ミレニアル世代の夫婦にみる新しい日常

この記事は、インテージが生活者理解の拠点として立ち上げた、生活者研究センターセンター長 田中宏昌による「Withコロナの新しい日常」に関するコラムの第13弾です。

【目次】

  1. はじめに
  2. ミレニアル世代の妻のヒトトナリ
  3. ミレニアル世代の夫のヒトトナリ
  4. ミレニアル世代の夫婦から新しい日常へのヒントを探る

1.はじめに

長引くコロナ禍で増加するおうち時間。それに伴い、家庭内の夫婦や家族の役割にも変化が生じているようです。家で食事を摂る機会が増えることは、料理やお皿洗いの機会の増加につながっています。また、買い物回数そのものの増加も意味しています。

このコロナ禍をきっかけに夫婦や家族の間で料理や片付け、買い物などの家事の分担を視なおした、という話をよく聞きます。「夫や妻」という枠組みに囚われることなく、その時々の環境に合わせて柔軟に役割を切り替える。「そのときできる人ができることをやる」そうした意識や価値観が新しい日常を生み出しているのかもしれません。

この「新しい日常」を先取りしている世代がいることを実感することがあります。スーパーなどに買い物に行くとメニューや味付けなどを共通の話題にしながら夫婦で仲良く食材や鍋のスープの素を選ぶ姿を目にするときがあります。あるときはパパと子ども達だけで楽しそうに買い物をする姿を目にすることもあります。洋服や会話、さらには子どもの年齢などから推察すると、多くの夫婦がおそらく30代くらいの年代であることに気がつきます。
「30代」。ミレニアル世代も結婚してすっかり家庭を営む世代になりました。ミレニアル世代は1980年~2000年頃に生まれ、新型コロナの感染拡大が発生した2020年には20~40歳というライフステージの変化が最も豊かな人生のときを迎えている世代です。

ミレニアル世代は、これまでの世代と「家庭」の捉え方が違うのでしょうか。今回はミレニアル世代同士が結婚し、カタチ創る夫婦や家族の姿について、データから浮かび上がらせてみたいと思います。
ミレニアル世代の定義については多少の前後を含めて諸説あるようですが、本分析では30代にフォーカスし、「30代ミレニアル夫婦+子どもあり」の夫や妻、さらにはその家庭に迫りたいと思います。

2.ミレニアル世代の妻のヒトトナリ

まずは、ミレニアル世代の妻のヒトトナリを、インテージのアンケートモニターから日々収集している消費行動履歴、メディア接触履歴、さらには生活意識・価値観といった膨大な定量データを連携させたターゲット・プロファイリング分析サービス、生活者360° Viewer ※を用いて分析してみましょう。

ここでは、ミレニアル世代の妻を「女性30代既婚・子どもあり」という属性で定義し、ひとつ上の世代である「女性40代既婚・子どもあり」の人と比較して、その特徴を捉えます。
はじめに、生活意識と価値観で特徴的だった項目をまとめてみました。

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データからは、『家族とのつながり』『周囲や友人との関係』という2つの視点において、大きな違いがみられました。確認されたヒトトナリと、そのヒトトナリを形づくる特徴的な価値観ついて述べてみます。

【視点1】家族とのつながり からみえるヒトトナリ
夫や子ども、家族(親)へ愛情を注ぐとともに、それらの人たちからも愛されたいという気持ちが強い。また、周囲から優しく家庭的な人として見られたいと考えている。そのため家族と一緒に過ごす時間をなによりも大切にしており、家族や友人とのふれあいを大切と捉えている。仕事はワークライフバランスを重視点に掲げている。一方、40代女性は「一人で過ごす時間」を大切にしており、「仕事」や「健康」にこだわりを持っている。夫や子ども、家族といったキーワードは出てこない。

【視点1】のヒトトナリからは、夫や子ども、家や家族を重視する傾向は、「愛したい、愛されたい」という情感そのものが「家庭や家族」を起点に強く希求されている結果のように推測されます。結婚をしてからの時間がそれほど経っていないから、子どもがまだ小さいから、と考えてしまいそうですがそれだけが理由ではないように映ります。今後も彼女らの成長とマインドの変化を追っていきたいと思います。

【視点2】周囲や友人との関係 からみえるヒトトナリ
人からきれいに見られたいと考えており、おしゃれにも余念がない。友だちとの関係を重視しており何でも相談しあえる関係を望んでいる。また大勢で遊んだり飲んだりするのも大好きでリアルなネットワークも活発な様子。一方で40代女性は積極的に人付き合いを広げたいとは思っておらず、これまで気づいてきた関係をより良く、といった姿勢が浮かぶ。

【視点2】のヒトトナリからは、友人との積極的な関係構築や交流を楽しみながらも、周囲からの見られ方を気にしていたり、初対面の人と話をするのを苦手と考えていたりと苦労も垣間見られます。周囲の世界との関係や調和を人一倍大切に考えているがゆえのギャップのように映ります。

続いて、消費行動や情報の受発信行動で特徴的だった項目をまとめ、同様にヒトトナリとそのヒトトナリを形づくる特徴的な価値観を考察してみました。


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【視点3】消費行動や情報の受発信行動 からみえるヒトトナリ
買い物についてはプロや専門家のお勧めに弱く、TwitterなどのSNSでクチコミや評価をしっかりチェックする。ディスカウントストアをたびたび利用していたり節約を基準に食材を選んだりと、お金の使い方についてはシビア。お買い物の際に響く言葉として「コスパ最高」「大容量」が上位に。また、子どもの教育や自分たちの老後に備え、貯蓄や投資にも関心を持っており、「つみたてNISA」もしっかり活用している。40代女性は話題性や他人の意見より「品質」を第一に、自分の考えで判断する。「国産・天然・産地直送・地産地消」さらには「環境配慮」などは買い物時のキラーワード。また、投資に関しては「健康」と「ローリスク」がポイント。

【視点3】のヒトトナリからは、SNSなどを軽やかに駆使して情報収集を行っています。その背景に買い物についても「他人の視線=評価」を気にしており、「周囲からどう映るか」を重視していることも理由にありそうです。

3.ミレニアル世代の夫のヒトトナリ

同様にミレニアル世代の夫のヒトトナリを分析してみましょう。妻と同様、今回は「男性30代既婚・子どもあり」で定義しています。

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【視点1】仕事・家族とのつながり からみえるヒトトナリ
「成長・ステップアップすること」、「人より早く出世すること」を重視し、他人に対して「優越感」を感じていたいというマインドも大きい。周囲から一目置かれ、スマートな人という印象を持たれたい。そのため知識や教養を高めることにも積極的で努力も欠かさない。一方、男性40代は精神的な成長や豊かさを求めており、周囲からは信頼感や責任感をはじめとした内面性を評価されたいと考えている。

「家族」は重要なキーワードで妻や子どもとの関係や共に過ごす時間を大切にしている。成長&成功意欲も強いため、仕事では「給料」を重視しているが女性同様にワークライフバランスも重要。「家事を行う時間」を大切にしており積極的に家事参加している姿が浮かぶ。男性40代に目を向けると「家族と・・・」という気配はきわめて薄い。

【視点1】のヒトトナリからは、成長意欲に富み、周囲からの評価や承認を求める部分に際立った特徴を感じます。自分は世渡りが上手と言っておきながら、周囲の目を気にしており、妻にあたる30代女性と同様の苦労を滲ませています。家族や家庭を同じように重視していることから、買い物やお掃除、送り迎えなどの家事参加などもごく自然に行っている様子が想像されます。

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【視点2】消費行動や情報の受発信行動 からみえるヒトトナリ
買い物においては「新しいモノ、流行」さらには「高級感」に魅かれ、専門家の意見や口コミを参考にしつつ選択する。パッケージやネーミングにつられてしまうことも。SNSやネットから情報を収集し、良いものを見つけると人に勧める。投資に関しては積極的でリスクも恐れず利益を重視。車については単なる移動手段と捉えており、サブスクも選択肢に。一方の男性40代は「気に入ったものを長く」と考えている。また、投資に関してはリスクを避けた商品選択や運用を心がける。

【視点2】のヒトトナリからは、新商品や流行に関する情報をストックしておくために、SNSをはじめ、周囲の人の持ち物などにもアンテナを張り巡らせています。選択時重視点は流行を追うだけではなく「他人からどう映るか」。男性はその気質がより強く「ステイタスが感じられる」、さらには「羨ましがられる」という欲求も併せ持つことがポイントです。

4.ミレニアル世代の夫婦から新しい日常へのヒントを探る

ここまで、ミレニアル世代の夫婦のヒトトナリとそこに通底する価値観について考えてきました。上の世代との違いとして共通して見られたのは、家族との時間を大事にする姿、そして「他人からどう映るか」が判断基準になるといった点です。そこにはライフステージの違いだけでなく、育ってきた時代や環境の違いが大きく影響していると考えられます。デジタルネイティブであり、SNSも身近なツールとして使いこなすこの世代。自らの暮らしを切り取って投稿したり、友人・知人の投稿に「いいね!」をしたりと、「他人からどう映るか」は考えることはごく当たり前の特性なのかもしれません。

厚生労働省の「厚生労働白書(平成30年)」などを紐解くと、専業主婦の世帯は約33%という結果です。2000年頃は約50%でしたが1995年頃を境に専業主婦と共働きの割合が反転し、現在では共働きが当たり前となりました。20~40代に区切ると専業主婦は25%、つまりは4人に3人は働いていることになります。所得についても1990年初頭を境に減少し続けています。
そうした社会変化に柔軟に呼応して、ミレニアル世代は成長してきました。その間、「結婚」や「夫婦の在り方」も変化し続けています。夫や妻という役割や古きイメージに固執することなく、共に働き、共に家事・育児を行う。できることをできる方が、という価値観の浸透です。プロファイリングの結果からミレニアル世代の夫婦や家庭を俯瞰して感じるのは、「家族」というものをとても大切な心のよりどころとして考えているという点です。コロナインパクトで私たちの暮らしが大きく変化する中、ミレニアル世代が形づくる暮らしはずいぶん前から、妻や夫、さらには子どもの考えや生き方を尊重し、各人が最適な役割を果たしてきたのかもしれません。そこには「夫」も「妻」も古臭い記号として映っているのではないでしょうか。先取り感のあるミレニアル世代の家族、彼、彼女らの人となりと日常を丁寧に眺めることで、Afterコロナにおけるマーケティングのヒントとなりましたら幸いです。


※この記事はMarkeZine68号に掲載された寄稿記事(『ミレニアル世代の夫婦に見る新しい日常』)を再構成したものです。


【生活者360°Viewer】
多面的で精緻なターゲット像を描き出すことにより、生活者理解に基づいた商品・サービス開発やコミュニケーション・プランニングを支援する分析サービスです。デモグラフィック属性や意識・価値観だけでなく、購買行動やメディア接触行動といったインテージの持つさまざまなパネルデータを横断・連携した15,000項目におよぶ膨大なデータから、各お客様企業のマーケティング課題に応じて柔軟にターゲット・セグメントを設定することが可能です。
※ さまざまなパネルデータを横断・連携するという性質上、出力結果のサンプルサイズはデータによって異なります。


生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。

著者プロフィール

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生活者研究センター センター長
田中 宏昌(たなか ひろまさ)

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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