よくわかる「定性調査」- 定量調査との違い、特徴や活用方法を解説!

マーケティングリサーチには、大きく分けると「定量調査」と「定性調査」の2種類の調査があります。「定量調査」と「定性調査」は、調査方法の違いだけでなく、得られる情報も大きく異なるため、調査目的によって使い分けをされます。

ここでは、「定性調査」とはそもそもどのような調査なのか、どのような目的で使われるのか、また代表的な手法についても、わかりやすく解説します。

【目次】

定性調査とは、どのような調査か?

定性調査(qualitative research)は、別名を「質的調査」、定量調査(quantitative research)は、別名を「量的調査」と言います。

「定量調査」は、アンケートによって収集した調査対象者の実態や意識、評価などに関するデータを、数値として分析するものです。これによって、例えば、あるブランドの認知率や購入意向率、購入経験率、リピート購入率などの数量データで市場の傾向を見ることができます。ここでは、「何割、何%の人が知っているのか?」や「何割、何%の人がそう感じていたか?」といった数量データが重要になってきます。

一方、「定性調査」は、インタビューなどによって収集した調査対象者の生の声、実際に観察した行動などの情報を通じて、数値では測れない、商品やサービスの購買に至るまでのプロセスやロイヤルユーザーに至るまでのヒストリー、事実や評価の裏側にある顕在化した意識、潜在的な意識、動機、因果関係などを探索・抽出し、意識構造を明確にするものです。

一言で言うなら、生活者が対象となる場合の定性調査は、「生活者の気持ちやその背景を探り、理解する」調査です。ここでは、「何割、何%の人が●●と感じているか?」といった数量で表されるデータよりも、「その人はなぜ、●●と感じるのか?」「そのように感じる背景には、どのような要因があるのか?」といった質的データが重要になります。

定性調査の代表的な手法

定性調査にはいくつかの手法があります。昔から行われているスタンダードな手法もありますが、それだけでなくインターネットの普及などにより、新たな手法も登場しています。ここでは、その中でも代表的な6つの手法をご紹介します。

  • フォーカスグループインタビュー(focus group interview、集団面接法)
  • デプスインタビュー(depth interview、深層面接法)
  • エスノグラフィ(ethnography、行動観察)
  • ホームビジット(home visit、家庭訪問)
  • ワークショップ
  • MROC(Marketing Research Online Communities)

フォーカスグループインタビュー(focus group interview/FGI、集団面接法)

フォーカスグループインタビューは、調査課題を検証するのに相応しい一定の条件を満たす人を5~6人集め、モデレーターと呼ばれる進行役のもと、グループ単位で行うインタビュー形式の手法です。
グループあたりのインタビュー時間は120分程度が一般的で、条件が異なる複数のグループ(男性/女性、ヘビーユーザ/ライトユーザー、自社サービスユーザー/競合サービスユーザーなど)を比較することで、属性別の意識・態度の違いを明らかにできます。また、比較的短い期間で属性の違いを探ることができる(たとえば、1日の中で午前・午後・夕方3グループ実施できる)ため、商品コンセプト案・デザイン案などの受容性を検証する場合に用いられることも多い手法です。

同一グループの参加者は、属性が近かったり、使用する商品が同じであったりするなどの理由から、互いの発言に刺激されて自発的な発言が増えたり、発想・視点が広がるといった「グループダイナミクス」が期待できるのがこの手法の大きな特徴です。

デプスインタビュー(depth interview/DI、深層面接法)

デプスインタビューは、インタビュアと対象者が一対一で行うインタビュー形式の手法です。
一人の対象者に対して、実態や意識、購入に至った詳細なプロセスや動機、過去から現在までのブランドスイッチのヒストリーなど、詳細な情報を深掘りすることができ、それらの実態や行動・意識の深掘りを通じて、それまでは気づいていなかった発見が得られるなどして、新たな仮説を抽出することができます。

一人ずつ行うため、周りの人の意見を気にしたり、周りの人に影響されたりせず、対象者自身の気持ちや本音を探りやすいのがこの手法の特徴です。曖昧な回答を深く掘り下げていくプロービングや表層的な回答から深い価値観を探っていくラダリングが重要となる場合や、病気のことなど人前では話しにくいセンシティブな内容を扱うときにも有効です。

※デプスインタビューについてはこちらの記事「デプスインタビューとは?手法の特徴、メリット・デメリット~本音を引き出すコツまで、わかりやすく解説!」で詳しく解説しています。

エスノグラフィ(ethnography、行動観察)

エスノグラフィは、対象者の承諾を得たうえで、日常生活行動(掃除、洗濯、調理、洗顔、歯磨き、メイク、など)に同行させていただき、対象者が無意識に行っている行動のクセやパターン、商品の使い方の特徴などを近くから観察し、気になった行動についてその場でインタビューをする調査手法です。

対象者が普段行っている何気ない行動手順や行動パターンの中に、無意識に感じている不安や不満、商品使用時の期待やニーズなどを、観察とインタビューを通じて発見することができます。
対象者自身は特に意識しているわけではないため、言われなければ気づかない場合が多く、観察をするインタビュアは、「商品を使う時に、・・・・・のようにしていましたが、どうしてそのような使い方をしているのですか?」といった質問をします。対象者は、質問されて初めて自分の普段の行動のクセやパターンに気が付くこともあり、なぜ、そうしているのかを説明します。そのようにして、対象者自身も気づいていなかったことが、行動観察とインタビューによって発見できるのです。

エスノグラフィによって重要な発見、示唆を得るためには、(1)対象者の無意識な行動のクセやパターンに、観察者がいかに気づくこと、ちょっとした何気ない行動を見逃さず、「おや?」と感じること、が重要です。さらに、(2)その行動の裏にどのような要因、気持ち、背景があるのかを問いかけ、探り出すことが重要です。
行動を観察する方法はいくつかあります。

  1. 対象者の自宅を訪問、買い物行動に同伴するなどして、間近で直接観察する方法。最も詳細に観察ができます。
  2. 訪問・同伴はせず、対象者に自分の行動の動画を録画してもらい、録画された動画を観察する方法。対象者の自宅に訪問する手間を減らすことができます。
  3. 訪問・同伴はせず、対象者に自分の行動をカメラでライブ中継してもらい、そのライブ動画を観察する方法。2.と同じく訪問する手間を減らすことができ、しかも行動を見ながらリアルタイムに質問をすることができます。スマートフォンなどを使った動画の送受信が身近になったことで、ライブ中継を行う機会は増えています。

ホームビジット(home visit、家庭訪問)

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調査対象者の自宅に訪問して行うインタビューです。これに行動観察が加わればエスノグラフィになりますが、一般的なホームビジットは必ずしも行動観察を行うわけではありません。調査のテーマが住宅、住宅設備、家電、キッチン用品、自動車などの場合、ご自宅で使っている商品の様子や、商品を使用する空間・環境を見ることで、使用実態を詳しく知ることができるため、ホームビジットが有益な調査手法となります。

対象者は、一人の場合もありますが、商品が家族共用のものであったり、家族の意見も聴きたいような場合は、あえて夫婦同席、親子同席として、家族の意見も一緒に聴取する場合もあります。たとえば、調査テーマとなる商品がキッチン用品の場合、そもそもキッチンはどのようになっているのか、商品はキッチンのどのような場所に置かれ、どのような使い方をされているのか、キッチンの中で使いやすいかどうか、といったポイントを、実際の環境を間近に見たり、詳しく質問することで、よりリアルに把握することができます。

また、調査テーマ以外の生活用品やインテリア、趣味の用品、ファッションアイテムなどを見せていただくことで、ターゲット層の生活実態やその背景にある意識、商品に求めるデザイン、機能を、詳細に把握することができます。

ワークショップ

調査対象となる一般生活者に実態や意識についてインタビューをするのではなく、特定のテーマのもとに、問題点の抽出や、その解決施策案の抽出、その他のアイディア抽出などを行う場合は、生活者や、商品開発プロジェクトのメンバーを集めて、ワークショップを行うことがあります。定性調査の手法としてのワークショップは、定量調査やインタビュー調査などで抽出した多くの問題点や課題をもとに、生活者、開発プロジェクトメンバーがそれぞれに集まり、あるいは一緒に集まって、様々な立場から改善のアイディアを発散させ、収束させます。

生活者同士が考えるだけではなく、時には作り手・商品開発者と、ユーザーである生活者が一緒にディスカッションをすることで、それぞれの立場からの意見を聴き、刺激となり、従来にはなかった発想の転換が行われる場合もあります。

ワークショップでは、発想を広げるために、言葉によるディスカッションだけでなく、自由な発想を促すために、ゲーム性を持たせたり、ドローイング、デザイン性を持たせた表現など、言葉や文字だけではない情報を共有することもできます。

MROC(Marketing Research Online Communities)

SNSのような、ネット上のコミュニティを通じて発言をしあう手法は、MROCと呼ばれています。ただし、MROCで利用されるコミュニティは、一般的なSNSのようなオープンで誰もが自由にコミュニケーションできるものではなく、リサーチを目的に開設したクローズドで期間限定のコミュニティとなります。期間限定のクローズドなコミュニティの中で、その調査テーマに合う特定の条件の対象者だけを集めて参加者登録し、一定の期間、MROC運営メンバーが投げかけるトピック(ディスカッション・テーマ)にそって投稿をします。

コミュニティの参加メンバーである対象者は、スマートフォン、タブレット、自宅のPCなどを使って、自由にいつでも投稿ができます。
コミュニティの開設期間は2~3週間程度の短いものから、数か月に及ぶものまで様々です。通常のインタビューでは時間が足りないような多くのトピックがある場合は、長期間に様々なテーマについて投稿してもらえるMROCが有効です。そのため、MROCの情報量は非常に多くなります。
コミュニティの進行役となるMROCのインタビュア(コミュニティ・マネージャーと呼ばれる場合があります)は、あらかじめ用意したトピックをメンバーに投げかけるだけではなく、気になった投稿に対して、直接投稿者に質問をして深掘りをします。

また、オープンではなくクローズドで期間限定のコミュニティであるため、特定の商品のホームユース・テストと組み合わせて、毎日の使用評価を投稿してもらうこともできます。

定性調査と定量調査の組み合わせ

定性調査と定量調査は、それぞれに役割があり、いずれか一方だけで完結するものではなく、それぞれの調査を適切に組み合わせることによって、目的に合った、より確かな調査を行うことができます。ここでは、定性調査と定量調査を組み合わせて行ういくつかのパターンをご紹介します。

定量調査を行う前に定性調査を行い、仮説を抽出する(仮説抽出型)

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たとえば、あるカテゴリの使用実態や、ブランドの選択理由、その背景にある意識について、定量調査で傾向や割合を把握するためにそのための調査票を作成するとします。その時に、調査票の質問の選択肢に、どのようなものを用意するべきか。実態に即した選択肢が用意されていなければ、適切な定量調査を行うことができません。

そのような場合に、あらかじめ定性調査を行い、多い少ないにかかわらず生活者にどのような実態や行動、意識があるのかを把握できていれば、それを仮説とすることができます。その後の定量調査では、定性調査で得られた情報から、質問や選択肢を用意して、それぞれの意見・態度がどのくらいの割合で存在するのかという定量的な検証がしやすくなります。

◆ 第1ステップ:定性調査で仮説を抽出
         ↓
◆ 第2ステップ:その結果をもとに、設問や選択肢を設計し、量的な傾向を検証

定量調査を行ったあとで、その結果の要因・背景を深掘りする(要因探索型)

たとえば、定量調査を行って、ある傾向が見られたとします。
しかし、なぜ、そのような傾向が生じたのか理由がわからない、生活者がどういう気持ちや考えのもとにそのように回答したのかわからないというケースはよくあります。

そのような場合に、定量調査で得られた結果をもとに、同様の実態や行動をとる人を集めてインタビューを行うことで、そのような実態や行動の要因は何か、どのような気持ちや考えがあり、その背景には何があるのかを深掘りすることができます。

◆ 第1ステップ:定量調査で傾向を知る
         ↓
◆ 第2ステップ:その結果わかったある傾向について、該当する人を集め(定量調査の回答者から抽出する場合もあれば、別途抽出する場合もある)、インタビューで詳細を聴取する

定性調査を実施する場合の3つの注意点

ここまで、定性調査がどのような特徴をもった調査であるのか、またその具体的な手法や活用シーンについて説明してきました。では、実際に定性調査を行う場合には、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。そのポイントを3つに絞ってご紹介します。

注意点1. 数で判断しようとしないこと

たとえば、フォーカスグループインタビューで、ある商品コンセプト案に対して「対象者6人のうち4人は新商品案に魅力を感じ、残り2人は魅力を感じなかった。したがって、新商品案の評価はまあまあ良かった」といった分析を行っても、意味がありません。そのような評価の傾向を数字で判断したいとすれば、それは定量調査で行うべきです。

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定性調査においては、上記のようなケースで「新商品案に対し、魅力を感じるという評価が上回っていた。そのポジティブ要因は主に3点挙げられ、・・・・・という点であった。ターゲット層の特徴である・・・・・という点が背景にあり、高評価につながっていた。一方、評価が低かった人からは、ネガティブ要因として、・・・・・という点が指摘されていた。商品化に向けては・・・・・とするような改善の検討が望ましい」といった分析することに意味があります。

注意点2. 構造を解明し、真因を明らかにすること

生活者の行動や商品選択の裏には、いろいろな気持ち・考えがあります。

要因A 「●●●ができる機能が欲しかったから」
↓なぜか?
要因B 「★★★という気分を求めていたから」
↓なぜか?
要因C 「普段、■■■ということに不満を感じていたから」
↓なぜか?
要因D 「自分の生活において、もっと◆◆◆であると感じたいから」

というように、一見シンプルな理由の背景に、いくつかの要因がつながっている可能性があります。
どのような要因が、どのようにつながっているのか。その因果関係の構造を発見することが、定性調査の役割です。

注意点3. ブランドや商品・サービス関与度が高い対象者を集める(リクルート)

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生活者の行動や商品選択の裏には、いろいろな気持ち・考えがあります。
定量調査では、質問に答える回答者は、選択肢の中から該当するものを選べば回答が完了します。
しかし、定性調査では、基本的に選択をしただけでは調査結果にはなりません。商品コンセプト案や商品デザイン案を複数提示して、PQRSの4案の中でどれが最も買いたいか、といった質問をすることはありますが、選択結果だけでは意味をなさず、それぞれの選択理由が重要です。

定性調査においては、たとえばある商品の購入者が対象者である場合、購入前に感じていたこと、不満・悩み、購入の目的、購入を決めた動機、記憶に残っている情報源、比較検討時の重視点、購入までの気持ちの変化、購入後の満足点など、対象者の言葉で語ってほしい情報がたくさんあります。

定性調査では、それらの情報を集めるため、特にブランドについてフォーカスするテーマの場合には、購入・利用したブランドや商品・サービスについて詳細に語ることができる人を、調査対象者としてリクルートすることが必要です。詳細に語れるということは、上記のように購入・利用のプロセスやその前後に感じたこと・考えたことを語れるということです。そのために、そのブランドや商品・サービスについての関与度がある程度高い人をリクルートする必要があります。定性調査では、この「関与度が高い」人を対象にするケースがよくあります。

「1回のみのトライアル購入ではなく、複数回購入している」
「同一ブランドの中の、複数アイテムを購入した経験がある」
「たまたま店頭で見て購入したのではなく、購入までに情報に接して知っていた」
「購入理由として、価格の安さのみで選んでおらず、商品の機能・効能・デザインで選んだ」
「そのブランドの商品を今後も継続購入したい」

関与度が低い人を「ユーザーだから」という理由でリクルートしても、使用経験が浅く、ブランドへのこだわりも少ないために、有効な情報が得られません。また、あるブランドについて、購入経験がほとんどない人に「なぜ、このブランドを購入しないのか?」とたずねようとしても、関与度が低いので答えられません。すなわち、定性調査においては、対象者のリクルートが非常に重要になります。

最後に

以上ご説明をしてきたように、定性調査は、生活者の行動や評価の裏側にある意識・気持ちを探り、構造的に理解することや、検証するべき仮説を抽出することが求められます。

事実・実態や評価を知るだけではなく、「なぜ、そのように考えたのか?」「なぜ、そこに魅力を感じたのか?」という「問い」を常に持ち続け、それを解明することが必要です。

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