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そのリフレッシュ方法、本当に自由に選んでる?―時間と役割が作る、見えない選択の制約

現代社会において、「セルフケア」の重要性が語られる中、私たちは日常的に「リフレッシュしたい」という言葉を口にします。しかし、一概に「リフレッシュ」と言っても、その捉え方は人によって様々ではないでしょうか。ある人にとっては「ゆっくりお風呂に入ること」であり、別の人にとっては「ライブではしゃぐこと」かもしれません。
そもそも、生活者は「リフレッシュ」という言葉に何を求めているのでしょうか。年代や生活環境によって、その意味合いはどのように異なるのでしょうか。インテージ 生活者研究センターが中心となって部署およびグループ横断で取り組んでいる「産学連携生活者研究プロジェクト」で24年度から実施している「ケアテーマ」から得られた探索的な研究の結果をもとに、「リフレッシュ」の正体を解き明かします。

1. 大学生と親世代の「リフレッシュ」の違い:親子ワークショップより

ケアテーマの2年目となる今年度(2025年7月~2026年6月)では、セルフケアの文脈でよく使われながら定義が曖昧な「リフレッシュ」「疲労回復」「ストレス軽減・解消」というワードに着目し、深掘りを行いました。この記事では、その中でも特に「リフレッシュ」について明らかになった点を紹介します。 まず、同じ「リフレッシュ」という言葉でも、年代(親世代・子世代)によって意味合いが異なるのではないかという仮説を検証するために、2025年10月19日、26日の2日間で、親子を対象としたワークショップを行いました。参加総数は大学生10名とその親10名の計20名でした。
大学生3名とその親(父親1名、母親2名)に対し、どのような時にリフレッシュしたいと感じ、具体的にどのような行動をとっているか、その目的を聴取し、心理的背景を分析しました。心理を深掘りする工夫として出来事とそれに付随した感情を記載する「感情日記」を事前課題とし、ワークショップ時に活用しました。
その結果 、大学生では、「丁寧な暮らし」を感じる散歩など、「あえて」普段とは違う行動をすることで、自分らしさを維持し、自己肯定感を高める傾向がみられました。一方で、親世代は、仕事や家事といった日常の「バタバタ」から一時的に離れ、ガス抜きをするための習慣的な行動(ウォーキング、帰宅後のビール1杯など)をリフレッシュと捉えていました。つまり、「リフレッシュ」という言葉は一様なものではなく、世代や置かれている状況によって、その意味合いや目的が異なることが明らかになりました。若年層にとっては、理想の自分に近づくための「プラスオン」としての側面があるのに対し、親世代においては日常の役割からの「解放」としての意味合いが強く表れているのが特徴的です。

2. 生活環境による「リフレッシュ」の違い:定量調査より

親子ワークショップより世代別で「リフレッシュ」の意味合いが異なることが明らかになりました。では、同世代であれば「リフレッシュ」の意味合いが共通しているのでしょうか。どのような時にリフレッシュを求め、どのようにリフレッシュをしているのかを明らかにするために定量調査を行いました。同じ20代で、生活環境が異なる「学生」と「社会人」に着目し、分析を行いました。

この定量調査では、「リフレッシュ」「疲労回復」「ストレス軽減」の3ワードにランダムに回答者を割り当て、各ワードに対して
・どのような状況の時に「リフレッシュ/疲労回復/ストレス軽減」それぞれを求めるか
・具体的にどのようにケアするか
・ケアすることでどのような状態を得たいか
を確認しました。

図表1は、「リフレッシュ」に割り当てられた20代の社会人106名、学生42名に聞いたリフレッシュを求める状態/状況の結果です。 学生は「気力や活力が湧かない時(45%)」や「気分が停滞している時(40%)」といった項目が上位となっているのに対し、社会人は「対人関係のイライラ(29%)」が上位となっていました。以上の結果より、学生は内面的なエネルギー枯渇に対してリフレッシュを求めていることが示唆されました。また、学生は社会人と比較し全体的に項目の選択割合が高く、リフレッシュを求める状態・状況は学生で多いことが推察されました。

図表1

リフレッシュを求める状態/状況(学生vs.社会人)

図表2は、具体的なケア行動の調査結果です。学生・社会人いずれかで10%以上挙げられている項目について、学生・社会人で選択割合の差が多い順にTOP3でランキングで示しています。(該当する項目が2つの場合も含む)
学生は「SNS・動画を見る(31%)」「推し活(27%)」といった趣味的な行動が特徴的でした。一方で、社会人は「睡眠をとる(62%)」「美味しいものを食べる(32%)」といった生活に紐づく行動が上位を占めました。

図表2

具体的なケア行動(社会人/学生)

図表3は、図表1にて、学生・社会人ともに「リフレッシュを求める状態」として上位に挙がっていた「気分が停滞している時」に対して実施した行動が、なぜケア(リフレッシュ/疲労回復/ストレス軽減)になったのか、を聴取した結果です。
※対象サンプル数の関係で「リフレッシュ」以外のワード「疲労回復」「ストレス軽減」に割り当てられた回答もまとめての分析としています。
サンプル数が少なく、参考値とはなりますが、学生・社会人ともに「スッキリ出来たから」が1位となっており、「ほっと一息」「自分へのご褒美」など「安心/労り」について(表 青色)は両者とも上位を占めました。
一方で、学生は表にてピンク色で示した「幸福感を得ることができた(18%)」「エネルギーや活力チャージができた(14%)」といった「ココロのエネルギーチャージ」が特徴的であり、社会人では表にて緑色で示した「現実や嫌なことから一時的に距離を置く(19%)」「日常から一時的に離れる(16%)」といった「逃避」が特徴的でした。

図表3

【気分が停滞している(落ち込んでいる)時】ケア行動に対して求める状態(社会人/学生)

以上の結果より、学生は楽しい行動で不調を吹き飛ばす「活性=動」のケア、社会人は疲れを癒して自分を労る「回復=静」のケアをリフレッシュとして連想していると考えられます。

3. リフレッシュの境界線は「可処分時間」

なぜ、ここまで「リフレッシュ」でイメージするものが異なるのでしょうか。その要因として示唆されたのは「可処分時間」の有無および「役割からの距離」です。
自分のために使える時間が多く、社会における役割を担うことが少ない学生は、時間をあえて丁寧に使うことが価値になります。そのため、趣味やプラスオンの行動によって、明日への活力を得ることがリフレッシュと考えられていました。
対して、仕事や家事に追われ、可処分時間が少ない・多様な役割を担う社会人や親世代は、特別なことをする余裕がない状況だと推察されます。その中で、食事や睡眠といった毎日の習慣の質を上げること、あるいはその状況から一時的に逃避することがリフレッシュとなっていました。
本記事ではご紹介しきれなかった他の年代においても、子の有無や有職無職の分析で同様の傾向がみられたことからも、「可処分時間」、つまり役割による自身の拘束有無は重要なキーワードであると考えられます。「リフレッシュ」という言葉で一括りにせず、マーケティングのターゲットの「可処分時間」や「役割の有無」といった背景・置かれている状況を考慮することで、より生活者の心に刺さるアプローチが可能であると考えられます。 こうした生活者視点での「健康」や「ケア」を見つめ直すことは、今後のマーケティング戦略を考えるうえで、不可欠な材料となるはずです。


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今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
調査概要 ネットリサーチのアンケート
期間:2026年1月9日(金)~1月14日(水)
対象者:16歳から79歳までの4552名
調査方法:インテージキューモニターに対するアンケート
調査調査手法:オンラインアンケート
調査地域:全国
対象者条件:男女16-79歳
・各ベネフィットワード別に回答者を分けて設計
・性年代の構成比は同様になるように設計
回収数:4552s
設問数:44問 その他:人口構成比に合わせてウェイトバック集計を実施

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著者プロフィール

小平 理恵子プロフィール画像
小平 理恵子
2020年、インテージヘルスケアに新卒で入社し、その後6年間医療用医薬品のマーケティングに従事。

2020年、インテージヘルスケアに新卒で入社し、その後6年間医療用医薬品のマーケティングに従事。

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