【未知との遭遇】Vol.10 ~バスクチーズケーキ~

この【未知との遭遇】は、インテージの男性若手リサーチャー伊東祐貴が女性向け市場について知るべく、世の女性方の趣向やトレンドを実体験して学びを得る様をコラムでお届けするシリーズです。

第10回は~バスクチーズケーキ~です。2019年4月のレポートです。

第9回の「クイックブロー・スプレー(ミスト)」の記事へはコチラから


【目次】

バスクチーズケーキとは?

スペイン・バスク地方にルーツを持つチーズケーキです。
レアでもベイクドでもない新ジャンルのチーズケーキであり、表層を黒く焦がすことで生じる香ばしさが特徴です。

これまでにない味わいはもちろんのこと、特異でおしゃれなビジュアルがSNS映えすることや、お酒にも合う大人の味わいが受け入れられ、女性を中心にブームを巻き起こしています。

その火付け役は、2018年7月に白金高輪にオープンした「GAZTA」です。
バスク地方有数の美食の街「サンセバスチャン」の人気バル、「ラ・ヴィーニャ(LA VINA)」の秘伝のレシピを忠実に再現した同店のチーズケーキ

開店から瞬く間に口コミやメディアで拡散し、今では終始行列が絶えません。
カラメル風味の香ばしい表層と、とろりとした中心部の抜群のコンビネーションに、多くの人のチーズケーキ観を変えてしまいました。

その他、都内にいくつかの専門店がありますが、近頃ではコンビニでも手軽に味わうことができます。
大手コンビニチェーンのローソンが提供する「バスチー」は、発売後三日間で100万個の売り上げを記録
プレミアムロールケーキを上回る勢いで売れに売れて、各地で品切れが相次ぎました。

思い切って専門店へ
はたまた近所のコンビニで

平成最後のデザートにはバスクチーズケーキと共に、とろけるようなひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。


★= あとがき ==

いつものごとく、土曜の日中は王様のブランチで情報を収集
お気に入りのコーナーは、ゲストが設定された金額の中でショッピングを楽しむ「買い物の達人」です。

今週のゲストは山Pとのこと
※山P:日本の歌手・俳優である山下智久氏の愛称。

一流の差し入れを求めて、一行は白金高輪のチーズケーキ専門店「GAZTA」へやってきました。
アンジャッシュ渡部氏もお墨付きの逸品を、一心に食すキャストたち

ブランチで取り上げられた以上、世の女性方の消費行動に影響を与えることは必至です。
早急にバスクチーズケーキを体感しておかなくてはなりません。

体験レポートと今回の学び


~数日後~

一週間を乗り切った自分へのご褒美も兼ねて、仕事帰りに近所のローソンへ

お目当ては話題のコンビニスイーツ
「バスチー」です。

発売直後から人気に火がつき、欠品が相次いだ同商品
以前から気になっていたもののなかなか店頭でお目にかかれず、幾度となく断念してきました。

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ようやく入手できましたので、夕食後のデザートとして楽しみます。

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雰囲気を出すために、バスク地方の画像を配備

慎重にフォークを入刀します。

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ベイクドチーズケーキとチーズスフレのちょうど中間のような硬さです。

期待を込めて大きめに一口


軽やかな口当たりの中にも、たしかな濃厚さが感じられます。
極めつけは、ほんのりと焦げたカラメルの風味
バスク地方のそよ風に乗って、鼻の奥へと突き抜けていきます。

たしかに今まで食べてきものとは異なる、新ジャンルのチーズケーキです。

「スフレは軽すぎるし、ベイクドチーズケーキは重すぎる」

「私にちょうどいいチーズケーキは無いものか」

そんな中庸好きな日本人にうってつけの逸品です。
なんとなく人気の理由がわかってきた気がしますが、一サンプルで市場を語るのは時期尚早というもの


~翌日~

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白金高輪へやってきました。
噂に聞いていた通りの閑静な街です。
メトロの駅から地上へ飛び出し、子供たちで賑わう公園の脇を抜けていきます。

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道に迷う暇もなく待機列を発見しました。

道路を挟んで58人待ち

シロガネーゼを中心に女性が多めで、男女比は7:3といったところです。
このレベルの行列は久しぶりですが、回転の速さを期待して最後尾に並びます。


~30分後~

思ったよりも前に進みません。
なんとも、購入した商品を出口まで持ってきてくれるという極めて丁寧なサービスを提供しているようです。

これが回転率を悪くしているのかもしれません。

待っている立場としては、とにかく早く手に入れたいところですが、同時に期待も高まります。
あれだけ丁寧に扱われるチーズケーキは、きっと特別な存在なのでしょう。


~並び始めて1時間後~

徐々に陽が落ちてきました。
一つ前に並ぶ、パーカーに短パンとサンダルのお兄さんが寒さで震え始めています。

開始から1時間5分が経過したところで、いよいよ順番が回ってきました。
店内に漂う甘い香りと、所狭しと並んだケーキの絶景が、理性を切り崩しに掛かります。
会計を済ませ、足早に帰宅。

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PCを起動する時間すら惜しいので、今回はバスク地方の画像は割愛です。

焦げたカラメルのかぐわしき誘惑が、これから待ち受ける甘美なひと時に期待を抱かせます。

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紙のドレスを優しく剥ぎ、ゆっくりとフォークを沈めていきます。

今回も大きめのカットで一口

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自宅から往復2時間

加えて行列で1時間並んで手に入れたのは、チーズケーキではありませんでした。

身もほどけるような幸せです。
目を閉じればそこには、訪れたこともないはずのバスク地方の街並みが自動再生されます。

しっかりと噛みしめて味わいたいけれど、歯を動かしたら無くなってしまう
そんなバスクチーズケーキのジレンマに葛藤しながらも、フォークを動かす手が止まりません。

はじめは高すぎると感じた価格設定も、今では適正なものに思えます。
むしろ700円そこらでこれほどのひとときを過ごす方法が他にあるというのなら、こっそりと教えていただきたいくらいです。

半分弱食べ進めたところで、オプションのシロップをたらします。

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ただでさえ甘いチーズケーキに、
甘い蜜をかける

まるで雨の日に庭の花へ水をやるようなことと思われるかもしれません。
チーズケーキの味を自らの味で染め上げるのではなく、眠れる可能性を引き立たせてくれます。

もう一切れ購入していますが、これ以上幸福度は上がらない上限値に達しているため明日に回します。


~翌朝~

今度はオプションの岩塩を振りかけて食します。

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みたらし団子やスイカ、塩チョコレートに塩キャラメル

我々人類は甘いものと塩味が合うことを遺伝子レベルで知っています。
特に心配はしていませんでしたが、軽く想像を超えてきました。
甘さと塩っ気が引き立て合うと言えばそれまでですが、その次元では表現できない新しい味との出会いなのです。

塩無しではどこか物足りなさを感じ、最後の最後まで一口ごとに振りかけていき完食
極めて贅沢な週末を過ごしたことで、令和に向けた充電が完了しました。


◆今回の学び
・地方の自治体や住民の努力で、地域そのものがブランド化する場合がある。
 企業はそのブランド力を活用することで、自社でブランドを育成するコストを節約できる。
 例、バスクチーズケーキ
  美食とアートの街としてのバスク地方自体がブランド化に成功している。
  表面を焦がす製法よりも、地方ブランドをネーミングに関することで、
  人々の想像力を掻き立てている。

 例、瀬戸内レモン
  レモン生産量日本一の広島県が、土産品としてPRをしたことでブームが到来。
  一大ブランドとして成立したため、
  製菓・飲料メーカーを中心に、各社がこぞって瀬戸内レモンフレーバーの商品を開発。

・技術力の向上や、流通網の整備が進んだ現代において、
 モノ自体の明確な差別化は難易度を増している。
 容易にはマネができない、作り手の哲学や背景に潜むストーリーこそが、
 競争優位につながる要素として重要な役割を占めてきている。

 例、GAZTA
 「世界中のパティシエから一目を置かれている、名店「ラ・ヴィーニャ(LA VINA)」において、
  門外不出となっていた秘伝のメニュー。
  それを世界で唯一継承された日本人が作るチーズケーキ」としてプロモーション。
  ※実際に世界で唯一なのかを確かめることはできない。

 例、養命酒
  ある大雪の晩、雪の中に行き倒れている旅の老人を救出。
  3年間面倒を見た後、家を去る時に老人から教わった製法で作ったのが養命酒である。
  ※真偽のほどは定かではありません。

・ブランドは有形無形のあらゆる要素による集合体である。
 商品自体やロゴ、パッケージと言った形あるものから、
 ブランドの有するイメージやブランドを通じた経験など形のないものまで、
 生活者の中に蓄積されていくことで、ブランドは確立する。

 例、GAZTA
  クリーム色で統一された箱や紙袋などのパッケージ、
  行列に並ぶ苦労と店内に足を踏み入れた時の感動、
  店頭の外まで商品を運んでくれる、高級ブティックのような体験、
  こだわり抜いて作り出された忘れられない味、
  それらの経験が束となり、GAZTAをGAZTA足らしめている。

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Vol.11 衣類用冷感ミストへ

著者プロフィール

伊東祐貴
伊東 祐貴(いとう ゆうき)
20代の男性リサーチャー。入社当時、全国女性消費者パネル(SLI)の運用に関わった経験から、女性向け市場を知るための体験レポートを社内に継続的に発信。歳の離れたきょうだいの視点も取り入れ、「いまのワカモノ」視点で市場を追っています。
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