完全自動運転社会の到来が生活者に届ける体験価値とは

自家用車はハンドルを握り運転するもの、そんな常識が近々書き換えられるかもしれません。自動運転の実用化が進んでいます。
自動車業界で注目のキーワードである「CASE」。Connected:コネクティッド、Autonomous:自動運転、Shared/Service:シェア/サービス、Electric:電動化と、今進んでいる動きの頭文字をとった言葉です。この「CASE」の文脈下で、各完成車メーカーやTier1と呼ばれる一次サプライヤーが自動運転技術の研究開発に注力しており、自動運転に関するニュースを目にしない日はありません。GoogleやUberといった巨大IT企業も実証実験を繰り返しています。

この記事では、インテージが行った自主調査結果をもとに、完全自動運転によって変化するドライバーの姿を大胆に想像してみたいと思います。運転から解放されたドライバーは、疾走するクルマの中で、ハンドルの代わりに何を手に取り、何をして過ごすのでしょうか。

【目次】

完全自動運転車に求められるもの

完全自動運転が実現したら、生活者はどんなことをしたいと考えるのでしょうか。まずは“クルマ”を起点に、生活者の期待やその背景を読み解いていきましょう。図表1は「完全自動運転車でやりたいこと」を聴取した結果です。

図表1

完全自動運転車でやりたいこと

全体では、「車窓の風景を見る」「音楽を聴く」「同乗者との会話」など、これまでは運転していることで集中できなかったことがらを楽しみたいという回答が多くみられました。年代別で見ると、20代以下は「映像鑑賞」「歌を歌う」「ゲーム」などにも関心が高く、移動時間をより楽しくアクティブに過ごしたいという志向が読み取れます。一方、30〜40代では、「仮眠、睡眠」「食事、間食」のポイントが高く、限られた時間を有効に使いたいという価値観が垣間見えます。

この結果から生活者が完全自動運転車に求める要素を抽出すると、まずゆったりとくつろげる空間(=快適性)はマストと言えます。さらに付帯する機能として、若年には映画やゲームなどの娯楽がより楽しめる要素を充実させること、30〜40代には寝心地の良い環境、飲食をしやすいような配慮ができるとよさそうです。

完全自動運転は誰にとって嬉しい機能なのか?

同調査において「運転操作が不要な自動運転機能が実現したら利用したい」と答えた層(=積極層)は35.6%、「運転操作が不要な自動運転機能が実現しても自分で運転をしたい」と答えた層(=消極層)は31.5%でした。
では、積極層はどのような人たちなのでしょうか。
積極層と消極層の2群間でいくつかの項目を比較してみましょう。今回比較したのは、性別・年代・自動車に対する価値観です。(図表2)

図表2

自動運転積極層と消極層の比較

性別の構成を見ると、積極層は男女半々、消極層は男性が6割と若干男性が多くなっています。年代別では10代後半〜50代では大きな差はありませんが、60代になると積極層が多くなることから、運転における疲労や年齢からの不安が、自動運転に対する積極性の要因であると想像できます。

自動車に対する価値観を見ると、積極層はクルマを単なる移動手段と捉えており、運転自体を楽しむ人は少なそうです。一方で消極層は、運転することやクルマを操ることに歓びや楽しさを感じており、笑顔でハンドルを握っている様子が目に浮かびます。

“生活者のDNA” から、ターゲットを理解する

完全自動運転が実現すると、移動中の可処分時間の獲得競争が激化します。ドライバーは移動する間、「運転」から解放されて別のことを行えるようになります。
そこには自ずと新たな飲食の機会、娯楽コンテンツの提供、広告チャネルとしての活用、さらにはネットショッピングなど、これまでにない様々なビジネスチャンスが発生してきます。

そこで、自動運転積極層の生活価値観を分析することで、完全自動運転中に車内で求められるサービスや商品開発のヒントを探っていきたいと思います。生活価値観の分析にあたっては、インテージの“生活者のDNA”(顧客のDNA)というデータを用いました。
これは数百項目にも及ぶ生活意識アンケート結果をもとに多変量解析を行い、食や買い物への意識など、10テーマ80種の因子で生活者の特徴をスコア化したもので、あらゆる角度から生活者の意識に迫ることができるデータです。

図表3は、自動運転積極層と消極層の“生活者のDNA” のうち、特徴的な項目を抜粋したも
のです。ここから積極層をプロファイルしてみましょう。

図表3

自動運転積極層と消極層の“生活者のDNA”比較

積極層は買い物に特にこだわりが強いわけではありませんが、ブランド感や特別感など、情緒的価値を重んじるようです。人付き合いは内向的で、個人の時間を大切にしていることがうかがえます。食や調理に関しては簡便志向が強いようです。

このプロファイルを踏まえると、完全自動運転時にドライバーにどのような空間を提供するべきか?
その空間で何を楽しんでもらうのか? という命題に対し、例えばこんなコンセプトが考えられます。
 飲料・食品業界の場合:「流れゆく車窓の景色を恋人と眺めながら、プチ贅沢なスイーツを楽しむ。」
 エンタメ業界の場合:「長旅のひととき、映画館よりも上質なシートと音響に包まれて、大好きな映画を心ゆくまで。」
これらは単なる妄想でしょうか? データを携えながら、もう少し考察を続けていきましょう。

“商品のDNA” から探るベストマッチングな体験

ここからは視点を変えて、自動運転積極層がよく購入・利用している商品のDNAを読み解くというアプローチから、完全自動運転にマッチする商品・サービス開発のヒントを得たいと思います。
“商品のDNA” とは、「特定の価値観を持つ人たちがよく買っている商品は、近い特徴を持つ」というロジックに基づき、“生活者のDNA” と購買データを掛け合わせることで、“商品そのもの“のキャラクターを定義したものです。(図表4)

図表4

生活者のDNAと商品のDNA

詳細は「購買ビッグデータから見える顧客の買物志向~生活者視点の商品DNA活用~」をご覧ください。

インテージの消費者パネルデータSCIで、2018年度における消費財の購入経験率を確認したところ、購入経験率の高いトップブランド群(234ブランド)の中で、自動運転積極層と消極層とで最も差が出た商品は“ハーゲンダッツミニ”でした(積極層が29.2%、消極層が24.4% と、4.8ポイント差)。

実際に自動運転積極層の“生活者のDNA” と、ハーゲンダッツミニの“商品のDNA” を見比べると、図表5で表す通り、「特別感」や「ブランド感」、「内向的」といった因子の合致度が高くなっています。積極層のハーゲンダッツ購入割合が高いことは偶然ではなく、自動運転積極層とハーゲンダッツが互いに共通するキャラクターを持っているからでしょう。

図表5

自動運転積極層の“生活者のDNA” と、ハーゲンダッツミニの“商品のDNA”比較

自動運転車の中で、ゆったりと一人の時間をくつろぎながら、ハーゲンダッツを口に運ぶ。実際に購入している商品からも、前述の「プチ贅沢なデザートを楽しむ」というコンセプトに違和感はなさそうです。

完全自動運転がもたらす新しい体験

完全自動運転の実現により運転から解き放たれたドライバーは、より積極的に車窓からの景色を楽しんだり、同乗者との会話を楽しんだり、時には睡眠にあてたりと、移動時間の過ごし方が大きく変化するはずです。2019年の東京モーターショーでトヨタやスズキが発表したコンセプトカーのように、クルマはもはや動く「家や部屋」となるのではないでしょうか。
その変化には大きなビジネスチャンスがあります。無数のプレーヤーが自動運転ビジネスへの参入を目論む中、クルマや完全自動運転からかけ離れた業界であっても、生活者の価値観・意識をハブに、ターゲットと相性の良い商品・サービスを探りだすことができれば、より多様なビジネスチャンスが生まれるでしょう。


今回の分析は、自主企画調査のほか、インテージの提供する生活者360°Viewer、SCI®(全国消費者パネル調査)、生活者DNAデータの出力結果を用いて行いました。

【自主企画調査調査】

全国15歳~79歳の男女72,770人に対して行った、耐久消費財・サービスに関するWebアンケート調査。調査時期は2018年6月。

生活者360°Viewer

多面的で精緻なターゲット像を描き出すことにより、生活者理解に基づいた商品・サービス開発やコミュニケーション・プランニングを支援する分析サービスです。インテージの持つさまざまなパネルデータを横断・連携した15,000項目におよぶ膨大なデータから、各お客様企業のマーケティング課題に応じて柔軟にターゲット・セグメントを設定することが可能です。
※さまざまなパネルデータを横断・連携するという性質上、出力結果のサンプルサイズはデータによって異なります。

SCI®(全国消費者パネル調査)】 

全国15歳~69歳の男女50,000人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません。

【生活者DNA(顧客のDNA)データ】

数百項目にも及ぶ生活意識アンケート結果をもとに多変量解析を行い、食や買い物への意識など、10テーマ80種の因子で生活者の特徴をスコア化したもので、あらゆる角度から生活者の意識に迫ることができるデータ


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