State of Media ~若い世代のエンゲージメント獲得に成功しているメディアとは?(後編)~

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。 ※本記事は、Stylusの日本代表を務める廣田周作氏によるインテージでの講演にstylus.comからの情報を加筆して作成しました。

State of Media(前編)では、「自分らしさ」を実現、表現する手段として、若い世代に信頼・支持されるメディアや、その役割についてご紹介しました。State of Media(後編)で注目するのは、Gen Zをはじめとした若い世代のメディアとの関係に大きな影響を与えていると言われる「ゲーム」。

ゲームに慣れた若い世代にとって当たり前の双方向型、参加型といった「インタラクティブ」なスタイルが、メディアの世界にも取り入れられつつあります。今後はプラットフォームの選択においても「インタラクティブ」であることが重要な価値となるだろうと言われています。先行してさまざまな取り組みが見られるゲームの世界での事例から、メディアへの示唆を探ってみます。

「参加型」視聴で成功したFortnite、HQ Triviaに見る「経験のシェア」

若い世代からは、決まった時間にテレビの前に座るという概念が理解できないという声も聞かれます。一方で、好きな時間に好きなコンテンツを見ることが当たり前になった今だからこそ、「決まった時間に皆で見る」ことが「経験のシェア」という新しい意味を持ち、人気を博する事例も見られるようになりました。

1つは、アメリカで10代に大人気のバトルロワイヤル・ゲームFortniteが2019年2月1日に開催したライブストリーミング・イベントです。何百万ものプレイヤーは、ゲームを楽しむためではなく、アメリカのミュージシャンMarshmelloの10分間のライブを見るために(バーチャルの場に)集まりました。ライブ中には、自身のアバターを花火のように打ち上げて、ショーの演出に参加するというインタラクティブな仕掛けも取り入れられていました。このライブの成功は、質の高い経験を提供してくれさえすれば、ゲームかゲームでないかにはこだわらない、という若いゲーマーたちの価値観の表れとも言えるでしょう。

もう1つは、2017年にアメリカで大流行したHQ Triviaの事例です。毎日決まった時間にアプリ上で雑学ネタのクイズ番組をライブストリーミングし、視聴者が参加して賞金を得るという「アポイントメント・ビューイング」が人気を集め、当時大きな話題となりました。ブランドにスポンサー枠も提供し、2018年3月にNikeがスポンサーとなったときには、20分間の番組でピーク時には170万人の視聴者を集めたこともありました。HQ Triviaの共同創設者、故Colin Kroll氏は、HQ Triviaを、オーディエンスが主要な登場人物となる次世代のライブストリーミングの一例であると見なしていました。Kroll氏はNew York Timesに、「オーディエンスがコンテンツを活性化するインタラクティブな動画、というアイディアがまずあったんだ。そういった経験を提供してくれるものは、今まで市場になかった」と語りました。

こういった動きには、既存の巨大プラットフォームも注目しています。Facebookは2018年7月に、ユーザーがリアルタイムで一緒に動画を見て、互いにコメントし合いながら交流を深めることができる「Watchparty」をリリースしました。これまでは、ユーザーがシェアできるのはオンライン上の動画だけでしたが、2019年3月に開催された音楽・映画・インタラクティブ(テクノロジー)の祭典SXSWで、Facebookは、ライブTVもシェアできるようにすると発表しました。

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このように、インタラクティブな仕掛けを取り入れることでオーディエンスのエンゲージメントを高めるというやり方は、メディアの世界でも注目すべきトレンドです。アポイントメント・ビューイングのイベントを成功させるには、「一緒に見ること」に「経験のシェア」という意味を持たせ、コンテンツの中で起こるアクションに、オーディエンスが影響を及ぼしたり参加したりできるような仕掛けを作ることがキーとなると言えそうです。

オーディエンスと発信者・コンテンツがダイレクトにつながるTwitch

オーディエンスに、発信者・コンテンツと直接「つながっている感」をもたらすことができる仕掛けにも注目です。ファン、プレイヤー、ブランドが(1対1ではなく)皆で対話できるインタラクティブ機能のパイオニア、ゲームのライブストリーミングアプリTwitchの急成長のカギも、この「つながっている感」にあると言えそうです。2017年には1900万だったオーディエンスとストリーマーのインタラクションは、2018年には300億に達しました(Fast Company, 2019)。

アマゾンが所有するTwitchは、子ども向けチャンネルSuper Funiverseにもこの手法を取り入れています。Super Funiverseのパペットショー「Adventures of EM」では、オーディエンスの子どもたちは、チャットを通じて番組に登場するパペットと直接コミュニケーションを取ることができます。そして、重要なシーンではいくつか分岐点が示され、物語の展開は、オーディエンスの投票によって決められるのです。

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Twitchは、オーディエンスがプラットフォーム上でチャットを通して交流を深めるソーシャルTVの実験も進めています。BBCと組んでDoctor Whoの過去500のエピソードを放送したのは、その一環でした。Twitchの次のステップは、より革新的なインタラクティブ機能を持ったオリジナルコンテンツを創ることになるでしょう。それには、オーディエンスが物語の行方に口を挟める「あなた自身が選ぶアドベンチャー」スタイルのコンテンツも含みます。Twitchの共同創立者Kevin Lin氏は、アメリカのテクノロジー関連のブログRecodeのインタビューでこう語っています。「普通のテレビでは、俳優とチャットでやり取りをすることも、視聴者のコメントによってショーの展開を変えたりすることもできない。でも、Twitchにはそういったことが期待されているんだ」

メディアの世界でも、インタラクティブな仕掛けを取り入れた先進例が登場

インタラクティブにストーリーを展開するという点では、ゲームはテレビよりも20年ほど進んでいると言われますが、メディアの世界でも、こういった動きが見られるようになってきました。その1つが、パルム・ドールやアカデミー監督賞の受賞歴のあるアメリカの映画監督Steven Soderbergh氏が監督した殺人ミステリー「Mosaic」です。動画アプリ上で配信されたこの作品では、個々のオーディエンスが、次のチャプターに進むのに、どのキャラクターの視点でストーリーを見るかを選択することができます。また、アプリ上で警察の報告書や報道のクリッピング、登場人物の間で交わされたボイスメールやeメールといった「資料」を見ることも可能です。オーディエンスが物語の行方そのものを左右できるわけではありませんが、1つの物語を複数の視点で見ることができるようにしたという点で、意欲的な取り組みであると言えるでしょう。

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また、Netflixも、インタラクティブ・ビデオの実験をしています。2017年6月にリリースした子ども向けの番組「Puss in Book: Trapped in an Epic Tale(長ぐつを履いた猫:おとぎ話から脱出せよ!)「Buddy Thunderstruck: The Maybe Pile(バディ・サンダーストラック:やるかも候補!)」では物語にいくつかの分岐点があり、見ている人がどちらの道を選ぶのかを選択することができます。NetflixのProduct InnovationのディレクターCarla Engelbrecht Fisher氏は、アメリカのテクノロジー関連のブログThe Vergeに「子どもたちは、スクリーンがあればまず触れてみる。あらゆるものがインタラクティブであるはずだと思っているのよ」と語っています。

ゲームから学んで「没入感」を得られるメディア体験を

ゲームはそもそも「対話型」「参加型」であることに加えて、プレイヤーが「没入感」を得られるように創られています。ゲームに慣れた若い世代に寄り添うというだけでなく、より没入感を得られるメディア体験を提供する上で、ゲームに学ぶことは今後も多くありそうです。

例えば、アメリカのTVネットワークNBCでは、アメリカンフットボールの撮影にドローンカメラSkycamを使うことで、ゲームでおなじみのアングルを実現しました。この撮影方法はアメリカンフットボールの人気ゲームMaddenシリーズの画面と似ていることから、「Madden cam」と呼ばれています。NBCのアメリカンフットボール番組のエグゼクティブ・プロデューサーFred Gaudelli氏は、「若いNFLファンは、ビデオゲームを通してこのアングルから試合を見るのに慣れて育っている。この方法なら、その体験と同じような視点、感覚を提供することができる」と語っています。

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「メディア」と言えばテレビや新聞、雑誌などのマスメディアをさしていた時代から、インターネット時代の到来によるデジタルメディアの登場、さらには生活者自身が発信できるソーシャルメディアの台頭、というように「メディア」の定義、メディアと生活者の関係は大きく変わりつつあります。今回ご紹介した「ゲーム」など外の世界にも学びつつ、生活者の変化に応え、新しい在り方を探り続ける「メディア」の今後に、引き続き注目です。

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