インプリケーション 【商品話者広告が消費者の商品選好に与える影響とその要因の解明Ⅴ】

この記事では、2020年の関東学生マーケティング大会でリサーチ賞を受賞した論文を紹介します。

目次はこちら


本研究を通して明らかになった示唆を述べる。
Study1では、商品話者広告はナレーター広告と比べて、商品選好が高まることが解明された。つまり、通常「紹介される立場」である商品が「紹介する立場」に立ち、一人称で商品自身をPRすることで、商品選好に正の影響を与えるのである。

Study2では、商品自身が一人称でPRする商品話者広告は、「親近感」因子、「集中」因子に特に強く作用し、それが商品選好に強い影響を与えていることが明らかになった。また、「商品理解」因子に関しては、ナレーター広告がより強く作用し、商品選好に正の影響を与えていることも判明した。

このことから、我々は消費者に親近感を抱かせ、興味を惹きつけるためには商品話者広告、商品理解を促進させるためにはナレーター広告の訴求が有効であると考える。

本章ではこれらを踏まえ、実務的な新規提案を行う。
我々は本研究で明らかになった示唆をもとに、小売店におけるインストアプロモーションを提案する。株式会社野村総合研究所[2020]の調査によると、新型コロナウイルスの影響で、消費者は買い物時に人との接触を避けている。またJonBird[2020]は、コロナショック以降も人との接触がない小売手法が求められると示唆している。

一方、人との接触が著しく減少したことで、消費者はより感情的な繋がりを求めている現状がある。コロナ禍による対面コミュニケーション減少をうけ、田辺[2020]は、コロナショック以降は人間の温かみを感じさせるようなコミュニケーションがビジネス上において重要になっていくと示唆している。そこで、商品話者広告が有する、人を介さずとも商品と消費者の繋がりを醸成する、という強みを小売店に活用することは有効であろう。

具体的な内容を提示する前に、商品自身がPRするインストアプロモーションを活用している事例を挙げる。

ルーマニアのTokinomo社は、商品が人に話しかけてくるように見えるロボットを開発した。具体的には、センサーが人を感知して、ロボットに取り付けられた商品が動き、スピーカーが作動する、というものである。詳細は図表19に示す。

■図表 19 Tokinomo社の事例

kantogakusei2020_5-01.png

(出典:Tokinomo社ホームページより引用)

このロボットの導入により、値引きなどの従来のキャンペーンに比べ、商品の売上を平均200%増加させた。現在は世界23ヵ国でTokinomo社の導入事例があり、飲料メーカーのコカ・コーラや日用品メーカーのP&Gなど、多くの企業が自社製品のプロモーションに活用している。

我々は、実務で活用されつつあるロボットと本研究で明らかになった商品話者広告の要素を組み合わせ、人を介さない効果的なプロモーションを提案する。

具体的な提案内容は以下の通りである。まず、小売店の陳列棚に商品が取り付けられたIoTロボットを設置する。このIoTロボットは、消費者が近づくとセンサーが反応して話し始める。また、IoTロボットにAIカメラを搭載することで、消費者の属性や特徴を即座に判断し、消費者に応じた話し方や訴求内容を採用する。

では、具体例としてスポーツドリンクをIoTロボットに設置した場合を想定しよう。AIカメラが高校生と認識した消費者に対して、「部活おつかれ!僕と一緒にエネルギーチャージしよう!」と、まるで友人のように話しかける。また、高齢者と認識した消費者に対しては、「こんにちは。最近暑くなってきましたね。私を飲んで熱中症に気を付けてくださいね。」と優しく語りかけるといったシーンも考えられるだろう。このように対象者を区別して商品自身が訴求を行う。

さらに、AIカメラが消費者の表情を読み取り、商品に興味を示している消費者に対しては、「手を振ってくれたら詳しく僕のことを説明するよ!」と呼びかける。この呼びかけでIoTロボットに手を振った消費者には、Beacon機能を活用してスマートフォンに詳細な商品情報を送信する。 具体的な送信内容は、ナレーター広告のように第三者が商品情報を説明するものである。

この施策で期待される効果を以下で述べる。
まず商品が溢れる店内において、商品が話しかけることで、消費者に商品の存在を気づかせるとともに、「親近感」を持たせることができるだろう。またAIカメラ機能が、自分に合った話し方や訴求内容を提案してくれることで、より商品が自分に合っている、商品と繋がりを感じられる、などといった感情を抱かせる効果を期待できる。

さらに、商品自身が一人称で話しかけてくることで、消費者はより商品に興味を持つ。そして商品の話に耳を傾け、没頭するという消費者の「集中」を促すことが可能となるだろう。

最後に、商品に集中した消費者に対し、より詳細な情報を客観的に訴求するナレ―ター広告を送信することで、消費者のより深い「商品理解」を促進できると考えられる。

このように、我々が考案するIoTロボットは商品と消費者の相互コミュニケーションを実現することができる。これにより、➀商品に気づかせる、➁親しみを覚えさせる、➂興味を持たせることで商品に集中させる、④より深い商品理解を促進することができる、という効果を期待でき、小売店における購買を一連の流れで促すことが可能である。

最後に、本施策を導入するメリットを小売店側、メーカー側双方の観点から述べる。
はじめに小売店側のメリットについて述べる。現在、新型コロナウイルスの影響で、実店舗における対面接客や実演販売は減少傾向にある。我々が提案する「人を介さない効果的なプロモーション」の導入により、従来の対面販売が減少する中、三密を避けながらも売上に貢献できるだろう。

続いて、メーカー側のメリットについて述べる。メーカーはこのシステムを利用することで、自社製品と消費者の感情的な繋がりを形成できるだけでなく、商品理解度の向上も見込める。そのため、新商品PRや既存商品のプロモーションにおいても、この新規提案は重要な役割を担うだろう。

【続きへ】Ⅵ おわりに

【目次へ】


本レポートに関するお問い合わせはこちらへお願いいたします。

関連記事