Study 1 【商品話者広告が消費者の商品選好に与える影響とその要因の解明Ⅲ】

この記事では、2020年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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前章の既存研究を踏まえ、本研究における仮説の設定を行う。仮説設定を行う前に本調査の目的を明確にするため、1つ目のリサーチ・クエスチョンを再掲する。

RQ1. 商品話者広告は、消費者の商品選好にどのような影響を与えるのか

1. 仮説設定

既存研究より、擬人化の要素を持ち、商品推奨者と商品の一致度が限りなく高い商品話者広告は、消費者の商品選好を高めるのではないだろうか。これを踏まえ、以下の仮説を設定する。

仮説1. 商品話者広告は、消費者の商品選好に正の影響を与える

2. 調査内容

(1)調査方法

本調査では、調査方法として2種類の広告の対照実験を行う。
本調査における検証の目的は、商品話者広告が有する「商品自身が一人称でPRする」要素が広告内にあるか否かで、商品選好に影響を与えるのかを解明することである。そのため商品自身がPRする広告と、商品が第三者によりPRされる広告の比較を行う。

そこで我々は、商品話者広告の比較対象としてナレーター広告を採用する。本調査でのナレーター広告の定義は、「商品のみが画面上に現れ、第三者によって商品がPRされる広告」である。有名人やブランドキャラクターを起用した広告を採用すると、被験者の出演者に対する認知の度合いによって、商品選好に影響を与える可能性がある。よって比較対象にナレーター広告を採用することで、商品推奨者の立場による差異のみに着目して、比較できると考えた。

以上を踏まえ図表3のように、2種類の広告それぞれにおいて、同一映像を用い、読みあげるセリフと字幕のみ異なる動画を作成した。

■図表 3 調査に使用する広告
①商品話者広告

kantogakusei2020_3-01.png

②ナレーター広告

kantogakusei2020_3-02.png

(出典:筆者作成)

使用する音声は、全て我々で吹き替えを行い、同一人物で統一している。なお今回は事前に男女二人の声の選好度を測り、どちらにも被験者の男女間に選好の差がないことを確認した上で、より選好度の高い男性の声を採用した。

本調査では2種類の広告を被験者に見せ、広告における商品選好を7点尺度で回答してもらった。商品選好を測るために、Chae and Hoegg[2013]の、「like(好き)」、「good(良い)」、「favorable(好ましい)」、「appealing(魅力的である)」の4つの質問項目を参考にした。

以上の方法で、2種類の広告における商品選好の差を検証する。

(2)調査の留意点

本調査における留意点は2点ある。
1点目は、広告に用いる商品のブランド認知についてである。我々は、被験者によって調査に使用する既存商品の認知に差異が生じると、商品話者広告のみの影響を正確に測れないと考えた。そのため、本調査では、実際の商品のブランド名を隠した状態、あるいは商品からパッケージを取り除いた状態で広告を作成した(図表4)。さらに、ブランド名を明記しない状態であっても、商品のブランドを認知していた人の回答は排除している。

■図表 4 調査に使用する商品
ブランド名有り

kantogakusei2020_3-03.png

ブランド名無し

kantogakusei2020_3-04.png

パッケージ有り、パッケージ無し

kantogakusei2020_3-05.png

(出典:筆者作成)

2点目は、アンケート調査の進め方についてである。被験者に調査の意図が伝わってしまうと、正確な測定結果を得ることが出来ない恐れがある。また実社会において、消費者が同一の映像で音声のみ異なる広告を比較する場面はない。この2点を考慮し、被験者を「ナレーター広告を見せるグループ」、「商品話者広告を見せるグループ」の2つに分けた。

(3)商材選定

商材選定をするにあたり、調査対象を低関与商材に設定する。
今回我々は商品推奨者の違いによって、商品選好に差異が生じるのかを検証する。ここで単一の商材に対し、消費者が持つイメージに差異が生まれる商材は、調査対象に適していない。小嶋ら[1985]は商材を高関与商材と低関与商材に分け、高関与商材を「ブランド間の差異が大きい製品」、低関与商材を「ブランド間の差異が小さい製品」と定義する。ゆえに高関与商材は商材内における差異が大きく、消費者によって商材のイメージに差異が生じやすいと言え、調査対象に適していない。よって今回は低関与商材のみを調査対象として採用する。

本調査では、低関与商材の中でバニラ味のアイスクリームと洗濯用洗剤を商材に設定する。それぞれの商材に対してナレーター広告及び商品話者広告を作成し、計4種の広告を使用して調査を行った。これらの商材は、商品話者広告が作成された事例がある点、幅広い世代で日常的に消費される商材である点、被験者の性別間で商材に対する選好の差がない点を考慮し選定した。なお、性別間の選好の差については事前に調査を行い、統計的に有意な差がないことを確認している。

(4)セリフ選定

本調査ではナレーター広告と商品話者広告の2つを比較するため、セリフと字幕のみを変更させた広告を作成した。その際、商品推奨者の立場による差異のみに焦点を当てるうえで、話者や声質は変更せず、話法による差異に着目した。今回は保坂ら[1993]による自由間接話法・自由直接話法を参考にし、セリフを作成する。

顧[2005]によると、自由間接話法とは、物語において語り手の視点が含まれる話法であり、自由直接話法とは、物語における人物の発話や思考を表す際に用いる話法である。また、保坂ら[1993]によると自由間接話法の特徴は一人称以外を用いる点であり、自由直接話法の特徴は一人称を用いる点である。

ゆえに、第三者の客観的な視点を表す際には自由間接話法が適切であり、一人称で登場人物の主観を表す際には自由直接話法が適切だと言える。これより、ナレーター広告には自由間接話法を使用し、商品自身がPRする商品話者広告には自由直接話法を用いる。

上記を踏まえ、ナレーター広告に対応した商品話者広告のセリフを作成する際、我々は主語の明示に留意した。商品話者広告において、視聴者に話し手が商品であることを認知させるには、主語をより明確に表現すべきだと考えたためである。

ただし顧[2005]は、日本語は主語が欠落することがあると指摘している。そのため商品話者広告は、一人称の主語の欠落により、視聴者に商品が話していると認識されない恐れがある。

これに対し、我々は述部によって主語の欠落を補うこととした。張[1992]によると、日本語の場合、人称が明示されていなくても、述部から人称を読み取ることができると述べている。述部において一人称を表すには、「~たい」、「思う」、「悲しい」、「だろう」のような話し手の感情、推量など主観を表す動詞、形容詞、助動詞の現在形を用いる。これにより、主語が欠落しても登場人物の主観的な表現が可能となると提示している。

以上のことから、ナレーター広告には一人称を使用しないセリフ、商品話者広告には一人称及び、一人称を表す述部を用いたセリフを作成した。作成したセリフは図表5に表す。

■図表 5 調査に使用するセリフ
①アイスクリーム、ナレーター広告

新登場!
こちらは、「とろけるバニラソフト」!
北海道産生クリームを使ったコクのある
味わい。
香ばしいコーンはサクサクです。
柔らかなくちどけで幸せな時間を
お過ごしください。
とろけるバニラソフト

②アイスクリーム、商品話者広告

はじめまして
僕、「とろけるバニラソフト」!
北海道産生クリームを使ったコクのある味わいが僕の魅力!
香ばしいコーンはサクサクなんだよ!
柔らかなくちどけで幸せな時間を過ごそう!
とろけるバニラソフト!

③洗剤、ナレーター広告

新登場!
「さわやか洗剤」は24時間抗菌で、洗浄力
バツグン。
すすぎ一回であなたのお洋服を驚くほどきれいに
リフレッシュできるグリーンフローラルの香りで、爽やかな一日に
さわやか洗剤

④洗剤、商品話者広告

はじめまして!
私、さわやか洗剤は24時間抗菌で洗浄力
バツグンだよ。
すすぎ一回であなたのお洋服驚くほどきれいにさせたいなぁ
リフレッシュできるグリーンフローラルの香りで、爽やかな一日を過ごしてね。
さわやか洗剤

(出典:筆者作成)

3. 本調査

(1) 本調査概要

本調査の調査概要は図表6の通りである。

■図表 6 本調査 概要

kantogakusei2020_3-06.png

(出典:筆者作成)

(2) 検証結果

商材として、アイスクリーム・洗濯用洗剤の2つを用い、被験者にナレーター広告と商品話者広告を見せた場合の商品選好について、平均値の差の検定を行った。

ナレーター広告と商品話者広告における商品選好の平均値、有意確率は図表7の通りである。なお、図表7では仮説検証に必要な結果のみを記載している。

■図表 7 本調査 平均値の差の検定

kantogakusei2020_3-07.png
kantogakusei2020_3-08.png

(出典:Study1本調査の調査結果を基に筆者作成)

図表7より、アイスクリームと洗濯用洗剤は、どちらの商材も商品話者広告における商品選好がナレーター広告よりも高い平均値を示し、その差も1%水準で統計的に有意であった。

以上の結果から、「仮説1.商品話者広告は、消費者の商品選好に正の影響を与える」は支持された。


(3) 考察

Study1より、商品話者広告を用いると、ナレーター広告よりも商品選好が高まることが明らかになった。本実験では、広告の映像や話者の声質を統一している。そのため、「商品が一人称でPRするか、第三者からPRされるか」といった商品の立場の違いのみで差異が生じたと考えられる。したがって商品自身が一人称となってPRすることは、消費者の商品選好を高める効果があると言える。

この理由として前章の既存研究で挙げられた、商品話者広告の要素である、擬人化及び商品推奨者と商品イメージとの一致度の高さが、商品選好に影響を与えたのではないかと考えられる。

それでは、商品話者広告のどのような要因が、商品選好に正の影響を与えるのだろうか。上記の疑問を解明するため、Study2に進む。

【続きへ】Ⅳ Study 2

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