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WBCで検証 大型スポーツ中継の独占配信はメディア利用を伸ばすのか?

近年、大型スポーツ大会の視聴方法が多様化しています。現在開催されているW杯(FIFA World Cup 2026)でも、地上波に加えて、DAZNでの配信が行われるなど、有料動画配信サービスでの中継は一般的となっています。
また、2026年3月5日~3月18日に開催された第6回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、地上波での生中継が行われず、有料動画配信サービスNetflixによる独占配信が行われ、大きな話題となりました。この独占配信は、Netflixの利用にどのような影響をもたらしたのでしょうか。特に、新規利用者の流入は利用規模をどの程度押し上げたのか、またその内訳としてどのような属性の利用者が新たに加わったのかといった点が重要な論点となります。
今回は、当社が保有する「i-SSP ®(インテージシングルソースパネル®)」のテレビ視聴およびモバイルアプリのログデータを活用し、WBCを事例に、大型スポーツ大会の配信が動画サービスの利用に与える影響について分析・考察します。

1. 大型スポーツ大会の注目度

まず、以降の分析の前提として、今回のWBCが、どの程度の注目を集めるコンテンツだったのかを確認します。
2026年3月のテレビ番組接触率ランキング(関東)では、WBC強化試合(日本×阪神)が22.6%で1位、日本×オリックス戦が22.3%で2位にランクインしています(図表1)。この結果から、スポーツ特番が非常に高い注目を集めていることがわかります。
さらに、「CM接触スコア」(モニター全体のうち、各番組内でいずれかのCMに接触した人の割合)についても、オリックス戦で18.3%、阪神戦で16.5%と高い水準となっています。
こうした背景には、大型スポーツ中継の特性があると考えられます。スポーツ番組は試合の連続性や臨場感が高く、視聴者が途中でチャンネルを切り替える「ザッピング」が起こりにくい傾向があります。その結果、番組内のCMにも接触しやすくなります。
このように、WBCのような大型スポーツ大会の中継は高い視聴関心を集めるだけでなく、広告接触の観点からも有効性の高いコンテンツであるといえます。

図表1

2026年3月 地上波テレビ番組接触率ランキングTOP10

2. 配信メディア利用拡大への効果

次に、こうした大型スポーツ大会の中継が、動画配信サービスの利用拡大にどのような影響を与えるのかを確認します。
スマートフォンにおけるNetflixアプリの利用率推移を見ると、WBC開催前の2026年1月から2月にかけて緩やかに上昇し、開催期間中の同年3月には11.9%と大きく伸長しています。
また、Netflixアプリの総利用時間数についても、2026年3月には27,800時間と、2022年以降で最も高い水準となっています(図表2)。

図表2

Netflixアプリの利用率・総利用時間数推移(月次)

さらに、日次データで詳しく見ると、日本代表戦が行われた3月6日~8日、10日、15日は、いずれも利用率が4%を超え、通常時の約2倍の水準となっています。
総利用時間数についても、試合中継日はすべて1,680時間を上回り、日本代表戦がない日と比べて大きく増加しています(図表3)。

図表3

Netflixアプリの利用率・総利用時間数推移(日次)

これらの結果から、WBCの試合中継がNetflixの利用率および総利用量を押し上げたといえます。
また、今回の特徴として、Netflixの総利用時間数の増加が、主に「利用率の上昇」と連動している点が挙げられます。これは、既存ユーザーの視聴時間増加というよりも、新規ユーザーの流入によって全体の利用が押し上げられた可能性を示しています。
さらに、大型スポーツ大会が持つリアルタイム性と社会的関心の高さにより、「今見たい」というニーズが強く働いたことに加え、「映像でのリアルタイム視聴手段がNetflixに限定された」ことにより、普段サービスを利用していなかった層にも視聴を促し、サービス全体の利用拡大につながったと考えられます。

3. 配信メディア利用者構造の変化

次に、今回の中継による利用拡大が、どのような利用者層によって生じていたのかを把握するため、動画配信サービスの利用者構造の変化を確認します。
まず、WBC期間前(2026年2月)と期間中(同年3月)のNetflixアプリ利用者の性年代構成比を比較します。
その結果、期間前は女性20代の割合が12%と最も高い構成でしたが、期間中は男性20代から60代まで幅広い年代で割合が伸びており、利用者層の変化が確認できます(図表4)。
この結果から、WBCの配信をきっかけに、通常時の利用者とは異なる属性、特に男性層を中心とした新たなユーザーが流入したと考えられます。

図表4

Netflixアプリ利用者の性年代別構成比の変化(WBC期間前・期間中)

次に、Netflixアプリ利用者の「地上波テレビ番組における視聴ジャンル」について、WBC期間前(2026年2月)と期間中(同年3月)で比較します。
図表5を見ると、WBC期間前は「スポーツ(野球以外)」を視聴している割合が27.8%(7位)、「野球」が19.6%(10位)でしたが、期間中にはそれぞれ40.8%(4位)、37.2%(5位)へと大きく上昇しています。
この変化は、WBCをきっかけに、もともとテレビでスポーツジャンルを視聴していた層が新たに流入したことによるものと考えられます。 これにより、Netflixの利用者層が、従来よりも「スポーツ志向の強い層」へとシフトしたと解釈できます。特に、普段テレビでスポーツ番組を視聴している層との新たな接点が生まれた点は注目されます。

図表5

Netflixアプリ利用者の「視聴テレビ番組ジャンル」TOP10(WBC期間前・期間中)

4. 大会期間後のメディア利用への影響

ここまでの分析から、今回の中継は、大会期間中のNetflixの利用を大きく押し上げるとともに、利用者の構造にも変化をもたらすことが確認されました。
では、こうした利用の増加は、大会終了後にも継続するのでしょうか。
直近1年間のNetflixアプリの利用率および総利用時間数の推移を見ると(図表6)、利用率はWBC終了後の2026年4月には8.8%となり、WBC期間中よりは減少しているものの、期間前と比較すると高い水準を維持していることが確認できます。
総利用時間数についても、2026年4月は18,648時間と、こちらも減少傾向ではあるものの、WBC期間前より高い水準となっています。

図表6

Netflixアプリの利用率・総利用時間数推移(月次)

これらの結果から、今回の配信によって一時的に増加したNetflixの利用は、大会終了後には縮小するものの、完全には元の水準に戻らず、一定程度維持される傾向が確認されました。

5. 本分析のまとめ

本分析から、大型スポーツ大会の配信は、以下の効果を持つことが確認されました。
・新規ユーザーの獲得
・総利用時間数の拡大
・男性・スポーツ関心層の流入
・大会終了後も一定水準の利用が維持される

重要なのは、これらの効果が、ドラマなどの「独占配信」とは異なるメカニズムで生じている点です。ドラマなどの独占コンテンツは、既存の配信サービス利用者の中で「見たい人が選んで視聴する」性質が強く、かつ好きなタイミングで視聴できるため、視聴タイミングが分散しやすい傾向があります。
一方、大型スポーツ大会はリアルタイム性と社会的関心の高さを伴うため、「その場で視聴する必要性」を生み出します。これにより、普段はサービスを利用しない層まで行動を喚起し、同時かつ集中的な視聴が発生します。
さらに、試合の展開に集中して視聴される特性から、離脱が起こりにくく、結果としてコンテンツや広告への接触が持続しやすい点も特徴です。

また、このような特性は、動画配信サービスにおける利用にとどまらず、他のマーケティング施策にも応用可能です。
例えば以下のような活用が考えられます。
・大型イベント配信に合わせた広告出稿により、普段リーチしにくい層への接点を拡大
・リアルタイム視聴に連動したSNS施策など、「今見ている人」に対して働きかけるコミュニケーション
・スポーツやライブイベントなど、「話題化」と連動したクリエイティブによる記憶定着の強化

大型スポーツ大会は、単に視聴者を集める機会にとどまらず、普段接点のない層へのリーチ拡大と、その後の関係構築の起点となる特徴があります。そのため、マーケティング施策においては、「一時的なリーチ獲得」にとどまらず、「獲得後の接点設計」まで含めた活用が重要といえます。


今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
i-SSP Media Profiler(2025年度版)

【i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)】
インテージSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。

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著者プロフィール

山口 晏那(やまぐち あんな)プロフィール画像
山口 晏那(やまぐち あんな)
マーケティングソリューション本部 ソリューション統括部
2024年にインテージに入社。
広告主企業を中心に、ターゲット分析やメディアプロファイリング、広告効果測定などを通じて、コミュニケーション戦略の立案・改善を支援。

マーケティングソリューション本部 ソリューション統括部
2024年にインテージに入社。
広告主企業を中心に、ターゲット分析やメディアプロファイリング、広告効果測定などを通じて、コミュニケーション戦略の立案・改善を支援。

著者プロフィール

青木 夏帆(あおき なつほ)プロフィール画像
青木 夏帆(あおき なつほ)
マーケティングソリューション本部 ソリューション統括部
2023年にインテージに入社。
購買データやメディア接触ログなどを活用したパネルデータ分析を通じ、企業に向け分析結果から浮かび上がった課題仮説など、マーケティング戦略への支援に従事。

マーケティングソリューション本部 ソリューション統括部
2023年にインテージに入社。
購買データやメディア接触ログなどを活用したパネルデータ分析を通じ、企業に向け分析結果から浮かび上がった課題仮説など、マーケティング戦略への支援に従事。

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