Study 2 【商品話者広告が消費者の商品選好に与える影響とその要因の解明Ⅳ】

この記事では、2020年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

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Study1では、商品話者広告はナレーター広告と比較して、商品選好に正の影響を与えることが明らかになった。この結果を踏まえ、2つ目のリサーチ・クエスチョンを再掲する。

RQ2. 商品選好に影響を与えている場合、その要因は何か

1. 調査内容

(1) 調査方法

本調査における目的は、商品話者広告が商品選好に影響を与える特有の要因を解明することである。ただし、商品話者広告のみを調査対象として実験を進めるだけでは、結果として導き出された要因が商品話者広告に特有であるのかを断定できない。そのため本調査では、Study1と同様にナレーター広告と商品話者広告との対照実験を採用する。2種類の広告間で商品選好に影響を与える要因の差異を確認することで、商品話者広告特有の要因を明らかにする。

調査方法として、被験者を「ナレーター広告を見せるグループ」、「商品話者広告を見せるグループ」の2つに分け、それぞれに広告の印象に関する質問項目と商品選好について回答してもらう。次に因子分析を行い、ナレーター広告と商品話者広告に共通した因子を抽出する。続いて重回帰分析により、2種類の広告に共通して商品選好に影響を与える因子を確認する。

ただし、この重回帰分析の結果では、各因子が商品選好に与える影響の大きさが、ナレーター広告と商品話者広告で等しいと想定している。ゆえに、商品話者広告特有の要因を解明できたとは言えない。そこで、ナレーター広告と商品話者広告が各因子に与える影響度を明らかにするため、2種類の広告の因子得点を平均値の差の検定によって比較する。

これにより、どの因子に商品話者広告がより強く作用するのかを検証し、商品話者広告が商品選好に影響を与える特有の要因を明らかにする。分析のイメージ図は図表8で示す。なお、商品選好の評価項目は、これまでと同様にChae and Hoegg[2013]の研究から引用した。

■図表 8 Study2 分析のイメージ図

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(出典:筆者作成)

(2) 調査の留意点

本調査における留意点をここでまとめる。
まず、実験に用いる広告のブランドについてである。Study1と同様に我々が作成した広告で実験を行うと、映像のクオリティなどの問題によって、商品選好に与える要因を正確に抽出できない可能性がある。したがって、本調査では実在する広告を利用する。また、商品推奨者の立場による差異が商品選好に与える要因を正確に抽出するため、話法のみを変化させ、それ以外の要素は統一する必要がある。

以上を踏まえ、我々は缶詰スープブランド「キャンベルスープ」の既存の広告を用い、その音声のみをナレーター広告、商品話者広告ともに我々が吹き替えることで条件を統一した。なお、商品話者広告で用いたセリフの内容は、実在するナレーター広告に則り、Study1と同様、保坂ら[1993]の自由直接話法を参考にして作成した。

しかしながら、この方法のみでは、既存のナレーター広告を基盤として架空の商品話者広告を作成しているため、実務における商品話者広告特有の要因を解明できたとは言えない。そのため本調査では、実在する広告が研究の範疇にとどまらず、実際に消費者にどのような影響を与えるかを示したいと考え、既存のナレーター広告と商品話者広告も含めた実験を行う。

今回はナレーター広告と商品話者広告との間で商材を統一したうえで、4つの広告(ナレーター広告:アイスクリームブランドのハーゲンダッツ・カロリーメイト/商品話者広告:パルム・カロリーメイト)を使用した。実務で使用される上記4つの広告と、話法による差異のみに着目したキャンベルスープの広告をまとめて分析にかけることで、商品話者広告が商品選好に影響を与える特有の要因を正確に抽出することが可能となる。なお、補足として図表9に調査方法を提示する。

■図表 9 本調査 調査方法 補足

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(出典:筆者作成)

2. プレ調査

(1) 要因抽出

消費者の商品選好に影響を与える要因を解明するために、対面でデプスインタビューを実施した。そしてナレーター広告と商品話者広告を視聴した各々の被験者に対し、それぞれの広告の印象について回答してもらった。調査概要は図表10の通りである。デプスインタビューにより以下の回答が得られた(図表11)。

■図表 10 プレ調査① 概要

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(出典:筆者作成)

■図表 11 デプスインタビューの回答結果

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(出典:デプスインタビューより一部抜粋)

我々は、これらの回答をもとに、商品話者広告とナレーター広告の印象に関する質問を27項目に集約した。概要は図表12にて示す。

■図表 12 2種類の広告の印象に関する質問項目

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(出典:プレ調査①の回答をもとに筆者作成)

(2) 因子分析

続いて、商品選好に影響を与える因子を抽出するために、Webアンケートを実施した。被験者にナレーター広告及び商品話者広告をそれぞれ視聴してもらい、先ほど集約した27の質問項目に対して、7点尺度で回答してもらった。そして調査後、結果をもとに探索的因子分析を行った。概要は図表13の通りである。

■図表 13 プレ調査① 概要

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(出典:筆者作成)

今回の因子分析では推定法として最尤法を採択し、因子数の決定には固有値1以上を基準とするガットマン基準を用いた。また因子間の相関を考慮し、回転法はプロマックス回転を使用した。

本研究では因子負荷量の採用基準を0.40以上とし、全ての項目で十分な因子負荷量を確認している。またクロンバックのα係数を用いて、質問項目が各因子を十分に説明できているのかを検証した。一般的にα係数が0.80以上であれば信頼性が保証されるが、今回はすべての因子でα係数が0.80を超えたため、信頼性は問題ないと考えられる。因子分析の結果は図表14に示す。

■図表 14 プレ調査② 因子分析

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(出典:分析結果より筆者作成)

観測変数から抽出された因子については、質問項目を加味したうえで、第1因子から順に、「親近感」因子、「集中」因子、「リラックス」因子、「商品理解」因子、「刺激」因子と命名した(図表15)。

■図表 15 因子と質問項目

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(出典:筆者作成)

3. 仮説設定

本節では、2つ目のリサーチ・クエスチョンを解明するにあたり、仮説を設定する。仮説設定を行う前に、本調査の目的を明確にするため、2つ目のリサーチ・クエスチョンを再掲する。

RQ2. 商品選好に影響を与えている場合、その要因は何か

まず第Ⅱ章で前述したように、人間は擬人化された物に対して親しみが湧き、その結果、肯定的な印象を抱く。さらに、Park et al[2010]は、商品カテゴリーへの選好の強さに対して、親近性が影響を与えると述べている。このことから、「親近感」因子は商品選好に正の影響を与え、特に擬人化の要素を有する商品話者広告はナレーター広告よりも影響が大きいと考えられる。

また、第Ⅱ章において、擬人化は情報を単純化する効果を持ち、情報理解を容易にする有効な手段であることも述べた。ゆえに商品話者広告は、ナレーター広告よりも商品理解を促進すると言える。このことから、「商品理解」因子は商品選好に正の影響を与え、特に擬人化の要素を有する商品話者広告はナレーター広告よりも影響が大きいと考えられる。

これらを踏まえ、仮説を以下のように設定する。

仮説2-a.「親近感」因子は商品選好に正の影響を与え、商品話者広告はナレーター広告よりも「親近感」因子に強く作用する
仮説2-b.「商品理解」因子は商品選好に正の影響を与え、商品話者広告はナレーター広告よりも「商品理解」因子に強く作用する

4. 本調査

(1) 重回帰分析

本調査の回答を集計し、商品選好を従属変数、各因子の因子得点を独立変数として、重回帰分析を実施した。重回帰分析の投入法は、強制投入法を利用した。重回帰分析の結果は、図表16の通りである。

■図表 16 重回帰分析

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(出典:分析結果より筆者作成)

分析の結果、ナレーター広告と商品話者広告に共通して「親近感」因子、「集中」因子、「商品理解」因子が商品選好に正の影響を与えていることが分かった。なお「リラックス」因子は商品選好に負の影響を与え、「刺激」因子は商品選好に影響を与えていないことが判明した。

続いて、商品選好に影響を与えていた因子に対して、2種類の広告それぞれがどの程度作用しているのかを検証していく。

(2) 因子得点の平均値の差の検定

ここで、ナレーター広告と商品話者広告の因子への影響度を比較するために、因子得点を参照する。各因子得点の比較は図表17の通りである。さらに、前節で述べた商品選好に影響を与えていた、「親近感」因子、「集中」因子、「商品理解」因子、「リラックス」因子の4つの因子の因子得点を統計的に比較するために平均値の差の検定を行った。分析の結果は図表18に示す。

■図表 17 因子得点の比較

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(出典:筆者作成)

■図表 18 平均値の差の検定

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(出典:分析結果をもとに筆者作成)

分析結果より、「親近感」因子と「集中」因子は、商品話者広告の方がより強く作用することが明らかとなり、その差も1%水準で統計的に有意であった。

特に「親近感」因子は、他の因子と比べて2種類の広告間で因子得点の差が大きく、効果量も高い値を示していた。
しかしながら「商品理解」因子については、ナレーター広告の方がより強く作用することが判明し、その差も1%水準で統計的に有意であった。

なお、重回帰分析により負の影響を与えていることが判明した「リラックス」因子に関しては、2種類の広告の因子得点間で統計的に有意な差は見られなかった。

(3) 分析結果まとめ

抽出された因子のうち、ナレーター広告及び商品話者広告において「親近感」因子、「集中」因子、「商品理解」因子が正の影響を与えていることが判明した。さらに商品話者広告は、ナレーター広告よりも「親近感」因子、「集中」因子に強く作用し、特に「親近感」因子への影響が大きいことが明らかとなった。また、「商品理解」因子に関しては、商品話者広告よりナレーター広告の方が強く作用することも分かった。

よって、仮説2-a「『親近感』因子は商品選好に正の影響を与え、商品話者広告はナレーター広告よりも『親近感』因子に強く作用する」は支持され、仮説2-b「『商品理解』因子は商品選好に正の影響を与え、商品話者広告はナレーター広告よりも『商品理解』因子に強く作用する」は不支持となった。

5. 考察

本節では、検証結果と設定した因子について、それぞれ考察する。

① 「親近感」因子

仮説2-aで設定していたように、「親近感」因子は商品選好に正の影響を与えることが分かった。さらに、商品話者広告はナレーター広告よりも「親近感」因子に強く作用することが明らかとなった。ゆえに、第Ⅱ章で述べたように、商品話者広告が有する擬人化の要素から親しみが感じられたことで、肯定的な印象を受け、商品選好に正の影響を与えたと考察する。

② 「集中」因子

仮説として設定していなかったが、検証結果より、「集中」因子は商品選好に正の影響を与えることが分かった。さらに、ナレーター広告よりも商品話者広告の方が強く作用することが明らかとなった。

この結果の理由として、我々は商品話者広告独自の要素である「一人称でPRする」という、話法の特性が作用しているのではないかと考えた。前述した通り、商品話者広告で用いた自由直接話法は、話し手の感情、主観を表す動詞などを含んでいる。Carol and Yuki[2014]は、「単に事実を伝えるだけではなく、自分の考えや感情を入れると、聞き手にとってもっと興味深い話になる」と述べている。このことから、商品が感情を持っているように話す商品話者広告は、集中因子の「惹きつけられる」、「見入ってしまう」といった質問項目にもあるように、より消費者の興味を喚起させ、惹きつけることができたと考察する。

③ 「商品理解」因子

仮説2-bで設定していたように、「商品理解」因子は商品選好に正の影響を与えることが分かった。しかしながら、商品話者広告はナレーター広告よりも「商品理解」因子に強く作用せず、ナレーター広告の方が強いことが明らかとなった。

第3節の仮説設定で前述したように、擬人化は情報を単純化する効果を持ち、情報理解を容易にする。これより、商品理解をより促進し、ナレーター広告よりも商品選好に正の影響を与えられるのではないかと考えた。

しかし、消費者は擬人化された対象に感情移入するため、客観的な視点で広告を視聴することができず、商品理解を促進する効果が小さかったのではないかと推察する。小林[1990]は、一人称と三人称がもたらす違いについて、「三人称では、書き手が物語世界に対して距離を持っていることにより、視野が広く物語全体を見渡せる」と述べている。これらの理由より、三人称で物語の外側から語られた方が、読み手は物語全体を客観的に理解できると推察する。

これをナレーター広告に当てはめると、語り手が三人称で広告の世界に対して距離を持って話していることにより、消費者は広告全体を客観視できると言える。ゆえに、ナレーター広告を視聴した消費者は、商品情報を冷静に理解することができたと考察する。

これらの理由により、商品話者広告よりもナレーター広告の方が「商品理解」因子に強く作用したのではないかと考える。

④ 「リラックス」因子

仮説で設定していなかった「リラックス」因子は、商品選好に負の影響を与えることが明らかとなった。しかし、因子得点の平均値の差の検定により、ナレーター広告と商品話者広告を比較したところ、統計的に有意な差は見られなかった。

つまり、2種類の広告の形態によって生じた影響ではないと言える。そのため商品話者広告の要素を持っているか否かではなく、広告の内容などに起因し、商品選好に負の影響を与えたのではないかと考える。

⑤ 「刺激」因子

「刺激」因子は、重回帰分析によって、ナレーター広告と商品話者広告のどちらも商品選好に影響を与えていないことが判明した。これに対して我々は、広告内のどの要素に刺激を感じるかは個人差が大きく、回答にばらつきがあったことが要因であると考える。

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