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ランキング調査について考える

はじめに

企業のマーケティング活動において、“調査”はさまざまなシーンで活用されています。 ブランディングやプロモーションを目的とした活動では、プレスリリースや広告に自社サービスや商品のランキング結果を掲載することで“広く生活者から認められている”ということを訴求する企業も多く見られます。

ランキング結果がプレスリリースや広告に何故使われるのか?を考えてみると、自社の製品・サービスの魅力を最も簡潔に、わかりやすく、そしてターゲット顧客に「納得感」を持ってもらうように伝えるための1つの手法として、一番簡単で容易だからではないでしょうか。

では、実際にランキング、特にNo.1という表記が生活者に与えるインパクトの実態はどうなのでしょうか。

公正取引委員会が平成20年6月に発表した、「No.1表示に関する実態調査について」の付属資料である報告書本体によると、商品等を購入しようとする際に売上実績に関するNo.1表示を参考にするか?という質問に対し、「よく参考にする」が12.5%、「時々参考にする」が67.7%で、約8割の方が購入時に参考にしていることが分かります。また、参考にする理由として、「その商品・サービスの効果・性能が優れていることを示していると思うから」とする回答が75%近くに上ります。このことから、ランキング形式のデータは同種の商品やサービスを比較することで、信頼性や優位性を数値で証明するものとして、生活者にとって有益な情報となり、結果として購買に深く関わっていると言えると思います。

ランキング調査の危険性

しかし、このランキング形式のデータを利用する上では注意が必要です。
たとえば「No.1」というフレーズ。これは、客観的な事実に基づく根拠を示した上での表記でなければ、不当景品類および不当表示防止法の規定(景品表示法)により、不当表示の一類型とされ違反に問われるケースがあります。ここでは固有名詞は避けますが、実際には同種の商品やサービスを提供している競合企業とは異なる方法でランキングを算出し、適正に比較をしていないにも関わらず、No.1を謳っているケースも見られます。

ここで不当表示の一類型とされ、違反を取られた場合の処分はどのようなものなのかを記載しておきます。

・景品表示法違反として措置命令を受け、消費者庁や都道府県のWebサイトで公開される
・優良誤認表示があった商品・サービスの総売上(上限3年分)の3%相当に対し、課徴金納付が命じられる。

優良誤認の処分は報道でも取り上げられることが多く、結果としてブランドを棄損する恐れがあります。また、最近ですと、アフェリエイト広告での優良誤認について、広告を制作・掲出したアフェリエイターのみならず、その商品を提供する広告主側が責任主体として措置命令が行われたケースも出てきています。

“No.1を謳うことを目的とした調査”に対しては、2022年に入って日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)から声明が出たことで、さまざまなメディアで取り上げられていました。この抗議声明は話題になったこともあり、覚えている方も多いと思います。今後、No.1などの優位性を示すような文言を用いたプレスリリースや広告に対する世間の目は、年々厳しくなっていくといっても過言ではないでしょう。

ランキング調査を行う時の留意点

しかしながらNo.1表記は、他商品、サービスと差別化に資するための明確な数値指標であり、生活者にとっては有益な情報であることは間違いありません。他と比較した露出を行いたい企業は今後も増えてくると思います。では、どのような点に気をつけてランキングを測れば良いのでしょうか。 No.1表記には大きく「意識調査結果を用いて消費者の支持の高さをアピールするもの」と、「販売・購買実態に即したパネルデータなどを用いてシェアの大きさをアピールするもの」がありますが、ここでは前者のような意識調査を企画する際の留意点について考えていきたいと思います。

先ほどの公正取引委員会のHPによると、「商品等の内容の優良性や取引条件の有利性を表すNo.1表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、景品表示法上問題となる」と定めており、以下4つについて「望ましい表示」が説明されています。

(1) 商品等の範囲に関する表示
(2) 地理的範囲に関する表示
(3) 調査期間・時点に関する表示
(4) No.1表示の根拠となる調査の出典に関する表示

(1)~(3)は比較的わかりやすいかと思いますが、問題は(4)です。「根拠となる調査の出典」と記載されていますが、大事なのは出典元だけでなく、本当にNo.1を実証する調査になっているか否か?という点です。なので、本コラムでは「何をもって根拠となる調査となるのか?」の視点で、特に大事な留意点を解説したいと思います。

No.1の根拠となる調査をする点で特に留意すべき点は以下の5つです。

①No.1の範囲

大前提としては、主張したいNo.1の範囲は社会通念上妥当か?ということです。“〇〇でNo.1”の〇〇の部分が、受け手にとって「そんな範囲では考えないし、判断しないよ!」ではいけません。そのため、当該商品が属するカテゴリーの規模が一定量あるか?を考えねばなりません。また、よくご質問を受けるのですが、“過去購入した量の記憶 ”は売上にはなりません。「先月、あなたは〇〇を何個購入しましたか?」のような質問の結果を売上換算することはできないということです。売上はあくまで売り上げた事実から算出する必要があり、意識調査で測ることはできません。

②調査対象者

No.1を実証するためには、ランキングを正しく測定できる調査設計とする必要があります。そのためには、当該商品・サービスを適切に評価できる人を調査対象者にしなければなりません。少なくてもそのカテゴリーの商品・サービスについて購入や使用の経験がある人に調査すべきでしょう。また、競合他社のユーザーも網羅的に対象とする必要があります。意図的に強力な競合のユーザーを除外するような調査設計は避けるべきです。

③構成比とサンプルサイズ

ランキングを取得するということは、全体傾向・実態を把握することとほぼ同義です。たとえば日本に住む日本人の一般的な意見でランキングを測りたいのであれば、この条件を満たす「日本に住む全ての日本人全員」が母集団となります。ただし、全員から回答を得るのは現実的ではありませんよね。だからこそサンプリング(調査)するのですが、この母集団構成にあわせて割付設定をしなければなりません。なお、サンプリング(調査)には必ず誤差が発生します。その誤差をどこまで許容できるか?によりサンプルサイズを決定します。ランキング調査の場合、一般的には1,000、理想は2,000以上で設定します。

④設問(文)作成

ランキング調査における設問作成の注意点は2つです。1つ目は選択肢です。他社との優位性を測ることになるので、選択肢に一般的に選択されそうなものが網羅されているか?の視点で設定することが重要です。恣意的に他社を除外することや、選択肢の一番上に自社を固定することなどを行ってはいけません。次に質問の仕方です。「〇〇が今話題になっていますが…」などと回答を誘導することや先入観を与えるような質問をしてはいけません 。

⑤集計・グラフ

これは調査自体の注意点ではないですが、発信したいことに即して恣意的に作られた(ように見える)グラフが、よく話題に上がっているのをご存じの方も多いのではないでしょうか。正しく集計し、正しい情報が正しく伝わるようグラフ化することが重要です。

最後に

ランキング訴求は、生活者に強いインパクトを与える手法です。だからこそ、No.1を謳う場合は、公正な方法で調査が実施されなければなりません。LTV的な視点で考えても、No.1であることがインパクトを与えるのではなく、良い商品・サービス自体が強く印象に残る=インパクトを与え、結果としてNo.1となり、認知が広がっていくのだと思います。調査を受託する側の視点をお伝えしておくと、「No.1の根拠を示すこと(出典元となること)」はものすごく怖いです。この手のご相談を受けた際に、安易に「できます」とは言えません。企業と生活者が良い関係を築くための架け橋になることが何よりも大事、と言うことを忘れずに、ご相談をいただいた方々が正しいアプローチで商品・サービスを開発されたり、プロモーションしていけるようなお手伝いを今後もしていきたいと思います。

著者プロフィール

株式会社インテージ 事業推進部 来條 貴史 プロフィール画像
株式会社インテージ 事業推進部 来條 貴史
ハウスメーカーでの営業経験後、人材関連企業・Webメディアにてマーケティング・新規事業開発業務に従事。2009年よりマーケティングリサーチ会社複数社にてBtoBマーケティング組織の立ち上げ、戦略構築、企画運営を統括。 2019年インテージ入社。アルゴリズム事業準備室を経て、2020年より現職。

ハウスメーカーでの営業経験後、人材関連企業・Webメディアにてマーケティング・新規事業開発業務に従事。2009年よりマーケティングリサーチ会社複数社にてBtoBマーケティング組織の立ち上げ、戦略構築、企画運営を統括。 2019年インテージ入社。アルゴリズム事業準備室を経て、2020年より現職。

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