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アジア5か国調査 介護サービスに求めるものは国によってどう違う?

少子高齢化が進む日本で、今後更に市場拡大が見込まれる介護業界。一方、高齢化がいち早く進み、65歳以上の人口が21%以上を占める超高齢社会となった日本の介護サービスは、その蓄積された知見から、世界から注目を集めています。

この記事では、アジア各国の健康に関する実態や介護に関する意識の比較を通し、介護サービス領域で先行している日本が各国に進出する場合に有効なミュニケ―ションなどについて考えてみます。

超高齢社会の日本 アジア各国の高齢化はどう進む?

今回は、人口構造の異なる日本、中国、タイ、ベトナム、インドネシアの5か国を対象に調査を実施しました。

図表1は各国における年齢別の人口推移の予測です。

図表1kaigo-asia_01.png

日本はすでに65歳以上の人口が3割近くに達しており、今後もさらなる少子高齢化が進む予測となっています。また、中国、タイも少子高齢化の傾向が見られており、これらの国は、人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する“人口オーナス期”に突入していることがわかります。
一方、ベトナムとインドネシアでは15~64歳の生産年齢の人口が増加する予測となっており、労働力が豊富で経済発展をしやすい“人口ボーナス期”にあることがわかります。

とはいえ、各国とも高齢者は増加傾向。どの国においても介護サービスの需要増が見込まれます。

アジア各国の都市生活者にみる、健康行動の違いとは?

今回の調査は、各国の都市部在住の生活者に対して行っています。改めて、都市生活者の年齢構成比を比較してみました。図表2は調査対象の20~60代の構成比です。

図表2kaigo-asia_02.png

人口オーナス期にある日本の東京、中国の主要都市(上海、北京、広州、天津、深セン)、タイのバンコクは人口構成が似ていて、60代が15~17%と多くなっています。一方、人口ボーナス期にあるベトナムのハノイ、ホーチミンとインドネシアのジャカルタでは60代が少なく、20代、30代が多くなっており、健康課題が異なることが予想されます。

実際に、抱えている健康問題の違いを見てみましょう。(図表3)

図表3kaigo-asia_03.png

「高血圧」「関節疾患」「脂質異常症」が健康問題のTOP3となっていますが、やはり国による違いが目立ちます。年代の違いに加え、ビール消費大国のベトナムで肝臓病が高いといった傾向が見られており、食文化の違い等も影響していると考えられます。
また、日本人は他国に比べて抱えている健康問題が少なく、中国やベトナムで健康問題が多くなっていることがわかります。

続いて、健康問題への対策方法の違いをみてみましょう。(図表4)

図表4kaigo-asia_04.png

医療機関・制度が充実している日本では「薬の処方」「通院」が突出しており、病院頼みになっていることがわかります。
一方、他のアジア各国では、医療機関や制度の充実度に課題があることに加え、東洋医学的な考えもあって生活習慣を通じて対応する意識が強くなっています。なかでも、比較的高齢者の多い中国・タイでは運動・食事・睡眠といった規則正しい生活での対処が多いのに対し、ベトナムでは運動とサプリ、インドネシアでは睡眠や水分摂取が多く、世代や国の文化による対処の違いが見られます。

国によって異なる介護サービスのニーズ 信頼獲得につながるコミュニケーションとは?

違いが多かった健康問題への対策に比べ、介護に対する考え方は比較的どの国も共通している点が見受けられました。介護に求めるものを調査した結果が図表5です。

図表5kaigo-asia_05.png

介護に求めるものは共通して”おもてなし(思いやり、清潔さ、安心感、親密・親しみ)”が上位に来ますが、中国、タイ、ベトナム、インドネシアでは「高品質」が重要とされています。おそらく高水準の品質が保たれている日本においては「高品質」は当たり前と認識されているのに対し、他国に関しては施設によってサービス品質のバラツキがあるために、より良い品質のサービスを求めていると考えられます。

中国で特徴的なのは、2番目に“尊敬・承認”が入っていることです。儒教の教えで、年上の人を敬うという価値観が影響していると推測されます。

今回の調査では、ご紹介した以外にも介護経験や介護課題についても聴取しています。これらの結果から明らかになった各国の意識・実態からは、それぞれの国で介護サービスを提供するにあたって満たすべき機能や、生活者に受け入れられやすいコミュニケーションが見えてきます。

日本の介護サービスを展開させる場合、「情緒的価値の”おもてなし” x 機能的価値の”日本品質” を土台」とした、各国それぞれに”刺さる”コミュニケーションが必要となってくるでしょう。最後に、それぞれの国の実態を踏まえた訴求イメージと商品/サービスとして、どのようなモノが考えられるか、その案を紹介します。

日本:
”医療のプロに安心して全て任せることができる” というコミュニケーション訴求
今回の調査では、日本は特に他国と比べて介護経験がない人が多いという実態が確認されました。また、介護に求めるものとして「低負担」が上位に入っているのが特徴的です。日本においては、“24時間見守りサービス”のような医療機関や専門の方々に全て委ねることができることに対するニーズがあると考えられます。

中国:
“介護者・被介護者共に尊敬・承認される” というコミュニケーション訴求
中国では、尊敬・承認を介護に求めているという特徴が見られました。例えば介護している側、されている側両方がオンライン上で自由に情報共有等やり取りできる、“介護オンラインプラットフォーム”のようなサービスがあると、認められたいというニーズが満たされるのではないでしょうか。

タイ:
“高い清潔感の実現” というコミュニケーション訴求
タイでは、介護に求めるものの一位が清潔さでしたが、介護課題に関しても、掃除を課題と考える人が特に多くみられました。強力除菌消臭器などで徹底した清潔感に対するニーズを満たすことが重要だと考えられます。

ベトナム:
“運動を通じての介護実現” というコミュニケーション訴求
もともと健康問題への対処として運動を重視する傾向にあるベトナム人ですが、介護課題として運動・リハビリが上位に上がりました。運動促進ロボットなど、運動を促進するニーズを満たすサービスが求められます。

インドネシア:
“移動・買い物する喜びを感じることができる” というコミュニケーション訴求
インドネシアでは、外出・買い物が介護の課題とする人が多く見られました。歩行補助機器などで移動を補助し、場所を変えることで気分転換できるにニーズを満たすことが需要だと考えられます。

日本の介護サービスでは、多くの機能がすでに備わっています。届け方によって、日本ならではのおもてなしを各国に提供することができるのではないでしょうか。

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今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:日本(東京)・中国(上海、北京、広州、天津、深セン)・タイ(バンコク)・ベトナム(ホーチミン、ハノイ)・インドネシア(ジャカルタ)
対象者条件:20-69歳の男女
標本抽出方法:各国提携パネルより抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=2,126(日本)n=1,073(中国)n=1,099(タイ)n=1,080(ベトナム)n=1,058(インドネシア)
調査実施時期: 2020/5/15~2020/5/22


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