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2019年冬の商品需要を振り返る 2年連続の暖冬の影響は?~気象予報士が解説!市場ホットトピック②

この【気象予報士が解説!市場ホットトピック】は、一般財団法人 日本気象協会 小越 久美氏が、気象データとインテージのデータを分析して、気象と消費の関係や、気温予測に基づいた商品需要などについて解説するコラムです。
第2回では、記録的な高温となった2019年冬の商品需要を振り返ります。
※この記事は、一般財団法人 日本気象協会 小越 久美氏が作成した「商品需要予測コンサルティングレポート」<https://www.jwa.or.jp/ JWAニュース 2020.03.02公開>を一部編集して掲載したものです。

2019年度の冬(2019年11月~2020年2月)は全国的に記録的な高温となり、2018年度に続いて2シーズン連続の暖冬となりました。特に東日本と西日本では1946/47年冬の統計開始以降一番の高温となり、昨シーズンを上回る暖冬となりました。

この冬の商品需要を振り返ってみると、消費税増税後の購買行動の変化や、新型コロナウイルスなどの社会的な変動要因が背景にある中でも、暖冬の影響を大きく受けた商品が多くなりました。

商品の欠品のほか、過剰な在庫や廃棄ロスを削減するためには、気象による需要の変動を定量的に把握し、気象情報を活用した適切な生産計画を立てることが必要です。本レポートでは、今年度の冬の天候と商品需要の特徴について振り返り解説します。

2期連続の暖冬

図1. 全国の平均気温の推移(日本気象協会が独自に算出)

暖冬_図表1.png図1は、2019年10月末から2020年2月までの、全国の週平均気温の推移です。今シーズンは、強い寒波の到来が少なく、全般に昨シーズンより高く推移したことが分かります。11月から12月上旬は、極端な暖かさになった昨シーズンに比べて気温が低く、やや早く冬の到来を感じさせる冷え込みがありましたが、冬商材の需要がピークになる12月中旬から1月にかけては、昨シーズンを大幅に上回る暖冬となりました。

「低温商品」のうち売上が落ちた商品と伸びた商品

冬の期間に気温が低いほど売れる商品を、「低温商品」とし、売上が伸びた商品と落ちた商品を見てみます。

図2.
左:2019年11月から2020年2月に売上が落ちた低温商品
右:2019年11月から2020年2月に売上が伸びた低温商品

暖冬_図表2_rev.png

昨シーズンよりも売上が落ちた低温商品(左図)の主なものは、使い捨てカイロやココア、紅茶のほか、ぽん酢やはんぺん、ちくわなどの鍋具材でした。また、日用品では、ハンド&スキンケアのほか、皮膚用薬(除殺菌)、絆創膏も今シーズンは売上が落ちました。これらの商品は冷たい水作業などに伴って必要とされるためか、毎年気温が低いほど売れる傾向がある「低温商品」です。今シーズン売上が落ちたのは消費税増税後の反動も考えられますが、2シーズン続けての暖冬による家庭内在庫の増加の影響が大きいと考えられます。

一方で、低温商品でも昨シーズンより売上が伸びた商品が右図です。日用品では、例年暖冬では売れにくいはずの殺菌消毒剤が新型コロナウイルスの影響か1月末以降大きく伸び、家庭用手袋も合わせて伸びました。

食品では、シチューやカップインスタント麺が昨シーズンよりもやや伸びており、カセットコンロなどを使って家族で囲む鍋料理よりも、手軽に食べられる食品が好まれたことや、増税後の節約志向など、こちらも気温だけでは説明できない何らかの理由がありそうです。

「高温商品」のうち売上が落ちた商品と伸びた商品

冬の期間に気温が高いほど売れる商品を、「高温商品」とし、売上が伸びた商品と落ちた商品を見てみます。

図3.
左:2019年11月から2020年2月に売上が落ちた高温商品
右:2019年11月から2020年2月に売上が伸びた高温商品

暖冬_図表3_rev.png

例年、気温が高いと売れるはずの高温商品ですが、暖冬にも関わらず昨シーズンよりも売上が落ちた高温商品が左図です。暖冬の場合、野菜が値崩れすることからか、例年サラダに使うドレッシングの売上は伸びる傾向がありますが、今年は何らかの理由で昨シーズンよりも売上が落ちました。

ドリンクでは、野菜ジュースや100%ジュース、炭酸飲料やスポーツドリンクなどが落ちています。同じ暖冬でも、今シーズンは昨シーズンに比べて、太平洋側で雨の降る日が多く、屋外レジャーの機会が減ったことが影響したかもしれません。

一方で、売上が伸びた高温商品を見てみると(右図)、1月下旬以降、ぬれティッシュが大きく売上を伸ばしており、新型コロナウイルスの影響が出ているといえそうです。日用品では、殺虫剤や防虫剤の売上が伸びており、食料品ではミネラルウォーター類や牛乳、アイスクリームなどが昨シーズンよりもやや伸びました。

また、催眠鎮静剤や解熱鎮痛剤は冬に気温が高いほど売れやすい商品です。暖冬の年は、寒冬の年に比べて低気圧の通過が多く、寒暖の変化が大きかったり、太平洋側で雨や雪の日が増えたりすることが一因かもしれません。前述した通り、今シーズンは昨シーズンよりも低気圧の通過が多く、太平洋側で雨の降る日が多かったためか、こういった商品の売上がやや伸びました。

毎年暖冬が続くわけではない

地球温暖化の影響で、今シーズンのような暖冬は珍しくなくなる可能性があります。それでも、日本の冬の平均気温の推移(図4)を見てみると、全体的に気温は上昇しつつも、暖冬と寒冬を繰り返していることが分かります。これにともなって、商品の需要も変化します。来シーズンの冬の需要がどれぐらいになるかは、暖冬だった今シーズンや昨シーズンの需要量だけを参考にするのではなく、気象予測に基づいた予測が大切です。

図4.日本の冬(前年12〜2月)平均気温偏差の経年変化(1970〜2020年)

暖冬_図表4.png

日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトについてはこちらから

著者プロフィール

小越久美

小越 久美(おこし くみ)

一般財団法人 日本気象協会 防災ソリューション事業部 シニアデータアナリスト
気象予報士・データ解析士・健康気象アドバイザー・防災士
筑波大学第一学群自然学類地球科学(気候学・気象学)専攻卒業。
2004 年から2013 年まで、日本テレビ「日テレNEWS24」にて気象キャスターを務める。
現在は日本気象協会の商品需要予測事業にて、食品、日用品、アパレル業界などのマーケティング向け解析や商品の需要予測を行い、さまざまな企業の課題を解決するコンサルティングを行っている。
著書に「かき氷前線予報します~お天気お姉さんのマーケティング~」「天気が悪いとカラダもココロも絶不調 低気圧女子の処方せん」がある。

SRI®(全国小売店パネル調査)
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約4,000店舗より収集している小売店販売データです。このデータからは、「いつ」「どこで」「何が」「いくらで販売された」のかが分かります。店頭での販売実態を捉え、ブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。

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