注目のTechトレンド 10選

この記事では、「世界で見つけた!マーケティング新潮流」シリーズとして、グローバルでのトレンドやイノベーションを紹介するリサーチ&アドバイザリー・ファーム Stylus (stylus.com)の記事の中から、「今」より1歩、2歩先の生活者やマーケティングを読み解く記事を厳選してお届けします。

今回のテーマは、生活や産業に大きな変革をもたらすと予想される10のテクノロジートレンド。特にスマートデバイスやウェアラブル、音声認識技術などは、フィットネスからペットの健康管理、障がいのある方へのサポートなどへと用途を広げており、私たちの生活に欠かせない存在となりつつあります。また、人間のドライバーを必要とせずAIによって制御される完全自動運転車による新しいモビリティの提案は、都市機能の改善に貢献することが期待されています。日進月歩で進化するテクノロジーは、私たちの生活や社会、産業にどのような変革をもたらすのでしょうか。

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1.フレキシブルな完全自動運転車

人間のドライバーを必要としない完全な自動運転車は、現段階では「夢のレベル」と見られているかもしれませんが(※関連記事「【わかりやすい】自動運転とは。6つの自動運転レベルと実用化の未来」)、よりスマートな人工知能と強力な5Gネットワークにより、実現が近づいていると言えそうです。完全自動運転車の登場は、小売やウェルネス、ホスピタリティ、フード・デリバリーなど幅広いビジネスに確実に影響を与えると予想されています。自動車メーカーは、ハンドル不要の車が輸送以外にどんな用途に対応することができるのか、さまざまな可能性を探っています。

例えば、トヨタ自動車が2018年1月のCES(アメリカで毎年1月に開催される電子機器の見本市)を前に発表したEV「e-Palette」。箱形の車両の内部は変幻自在で、カーシェアリングやフード・デリバリーに加えて、移動店舗や移動ホテル、ミニサイズのスパなどこれまでは想像もできなかったようなさまざまな用途に用いることが可能です。e-Palette は2020年の東京オリンピック・パラリンピックで選手の移動などに活用される見込みです。

また、スイスの自動車メーカーRinspeedのコンセプトカーSnapは、取り外し可能な「ポッド」と呼ばれる室内部分を、スケートボードのような自律走行できるシャシに乗せています。カスタマイズ可能なポッド部分は個人で所有したりリースやシェアで利用したりできる一方で、シャシ部分は公共のものとして運用されることを想定しています。

アメリカのフィラントロピー財団であるRuderman Family Foundation(2017)は、完全自動運転車は生産性の向上をもたらしてくれるだけではなく、「燃料コストの削減、事故防止などの効果により、1.3億ドルの社会的コスト削減につながる」と予測しています。

2.サステナブルな生活を実現するエコシステム

エコ意識の高い生活者は、サステナブルな社会・生活を実現するエコシステムを支えてくれる、革新的な商品を生み出すブランドに強い関心を抱いています。これからは、スマートホーム・デバイスがエネルギー利用をモニターしたり、リアルタイムで水漏れを検出したりすることで、資源の利用を最適化してくれることが期待されています。

そんな中、韓国の自動車メーカーHyundaiは、水素社会の実現に向けて、水素燃料電池車が中心的な役割を果たす「Hydrogen Life Vision」を、2018年のCESで発表しました。燃料電池車NEXOを住居と接続することで余剰電力を家電製品に転用したり、売却して副収入を得るといった使い方を構想しています。また、燃料電池から排出される蒸留水を家庭で利用したり、庭の水やりに使ったりすることもできるでしょう。

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これまで、自動車の効率性と言えば、エンジン性能や充電能力にばかり目が向けられていました。しかし、これからは車の性能的な面ばかりではなく、より広い範囲にわたりサステナビリティを実現してくれるソリューションが注目されることでしょう。

3.進化するアーバン・モビリティ

急激な都市化は大気汚染と交通渋滞を引き起こし、都市生活者を悩ませています。世界では毎年約300万人が大気汚染によって死亡していると言われています(WHO, 2016)。都市生活者にとって大きな問題となっている「移動」。そんな中注目されているのが電動スクーターです。

ドイツのモビリティ企業Ujetが開発した電動スクーターは、折り畳み式で保管場所を取らず、クリーンエネルギーを利用していて、デザインも洗練されています。ネットワークにつながっているUjetは、スマートフォン経由での操作に加えて、スクーター自体に装備されたタッチパネルから、ナビや音楽のストリーミング、音声コントロール、通話などのさまざまな機能にアクセスすることが可能です。また、ヘルメットの内蔵マイクとスピーカーを介してハンズフリー通話をすることもできます。

4.イノベーションでよりインクルーシブな社会に

世界では10億人、つまり人口の15%が何らかの形の障がいを持っていると報告されています(世界銀行, 2017)。障がいを持った人々や高齢者に向けて、アクセシビリティを向上する技術の進化に期待が高まっています。例えば、イスラエルのスタートアップ、ICI Visionのスマート・グラスは、視力に障がいがある人の網膜に画像を投影することで、視覚を取り戻すことを可能にしました。

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また、フランスのスタートアップJanasenseは、温度や湿度、空気の質や騒音、光度などをモニターし、離れて暮らす高齢の家族が健康を保ち、できるだけ長い期間自立した生活を送ることができるよう、手助けをしてくれます。

5.フィットネスもスマートに

栄養管理から筋肉の回復、睡眠管理まで、さまざまな面でデバイスがスポーツ好きの人々の生活の面倒を見てくれる時代に突入しています。バッテリー寿命が向上し、音声コントロールが進化するとともに、耳に装着するタイプの「ヒアラブル」なデバイスが日常的に身につけられるようになり、ヘルス・トラッキング市場に大きな影響をもたらすことになりそうです。

例えば、アメリカのブランドLifeBeamは、心臓の動きをモニターするセンサーを備えたデバイスを発売しています。スマートフォンのアプリと連携し、リアルタイムでワークアウト中の生体データを収集しています。

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それでは、スマートデバイスが健康管理をしてくれる生活とはどんな様子なのでしょうか。日々の運動管理に加え、Samsungのスマート・アシスタントBixbyで稼働するアプリを使って栄養管理をしている人の生活は、次のようになりそうです。まず食卓の写真を撮影すると、画像認識のソフトによってカロリーが計算されます。四六時中身につけているウェアラブルのデバイスにより、その日のアクティビティ・データが参照され、カロリー摂取が適切だったかどうかがチェックされます。さらに、オーストリアの企業QUSによるウォッシャブルなスマートシャツを着れば、胸に不快なストラップをつける必要もなく、ワークアウト後の回復状況をトラッキングすることができるでしょう。また、眠るときにはPhilips社製のヘッドバンドSmartSleepが脳波をモニターし、深い眠りに入ったところで特別な音波を発し、睡眠の質を高めてくれます。

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6.子どもたちにスクリーンの「外」の楽しみを

子どもたちがスクリーンを見る時間が増えすぎていることを親たちは懸念しています。ミシガン大学は、就寝前にスクリーンを見ることにより、子どもの睡眠が妨げられ、肥満やうつ病・不安につながる可能性がある、という研究結果を発表しました(2018)。

これからは、子どもたちに戸外で遊ぶよう働きかけたり、自然にスクリーンから離れるように促す商品が求められることになりそうです。例えば外遊びをサポートするスマートウォッチ。オランダのスタートアップ、Wanderwatch Europe BVが提供するWanderwatchには、付属の小石型ビーコンがどこに隠されたのかを見つけ出す「宝探し」など、戸外での探検を促す仕掛けが仕込まれています。GPSの追跡機能と、「家に帰りなさい」と伝える機能も備わっているので、両親にとっても安心です。

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また、中国のLing Technologyは、紙の本を楽しく読み聞かせしてくれるロボットを開発しました。子どもたちにスマートフォンなどで動画を見せたりゲームをさせたりする、いわゆる「スマホ育児」は日本でも話題になっていますが、Ling Technologyのフクロウ型ロボットLukaは、忙しい両親がスマートフォンやタブレットに頼らなくても済むように、50,000冊の中から物語を読み聞かせてくれます。

ウェアラブルをつけたがらない小さな子どもたちのためには、ほとんど目につかない、衣服につけるタイプのデバイスも登場しています。カリフォルニアのスタートアップ、Spireが開発したヘルス・タグは、衣類の内側に装着できる柔らかいセンサーで、子どもたちのアクティビティやストレス、不安、呼吸、睡眠などを計測してくれます。このタグは洗濯も可能で、バッテリー寿命も年単位なので、一度つけたら存在を忘れてしまえるほどです。また、オランダのスタートアップUVisioのSun Coachは衣類につけるクリップ型のセンサーで、子どもたちが浴びた日光の量をモニターし、日焼け止めを塗り直すように、といったアラートを出してくれます。

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7.全方位のペットケア

ペットケアにテクノロジーを活用する取り組みも注目を集めています。世界のペットウェアラブル市場は2022年には23.6億ドルに達すると予測されています(Grand View Research、2016)。これからは、全方位でペットの心身の健康をケアできる包括的な仕組みが求められることになりそうです。例えばペットのためのロボットの友だちや、特注ペットフードのデリバリー・サービス、個々のペットに応じたケアができる機能を備えたスマートデバイスなどを使って、ペットの世話をする時代となるでしょう。

アメリカのPetricsが提供するスマートベッドは、そういった最新ソリューションの一例です。ペットにとってちょうどよい体重と温度を保つために、このスマートベッドには体重計と温度調節機能が内蔵されています。このスマートベッドとペットに装着させるヘルストラッカーとをつなぐことで、カロリー消費やアクティビティをモニターすることも可能になります。ペットの健康に気になる点があったときには、深刻になる前にアプリ経由で飼い主にアラートを出したり、ペットのニーズに合った商品をオススメしたりすることもできます。
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8.オーダーメイド美容

美容に関わるハイテク機器も進化を遂げています。肌状態に加え、気候や汚染などの外的要因も分析した上で商品をオススメしてくれたり、生活をより健康的にするライフスタイルを提案してくれるなど、ハイテク機器はオールラウンドなスキンケア・アドバイスをしてくれることになりそうです。

ヘアケアが真にオーダーメイド化される日もすぐそこです。ドイツのヘアケア分野での巨大企業Schwarzkopf Professionalの「SalonLab Ecosystem」は、近赤外線センサーを搭載した小型の機器を使って、髪質、色、水分を計測します。収集されたデータはアプリ上でチャート化され、コンサルテーションに用いられます。拡張現実(AR)のテクノロジーを使って、リアルタイムで似合うヘアカラーを教えてくれたり、データを機械に送ってその人用にカスタマイズされたシャンプーを配合したりすることもできます。

9.「会話」の台頭

音声認識技術の市場は、2024年までに北米だけで1.45兆ドルにまで成長すると言われています(Statista, 2018)。Amazon AlexaやGoogle Assistant、Samsung Bixbyに代表される音声アシスタントの登場により、生活者は「●●して」と家電に話しかける生活に慣れつつあります。家電を音声でシームレスに操る時代が到来したのです。

ホームアシスタント・ロボットも、より言葉に敏感になり、人々の気持ちに寄り添うことができるようになりそうです。まだコンセプト段階ではあるものの、ホンダが開発しているAIを搭載したお友だちロボット「3E-A18」は、この技術がこれから向かっていく方向性を示していると言えるでしょう。思いやりのあるこのロボットは話し言葉を理解し、30以上の表情で反応を返してくれます。柔らかく、しなやかなコーティングが施されているこのロボットは、将来的にはお年寄りのサポートに活躍することが期待されています。

10.テクノロジーで変わるドライブ体験

ドライバーをさまざまに支援する車載インターフェースにも注目が集まっています。音声技術、顔認識技術、そしてジェスチャーで操作できるエアー・タッチ・センサーの技術はその先陣と言えるでしょう。2018年のCESでは、中国の電気自動車メーカーBytonにより、車に乗り込んだドライバーを顔認識技術で特定して、自動的にその人好みのセッティングを読み込み、パーソナライズされたドライブ体験を提供することができるコンセプトカーが発表されました。

さらに、脳の活動を解析して、ドライバーの行動を予測する「読心術」にも注目です。2018年のCESでは、日産自動車により、ドライバーの脳波をリアルタイムで解析し、運転を支援する技術を用いた「B2V(Brain to Vehicle)」も発表されました。この技術により「車」がドライバーの心の動きを理解できるようになり、ハンドル操作を支援したり、先回りして事故を防いだりすることが可能になります。例えば、運転者がターンしたいと思ったら、実際に操作する前にその行動を予測することで、反応速度を最大0.5秒短縮し、運転の安全性を向上することができるようになります。

昨今のテクノロジーの進化のスピードは目覚ましいものがあります。ここで紹介したテクノロジーは、2018年のCESで発表されたもの。これらのテクノロジーは、意外と近い将来に我々にとって身近な存在となっているのかもしれません。

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