KGI/KPIの動きから適切にアラートを出すには? ~異常値検知モデルの活用~

デジタル化が進み、多様なデータが随時蓄積されるようになった今、企業では自社保有のデータや外部データをマーケティング活動に活用したいという「データドリブンな意思決定」のニーズが高まっています。また、この各所にある多種多様なデータを統合して活用し、「データドリブンな意思決定」を行うためのひとつの手段として、BIツールによるダッシュボード構築が注目されています。

ダッシュボード上では、売上や利益などの目標となる「KGI」と、目標達成のために必要なプロセスの達成状況を測る「KPI」が構造的に配置されていて、誰が見ても課題がわかり、スピーディな要因分析と方向修正に繋げられるようになっている状態が理想です。

この「誰が見ても課題がわかる」状態にするために活用されているのがBIツールのアラート機能ですが、そもそもKGI/KPIがどのような状態になればアラートを出すべきなのでしょうか。この記事では、「課題あり」のアラートを見逃さず、適切に検知する方法について紹介します。

【目次】

KGI/KPIの変化を検知する方法

データを基にアラートを抽出する基準としてよく使用されるのは、当期のKGI/KPIの値と前年同期値との比率です。この方法には、季節性の影響を排除した上で、簡便にKGI/KPIに課題がないかを評価することができるというメリットがあります。

ただ、この方法には、データの長期的なトレンドを捉えることができないというデメリットがあります。例えば、縮小傾向にある市場で、あるブランドの売上をKGIとして追う場合、ブランドの売上が前年同期と比べて低いという状況が続くと、市場動向を鑑みると問題ないレベルの変化であってもアラートが多発するという事態になりえます。この場合、アラートを見ても課題があるのかないのかが判断できず、注意喚起の意味合いが薄まってしまいます。

このデメリットに対応するアラート検知の方法として、「異常値検知モデル」を活用することが考えられます。この方法では、現状の市場動向において例年並みの施策を実施した場合にどのくらい売上を獲得できるかを予測し、実績と大きな乖離があった場合にアラートを出すことができます。前述の前年同期との比率よりも精緻な判定が行えるため、過剰なアラートの防止や見落としていたアラートの捕捉を実現できます。

「異常値検知モデル」とは?

異常値検知モデルとは、一般的に、『他のデータと比べて突出したデータを発見する』数理モデルの総称です。

様々な実務場面で使用され、特に製造業において活用が進んでいます。例えば、「不良品の検出」「製造機械の故障予知」への活用がよく知られています。

前者では、製品の材料情報や製造工程において様々なセンサーから得られるデータ等を用いて製品の良/不良を判定します。これによって、品質管理の工程において、不良である確率が高い製品のみを人が検査することができ、人件コストの削減とリードタイムの短縮が実現できています。

後者では、センサーデータや製造機械から出力されるログ情報から、機械の故障や耐用年数を予測します。故障可能性が高い機械に対して事前に修理や交換を行うことで、製造へのリスクを最小化することができます。また、緊急対応の頻度が下がることで、対応コストを削減することも可能にしています。

マーケティングの分野での適用例としては、SNSの口コミトレンドを予測するモデルを構築し、次に来る流行の兆しを検知し、商品の開発に活用する、といった取り組みがなされています。

KGI/KPIからのアラート抽出に適した異常値検知の手法とは?

異常値検知モデルは前述のとおり、様々な場面で適用されていますが、アプローチ手法はケースによって異なります。

ブランドのKGI/KPIの定期的なモニタリングに適用する場合はどのようなアプローチをとるのがいいのでしょうか。異常値検知の考え方としては、「過去の時系列データの傾向」から、今後KGI/KPIが取り得る数値の正常範囲を予測して、実績値がその正常範囲を逸脱した場合に「異常」と判定するのがいいでしょう(図1参照)。

図1

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予測モデルにはSARIMAXという時系列解析の手法を用いると、短期的な変動に加え、マーケティングの時系列データに特有の「長期トレンド」、「季節性」、「イベント(お盆、年末年始などのカレンダー情報等)」を考慮することができます(図2参照)。

図2

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実際にこの手法でモデルを構築してみましょう。アルコール飲料のブランドXのKPI指標を対象にモデルを構築し、ブランドの「特異な変化」にアラートを出すことを試みました。変化は週単位で捉えられるようにしています。こうすることで、データの安定性を担保しつつ、結果を見てある程度スピーディにアクションを起こすことができます。

図3は今回実施した異常値検知の方法です。ブランドXの直近2年の過去データ(ここではインテージのSRIデータを使用)を用いて構築したモデルを用いて、直後1週間の動きとして『正常』と考えられる範囲を予測し、実際のデータとの差から異常を検知します。

図3

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この方法で1年分(52週分)を予測した結果と実際のデータを照らし合わせた結果が図4です。

実績値はほぼ正常範囲内ですが、ある週だけ正常範囲を下回る結果が見られました。このようなアラートが出たら、どの業態・エリアで課題があるのか、どのようなユーザー層で課題があるのか、といったさらなるデータ分析による原因の追究や、打ち手の検討とつなげていく必要があります。

図4

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データ分析の結果、この事例では、CVS限定の競合品によってメインのユーザー層が流出していたことがわかりました。この実態を関係者間で共有することで、短期、もしくは中長期の施策について、スピーディな判断に繋げることができます。

精緻なアラート出しがデータドリブンな意思決定を後押しする

多様かつ膨大なデータが継続的に蓄積され、ビッグデータ時代と言われる昨今、その多くのデータをいかに使いこなして意思決定に結び付けられるかが重要となっています。BIツールなどのマーケティングツールが著しく発展する中でブランド担当者に求められているのは、各データの関係性を見える化し、ブランドの課題を俯瞰で捉えられるようにすること、また、いち早く課題を捉えてアクションに結び付けられるようにすることです。

異常値検知モデルのような精緻なアラート出しの仕組みを導入することは、いち早く課題があることを適切に知らせるだけでなく、なぜアラートが出たのか、という原因追求の機会を提供します。この原因追求において、どこに問題がありそうかという仮説を立て、データを追って検証する経験の積み重ねが、データの関係性を読み解き、見える化していく基盤となります。

このアラートは、データに基づいた課題発見、意思決定を実現する第一歩、とも言えそうです。

※BIツール、ダッシュボードの仕様によっては対応できない場合がございます。

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