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生活者の価値観から考える、日本のキャッシュレス化の今後

長いこと、キャッシュレス後進国と言われてきた日本ですが、消費税増税とともに国をあげてのキャッシュレス促進施策が後押しとなり、さまざまなポイント還元キャンペーンが各所で展開されています。また、国のポイント還元施策に加えて、モバイルペイメント事業者や小売業などもキャッシュレス・ポイント還元事業をふまえたキャンペーンなどを頻繁に行っているため、20%相当還元といったさらにお得な大型キャンペーンなども次々と誕生。このように乱立するモバイルペイメント、生活者はうまく活用できれば増税前より生活費の節約が期待できそうです。

この記事では、キャッシュレス化がもたらす日常生活でのポジティブな変化を探るべく、日本でのキャッシュレス化を今後どのように進めていくべきなのか、日本全国の15-69歳男女4,344人を対象に調査した結果から考えてみます。

モバイルペイメント、主なサービスの利用率は?

まず最初に、調査を実施した8月時点でのモバイルペイメントの利用率を見ると(図表1)、上位から「PayPay」が16.6%、「LINE Pay」が16.1%、「楽天ペイ」が11.6%、「メルペイ」が7.0%という結果となっています。

図表1

モバイルペイメントの利用率

Key Point1

モバイルペイメントの利用率、トップ3は「PayPay」(16.6%)、「LINE Pay」(16.1%)、「楽天ペイ」(11.6%)

生活者が重視する、サービス選定の要素は?

続いて、コンジョイント分析(要素を組みあわせて加入意向や利用意向などを聴取し、得られた回答で回帰分析を行う)の結果から、生活者はモバイルペイメントのどのような点を評価して、利用サービスを選んでいるのかを見てみました(図表2)。

図表2

サービス選定要素別利用率への影響度

※影響度の見方
各表内で、最も評価が低い要素の影響の強さを0と置いた場合の、各要素の相対的な影響の強さを表します。すべての表で同一基準にもとづいてスコアリングしているため、表をまたいだ要素間の影響度比較も可能です。例)個人間送金を「周囲の3割が利用」にした場合と、決済タイミングを「即時払い」にした場合の利用率は同じ

やはり「ポイント還元3%」が、利用するモバイルペイメントを生活者が選ぶ上で最も強い影響を与えていることがわかりました。一方で、加盟店数については、「クレジットカード以上」と「クレジットカード並み」の影響度の差が小さく、生活者は加盟店数は「クレジットカード並み」であれば、充分と考えていることがうかがえます。

コンジョイント分析は、要素別の影響度から、サービスの利用率をシミュレーションすることが可能です。そこで、加盟店数の条件だけを変えた3つのパターンで、利用率をシミュレーションしてみました。すると、やはり加盟店数をクレジットカード以上に増やしても、利用者はさほど増えないことが確認できました(図表3)。

図表3

加盟店数の利用率への影響

Key Point2

生活者がモバイルペイメントを選ぶ上で、
・影響度が高いのは「ポイント還元率」
・「加盟店の多さはクレジットカード並み」で充分

モバイルペイメントの選定基準で生活者をグループ分けすると?

サービス選定に最も強い影響を与える「ポイント還元」は、生活者が一様に重視しているのでしょうか。コンジョイント分析では、個人ごとの重視点もわかるので、生活者を重視点の違いによってグルーピングしてみました。その結果、7つのグループが存在することがわかりました(図表4)。

図表4

各グループの構成比

生活者全体で見た場合には、それほど影響度が強くなかった「個人間送金」ですが、人によってはかなり重視していることがわかります。「送金重視層」と「ポイント重視層」の各要素の影響度を比較してみると、「送金重視層」にとって、周りの5割が使っていて送金ができることは、利用サービスを選ぶ上で、3%のポイント還元と同じくらいの価値を持っていることがわかります(図表5)。

図表5

「送金重視層」と「ポイント重視層」の各要素の影響度比較

※影響度の見方
各項目内で、最も評価が低い要素の影響の強さを0と置いた場合の、各要素の相対的な影響の強さを表します。
両項目とも同一基準にもとづいてスコアリングしているため、項目をまたいだ要素間の影響度比較も可能です。

Key Point3

・生活者のモバイルペイメント選定基準はさまざま
・生活者全体で見た場合、それほど影響度が強くない「個人間送金」、人によってはかなり重視

生活者の理想のサービスで、モバイルペイメント利用率はどれくらい伸びる?

ここまで、生活者のモバイルペイメントの選定基準を明らかにしてきましたが、もし、生活者が求める要素をすべて盛り込んだ、理想的なモバイルペイメントサービスができたとしたら、どの程度キャッシュレス化が進むのでしょうか。コンジョイント分析では、個人ごとの重視点からサービスの利用確率を予測することができます。この予測確率を使って、モバイルペイメントに今後どの程度、伸びしろがあるのかシミュレーションしてみました(図表6)。

図表6

モバイルペイメントの利用率の伸びしろ

モバイルペイメント(銘柄不問)の調査時点での利用率は33.7%でしたが、生活者のニーズに沿ったサービス向上で、約5割まで利用率が伸びる可能性があると考えられます。ただ、もう一方の見方としては、最大限サービスを向上しても、クレジットカードほどは利用が広がらない、ともいえます。

オンラインショッピングをするならクレジット決済、電車に乗るならSuicaなど交通系電子マネー、といったように「サービスを利用せざるを得ないシーン」が、モバイルペイメントにはまだありません。このような利用が必須のシーンをいかに創り出せるかが、今後、モバイルペイメントがさらに普及するためのカギになると考えられます。

Key Point4

・モバイルペイメントは、生活者が求める要素を取り入れることで約50%まで利用率が伸びる可能性

現在、モバイルペイメント事業者は各社、さまざまな戦略を練って利用者の獲得に取り組んでいます。今回の調査で明らかになった、生活者のモバイルペイメントに対するニーズや受容性を、各社の戦略に照らし合わせた際に日本のキャッシュレス化は今後どんな展開を見せるのか、「Intage知るgallery」ではエキスパートインタビューも公開しています。ぜひ、あわせてご覧ください。

■「日本のキャッシュレス化は今後」についてのエキスパートインタビュー記事■
国内モバイルペイメント決戦(前編)〜ポイント還元・加盟店競争のその先〜
国内モバイルペイメント決戦(後編)〜収益化戦略から見える利用率の意味〜

関連記事:ポイント還元制度でキャッシュレス化はどれだけ進んだ? ~買い物行動ログで追う利用実態~


使用したデータ
インテージのネットリサーチによる自主調査データ
調査地域:日本全国
対象者条件:15~69 歳の女性
標本抽出方法:弊社「キューモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015年度実施国勢調査データをベースにウェイトバック
標本サイズ:n=4,344
調査実施時期: 2019年8月1日(木)~2019年8月5日(月)
調査手法: i-Conjoint


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