九州・熊本地震を経て気づいた「必要な防災情報」とは?

※この記事は2016年7月のリリース記事を再構成したものです

九州・熊本地震発生からほぼ1年。
記憶の風化で防災意識が薄れることがない様、防災に関する生活者の気づきを改めて振り返ります。

このたびの九州・熊本地震で被災された皆様、ならびにご家族、ご関係者の皆様には謹んでお見舞いを申し上げます。被災地におかれましては、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。


2016年4月14日夜、熊本で最大震度7の大地震が発生しました。さらに4月16日未明に最大震度6強の地震が発生し、すでに半壊していた建物の全壊や死者の増加と、被害が拡大しました。前震、本震という言葉を初めて知った人も多かったのではないでしょうか。

2011年の東日本大震災の際には防災意識や買い物の自粛、価値観の変化に伴う消費の見直しなど、日本国内の生活者の約半数に意識の変化が見られました。今回の九州・熊本地震は生活者の意識や行動にどのような影響を与えたのでしょうか。インテージでは熊本・九州地震を経ての生活者の変化や求めているものについて、熊本県および大分県を除く全国の18~69歳の男女3228人を対象に、2016年6/3~6/6の3日間調査を行いました。

九州・熊本地震は、生活者にどんな影響を及ぼしたか?

はじめに、生活者の行動と意識全般について、どのような変化が見られたのかを調べました。

日用品への支出に対する影響は限定的

日用品への支出に対する影響を見てみたところ、全国的には、震災の起きた週に目立った動きは特に見られませんでした(図表1)。

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図表1 支出の動き
データ:SRI一橋大学消費者購買支出指数 集計期間:2011年1月~2016年4月

また、今後の支出見込みについても、震災後2か月後の時点で「今後、支出の変化があるだろう」と回答した人は被災地周辺にあたる九州エリアでも10%強程度でした(図表2)。

直接的な被害がなかった被災エリア以外で見ると、支出の変化がありそうと回答した人は10.4%。東日本大震災当時は半数弱が同様の回答をしていたことと比べると、九州・熊本地震によって支出に関する心理的な影響を受けた人は限定的だったことがわかります。

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図表2 震災後の支出の意向
データ:インテージ自主企画調査 ※被災エリアを除く九州、東北エリア
※※九州・熊本地震は2ヶ月後、東日本大震災は1ヶ月後の調査結果 

震災時の心理的影響の本質は変わらない

次に、気持ちに何らかの変化があったか、「前向きさ」「平常心」「不安」といった感情と、「情報への関心」「人間関係への関心」「被災地支援意識」「自粛意識」「防災意識」「節約意識」といった意識の32の項目について、あてはまり度合いをたずねました。

東日本大震災時と比較すると、ほとんどの項目で当てはまると答えた人の割合は約半分から1/3となっており、明確に気持ちに変化があった人はさほど多くはありませんでした(図表3)。一方で、「普段通りに過ごしたい」「防災について考えるようになった」など上位に入った項目はほぼ同じでした。震災時に心理的に受ける影響の本質は変わらないといえそうです。

全体の傾向として、今回の震災による気持ちの変化は、「防災意識」、「不安感」、「家族の安全に対する関心」、「被災地支援意識」の順に高まりが見られました。

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図表3 震災を経ての今の気持ち
TOP2: 「とてもあてはまる」「あてはまる」と回答した人の割合

大規模震災発生確率が高いとされるエリアで防災行動に変化

震災による気持ちの変化として、比較的防災意識の変化が大きかったことがわかりましたが、実際にどのような行動に表れているのでしょうか。そこで、16の防災行動について「震災前からしていた防災行動」、あるいは「新たにした/する予定の防災行動」を質問し、その結果をもとに『なにかしらの防災行動を新たにはじめた人がどのくらいいるのか』と『実施する防災行動はどれだけ増えたのか』をエリア別、性年代別に調べました。

エリア別に見ると、新たな防災行動をはじめた人が最も多かったのは被災地に近い九州。43%の人が新たな行動をはじめていました(図表4)。九州は一人当たりの防災行動の数としてはもともと少なめでしたが、今回の震災をきっかけに全国平均並みに増えていました。

九州に続いて目立った変化が見られたのは、南海トラフの影響範囲とされている四国。そして、同じく大規模震災が起こる確率が高いとされている京浜と東海でした。これらのエリアでは、震災前からの防災行動の数が多いうえに、新たな行動もおこしていました。

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図表4 防災行動の変化(エリア別) 

性年代別に見ると、新たな行動をはじめた人の多くは女性で、防災行動の数も増加。また、年代が高くなるほど多くの防災行動をとる傾向が見られました。

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図表5 防災行動の変化(性年代別) 

Key Point 1

九州・熊本地震の発生による生活者への影響を探った結果、東日本大震災時に比べると影響は小さいものの、防災意識に変化が。特に大規模震災の発生確率が高いとされるエリアで防災行動に変化があった。 

新たに行われた防災行動とは?

具体的にはどのような防災行動が震災前からされていて、新たにされるようになったのでしょうか。

もともと最も多くの人にされていて、新たにする人も多かった行動が「非常用品を備えること」。また、新たにとられやすかった防災行動は主に「非常用品を備えること」や「家具等の転倒・落下防止措置」といったモノによる対処と、「安否確認の方法を家族や身近な人と話し合うこと」「避難の方法、場所について家族や身近な人と話し合うこと」といった家族間の話し合いでした。

心理への影響としても「家族の安心についての関心」の高まりが見られていましたが、改めて家族のつながりを意識し、行動に移した人が比較的多かったようです。

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図表6 震災前からしていた防災行動と新たに行った防災行動 

防災行動として最も行われていた「非常用品を備えること」。これは、具体的に何を指しているのでしょうか?

震災直後に特に売れたモノのデータを追いました。4月の1カ月間で販売量に全国的な伸びが見られたカテゴリーのうち、備蓄目的で伸びたと考えられるのは「米」「米飯類」「カップインスタント麺」「レトルトカレー」「栄養バランス食品」「ミネラルウォーター」「粉ミルク」「ベビーフード」の8種類。

これらの日別販売量を追ったところ、本震翌日の4月17日、翌々日の18日に大きく跳ね上がり、前年比が高い状態が約1週間続いたのちに、通常の水準に落ち着いたことが確認されました(図表7)。

このように特定のカテゴリーが震災直後の1週間で集中的に売れるという状況は、生活者が何を必要としているかを分かって迅速に行動した結果であり、経験をもとにして適切な防災情報が得られているということのようです。

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図表7 備蓄カテゴリーの日別販売量前年比推移
データ:SRI Dailyデータ(ノンウェイト) 集計期間:2016/4/1~4/30  

Key Point 2

九州・熊本地震後に生活者が新たに行った防災行動は、モノによる対処と「家族のつながり」を意識した行動。備蓄は過去の経験をもとに即座に行動していた。 

防災に関して求められている情報・サービスとは?

最後に、防災のために普段から発信してほしい情報や提供してほしいと思うサービスについて自由回答形式でたずねたところ、「防災用品や備蓄品に関する情報・サービス」「災害の危険性・予測に関する情報・サービス」「避難に関する情報・サービス」の要望が目立ちました(図表8)。

「事前の備え」という点では、パーソナライズされた情報や体験にもとづく情報といった、より実用的な情報や、リマインドしてくれる仕組みが求められているようです。

「避難に関する情報・サービス」という点では、今回の震災報道で見られた、支援物資が偏る「避難所間格差」に対する不安が大きいのか、避難場所の備蓄量や適切な支援物資の配布、有事の適切な避難場所選択に対する関心が強く、偏りのない避難所運営が期待されているようです。この避難に関する情報への関心の高さは、避難生活が他人事ではないという認識になりつつあるため、と言えそうです。

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図表8 防災に関して求められている情報・サービス (自由回答より)

 

Key Point 3

九州・熊本地震を経て、防災について生活者が必要性を感じたのは、“この先避難するときに役立つ情報”。 

九州・熊本地震に関する報道や東日本大震災時の経験を通し、災害に備えて何が重要か、という生活者自身の気づきは深まってきているようです。とはいえ、「今は防災を強く意識しているが、今後はその意識が薄れていくと思う」と感じている人が多かったというのが現実。気づきを行動に繋げる仕組みが求められます。


今回の分析は、「SRI一橋大学消費者購買指数」と「SRI(全国小売店パネル調査)」、下記の設計で実施した調査結果をもとに行っています。

SRI一橋大学消費者購買指数」とは、2014年9月にインテージと国立大学法人一橋大学、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会が立ち上げた「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」の取り組みから生まれた、インテージSRIのPOSデータを使用している経済指標のことです。正確・迅速な経済状況の把握や、新商品投入という観点での消費者の支出変化要因が把握可能な指標となっており、よりよい社会の実現に向けた、さまざまな学術研究に活用されています。

SRI(全国小売店パネル調査)」とは、全国3,994店舗の小売店パネルによるマーケットトラッキングサービスです。GMS、スーパー、コンビニ、薬局・薬店、ホームセンターなど主要小売業態を調査対象に販売動向をPOSデータで収集し、「どの商品が、いつ、どこで、いくつ、いくらで、どのような店舗で販売されたか」といった情報を把握することができます。 

自主企画調査は下記の設計で実施しました。
調査方法 インターネット調査(インテージ・ネットモニター)
調査地域 熊本県及び大分県を除く全国
対象者条件 18~69歳の男女
職業除外条件 本人および同居家族が次の職業に従事している場合は除外:マスコミ・広告/市場調査
標本抽出方法 弊社「マイティモニター」より抽出、県別人口構成比にあわせて調査票配信
ウェイトバック エリア×性×年代構成比にあわせてウェイトバック集計 
サンプルサイズ n=3228
調査実施時期 2016年6月3日(金)~2016年6月6日(月)

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