はじめに 【商品話者広告が消費者の商品選好に与える影響とその要因の解明I】

この記事では、2020年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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1. 研究背景

「私、アイス。美味しいよ!」あなたは商品自身が話しかけてくる世界を想像したことがあるだろうか。

昨今、このような商品自身が話し手となるプロモーションが注目を集めている。企業はこの手法を用いて、様々なPR動画を作成している。事例を図表1に表す。

■図表 1 商品自身が話し手となるプロモーション事例

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(出典:森永乳業株式会社PARM公式Twitterより引用)

これは、森永乳業株式会社のアイスクリームブランドPARM(以下、パルム)が2020年8月に公開した、新商品PR動画の一部である。動画内ではパルムが自己紹介するように商品説明を行う。「一日頑張った分、今宵は私に甘えてください」といったセリフを用いて、パルム自身が話し手となりメッセージを伝えている。この動画を受け、パルムの公式Twitterアカウントには「こちらも話しかけたくなる」、「これを見て食べたくなった」などと商品に対して好意的な声が寄せられている。

また、家具メーカーのイケア・ジャパン株式会社(以下、イケア)が作成した、家具が話し手となるPR動画はインターネット上で注目を集め、2020年10月現在、YouTubeで320万回以上再生されている。この動画は同社の他広告の平均再生回数と比べ、約15倍の再生回数を記録しており、家具同士が会話する様子から、家具に対して愛着を感じる声が上がっている。

パルムやイケアに留まらず、このような事例は大塚製薬株式会社のカロリーメイトや本田技研工業株式会社のFITなど様々な企業で見受けられ、近年多く見られる企業のプロモーション戦略といえるだろう。事例を図表2に表す。

■図表 2 商品自身が話し手となるプロモーション事例

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(出典:作者作成)

これらの事例に共通している点は、商品の形態やパッケージに手足などの追加的付与がなされず、商品自身が一人称でPRする点である。

以後本研究において、前述のように商品が形態を変えず一人称でPRする広告を「商品話者広告」と定義する。

商品話者広告の海外事例として、2018年に作成されたIKEA IndiaのPR広告が挙げられる。この広告は、家具が主人公となってストーリーを展開しており、“Talking Products”と題してシリーズ化されている。IKEA IndiaのマーケティングマネージャーであるUlf Smedberg[2018]は、Talking Productsシリーズには消費者との感情的な繋がりを作る意図があったと述べている。つまり、企業が商品話者広告を使用する目的として、商品と消費者の感情的な繋がりの形成が考えられる。

では、現代の消費者は商品が一人称でPRする商品話者広告に対し、実際にはどのような印象を抱いているのだろうか。我々は商品話者広告が有する、商品が一人称でPRする特徴が、消費者にどのような影響を与えているのか疑問を抱いた。

そこで本研究では、商品話者広告が消費者に与える影響とその要因の解明を目的とする。

2. 研究意義

本研究では、商品自身が一人称でPRする点に着目し、商品話者広告が消費者にどのような影響を与えるのか検証する。また消費者に影響を与える場合、その要因について解明する。

本来、広告内において、商品は「紹介される立場」にあるにもかかわらず、商品話者広告では商品自身が「紹介する立場」に立っていると言える。過去、広告の商品推奨者(エンドーサー)に着目し、商品がナレーターや有名人など、第三者によって紹介される広告の効果は多く研究されてきた。 しかし、商品形態に変化がなく、商品自身が話し手となってPRする広告に着眼した研究は未だなされていない。そのため、消費者心理を踏まえ、商品話者広告の有効性を解明することは学術的意義があると言える。

また本研究では、商品話者広告が消費者に与える影響とその要因を解明する。これにより、商品自身が話し手となることの有効性を示すことができれば、企業の効果的なプロモーションの一助となるだろう。ここに実務的意義があると言える。

3. 問題提起

前節で、商品話者広告が様々な企業に取り入れられており、消費者から好意的な反応が寄せられている現状を述べた。また企業が商品話者広告を使用する目的として、商品と消費者との感情的な繋がりを意図していることが分かった。

以上を踏まえ、商品話者広告は商品に対する選好に何らかの影響を与えているのではないかと考えた。

そこで我々は以下2つのリサーチ・クエスチョンを提示する。

RQ1商品話者広告は、消費者の商品選好にどのような影響を与えるのか
RQ2.商品選好に影響を与える場合、その要因は何か

【続きへ】Ⅱ 既存研究

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