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2018/10/15掲載・執筆・登壇

DataRobotがインテージに熱視線を送るワケ
〜「マーケティング×AIの民主化」はデータが生命線〜

既報の通り、インテージでは10月に米DataRobot社とパートナー契約を締結し、マーケティング領域でのデータ活用促進に向けて協業を開始した。

DataRobotという機械学習プラットフォームがデータサイエンスの実務最前線にもたらした衝撃は、凄まじいの一言に尽きる。2017年初頭に日本オフィスを開設して以降、2年をたたずして導入企業が3桁を超え、その数が今なお伸び続けていることが何よりの証左だ。

そんな急成長を遂げているDataRobot社が、なぜ今、インテージとパートナーシップを組むに至ったのか。
本記事では、協業で中心的な役割を担う4人による両社の対談を通して、その狙いについて明らかにしていく。

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(左から、インテージ田中朗 インテージ山本直人 DataRobot原沢滋氏 DataRobot小川幹雄氏)

「凄いプロダクトがある。」 DataRobotの圧倒的な完成度に一目惚れ


(司会):
本日はお時間を頂きましてありがとうございます。せっかくの機会ですので、本題に入る前に少しだけ回り道を。原沢さんと小川さんが初めてDataRobotに出会ったのはいつでしたか?

原沢: DataRobot Japanのカントリーマネージャーの原沢です。チーフデータサインティストのシバタアキラに次ぐ2人目の日本メンバーとして、3年ほど前にジョインしました。
キャリアで一貫してデータ関連に従事していたこともあり、データの見える化の必要性は重々承知していたのですが、個人的には「見える化したデータで、何を予測するか」がこれからのビジネスの肝になると予想していました。その折に米国の友人経由で初めてDataRobotを知る機会があり、直感的に「これは、凄いプロダクトがやってきたぞ」と。その友人からは、「DataRobotを日本国内で展開する手伝いをしてくれないか」とも相談を受けました。当時は別のビジネスに関与していたため何度かお断りをしたのですが、それでも「手伝って欲しい」の連絡は止まず(笑)。
アドバイザリーからスタートして徐々に関与を深め、結果的に2016年からジョインした次第です。

小川: 同じくDataRobot Japanの小川です。原沢に次ぐ3人目の日本メンバーとしてジョインしました。ジョイン直後は、データサイエンティストからプロダクトマネジメント、24時間障害サポートまで、あらゆる業務をカバーしていました。現在は日本メンバーも20人を超えたので、データサイエンティストとしての仕事に専念しています。
前職時代、市場分析の一環で競合製品を研究していたのですが、「DataRobotというすごいプロダクトがあるぞ」との噂を耳にしたのがきっかけでした。実際のデモ操作を見た瞬間、その圧倒的な完成度に一目惚れです(笑)。その姿を原沢に見抜かれたのか巧みに巻き込まれてしまい(笑)。元々、データ分析を自らやりたいという意志もあったので、あまり悩まずにDataRobotに飛び込みました。

原沢: ちなみにDataRobotの日本メンバーはユニークな人が多く、化学、物理学、量子コンピュータ、オペレーションズリサーチなど、様々な分野のPh.D.ホルダーが集まっているいんですよ。

小川: 私のすぐ近くの席には、データサイエンティストという言葉が誕生する遥か前から、米国の大学機関でデータサイエンスの教鞭をとっていた人もいます。「教えるのにはもう飽きた」というのが入社のキッカケとか(笑)。

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(データベース技術について熱弁をふるう原沢氏と小川氏)

ブラックボックスと対極にある機械学習プラットフォーム

(司会): インテージ側にもお聞きしましょう。山本さんと田中さんは、DataRobotを初めて見てどう感じましたか?

山本: 開発本部先端技術部の山本です。データサイエンティスト約20名とR&D研究者約10名が所属する部をマネジメントしています。どの業界でも似た状況かと思いますが、弊社でもデータサイエンティストは常に引き合いが続く状況です。
そのため当初は、いかに自社のデータサイエンティストの助けとなるかという観点で、DataRobot含めていくつかの機械学習ツールを検討していました。しかし情報収集を進め、社外からのアドバイスも参考にする中で、今は、既存業務の延長線上でDataRobotを活用するだけに観点を留めるのは勿体無いと感じています。
大袈裟かもしれませんが、DataRobotは、マーケティング・リサーチのビジネスモデルから変革する可能性を秘めたプラットフォームかもしれません。詳しくはお話しできませんが、ビジネスモデル構築まで踏み込んで、具体的な協業スキーム・共同開発ソリューションの議論を深めているところです。

田中: 同じく先端技術部の田中です。私のグループでは、主に小売業様向けのID-POS解析やサービス開発を担っています。入社した約15年前とは比べ物にならないほど、今は大量のデータをハンドリングする必要に迫られています。それに伴って、SAS/SPSSから始まったデータ解析環境も、今はRやPythonなどスクリプト言語、Hadoopなど分散処理基盤を積極的に業務活用するようになっています。
DataRobotの噂はよく耳にしていましたが、当初は、Webサイトをザッと眺めて「高精度なモデルが作れるのね。」くらいの印象しかありませんでした。ただ、実際に小川さんのデモを拝見し、自分でも使い始めるようになり、その出来栄えの良さ・使いやすさに今ではとても感動しています。

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原沢: その感動を、もう少し詳細にお聞かせください。

田中: 一般的に機械学習モデルというと、中身の解釈が難しく、説明に困るというイメージが付き物かと思います。巷でよく言われる「ブラックボックス」というやつですが、DataRobotを使い始めてみると、その先入観が良い意味で裏切られます。

小川: DataRobotは、ブラックボックス化を極力回避することに重きを置いており、モデルの透明性を非常に強く意識して設計されているんですよ。

田中: そうですよね。個々の結果表示画面ひとつとっても、とても親切なUI設計がされていると感じます。特にマーケティングの世界では、高精度な機械学習モデルを1つ作成してハイ終わり・・・とはなかなかいかず、そのモデルを周囲のメンバーがわかる形で評価・解釈・説明し、納得が得られて始めて実環境にオンステージになることが通常です。
DataRobotは、この評価・解釈・説明の機能が非常に手厚く、しかもUIがユーザーフレンドリーで素晴らしいなと思います。

小川: ありがとうございます。手前味噌で恐縮ですが、お客様に実際のデモをご覧頂き、主要な機能をご紹介するだけで、ほとんどの皆様が「DataRobot凄いね、うちでも使いたい!」とご要望されるんですよ。

田中: わかります。百聞は一見にしかず、DataRobotが気になる方はまずはデモを見ることをお薦めします。機械学習の経験・知識が浅くても、DataRobotのデモを見れば、「AIの民主化」の一端を実感できると思います

「AIの民主化」はデータサイエンティストの敵か

(司会): いま、「AIの民主化」というキーワードが出ました。ガートナー社「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2018年版※1」でも、注目マクロトレンドとして「AIの民主化」が発表されています。DataRobotはAIの民主化を牽引するプラットフォームとして市場評価が確立されつつありますが、みなさまの目にはこのトレンドがどう映っているでしょうか。

山本: 初めてDataRobotのデモを見たとき、高度な専門技術が急に目の前に降りてきた感覚を覚えました。貴社主催のトレーニングにデータサイエンティスト数名が参加した際も、戻ってきた彼らは刺激に満ちた表情をしていました。AIの民主化というのは、こういう瞬間の積み重ねで実現されていくのかもしれませんね。

原沢: AIの民主化への期待は日々感じていますし、周囲の期待が大きいが故に、DataRobotの国内ビジネス展開についてかなり悩んだ時期もありました。AIの民主化を本気で実現するには組織、人員、技術、ビジネス、データと考えなくてはいけないことは沢山あるのも事実です。

小川: 今はある種、インターネットの創世期に近い空気というか、期待と悲観が混在する過渡期なのかなと考えています。個人的には、AIの民主化は機械学習プラットフォーム単体だけでは実現困難だと感じますね。マーケティングの世界は特に、匠であるマーケターにしかできない仕事も多々あるはずですし。

田中: よりプレイヤーに近い立場として私は、DataRobotが切り開く世界に期待感を持つと同時に、背筋が伸びる感覚も覚えています。

小川: と、言いますと?

田中: データサイエンティストの在り方が変わる可能性を直感したのです。過去には、SAS/SPSSのような商用ソフトウェアに対して、R/Pythonなどのオープンソースの波が押し寄せ、アルゴリズムはコモディティ化し、データサイエンスを巡る環境は一変しました。DataRobotは、そのようなインパクト、我々の仕事の観点でいうと、いまの仕事の仕方を“ルールチェンジ”させるような、そんな可能性を秘めている気がしたのです。

(一同、うなずく)

原沢: 一つ確かに言えるのは、DataRobotが登場したとしても、データサイエンティストの仕事の重要性は変わらないということです。確かに、仕事内でかける時間配分や求められる技術知識は、環境に伴い変化を余儀なくされるかもしれません。それでも、データサイエンティストが不要になることは有り得えない。
DataRobotの活用で既存業務が効率的になったなら、空いた時間を後進育成に使えばいい。あるいは、「ビジネスに必要なデータの準備」にもっと労力を割けばいい。顕在化していない状態のビジネス課題を発見・指摘することも、本来はデータサイエンティストに期待される役割です。やるべきことは、いくらでもある。

山本: いいご指摘です。弊社のデータサイエンティストがヒマになることは、当面無さそうですね(笑)。

「AI活用の肝はデータ」インテージ保有のマーケティングデータへの期待

(司会): 今日の本題です。今回のパートナーシップについて、DataRobotとしての狙いを教えてください。

原沢: ITの世界で有名なGIGO(Garbage-In, Garbage-Out※2)の鉄則は、AI活用にもそのまま当てはまります。弊社でも、DataRobotをご検討のお客様には必ず、「データはあるか?」「そのデータは、解決したいビジネス課題に沿ったものか?」を確認しています。それくらい、データ準備というのはAI活用の肝なのです。
DataRobotは、今は主に製造現場・金融・保険・ヘルスケア・流通等で活発的に利用されていますが、マーケティング活用に関して言うと、「そもそもデータがない。もしくは、あるけど使える状態にない。」という口惜しいシーンをよく目の当たりにします。その現状を、国内で最もマーケティングデータの引き出しが豊富なインテージが打開してくれることを期待しています。

小川: 幸い、デジタルマーケティングの世界でいえば、MA(マーケティング・オートメーション)ツールとの連携によって配信ターゲティング精度が如実に高まるなど良い成果もうまれてきています。それをドライブしつつ、FMCG・DCG・小売りなどのお客様のマーケティング活用へと拡張できたら良いですよね。

「きちんと使える、高品質なデータ」を安定提供する企業DNA

小川: もう1点、踏み込んだ話をしても良いですか?
最近私は、DataRobot単体だけをご提供するのではなく、お客様側でデータを計測・収集する手助けまで踏み込んでサポートをする必要があると感じています。特にDataRobotのマーケティング活用を検討されるお客様の話をうかがうと、担当者によってデータの定義も粒度もフォーマットもバラバラで、管理環境もままらないことが多く、そこにお悩みを持っている印象があります。

田中: 根強い課題ですよね。

小川: いくらAI技術の活用をしたくても、データ準備がきちんと出来ていない状態では何も始まりません。
その状況を目の当たりにすると、インテージが長年に渡ってデータを計測・収集・蓄積・提供をしてきた歴史と、その過程で培われてきた各種技術やノウハウ、それを担う人材は、とても貴重だと思います。

原沢: 前職時代からインテージとはご縁があったのですが、そのときを振り返っても、時代に先駆けて大規模なDWH(データウェアハウス)を導入するなど、大量データのハンドリング技術にかなり長けている印象を持っています。
繰返しになりますが、機械学習をはじめAI技術をフル活用するためには、ビジネスに必要なデータが必須です。言い換えると、高品質なデータが安定供給されることが極めて重要。そして、高品質データは自然に発生するものではなく、設計・計測・収集・補完・集計の一連の気の遠くなるような仕事を経て、初めて準備されるものだと思います。とても一個人・一部署レベルでできる仕事ではない。

小川: インテージが保有するマーケティングデータを1つずつ知るたびに、改めて、データのプロ集団であることを感じますね。もはや企業DNAレベルとも言える。

原沢: 高品質なデータがあって初めて、DataRobotのパフォーマンスが最大化されると言っても過言ではありません。機械学習のプロ集団であるDataRobotにとって、データのプロ集団であるインテージとタッグを組むことは合理的なビジネス判断であり、シナジーがあると確信しています。

山本・田中: 大変光栄です。ぜひ一緒に、マーケティングの世界のデータ活用を推進していきましょう。

※1 ガートナー、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年」を発表pdf

※2 Gabageとはゴミ。「ゴミを入力してもゴミしか出力されない」「意味のない入力からは意味のない出力しか返ってこない」ということを揶揄するIT業界用語。

対談取材後記

「せっかくなので、ちょっとDataRobotを試してみませんか。」
今回の対談後、原沢氏・小川氏のご厚意に甘えて、筆者もDataRobotを触らせてもらった。

筆者は業務上、Excelで簡単なデータ集計や分析をすることが多いのだが、機械学習についてはよくわかっていない。そもそも、大学時代に統計学の授業を受けた記憶すら、おぼろげだ。
そんな筆者であるが、周囲のアドバイスを受けながらも、30分ほどで機械学習のモデルをつくることができた。確かにWebブラウザ画面は驚くほどシンプルで、マウス操作だけで動かせる。プログラミングもせずに済んだ。
可愛らしいロボットマークやウサギのアイコンが表示されているが、聞くと、この一つ一つがオープンソース化されている最先端のアルゴリズムらしい。個人的には、ワードクラウドというテキスト分析・可視化機能が気に入っている。生活者の生声からインサイトを発掘するうえで、すぐにでも役に立ちそうだ。

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(手元のファイルをドラッグ&ドロップするだけで、データが読み込まれる)

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(次にどこをクリックするべきか、誰が見ても迷いようがない。)

「UIはとてもシンプルですが、DataRobotの裏側には、腰を抜かすほどの最先端テクノロジーが山ほど詰まっているんですよ。GUIでも動かせるし、Python言語でもコントロールできます。しかも・・・(略)」

熱弁をふるう両氏の表情をみると、本当にDataRobotに惚れていることが伝わってくる。

約10年前に登場したiPhoneが携帯電話の世界をガラリと変えたように、最先端テクノロジーにシンプルUIの皮をかぶせて登場したDataRobotも、これからのデータサイエンスの世界をガラリと変えるのかもしれない。
機械学習を知らなくても機械学習を使える環境が整ったら、きっと、マーケティングの幅が飛躍的に広がるはずだ。

左手で社用iPhoneをいじりつつ右手のマウスでDataRobotを操作しながら、マーケティングにもAIの民主化が近づいていることに想像をめぐらす筆者であった。

(対談者・略歴)

原沢 滋 (DataRobot, Inc. カントリーマネージャー・ジャパン)
University of California Berkeley 校卒。エクスペリアン・ジャパン、日本ネティーザ株式会社等で日本ビジネスの立ち上げメンバーとして日本のマーケットでの技術、市場開拓を担当。IBM社によるネティーザ社の買収に伴い日本IBMに移籍。同社においてビッグデータ・アナリティクス部を率いる。2016年からDataRobot社のビジネス開発を担当し、2017年1月より現職。

小川 幹雄 (DataRobot, Inc. データサイエンティスト)
大学院を卒業後、日本オラクルにてExadataの製品担当。製品検証、サポート、プリセールスを経て、Oracle Cloudの立ち上げチームにてデータ分析関連全てのサービスを扱うソリューションアーキテクトを担当。マシンラーニング、データプリパレーションサービスを統括後、DataRobotに転職。DataRobotでは、インフラ全般のサポート、トレーニング、パートナリング、プロダクトマネジメント担当後、データサイエンティストとしてユーザーの機械学習の民主化を支援する。

山本 直人 (株式会社インテージ 開発本部 先端技術部 部長)
外資系調査会社において15年間グローバル企業向けのマーケティングリサーチに従事後、2014年インテージ入社。ライフインサイツ及びデータサイエンス領域において、新技術を活用したR&Dを推進。国内外のインテージグループ各社において、幅広いお客様に活用いただいている。

田中 朗 (株式会社インテージ 開発本部 先端技術部 グループマネージャー)
大学院で社会統計学を専攻後、2003年にインテージ入社。おもにメーカー向けにPOSデータの集計分析などのマーケティング支援業務を経て、予測や効果測定などのデータサイエンス業務、ソリューション開発に従事。現在は様々なデータの解析や、AIのデータ解析への応用などを担当。