世界のトレンドに見られる「おひとりさまの未来」とは?

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。


総務省がまとめた2015年の国勢調査では、単身世帯の比率がついに3分の1を超え、世帯の平均人数は2.33人、東京都では1.99人と初めて2人を割り込みました。都内ではおひとりさまでも入りやすいお店やレジャーも増え、いまやパートナーが居ても、敢えておひとりさまで食事をしている人もいるとか。その姿からは、ひと昔前のおひとりさまのイメージとは違い、一人の時間や自己発見を手にし、自由を謳歌するスタイルが見て取れます。また、この傾向はどうも日本だけではないようです。

自分自身の満足度を究極的に追及するこれからのおひとりさま。“ひとり”でいることの価値とは。

●おひとりさまは、日本だけでなく、国際的に増加している

単身者世帯は、都市化の進行、婚姻率の低下、離婚率の上昇、初婚年齢の上昇、出産率の低下、そして平均寿命の上昇といったことから、増加傾向にあります。2016年の終わりには、全世界での単身者世帯数は、3億3千万、全世帯数の16%を占めると推定されています。(IORMA, 2016)
一人暮らし率は北米と西ヨーロッパが最も高く、単身者世帯数は、米国で2000年から2025年の間に35%、イングランドで2006年から2031年の間に60%増加することが予測されています。(OECD, 2011) 
独身の一人暮らしは、最もよく見られる世帯タイプであり、その構成比は2005年から2015年にかけても4.1%上昇しているのです。(Eurostat, 2016)

中国では、長時間労働、離婚率の上昇、高齢化、そして一人っ子政策による独身男性の余剰といった要素すべてが、単身世帯数の増加に寄与しています。また、「女性の社会的、経済的な自立も大きな要因である。」と、ニューヨーク大学上海校の准教授であるXuan Li氏は言っています。「多くの〔中国人〕男性や親は、女性が家庭や子育てに集中してくれることを期待している。しかし、高等教育を受けた今、多くの〔中国人〕女性はそれを捨てたくないと考えているのです。」

また、経済発展や社会保障によって所得の伸びと富を得て、一人暮らしをすることが可能となってきました。Singled Outの著者Bella DePaulo氏によれば、「単身者世帯数は、人々が一人で生活するだけのゆとりがある時に増加する」と言います。実際、包括的な社会福祉制度を持つスウェーデンやフィンランドといった北欧国家は、世界のどこよりも独身生活者が多く、それぞれ全体の59%と41%が一人暮らしとなっているのです。(Eurostat,2016).

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●マイペースに自己探索を続けるおひとりさまを支えるサービスの普及

独身でいることが、人生の一時的なステージでなく、正当なライフスタイルの選択肢の一つとして見られるようになり、おひとりさまご飯やひとり旅の人気が高まっています。
なかでも、ひとり旅は徐々に支持を集め始めており、休日の行楽客の51%が「次の休日は一人で過ごす」と回答しています。また、アジア人旅行者の56%程度が、個性を出すため、また人生経験を積むために旅をすると回答しています(Sabre, 2016)。
「かつてインドではひとり旅はタブーであったが、今日ではアプリを使ってひとり旅同士でつながり、一緒に旅する若者が増えている。ひとり旅には新しい出会いがあり、日常生活から離れて自分自身を取り戻すことができるからなのです。」とインド最大のひとり旅コミュニティー「WeTravelSolo」の創設者Shefali Walia氏は言います。
下記のような、2016年2月に発売されたSolo Traveller アプリが、移動中に他の一人旅行者とつながるチャンスを与えています。

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また、世界的に、レストランで一人で食事する人の姿がよく見られるようになってきました。韓国では「ホンパプ」(一人で食事をする)、「ホンスル」(一人でお酒を飲む)ことが、都市に住む若者の間で人気の気晴らしとなっています。また、アムステルダムにある世界初のおひとりさま専用レストラン「EENMAAL」を模倣し、「テイクアウトを注文したいけれど、家で一人では食べたくない」という独身者向けにデザインされたレストラン「Take In」(ヘルシンキが拠点) の様なお店が出現してきています。フィンランド、スウェーデン、エストニアのフード・デリバリーアプリ「Wolt」がアメリカン・エキスプレスと提携して生み出された「Take In」 は、2017年1月から一カ月間ポップアップレストランとして営業を行いました。「Take In」はおひとりさまご飯に、アプリでテイクアウトを注文して他のひとりご飯の人と一緒に食事を楽しめる、という新たな選択肢を加えることになりました。

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日本のラーメンチェーン「一蘭」は2016年10月、ニューヨークに支店第一号をオープンしました。客は個別ブースに座り、味の好みを注文フォームに記入し、呼び出しボタンを押します。このシステムは、一蘭を知る者であれば、特に珍しいことではなくなりました。この「味集中カウンター」は、周りを気にすることなく、こだわりの味に集中できる環境を提供し、思う存分一蘭のラーメンを味わうことができるのです。

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●おひとりさまだけど、おひとりさまでない

おひとりさまは一人の時間を楽しみながら、同時にスマホ上のソーシャルメディアやエンターテイメントに関心を向けています。

現代の常に誰かとつながっている生活では、ストレスや過労を感じることが普通になっています。世界的に見ると、68%の人が「もっとゆっくりしたい」と思っています。しかし「時間があれば一時間でも一人で過ごしたい」と答えた人は4分の1に留まりました。(Ikea, 2016) 
「多くの独身者は一人の時間を味わって過ごしている。創造や瞑想、リラクゼーション、精神性、そして個人的な成長といった様々なことを提供してくれるこの機会を楽しんでいる。 一方で、至る所にスマートフォンがあるおかげで、人々は一人でいても、一日中、昼夜問わず他人とつながっていることが可能なのです。」とDePaulo氏は言います。

ボストンを拠点とするSmack Inc によって2016年12月にローンチされたFam は、「のんびりだらだらと過ごす」ためのアプリであり、ユーザーはiMessage内で、別にアプリを起動する必要なく、最大16名のグループ動画チャットが可能です。最初の12日間で100万人以上のユーザーがこのサービスをダウンロードし、今ではさらに数百万人増えています。
一方、サンフランシスコを拠点とするHouseparty は動画チャットアプリで、ユーザーはアプリを使用中の人最大7名からなる「チャットルーム」に入ってチャットが可能です。アプリは、2016年の9月にローンチされ、あるメディア関連記事によると、「インターネット上のリビングルーム」を作ることを目指しています。

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●パートナーがいたとしても、おひとりさまを満喫したい

様々な年齢層が、パートナーとの関係は維持しつつ、自立したライフスタイルを享受する機会を持っています。単身者世帯数の増加と婚姻率の低下は、若者が一人の時間を大事にするために、恋愛を避けているという意味ではありません。一夫一婦の関係性と独身生活の両方のベネフィットを得られる別居式共同生活(LAT:Living Apart Together)が増加傾向にあります。「ミレニアル世代の多くは、愛情や相手に対するコミットメントを表現することを非常に大事にしていて、そのかたちはこれまでのしきたりに縛られず、個人の選択で決定されている」と、Diamond Producers Association社のチーフ・マーケティング・オフィサーであるDeborah Marquardt氏は言います。カナダ人の13人に1人がLATのカップルであり、その数字は、イギリスになると10人に1人に上昇します。「結婚を先延ばしにしたり、年を重ねてからしたり、あるいはまったく結婚しない人がいる今、長く一人の生活を送っている人が多い。よって、真剣な交際が始まると、多くの人がその関係を維持しながらも、自分の居場所も守りたいと思っているのです。」とDePaulo氏は言います。

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●現代のおひとりさまとは、そして、おひとりさまの今後

HuluやNetflixなどのビデオオンデマンドサービスでのテレビシリーズの一気見や、スマホアプリを使った出前やテイクアウト、食品の定期購入キットの注文、あるいは週末をまるまる「寝て」過ごすといったことは、疲れ果てた平日へのご褒美と捉えられるようになってきています。
現代の生活者は、身を固め落ち着くといった従来の基準よりも自身の満足度を優先する傾向がありそうです。ひとり飲み、おひとりさまご飯、ひとり旅は、関連サービスの普及と共に、一人の時間を楽しむおひとりさまの間で人気となっています。よって、今後さらに一人一人にカスタマイズしたサービス、また自分自身について学ぶ新たな手段を提供するサービスや、一人の時間を楽しむためのスペースの提供が進むと考えられます。


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