九州・熊本地震時に見えた、情報とのかかわり方

※この記事は2016年8月のリリース記事を再構成したものです

九州・熊本地震発生からほぼ1年。
SNSの普及によって情報への関わり方が変わりつつあることを実感した方も多かったのではないでしょうか。当時を振り返ることで情報との付き合い方を考える機会になれば幸いです。

このたびの九州・熊本地震で被災された皆様、ならびにご家族、ご関係者の皆様には謹んでお見舞いを申し上げます。被災地におかれましては、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。


2016年4月14日夜、熊本県益城町近くを震源地とする九州・熊本地震が発生しました。その後、地震が断続的に続いていた4月16日未明に本震発生。4月14日を上回るマグニチュード7.3を記録しました。

震災直後から、拡大する被害についてテレビや新聞での報道が続く一方、SNSやブログを通して自治体や個人による情報発信も活発に行われていました。また、SNSでは根拠不明のデマも多数、拡散されました。

これらの情報から生活者はどのような情報を受け取り、どのように感じていたのでしょうか。インテージでは熊本・九州地震を経ての生活者の変化や求めているものについて、熊本県および大分県を除く全国の18~69歳の男女3228人を対象に、2016年6/3~6/6の3日間調査を行いました。

生活者が触れる情報はどのように変化していったか?

地震発生からの10日間における主な支援・復旧関連の報道を振り返ってみると、地震発生直後の支援活動は周辺自治体や企業によるものが中心で、ボランティアの受け入れが可能になったのは、物流や交通機関の復旧がある程度進んだ、約1週間後でした(図表1)。

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図表1 地震発生後10日間の主な支援・復旧関連の報道

状況が見えてくるにつれ、そしてできることが増えてくるにつれて、発信される情報の内容は変わっていきます。

そこで、現地の状況変化に伴って生活者が触れた震災関連情報の幅とその内容がどのように変化していったのか、次の3つの期間に分けて、「よく見た震災関連情報の種類数」と「具体的な内容」について確認しました。なお、今回は調査回答者が対象となる時期を想定しやすいことを優先し、長さが異なる期間について質問しています。

  • 期間① 震災発生から1週間程度(震災直後)
  • 期間② 震災発生1週間後~1か月程度(ボランティア受け入れもはじまり、生活者が直接的に支援できるようになってきたタイミング)
  • 期間③ 震災発生から約1カ月半後(6月頭の本調査実施時点)

「よく見た震災関連情報の種類数」の変化から、震災直後よりも『震災発生1週間後~1か月程度』に最も多様な情報に触れ、その後の『震災発生から約1か月半後』、つまり当調査実施時点の6月頭には触れる情報の幅が大きく減っていたことがわかります(図表2)。

また、「被災エリアを除く九州」エリアのほうが、「九州を除く全国」エリアよりも情報への接触数も多くなっていました。被災地に近い九州エリアの方が、報道が多かったためと考えられます。

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図表2 各期間によく見た震災関連情報の種類数
※九州は被災エリアを除く


情報の内容は、『震災発生から1週間程度』の時期は「被害状況」「避難所の様子」「救援活動の様子」が中心でしたが、『震災発生1週間後~1か月程度』になると「現地の課題」「支援活動の様子」「支援に役立つ情報」などといった情報へ移っていました。(図表3)

また、『震災発生から1カ月半後』には全国エリアではほとんどの情報との接触が減る中、九州エリアでは「現地の課題」や「学校再開や店舗再開などの復興情報」といった“今を伝える情報”への接触が3つの期間を通して最も高い水準になっていました。ここに近隣エリアと他エリアの差が見られています。

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図表3 よく見た震災関連情報 

Key Point 1

生活者が触れた震災関連情報の種類は、震災1か月半後には大きく減少していた。その中で、被災地に近い九州エリアでは“今を伝える情報”への接触が継続的にみられた。

 

メディアによる情報の内容と支援行動への影響の違いは?

最も多様な情報に接触していた『震災発生1週間後~1か月程度』の期間において、「それぞれの情報にどのメディアを通して触れたのか」を聞いたところ、各メディアが発信する情報の違いから図表4の様に整理されました。

テレビや新聞、ラジオ、ネットニュースといったメディアでは主に「現場の状況に関する情報」に触れて状況を知り、自分の生活のための行動に繋がる「自分が何らかの対処をするために役立つ情報」には雑誌・書籍や周囲の人からの情報のほか、まとめサイトで触れ、被災地・被災者の生活のための行動に繋がる「支援に関する情報」には個人や自治体、芸能人・文化人のTwitterやブログなどでの発信で触れることが多かったようです。

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図表4 メディアによる情報内容の違い

マッピングは、『震災発生1週間後~1か月程度』の期間によく見た情報から「生活者が触れた情報内容構成比」(図表5)を作成し、各象限の情報内容構成比を偏差値化して実施

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図表5 【参考情報】生活者が触れた情報内容構成比(図表4作成用データ)

メディアによって触れた情報の内容が違うということは、どのメディアで情報に触れたかによってその後の行動も違うのでしょうか。

それぞれのメディアで震災関連情報に接触した人がどのような支援行動を取ったのかを比較したところ、自治体や個人、芸能人や文化人の発信情報といった「行動に繋がる情報」に触れたメディアの中でもその後繋がった支援行動に違いが見られました(図表6)。

支援に繋がりやすかったメディアと個別の特徴は以下のとおりです。

  • まとめサイト
    支援に必要な情報がまとめられているためか、薄く広く、一通りの支援行動が取られていました。
  • 周囲の人から直接聞いた情報
    情報の内容が「他地域でもできること」に寄っていましたが、実際、「被災地の産品購入」といった遠くからできる支援行動が取られていました。
  • 自治体の発信情報
    直接的・具体的な行動に役立つ信ぴょう性のある情報のため、金銭的支援や物質的支援だけでなく、受け入れなどの直接的なサポートまで、幅広い支援活動が取られていました。
  • 個人や芸能人・文化人の発信情報
    支援方法についての情報発信が多いメディアではありますが、情報接触後の行動としては主に共有・拡散にとどまり、支援行動にまで繋がるほどではありませんでした。

※書籍・雑誌接触者の行動率の高さは、メディアの掲載情報が行動に繋がったというよりも、有償で情報を得るほど情報感度が高いためと考えられます。

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図表6 接触メディア別の支援行動実施率(%)

Key Point 2

支援につながる情報が多いのは自治体や著名人、個人による発信情報。特に自治体の発信情報が幅広い支援活動に繋がっていた。

情報感度が高い人に見られる、醸成された価値観とは?

生活者が震災情報に接触する主なメディアはテレビ・新聞・ネットニュースであり、自治体や個人、芸能人や文化人の発信情報といった“行動に繋げる情報を発信するメディア”に触れていた人は一部に限られますが、この人たちは幅広く情報に接触する情報感度の高い人だと考えられます。そこで、震災情報に接触したメディアの数で人を分類し、幅広く情報に接触した「情報感度の高い人」が情報発信の必要性を感じていることは何か、を見てみました(図表7)。

最も幅広く情報に接触していた人には、「個人の心構えや有り方の発信」「義援金・支援金への協力呼びかけ」の必要性を感じ、「応援メッセージの募集・発信」の必要性は特に感じないという傾向が見られました。震災発生後にSNSなどで話題に挙がり、収斂されていった、『個人ができる、合理的に被災者に役立つこと』の情報や価値観が共有され、浸透しているように思われます。

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図表7 接触メディア種類数別の発信の必要性を感じた情報

Key Point 3

多様なメディアに接触する情報感度が高い人には、災害時の情報の動きを踏まえて「個人ができる、合理的に被災者に役立つこと」を重要とする価値観が浸透している

様々な情報に触れ、今感じていることは?

多様な特性を持つメディアで多様な情報に触れ、生活者は今どんなことが必要だと感じているのでしょうか?
企業や自治体、NPOなどの様々な支援活動を見て必要性を感じた活動が何かを聞いたところ、近隣エリアで関連情報への接触も多かった九州エリアの方が、いろいろなことに必要性を感じているという傾向が見られました(図表8)。

また、全国・九州共に、寄付の次に「支援物資の分配」の必要性を感じた人が多く見られました。これは「物資の偏り」に関する報道が目立ったためでしょうか。

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図表8 必要だと感じた支援活動(%)

最後に、「今回の震災を通じて感じたこと」を自由回答で聞きました(図表9,10)

最も多かったのは「どこで起きてもおかしくない・地元で起きることの不安」でした。東日本大震災から間を空けず、地震は起きないと思われていた九州・熊本で大地震が発生したことで、震災が他人事ではないと感じ、備えの必要性を改めて実感した人が多かったようです。

また、マスコミ各社の避難所取材や報道内容に対して不快感を感じたという人が一定数いた一方で、デマの拡散や不謹慎狩りといったインターネット上の動きに対して不信感を持った人も一部見られました。

このような人のSNS利用実態を見てみるとほとんど使っていない人も多く、SNS上の情報の動きに直接触れなくても、ネットニュースやマスメディアを介して拡散された情報に触れた結果、情報への不信感が増していると思われます。

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図表9 震災を通じて感じたこと(自由回答よりコーディング集計)

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図表10 マスコミ報道への不快感とネット情報への不信感を示した回答例

Key Point 4

SNS上の動きがネットニュースやテレビで取り上げられ、SNSを利用していない人にも広く知られることになった結果、情報に対する不信感が増した。 

調査からはメディアの多様化に伴って生活者が触れる情報に幅が生まれ、多様な情報に触れた高感度な生活者には本当に必要なことが見えてきている、といった状況が見えました。一方でマスコミの報道への不快感やネット情報への不信感も募っています。ただでさえストレスにさらされる災害時、適切な情報を得て情報に振り回されないために、今回の経験を踏まえて信頼できる情報を見直す必要がありそうです。


今回の分析は、下記の設計で実施した調査結果をもとに行っています。

調査方法 インターネット調査(インテージ・ネットモニター)
調査地域 熊本県及び大分県を除く全国
対象者条件 18~69歳の男女
職業除外条件 本人および同居家族が次の職業に従事している場合は除外:マスコミ・広告/市場調査
標本抽出方法 弊社「マイティモニター」より抽出、県別人口構成比にあわせて調査票配信
ウェイトバック エリア×性×年代構成比にあわせてウェイトバック集計 
サンプルサイズ n=3228
調査実施時期 2016年6月3日(金)~2016年6月6日(月)

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