モバイルが変える、リアル店舗でのショッパー体験

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。


モバイルとリアル店舗との連携強化を図る取り組みが各社で進んでいます。
例えばユニクロではスマホサイトをリニューアルし、オンラインストアで購入した商品を店頭で受け取れたり逆に店舗で在庫切れになった商品をオンラインストアで注文して支払いを店頭で済ませることができるようになりました。

モバイル化によってリアル店舗でのショッパー体験はどう変わっていくのでしょうか。世界のモバイル戦略を紹介します。

ミッション・ベースのショッパーへの対応

自分が欲しいものを分かっていてリアル店舗で買い物をする“ミッション・ベース”のショッパーは、できるだけ迅速で障害のない、満たされた買物体験を求めています。そのため、いつでもお店に行けて、簡単に決済でき、商品情報をすぐに探せること、に価値を感じるようになっています。

●次世代のシームレス体験 ー チェックアウト・フリー購入

2016年12月に、Amazon社は、シアトル本部でAmazon Goというチェックアウト・フリー(店頭での清算不要)の食料品店をテストしました。日本でもニュースになっていましたが、高度な視覚認識・追跡技術(無人自動車で使われているものと同様の技術)を使った、従来のレジ機能はない店舗です。
ショッパーは、入店時にスマホアプリに表示されたQRコードをスキャンし、棚から欲しい商品を取って、退店します。センサーと視覚認識技術がショッパーの動きとシェルフから取られた商品を捉えて自動的にショッパーのカゴの中身を探知し、出口で彼らのAmazonアカウントに料金を請求します。

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●次世代のコンビニ–モバイルを使っていつでも入店

2017年2月に、中国の技術系新興企業であるBingoBox が、従業員ゼロの年中無休のコンビニエンスストアを、中国南部の中山(チョンサン)市にオープンしました。中国で最大のメッセンジャーアプリWeChatのアカウントのQRコードを入口でスキャンすることで本人確認をし、15平方メートルの店舗へ入店して購入する商品をスキャンし、WeChat pay、Alipay対応のレジで支払をします。

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このような無人の自律型店舗のアイデアは、 2016年3月に、スウェーデンの遠隔地にオープンした、無人で年中無休のコンビニエンスストア Näraffär に遡ります。来店者はスマホを使って入店し、購入する商品のバーコードをスキャンして棚から取っていきます。購入したものの請求書は月ごとに購入者へ送付されます。

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●迅速な支払い –携帯型スキャナーのスマホアプリ化

支払方法の迅速化も、ショッパー体験のモバイル化のカギになります。2016年に、英国のスーパーマーケット Waitrose はそれまで店頭に置いていた“QUICK CHECK”という商品スキャン用の携帯型スキャナーをスマホアプリ化しました。ショッパーはアプリを店舗のWi-Fiに接続し、アプリのカメラで買う商品をスキャンし、袋に詰めながら店内を回り、最後に“買い物終了”のQRコードをレジで読ませれば簡単に支払いができます。

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同じく、2016年に、英国のスーパーマーケットSainsbury’s が10店舗でSmartShop アプリのテストを行いました(2017年後半に全国展開することが発表されています)。このアプリでも、ショッパーが店内を回遊しながら商品をスキャンして袋詰めし、出口の専用レジでスキャンすれば支払いができます。

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●迅速な購入決定をサポートする商品情報

ショッパーに対して購入前により多くの情報を提供するサードパーティー・アプリも数多く存在しています。CosmEthics アプリは、パーソナルケア商品のバーコードをスキャンすることで、潜在的に有害な化学物質を特定できます。一方で、Food Scores は8万以上のアイテムの栄養価をランク付けしています。全世界のミレニアル世代の23%が、商品の栄養価についてより詳しく知るためにQRコードやバーコードをスキャンしている (FMI, 2016)ことを考えると、こうしたコンセプトは掲載を望むブランドにとって大変有用性があり、実際に自社アプリにも似たような機能を持たせているようです。

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お客様をガイドするデジタル・ガイダンス

多くのショッパーが、店内を把握して効率的な買い物動線を確立するための情報を、初めにスマホで確認しています。このプロセスを、最適経路探索と使いやすい買い物リストの作成というコンセプトでスマホのサービスが手助けし、円滑にしています。

●完璧なコースを描くジオアプリ

2016年8月にローンチされた、英国の最適経路探索アプリ、Ubamarket はその日に買いたいものをショッピングリストとして登録すると、店頭で最小歩数で買い物ができるようにショッピングリストを並べかえてくれるとのことです。さらにショッパーがアプリで商品をスキャンすると買い物額が記録されていき、そのショッパーをターゲットとしたキャンペーンの情報が送信されます。英国のスーパーマーケットBudgensでこのコンセプトのベータテストが行われた後、Ubamarket は英国内のスーパーマーケット5000店(Morrison、Spar、およびNisaを含む)での展開が予定されています。

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●複数で共有できるタイムリーなリマインダー

ウクライナのLat.ioが開発した新規アプリCapitan は、ユーザーがスマホやスマートウォッチ上で複数の買い物リストの作成ができます。こうしたリストは家族や友人間で共有できるので、誰かが買い物に出ている時に通知をして、急な追加分を伝えることもできます。ユーザーがどの店舗にいるのかを認識し、アプリは特定の商品を購入するようリマインドしてくれたり、向かっている店舗に該当する買い物リストを開いてくれるのです。

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●来店前の準備を支援

米国でチェーン展開しているWalmartのモバイルサイトには、Search My Store(私の店舗を検索)機能があり、リアルタイムで、商品を入手できるかどうかが分かります。モバイル検索から来店への流れを促すため、Walmartは2017年3月に、1万点のウェブ限定商品について、店舗購入時の割引キャンぺーンを行いました。

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ゆっくり買い物をする、または、買うものが決まらないショッパーへの対応

より多くの時間商品を見て回ることができるスローペースのショッパー、また、時間がなく購入へあと一押しが必要な「優柔不断の人」、このどちらにも、“偶然発見する楽しみ“を中心においたモバイル施策が効きそうです。そこでカギになるのがチャットボットです。

●インスピレーションが湧く瞬間をブランディングするチャットボット

2016年7月、米国のオーガニック・スーパーマーケット・チェーンであるWhole Foodsが、ショッパーにレシピのアイデアでひらめきを与えるため、フェイスブックのメッセンジャー上で絵文字ベースのチャットボットを開設しました。 ショッパーは、食材の絵文字を入力し、加えて、食べられないものについて記入をすると、レシピのアイデアを受け取ることができます。このアプリは、ショッパージャーニーのどの段階でも、更には競合ストアにおいても利用できるので、Whole Foods側は他の場所でのショッパー行動について、インサイトを手に入れることができるのです。

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●夕食作りの(小さな)パニックを捕らえてサポート

Waitroseは、夕食の食材選び中の慌ただしいショッパーをターゲットとしたインスピレーションを与えるアプリをリリースしています。これは、過去の購入データを踏まえて、ショッパーの家に既にありそうな食材をもとにレシピを提案してくれるアプリです。

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●ゲーミフィケーションの力

シンガポールの小売ゲーム会社のKsubaka は多くのFMCGブランドと提携し、中国のスーパーマーケットにゲームキオスクを出店しており、そのオンラインでの食料品販売市場は2020年までに1780億ドルになると予測されています。(IGD, 2016) 

プレイスポットと呼ばれる、店内のタッチスクリーンに短時間でできるゲームが取り入れられています。
ゲームをコンプリートすると、ショッパーは自身の電話をキオスクとシンクロさせてゲームを継続するか、あるいは店頭で使えるデジタルクーポンを商品に交換することができます。P&GのH&Sシャンプーのあるキャンペーンでは、北京にあるWuMartの80の支店の通路にプレイスポットが展開され、1カ月間の売上げが30%の増加となりました。Ksubaka はブランドのついたゲームの作成を国際的に展開し、最近は、ロンドンにもオフィスを開設しています。

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●パーソナライズされた、店頭のデジタルサイネージ

2017年4月、コカ・コーラは、ショッパーのスマホからのデータを活用し、リアルタイムで半パーソナライズされた広告を提供する、スーパーマーケットの通路エンドに置くデジタルサイネージをGoogleと提携しています。コーク所有のスクリーンはショッパーのスマホと通信し、Googleのダブルクリック広告配信ソフトウェアからIPアドレス(ショッパーの位置情報を示すもの)だけでなく閲覧データも取得できるため、ショッパーの大体の年齢、性別、現在のショッピング習慣について知ることができるのです。
例えば、ショッパーが健康やフィットネスに関心がある人の場合、炭酸水やダイエット・トニックの広告が現れるといったように、その消費者が近づいてきたときに、スクリーンへ表示する上で最も適した広告を判断します。
米国のスーパーマーケット・チェーンAlbertsonsと共に250店舗でのパイロットテストを行い、1カ月間で投資(スーパーが支払ったスクリーン購入費)に見合った収益をあげることに成功したそうです。

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店舗以外でのタッチポイント

店舗での食料品のショッピングが物理的に不可、あるいは関心がないショッパーに対しては、モバイル中心のデリバリーシステムから、ショッピングが可能なヴァーチャルリアリティ(VR)といったものまで、先進的な取り組みが行われています。

●スマホで追跡可能な「車へのデリバリー」

2017年2月、英国の小売店であるJohn Lewisが、高級車Jaguar 及び、同じく英国の新興カーロック企業ToBootと協働していることが明らかになりました。これは食料品をショッパーの車のトランクへ宅配業者に入れてもらうというというものです。スマホを使って、ショッパーは宅配業者の居場所を追跡し、配達が完了したら通知がもらえる。この動きは、2013年にVolvo、2015年にAmazonがそれぞれ行った、車内への食料品デリバリーのトライアルに続くもののようです。

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●店頭から冷蔵庫へのデリバリー

スウェーデンのスーパーマーケットICA はショッパーが在宅していないときに、食料品をショッパーの冷蔵庫まで運んでくれるというデリバリーサービスを提供しています。これは、スウェーデンのデジタルドアロック企業Glue –Bluetooth接続のスマートロック-との連携によるものですが、付随するGlueアプリを使って、ショッパーは食品宅配業者に自宅へ入ることへの許可を出すことが可能になり、宅配業者は単純に自分のスマホをスワイプするだけでアクセスが可能になります。ショッパーは携帯電話で、配達の段階ごとに通知を受け取ることができます。

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●VR(ヴァーチャルリアリティ)が、遠隔販売の機会を提供

2016年、 eBayはオーストラリアの百貨店 Myers と提携し、ユーザーの視線で動くVR ショッピング体験 をローンチしました。ユーザーは自宅でショッピングができるように設計されたアプリをダウンロードし、ヘッドセットを装着して1万2500点の商品を閲覧するというものです。ショッパーは商品やカテゴリーをじっと眺めることで、更にアイテムを探したりそのまま進んだり、バーチャルのカゴに商品を追加し、eBayに接続して決済します。このコンセプトはスーパーマーケットへの転用も十分可能です。

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25%近くのショッパーが「購買データの収集がショッパー経験をよくしてくれる」と期待している(CSC,2016)という結果があります。レシピ提案アプリの様に有用な情報を与えてくれるという期待です。一方で、よほど価値を感じなければ専用アプリをダウンロードすることには抵抗があるようです。また、店頭でのアプローチはFacebookやWeChatといった大手のプラットフォームを使ったものが好まれるようです。様々な目的やアプローチで進むショッパー体験のモバイル化、日本ではどのように進むのでしょうか。

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