Study 1 【レコメンド型チャットボットが導入ブランドに与える影響とそのメカニズムの解明Ⅲ】

この記事では、2019年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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1. 仮説提唱

既存研究により構築したモデルを踏まえ、本研究における仮説の設定を行う。ここで仮説設定を行う前に本調査での目的を明確にするため、リサーチ・クエスチョンを再掲する。

RQ1
レコメンド型CBの利用は、導入ブランドにどのような影響を与えるのか。

Study1では、CBの利用前後で、ブランドの推奨意向がどう変化するか検証する。そこで提唱する仮説は以下の通りである。

仮説1
CBの利用は、ブランド推奨意向に正の影響を与える

前節で立てたモデルの通り、CBの利用を通じてBEが上がると想定される。それに伴い、ブランドの推奨意向も上がることが期待される。

2. 調査内容

(1)ターゲット選定

本研究を進めていくにあたってターゲットは20代男女に決定した。総務省[2016]によると、1日のうちにネットに接触している人の割合が最も高いのは20代である。(図表6)CBはインターネット上で展開されているサービスであるため、20代の男女との親和性は高いと考えた。

■図表 6 年代別ネット接触率(単位:%)

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(出典:総務省 情報通信政策研究所[2016]「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を参考に筆者作成)

(2)商材選定

今回の調査では、商材として服を採用した。商材を選定するにあたり以下の2点について考慮した。1 点目は、ターゲットである20代男女が購入する商材であること、2 点目は、商品選考に男女差のない商材であることである。特に2 点目については、性別間における商品選好の差を排除するため、事前に過去3カ月間における服の購入有無を問い、平均値の差の検定を行った。検定の結果、男女間の商品選好に有意な差は見られなかった。

【分析結果】 プレ調査 χ²検定

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【質問票】商材選定に当たって行った20代男女の服の購買行動に関する調査

商材選定に当たって行った20代男女の服の購買行動に関する調査

(3)調査方法

本調査では、被験者を2つのグループに分ける。両グループともに、まず初めにブランド推奨意向に関するアンケートを実施する。その後さらに、一方のグループにはレコメンド型CB利用を想定させるため、レコメンド型CBの会話画面を録画した動画を視聴してもらう。そして、動画視聴後にブランド推奨意向について回答してもらう。

(4)留意点

本調査において留意した点が3点ある。
1点目は、被験者に視聴してもらう動画の内容についてである。本調査で視聴してもらう動画が、レコメンド型CBの利用を適切に想定できるものかどうか確認を行うために、プレ調査①を実施した。調査概要は図表7の通りである。

■図表 7 プレ調査① 調査概要

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(出典:調査をもとに筆者作成)

(前提条件)
私たちは現在、会話を行うコンピュータ技術の一種で、ユーザーのメッセージ内容に沿ってボットが自動的に応答する仕組みである「チャットボット」について研究しています。
今から、実際のチャットボットを模した動画を流します。
もしあなたがこのようなチャットボットが利用するとしたら、質問項目についてどのように感じるのか、回答をお願い致します。

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プレ調査①では、アパレルブランド「BEAMS」のレコメンド型CBがあると想定し、LINEで架空のやり取りを録画し、動画を制作した。そして、プレ調査①で、制作した動画を視聴した後に、経験価値に関する質問項目に回答してもらった。その結果、自作の動画ではレコメンド型CBの特徴を十分に表現することができないことが分かった。具体的には、返信の即時性や、ブランドイメージを想起させるようなデザイン性を盛り込むことができなかった。したがって、本調査では実在するレコメンド型CBの動画を視聴してもらうのが適切であると考えた。そこで我々は、商材選定の際に実施した20代男女に実施した服の購買に関するアンケートで得られた回答も考慮し、アパレルブランド「UNIQLO」を採用した。「UNIQLO」は、20代男女が購入する服と価格帯が近く、全国に多くの店舗を展開していることから、20代男女との親和性は高いと考える。実際に「UNIQLO」がリリースしているレコメンド型CB「UNIQLO IQ」利用動画を用いて本調査を行う。

また会話の内容自体も、雑談の場面や能力的にCBが提案できない場面も収録し、レコメンド型CBが現在備えている機能と、利用シーンを容易に把握できる内容になるよう心がけた。

2点目は、「UNIQLO IQ」の存在を知っている人は調査の対象から除外したことである。本研究では、レコメンド型CBが未だ導入初期段階であることを前提にしているため、未使用のユーザーの反応だけを観測したいと考えた。よって、「UNIQLO IQ」を認知していない人を調査対象とすることが好ましいと判断した。

3点目は、UNIQLOに対するバイアスの影響を抑えるため、被験者を2つのグループに分けた際に、グループ間でのUNIQLOの利用頻度の差を排除したことである。実際に平均値の差の検定を行ったところ、グループ間のUNIQLO利用頻度に有意な差は見られなかった。

3. 本調査

(1) 本調査概要

以上の事項に留意した上で、仮説検証のための調査を行った。調査概要は、図表8、9の通りである。

■図表 8 本調査 調査概要(CB利用の動画視聴あり)

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(筆者作成)

本調査(CB利用の動画視聴あり)

(前提条件)
最初に、アパレルブランド「UNIQLO」について現在のあなたの考えを伺います。

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■図表 9 本調査 調査概要(CB利用の動画視聴なし)

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(筆者作成)

(前提条件)
今回はアパレルブランド「UNIQLO」について、現在のあなたの考えを伺います。

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(2) 検証結果

まず、動画視聴前の回答者のUNIQLOに対する推奨意向に関し、2グループ間での平均値の差の検定を行った。その結果、有意水準1%未満で棄却され、被験者が元々抱いていたブランドの推奨意向に有意な差はないことが確認された。

【分析結果】 プレ調査 t検定

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次に、動画視聴無しの回答者と動画視聴後の回答者のブランド推奨意向に対し、平均値の差の検定を行い、仮説を検証した。検証結果は図表10の通りである。

■図表 10 推奨意向平均値の差の検定

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(調査結果をもとに筆者作成)

ブランド推奨意向は、レコメンド型CBの動画を視聴していないグループよりも視聴したグループの方が高くなっている。また、2グループの平均値の差は1%水準で有意な差が確認された。したがって、仮説1は支持された。

4. 考察

Study1より、レコメンド型CBを利用した場合は利用していない場合に比べてブランド推奨意向が高くなることが分かった。店舗数が多く生活者と馴染みの深いUNIQLOは、元々ブランドへの態度が定まっていた被験者も多かったと考えられる。しかし、レコメンド型CBの動画を1回視聴してもらうだけで、推奨意向が有意に上がった。

この結果は、既存研究をもとに提案したモデルのように、CBでの経験が、ブランドに対する態度へと結びついたからであると考察できる。そこでStudy2では、具体的にどのような経験が、どのようにブランド推奨意向へと繋がっていくのかを探る。

【続きへ】Ⅳ Study 2

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