デジタル時代、生活者の心に響くブランド経験とは?

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。


米アップルは、9/12に開いた新製品発表会で10周年記念モデル「iPhone X」を発表しました。日本でも、2008年のiPhone発売以来スマートフォンは急速に普及し、2016年には利用率が70%に達しました(参考記事)。インテージのi-SSPによると、人々が1日にスマートフォンを利用する回数はチェックを含め48回。平均して1日に3時間14分スマートフォンを利用する中で、アプリを10種類、90回ほど利用するとのこと。この10年足らずで、スマートフォンが人々の生活に深く根差した存在となっていることが分かります。更に、「スマートフォンの次」と期待されるAIスピーカーの国内での発売が、10月と11月に、グーグル、ライン、アマゾンから相次ぐなど、これからますますデジタル化が加速しそうです。デジタル化は我々の生活に多大な変化をもたらしましたが、そんな時代のマーケティングはどうあるべきなのでしょうか。人々とブランドとの関係に焦点を当て、Stylusの様々な記事から、デジタル化時代に望まれるブランド経験を読み解いてみました。

デジタル化時代、生活者を“巻き込んだ”ブランド経験づくりがキーとなる

デジタル化時代、生活者とブランドの関係も大きく変わりつつあります。SNS隆盛の今日、かつてのようにブランドが作り上げたストーリーを発信するだけでは、生活者の心をつかむことは難しくなっています。今日の生活者は「ブランドと双方向の関係を期待し、求めている」「自分たちの意見が、ブランドのアクションとして取り入れられることを望んでいる」とイベント・マーケティング会社The Pineapple Agencyのマネージング・ディレクターEmma Worrollo氏は言います。また、Disneyの研究開発部門の上級副社長Jon Snoddy氏によれば「満足感を高めるには、我々が全部を提供してはダメなんだ。半分は我々が提供するけど、残りの半分を人々に提供してもらうのがポイント」とのことです。
一方で、生活者はブランドにより多くを期待するようになっています。Haves Mediaが2017年に発表したグローバル調査によれば、世界では75%の生活者が、ブランドは生活の質向上にもっと貢献すべきと感じているとのことです。
デジタル化時代、変わる生活者とブランドとの関係。いち早く変化に対応した取り組みをご紹介します。

ブランドのコンテンツづくりや商品開発のプロセスに顧客を「参加」させる

UGC(User-Generated Contents、ユーザーによって作成されたコンテンツ)を活用したコンテンツ・マーケティング・プラットフォームを提供しているStacklaのマネージング・ディレクターAndy Mallinson氏は、ウェブサイトのビジュアルを改善するくらいではもはや充分ではなく、「顧客がいるところ、あらゆるところでUGCを活用すべきだ」と主張します。スマートフォンのカメラやフィルター、画像加工のアプリで、誰でも質の高い動画や写真を撮れるようになった今、生活者が生み出すコンテンツを積極的にブランドのマーケティングに取り込んでいこうという動きが出ています。
例えば、アイルランド発の服飾小売Primarkとアメリカの百貨店Macy’sでは、来店者に積極的にセルフィーを撮影してもらい、その写真を店内コミュニケーションに活用する来店者参加型の取り組みが行われています。撮影したセルフィーに#Primaniaや#Macysloveとハッシュタグをつけて自社プラットフォームに写真をアップしてもらうと、店内のスクリーンに撮影したセルフィーが映し出される仕組みです。Samsungのニューヨークの旗艦店でも同様に、セルフィーステーションで撮影した写真が数フロアを貫く巨大スクリーンに映し出されて、来店者の自己顕示欲を満足させてくれます。

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また、アメリカのライフスタイル小売ブランドBan.doは、ファンたちに、自作のアート作品をサイトにアップロードしてくれるよう呼びかけています。Ban.doはこういったアート作品をTシャツやバッグ、ドリンク容器などの商品に使用し、もし人気が出たデザインがあれば、「ファン・サプライヤー」たちにコミッションを支払うということです。また、ウェブサイト上では、Ban.doのモデルに応募することもできます。

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若者御用達のSNSを、シェアラブルなブランド経験の場として活用

デジタル化時代ならではのブランド経験として出現したのは、若者御用達のSNSをシェアラブルなブランド経験のプラットフォームとして活用する取り組みです。イギリスのファスト・ファッション小売River Islandは、若者たちが、試着室内や店内で商品の写真を撮ったりSnapchatにUPしていることに着目。Snapchatと組んで、「snap & share」と名付けたキャンペーンを2016年秋冬に行いました。全英250超の店舗にいるときだけ使用できるジオフィルターを提供、毎週フィルターをアップデートすることによて「今、ここにしか」ないものを手に入れてシェアしたいという衝動をかきたてました。更に#risnapとハッシュタグをつけてTwitterやInstagramに投稿し、プレゼントキャンペーンに応募してもらうことで、ブランド側がオンライン上で顧客を追跡することも可能になりました。

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10代をターゲットにしたイギリスのファスト・ファッションのオンライン・ストアMissguidedも同様に、「Always On(いつもネットにつながっている)」若い世代にフォーカスした取り組みを行っています。2016年にロンドンにオープンした旗艦店となる初のリアル店舗は、ソーシャルでの「シェア」を極度に意識した仕掛けでいっぱいです。その1つが、フォトジェニックなインスタレーションです。ピンクとホワイトの照明が多用された店内は、絵文字風のサイネージや、露骨にインスタ映えを意識したインスタレーションで満ち溢れています。アトリウムに設置された巨大なピンクのトラックとドル紙幣を打ち上げるマネキンのインスタレーションもその1つです。

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新しいプラットフォームやテクノロジーを活用して、より広い文脈で生活の質向上に貢献するブランド経験を

●オンラインプラットフォームを使って会話スタイルの“Edutainment”(教育と娯楽の融合)を提供

イギリスのウイスキーブランド、Johnnie Walkerは、AmazonのAlexaやFacebook Messengerのチャットボットを介して、ウイスキー飲用者の家呑みをより豊かにする経験を会話スタイルで提供しています。「Alexa、Johnnie Walkerをオンにして」と話しかけると、Alexaは4つのメニューを提示します。その中には、好みのレーベルや飲み方を提案してくれる「Choose a Label(レーベル選択)」や、近所でJohnnie Walkerを取り扱っている店を教えてくれたりオンライン購入できたりする「Buy a Bottle(ボトル購入)」といったオプションの他に、「Whisky 101(ウイスキー入門)」や「Try a Guided Tasting(テイスティング・ガイド)」といったオプションも選択できます。前者では、ウイスキーやJohnnie Walkerにまつわる豆知識や専門知識を授けることによって、ユーザーのウイスキーの世界を拡げてくれます。また、後者では、香りを嗅いだりウイスキーを啜ったりという一連のテイスティングの流れを通して、お役立ち情報やサービングのコツ等を教えてくれます。

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●プラットフォームの垣根を超えて生活の中に入り込む

2017年のSXSW(訳注:サウス・バイ・サウスウエスト、世界最大のマルチメディアの祭典)で、Disney Consumer Productsの上級副社長兼チーフ・テクノロジー・オフィサーMike White氏は、デジタル・プラットフォーム上で横断的にディズニーのキャラクターを登場させる取り組みについて話し、2017年6月公開の「Cars 3」がナビゲーション・アプリWazeと組んで、生活者の実生活の中に入り込んだ例を紹介しました。ユーザーは、Wazeのアプリ上でビジュアルと音声を「Cars 3」の主人公ライトニング・マックィーンにナビをしてもらうか、もしくは新キャラクターのジャクソン・ストームと移動時間を通して仲良くなるかを選択することができます。

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イギリスの調査会社Forresterは「生活者が、音声インターフェースやAIを使ったサービスを通じて、広告に邪魔されることなく欲しいものを手に入れることに慣れてしまったら、広告によって行動を中断させられることに対する風当たりはますます強くなるだろう」と予測しています。ここで紹介した取り組みは、かつてのようなブランドからのトップダウンではない、現代の生活者とブランドの「民主的な」コミュニケーションのスタイルに合った形、また、今すぐSNSにUPできるネタが欲しいという今日の若者の欲求に応える形でブランド経験を創りあげているということが特徴的です。更に、新たなプラットフォームやテクノロジーを活用したりプラットフォームの垣根を超えたりすることにより、一層大きな文脈や環境の中で生活の質向上に貢献することを通して、エンゲージメントを高めることを目指しています。このように、人々のコミュニケーションのスタイルや欲求の変化に対応していくことが、今日の生活者の心をつかむためには不可欠と言えるでしょう。

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