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在宅勤務者の買い物行動から見えた新しい価値観とは?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府や自治体、企業は様々な感染拡大防止策を講じることとなり、生活者の生活は大きく変わりました。その変化の一つがテレワークです。もともとは働き方改革の一環として政府もテレワーク推進の取り組みを開始しており、東京オリンピック期間中の大規模な実施を呼びかけるなど、2020年は多くの人にその体験が広がるはずの年でした。そこへ、新型コロナウイルスの影響が出たことで一気にテレワーク化が進みました。

感染拡大に伴う外出の自粛やテレワークによる在宅勤務の増加といった生活パターンの変化が起きる中、生活必需品である消費財の買い物行動にはどのような変化が起きていたのでしょうか。インテージのSCI®レシートデータからその動きを追いました。


これまでの主な動き

今回の記事では、4月末までの行動を振り返ります。日本初の感染例が発生してから4月末までの主な動きをまとめました。2月16日の政府専門家会議をきっかけに、企業各社がイベントやセミナーの中止、テレワークの推奨といった対策を導入し始め、その後、3月25日には小池都知事が会見で不要不急の外出自粛と平日の在宅勤務を要請。さらに緊急事態宣言発出後は、人との接触を最低7割削減するといった行動目標が示されるようなり、段階的に行動の制約が厳しくなっていきました。

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次に、感染状況を振り返ってみます。図表1は感染拡大が深刻化し始めた3月下旬以降の新規感染判明数の推移です。

図表1

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4月に入って急激に感染者数が増加し、4月中旬は毎日500人前後と感染の拡大が続いていました。

一斉休校要請~緊急事態宣言 感染拡大施策下の買い物行動

ここからは、この時期の買い物行動を振り返ります。
図表2は日本の生活者の日常の買い物(食品・日用雑貨品・化粧品・医薬品のいずれかを含む買い物)の回数の変化を追ったものです。総理が翌週からの一斉休校要請を発表した週に買い物回数が一時的に増え、その後4月に入ってから減ってきています。

図表2

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この結果を、特に買い物機会の多いスーパーとコンビニエンスストアそれぞれについてみた結果が図表3です。

図表3

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スーパーでの買い物回数は、一斉休校要請後から4月初旬にかけて通常より多い状況が続いたのち、4月中旬から徐々に減っていく動きが見られました。
4月初旬にかけては、子供の休校や在宅勤務の推進によって在宅時間が増え、内食などで家庭内消費が増えたことに対し、買い物回数を増やして対応していたと考えられます。

4月中旬は、国内の感染者数が増加したタイミングです。外出して買い物することに対する不安感で、買い物のための外出を抑えるようになったことが考えられます。
さらに、外出自粛要請下においてスーパーが混むことへの対策として、小池都知事が3日に1回という目安を発表したのが4月23日です。行動の目安が示されたことも、買い物回数が減った要因の一つかもしれません。

一方でコンビニでの買い物回数は、3月末に首都圏を中心に在宅勤務要請が広がった頃から元の水準を下回っています。コンビニでの買い物が減ったことが、買い物回数の減少に影響していることがわかります。

同じ時期のインターネット通販チャネルでの買い物回数が図表4です。

図表4

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2月中旬から常に通常よりも買い物回数が多い状態が続いていましたが、特に4月中旬にインターネット通販チャネルでの買い物が増えていることがわかります。この時期は外出を抑えてスーパーでの買い物回数を減らした時期と重なっており、感染拡大下において外に出る必要のないインターネット通販へのシフトが起きていた様子が見て取れます。

次に、1回の買い物で使う金額の変化をみてみます。図表5はスーパー、コンビニエンスストアそれぞれでの平均買い物金額の動きです。

図表5

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2月末の一斉休校決定後から1回の買い物金額が大きい状態が続いた後、4月の中旬のちょうど買い物回数の減少が見られた頃からさらに買い物金額も増えていることがわかります。

これらのデータからは、以下の様な買い物行動の変化がみえてきます。
●国内感染の初期:一斉休校要請、外出自粛に伴う在宅時間の増加で家庭内消費のための買い物量が増加。買い物回数と1回の買い物量を共に増やすことで対応。
●急激な感染拡大時・緊急事態宣言下:1回の買い物量を増やして、感染リスクの高い外出(買い物)の頻度を減らすことで対応。外出を減らすためにインターネット通販も活用。

在宅勤務で変わる生活 買い物行動にみる新しい働きかた

緊急事態宣言下では政府は企業に対して在宅勤務への対応を要請し、対応が可能な企業では切り替えが進みました。
生活パターンが大きく変わった在宅勤務者。結果として、買い物行動はどう変わったのかをみてみましょう。
今回は、3月30日~4月6日にSCIの調査モニターに「新型コロナウイルスの影響による在宅勤務経験の有無」を調査し、在宅勤務経験があると回答した人を在宅勤務者として、その買い物行動を捉えました。

はじめに、調査時点での在宅勤務者の特徴を確認します。(図表6)
30~50代の男性が中心です。また、この時点では自治体による出勤自粛要請の対象が都市部に限られていたこともあり、京浜エリアの人が65%を占めています。

図表6

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ここからは在宅勤務者のスーパー、コンビニエンスストアそれぞれでの買い物回数の変化をみてみましょう。(図表7)

図表7

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スーパーでの買い物回数は、一斉休校決定時に一時的に増加した後、再度3月23日週以降で増加の傾向が見られました。
3月23日週は、小池都知事が会見を開いて休日の外出自粛と平日の在宅勤務を要請した時期と重なります。「また、外出自粛で生活者の行動はどう変わった? データに見る巣ごもり実態」で見られた通り、この会見後は巣ごもりのための消費が急増し、休日の内食率も一気に増えるなど、大きな動きがありました。
買い物行動の変化からも、この頃から在宅勤務が増えてきた様子がうかがえます。

一方、コンビニエンスストアでの買い物回数はほぼ同じタイミングで減りはじめ、緊急事態宣言が発令された4月6日週以降は通常時の8割程度にまで減りました。ただし、コンビニエンスストアで買い物をするときの1回の買い物金額は増えていることが確認できました。会社で飲んだり食べたりするちょっとしたものを買うのとは違う目的で、コンビニエンスストアを利用するようになったと考えられます。

次に、在宅勤務者のスーパーでの買い物回数を、男性と女性にわけてみてみました。(図表8)

図表8

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家事を担うことが多い女性に関しては、在宅勤務が進んだ時期にスーパーでの買い物回数が大幅に増えていることがわかります。
在宅時間が増えて平常時と比べて家庭内消費が増えた分、買い物回数を増やして対応しているということが大きな要因ですが、在宅勤務をすることで、平常時と比べてスーパーに買い物にいきやすくなるという、買い物環境の変化が起きたとも言えます。

また、男性も在宅勤務が進んだ時期からスーパーでの買い物回数が増加していました。在宅時間が増えたことで、家庭の買い物を担う機会が増えたことが想定されます。

最後に、在宅勤務者のスーパーでの買い物時間の変化をみてみました。(図表9)

図表9

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7都府県に緊急事態宣言が出た4月6日週から夜間の買い物が減り、11-16時という昼間の買い物が増えていることがわかります。
一部のスーパーで営業時間の短縮が行われていたことも原因として考えられますが、これまでは勤務先から戻ってからしかスーパーに行けなかったところを、時間が比較的調整できる在宅勤務のメリットを活かし、自身の生活に合ったタイミングで買い物をできるようになったという変化がうかがえます。

緊急事態宣言解除後のテレワークに対する企業の対応は様々です。引き続きの継続や段階的な緩和を発表している企業もあるほか、一部の企業ではオフィスを解約・縮小してテレワークを推進するといった動きもみられています。また、今後しばらくWithコロナの状態が続くことから、いつまたテレワークへのシフトが求められるかもわかりません。

在宅勤務時に家族の買い物を分担するといった行動や、生活の中に仕事が組み込まれ、総じて適切なタイミングで買い物に行くといった行動は、必要に迫られて工夫せざるを得なかった結果だと思われますが、この経験を経て仕事と家庭のバランスに対する価値観がアップデートされていく可能性もみえてきます。

価値観の変化がどこまで広がっていくのか、知るGalleryでは今後も生活者の変化を追ってまいります。

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今回の分析は、SCIレシートデータを用いて行いました。

【SCI®(全国消費者パネル調査)】全国15歳~79歳の男女52,500人のパネルモニターによる食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品に関する消費者市場動向のトラッキングサービスです。
パネルモニターが携帯端末で購入した商品のバーコードをスキャンし、インターネット調査画面から、その商品を購入したチャネルや個数・金額などを入力することで、消費者購買行動が分析できます。継続的に収集している日々の買い物データです。
入力データをレシート単位で捉えることで、日常の買い物行動を俯瞰して捉えることが可能です。
消費者の顔を詳細に捉え、消費者を起点としたブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。

※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません。

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