2018年のマーケティング・トレンドは?

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。


今回のテーマは、マーケティングの新しいキーワード。2018年、ビジネスやマーケティングの分野では、どのようなイノベーションが起こるのでしょうか。Stylusでは、毎年「Look Ahead」と題して、生活者やテクノロジーの新潮流を紹介しています。やはり、2018年も、AR(拡張現実)、 VR(仮想現実)、 AI(人工知能)といったテクノロジーの進化に伴うマーケティングが中心となっていくようです。テクノロジーを通して、生活者の五感に働きかけたり、無意識下の感情(エモーション)を捕捉し行動につなげたりするといった動きが見られます。

一方で、身体を酷使するような過酷なアクティビティへの注目の高まりや、努力を伴うプロセスを経て獲得することがラグジュアリーの新しい概念となるといった、「テクノロジーが生活を楽に、便利にしてくれる」という風潮とは一見逆行するような動きも見られます。

Stylusが紹介する2018年の新潮流の中からインテージが着目した4つのトレンドをピックアップ、日本での事例も交えてご紹介します。

※2017年のマーケティングにおけるキーワード記事は、こちら

五感に働きかけるインターフェース

2018年は体験型の屋外マーケティングが急増するでしょう。気象データや地域特定情報といったコンテキストシグナルを活用し、ARやVR、ビーコンやドローンのようなスマートシティの新技術と組み合わせれば、生活者との双方向性やパーソナライゼーションを強化することができます。

ロンドンではすでに莫大な投資が行われています。ピカデリー・サーカスの新しいデジタルスクリーンは特定メーカーの車が通ったときに専用の広告を表示するようプログラミングされていますが、これは始まりにしか過ぎません。『AdWeek』の最新インタビューでは、米国に本社を置く広告代理店IMG LiveのBryan Icenhower社長が、M&Mやマスターカードといったブランドが体験型マーケティングに注目する理由を説明しました。「体験型マーケティングは五感に働きかけ、感情をかき立て、記憶に残り、ブランドロイヤルティを高めます。」

五感に働きかけるマーケティングを成功させるには、インターフェース(接点)としての環境を活用しなければなりません。物理的な環境のみならず、情緒的な環境も重要です。AR技術やVR技術の進歩によって、2018年はさらに没入感が増し、感性に訴えかけるブランド経験が実現できるでしょう。

日本でも、昨年日本コカ・コーラが東京の地下鉄、都営大江戸線汐留駅などの駅のホームに気温連動型のデジタルサイネージ(電子看板)を設置していました。気温・天気・時間・場所といったコンテキストシグナルに合わせて内容の変わる150種類以上のメッセージを開発。例えば30度以上の真夏日、前日よりも3度以上暑い、などの様々な気象条件に合わせて言葉を細かく変えていたとのことです。誰もが気にする気温や天気に合わせた言葉を表示することで、通行人の興味を喚起して足を止めるような仕組みにしていました。

より強力になるエモーションの力

2018年は、強力なコマーシャルツールとして、感情(エモーション)への注目が更に高まりそうです。特に、新しいソフトウェアやAIツールを活用して、オンラインや店頭で生活者の感情をすぐアクションにつなげようという小売の現場での取り組みが注目されます。

チャットボットやバーチャルアシスタントの原動力となるEmotibotのようなソフトウェアは、会話型コマースや音声起動型サービス(これらも2018年の注目株)と密接に関係しており、顔の表情や携帯の握り方といったシグナルをもとに、よりいっそう満足度の高い対応を実現します。共感にもとづくブランドエンゲージメントが影響力を増している今、こうした感情の機微を数値化して活用することが、将来のエンゲージメントを左右する決め手になりそうです。

日本でも、三越伊勢丹ホールディングスが2017年8月に伊勢丹新宿本店で開催したイベントで、フクロウの姿をした小型ロボットを試験導入しています。カメラとセンサーで来店客の属性を検知、適切な商品情報を表示する実証実験を行ったとのことです。それ以外でも、セブン&アイ・ホールディングス、近鉄グループ、阪急百貨店でも、同様の動きが見られます。手厚い接客サービスが売りである百貨店にも、AIが「買い物体験」の価値をより高める役割を担う流れが生まれています。

今後、「賢いブランド」は、従来のフォーカスグループインタビューから、無意識の反応を明らかにするような心理学的手法によるリサーチに移行するでしょう。この流れは既に始まっており、2017年10月5-6日にアムステルダムで開催されたShopper Brain Conferenceでも幾つか事例が発表されました。例えば、イギリスの旅行代理店Thomas Cookが行った調査では、人々が「休暇」に求めるものについて、顕在意識上では「冒険」や「興奮」といった回答が返ってきた一方、無意識の反応を測定すると「安全」や「快適さ」がより強く求められていることが分かりました。Thomas Cookは、この調査から得られたインサイトをもとに、休暇前のワクワク感も描きつつ、「安全」や「快適さ」をさりげなくアピールする広告キャンペーンを打ち出しました。

このように、生活者の無意識にまで迫ることで、無意識に訴えかけるメッセージやコンテンツの作成が可能になるでしょう。より無意識下の感情に働きかける製品づくりやコミュニケーションというものが今年のカギとなるかもしれません。

エクストリーム・エコノミー

2018年は生活者の過激な要求が高まる年になるとStylusは予測しています。生活者がリスクの高いアクティビティを好む「エクストリーム・エコノミー」の出現により、これまで手つかずだった過激な行動に対しても、ブランドが働きかけていく余地が生まれます。

その一つとして、オーストラリアでサーフィン&スケートボード用品を扱うOzmosis社は傷を見せてくれた顧客向けに割引のサービスを始めました。これはまさに、危機感をかきたてるような肉体的にハードな挑戦やボルテージの高いブランドが生活者から評価されるエクストリーム・エコノミーの幕開けであると言えるでしょう。

日本でも、TBS系「クレイジージャーニー」、テレビ朝日系「陸海空 こんな時間に地球征服するなんて」といった、独自の視点やこだわりをもった日本人が、なかなか行くことができないコアな地域に潜入して現地の人々と交流したり、エッジの効いたさまざまな体験をする番組がここ最近話題になってきているように思います。これも、2017年のマーケティングにおけるキーワード記事にあったように、“あらゆるセグメントが「ニッチ化」”していることの表れなのではないでしょうか。

また、ヴァージングループの会長である、リチャード・ブランソン氏が手掛ける新たなスポーツの祭典「ヴァージン・スポーツ」のようなフィットネス・フェスティバルも盛り上がりを見せるでしょう。耐久スポーツの人気も高まり、中国では2011年時点で22しかなかったマラソン大会が2020年までには800に増えるとみられています(Creative Arts Agency調べ、2017年)。

こうしたエクストリーム・エコノミーの原動力となるのは、体温を調節するウェアラブル機器や、データを駆使してアウトドア活動を3Dアニメーション動画にするアプリなどの各種最新技術です。なかでも注目すべきは有酸素トレーニングをシミュレーションしたバーチャルリアリティ(VR)システム。YMCAは来年、空を飛んでいるような感覚を体験できるVRエクササイズ・マシンをミネアポリスの本部に導入する予定です。ちなみに、日本でも、ドイツ生まれのVRフィットネス機器「Icaros(イカロス)」が話題になりました。イカロスは、VR空間内でゲームをしながら体幹を鍛えるフィットネス機器で、日本の一部フィットネスジムなどで体験することができます。

「努力」することを通して手に入れるラグジュアリー

インスタント・グラティフィケーション(欲しいものは今すぐ手に入れたいという志向)が追求される時代だからこそ、「便利さ」や「手軽さ」に逆行するブランド経験が、新しいラグジュアリーの概念として注目され始めています。「手に入れるのは大変だが満足度の高いご褒美」がラグジュアリーであるとすれば、2018年におけるラグジュアリーは、「手に入れるために努力しなければならないこと」そのものが「プレミアム」に直結することになるでしょう。

ロンドンを拠点とする消費者心理の専門家、Kate Nightingale氏はこう述べています。「潜在的に、努力とは価値 ― 自らのアイデンティティが本当に重要であることを示すためのカギとなるもの ― を意味しています」。ナイキがアメリカ人アーティストのTom Sachs氏とコラボレートした2017年のスペースキャンプ・プロジェクトは、こうしたトレンドが発信されている実例です。

ナイキクラフト マーズ ヤードというランニングシューズを購入したい生活者は、障害物コースを完走するか、デジタル・デクステリティ(デジタル関連の新しい技術や、顧客の期待変化、および業界の変化に迅速に適応する能力)テストに合格して、自らの価値を示す必要がありました。

もっとも、今後、ラグジュアリーが苦労を伴うものになるというわけではありません。便利さや手軽さに重きがおかれ、ニーズがすぐに満たされるインスタント・グラティフィケーションの時代だからこそ、ブランドが定める儀式にコミットして、厳しい審査プロセスを経た上でやっと獲得できる、というプロセスそのものが、他とは一線を画した価値を生み出すことになるでしょう。つまりは、努力をした上で手に入れられるというものであると権威づけることを通して、ブランドが主導権を取り戻し、ブランド価値を高めていくという新しい取り組みと言えます。

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