないかと考察し、因子間の関係性を把握するためにStudy3にて共分散構造分析を行った。

その結果「自己肯定」因子が「親近感」因子に正の影響を及ぼしていること、「参加・共創」因子が「商品理解」因子に正の影響を及ぼしていることが明らかになり、間接的に商品選好に影響を及ぼしていることが分かった。

まとめとして、本研究の意義を再度確認する。本研究には大きく 2つの意義があると考えられる。 第一に学術的な意義として、ライブ環境下でのリアルタイムの双方向コミュニケーションという体験が消費者に与える影響を解明したことである。以前の研究においてコミュニケーションをとることが消費者にとって経験価値となることは示唆されていたが、本研究にてデバイスを媒介したリアルタイムの双方向コミュニケーションの有用性を明らかにすることができた。

この研究は今後さらなる拡大が予想されるライブ環境での経験価値研究の足掛かりとなると考えられる。

第二に、実務的な意義としては、実体のつかめないLCが商品の選好に与えていたメカニズムを解明したことで、今後の拡大が見込めるLCをより具体的な指針を立て実務に落とし込むことを可能にしたことである。リアルタイムの双方向コミュニケーションを行うことの重要性を理解することで、LCを用いた商品訴求において効果的にアプローチできるようになると考える。

我々は本大会の研究テーマ「つなぐマーケティング」のもと、研究を行った。今回のメインターゲットである若者について岡崎,和田[2015]は「『つながり志向』が強い傾向にある。」と述べている。今回の検証においても、ライブであるからこそ生じる配信者とのつながり、番組とのつながりさらには視聴者同士のつながりを重視する若者の特徴が反映されていると考える。

今後のさらなるスマートフォンの普及、また技術の発展、時代の流れによってSNSでのつながりはより「ライブ」になっていくと考える。ライブは若者を強く「つなぐ」のである。

2. 本研究の限界と今後の課題

本研究の限界として3点提示し、今後の課題とする。1点目に、今回我々は調査を行うにあたり、若者を対象として行ったが、より実務に役立てるには、幅広い年代に向けた調査によって商品選好に影響を与える要因を明らかにしていく必要がある。2点目に、我々は調査を行うにあたり、我々は着想で次回購入意向が高いことを述べていながらも実際に使用して購入につなげた人に話を聞くことができなかった。LCが未だ参入段階であることが大きな要因であることが考えられる。実際に購入した人に話を聞くことで商品の選好にとどまらず、購買後の満足度等にも研究が深められると考える。3点目に配信者の影響を完全に排除できなかったことを挙げる。我々は調査設計の時点でインフルエンサーを排除して実験を行った。しかしながら、放送では番組によって配信者も異なり、番組に対する印象もその配信者によって変わってくると考えられる。加えて配信者の男女差も存在すると推察される。配信者の特性について性別、配信者のふるまい含めほかの要素についても今後明らかにしていく必要がある。配信者の特性の影響についても今後明らかにしていくことで、さらにLCの有用性が拡大していくと我々は考える。

【続きへ】Ⅷ 謝辞・参考文献

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