さらに広がる新型肺炎の影響 需要急増の予防関連消費と冷え込むインバウンド消費

2019年12月に中国の武漢で発生した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が引き起こす新型肺炎。「新型肺炎の影響でマスクの売上は?予防関連商品の消費の動き」では、2月頭までの情報を、マスクをはじめとした予防関連商品の売上を中心にお届けしました。

2月21日現在、日本における新型コロナウイルス感染のフェーズは進み、「国内発生の早期」とされています。生活者の危機意識がさらに高まっている今、予防関連商品の売上はどのようになっているのでしょうか。
また、早期に旅行会社による手配旅行がなくなって入国が減っている中国に加え、他国からの日本への渡航も自粛されるようになってきました。今後も冷え込みが予想されるインバウンド消費ですが、現段階でどのような状況になっているのでしょうか。インテージの小売店パネルデータ、SRI®から追いました。

【目次】

2020年2月時点の主な動き

図表1は日本に関する主な動きをまとめたものです。

図表1

日本に関する主な動き

1月28日に日本人初の感染症例が出た後2月12日までは、中国に渡航歴のある人、もしくは渡航歴のある人や感染者との接点がある人に限られていました。
2月13日に感染経路不明の症例が報告され、さらに国内初の死亡例が報告されて以降は、連日感染報告があり、2月20日時点で国内で確認されている感染者は93名、12都道府県にわたっています。(厚生労働省発表分)

感染経路不明の症例発生などを受け、2月16日に政府が日本の現状を「国内発生の早期」とする認識を発表し、厚生労働省は不要不急の外出を控えるように呼びかけています。
以降、人が集まるイベントや会議の中止、テレワークの推奨、時差通勤など、各社が様々な対応を打ち出しており、今後も国内で様々な活動の自粛が進みそうです。

続くマスク不足、現在の販売状況は?

いつどこから感染するかわからない、という状況において、やはり重要なのは感染対策です。感染症対策の基本として「⼿洗い」や「マスクの着⽤を含む咳エチケット」といった対策が推奨されていますが、前回記事で見られた通り、マスクは1月28日に日本人の感染確認がされてから急激に売上が増加し、30日をピークに減少に転じました。2月頭の週末にはすでに新聞各社でマスク不足報道がなされており、その後品薄が続いている状況は多くの人が実感しているのではないでしょうか。

図表2は2月16日までのマスクの売上推移です。

図表2

マスクの日別売上推移

前述の通り、1月30日をピークに売上は減少しています。日々の売上は市場が動き出す前の売上水準よりは多いものの、徐々に減ってきています。

この影響の大きさを週ごとの売上で確認すると、ピーク時は平年の8.9倍に跳ね上がったのに対し、その後は3.1倍、1.7倍と推移しています。

図表3

マスクの売上推移

この売上の減少から、現在は供給が減っている状況にあると考えられます。2009年の新型インフルエンザの発生時には、国内初の死者の発生をきっかけにマスクの売上が大きく跳ね上がりました。国内初の死者や感染経路不明の感染拡大など、不安要素が増えてくる中、需要が落ち着いてきたとは考えにくいものがあります。

現在、店頭では「本日入荷分のマスク売り切れ・次回の入荷未定」「本日、マスクは入荷しておりません」といった貼り紙が多く見られます。実際、全国の何%の店舗で売られていたか、という配荷状態が見える“販売店率”のデータを日別に見てみると、どの業態においても低下傾向がみられました。特に2月10日週の後半に顕著にみられており、このデータからも供給減が考えられます。

この状況に対し、2月12日には経済産業省が官民連携で週1億枚以上のマスクを供給するという発表をし、菅官房長官もマスク不足の解消について言及しています。実際、マスクの⽣産に関わる事業者がマスク⽣産設備を導入する際の費用補助をするという事業も始まっています。最近、中国で自動車やおむつなどの異業種も動員してのマスク増産体制が発表されましたが、経済産業省の事業でもアパレル企業の下請けなど、これまで生産実績のない工場にも依頼がかかり、増産体制を整えているとのこと。
一方で、2月20日には日本製紙連合会の会長が「当面は品薄状態が続く」との見解を示しました。マスクの需給が平常に戻るのは中国でウイルスが収まるころになるだろう、とも語っています。まだ事態の収拾が見えない中、できるだけ多くの人にいきわたるように買いだめをしない、代替品を検討する、といった生活者の行動での対処も求められそうです。

アルコールの手指消毒剤の品薄で、代わりに売れたものは?

最近ではマスクに続き、アルコールで除菌する手指消毒剤の品薄がメディア等で話題になっています。続いて、除菌関係の商品カテゴリのデータを見てみましょう。図表4は除菌関連商品の日別の売上推移です。

図表4

除菌関連商品の日別売上推移

手指消毒剤はマスク同様、日本人初の感染確認のタイミングで売上が急増し、30日をピークに販売量が減少しています。直近も元の売上水準の5~6倍の売上規模で推移していますが、こちらもマスク同様、特に直近で販売店率の低下が見られ、供給が追い付いていない状況となっています。

除菌・消毒用のぬれティッシュは、手指消毒剤の販売ピークの翌日にピークを迎えています。手指消毒剤の代替品として、買われていると想定されます。除菌・消毒用のぬれティッシュの販売店率は、マスクや手指消毒剤とは逆に、直近の一週間には上昇しており、まだ比較的入手しやすい状況にあるようです。

ドラッグストアにおけるインバウンド消費 春節以降の動きは?

日本経済に様々な形で影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症。インバウンド消費にはどのような影響があったのでしょうか。インテージのドラッグ免税店データで確認します。

春節を前にした1月23日に複数の航空会社で武漢への運航が停止され、27日に旅行会社による海外団体旅行の取扱いが停止された結果、春節(1月24日~2月2日)の中国人訪日客は昨年の春節より約2割減りました(観光庁発表)。
また、ANAが2月10日以降の中国便を半減させるなど、その後も中国便の運休や減便が増えており、中国人訪日客はさらに減っていると考えられます。
この間におけるドラッグストアにおけるインバウンド消費の日別の免税販売額を2019年と比較してみました(図表5)。
※ドラッグストアにおけるインバウンド消費で特に規模が大きい化粧品と医薬品に絞ったデータです

図表5

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データからは、春節の間に徐々に免税販売額が減り、2月に入ってさらに減り続けていることがわかります。
また、事態が深刻化して武漢への運航停止が実施された1月23日以降2月16日時点までの平均日販は、それまでの平均日版に対して化粧品で約47%、医薬品で約65%と大幅に減少していました。訪日客減少の影響の大きさがうかがえます。この日販減少の傾向は大型店で特に強く見られました。

日本国内での感染拡大を受け、2月11日には韓国政府が、2月19日にはタイ政府が日本への渡航自粛を呼びかけたほか、台湾や米国でも日本への渡航の警戒レベルを新たに「1」(注意)に指定するなど、、今後は他国からの訪日客も減少が見込まれます。できるだけ早期の解消を目指すうえでも、生活者には日々の感染対策の徹底が求められます。

新型コロナウイルス感染症は、今後も生活者の心理や行動に大きな影響を与えることが想定されます。知るGalleryでは、今起きている変化を引き続き追いかけます。


今回の分析は、SRIデータ、ドラッグ免税店データをもとに行いました。
【SRI®(全国小売店パネル調査)】
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約4,000店舗より収集している小売店販売データです。このデータからは、「いつ」「どこで」「何が」「いくらで販売された」のかが分かります。店頭での販売実態を捉え、ブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。

【ドラッグ免税店データ】
ドラッグストア全チェーンの免税販売店を母集団として設計された小売店パネルデータです。協力チェーン18店舗における免税販売データを、様々な統計データとインテージの小売店パネル運用ノウハウを用いて全国の販売データとして拡大推計しています。今回の日別データは速報値としてノンウェイト値を集計しています。


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