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グッド・ライフ意識調査から見えてきた日本人の幸せとは?(前編)

2018年3月1日(木)・2日(金)、ヒルトン東京お台場にて、「サステナブル・ブランド 国際会議2018東京(SB Tokyo2018)」が、「REDEFINING THE GOOD LIFE (“グッド・ライフ”の再定義)」をテーマに開催されました。「サステナブル・ブランド国際会議(SB)」は、サステナビリティとブランドの統合をテーマとし、世界11カ国12都市で開催されている国際会議で、東京での会議は昨年に続き2回目となります。本会議に、インテージはシルバースポンサーおよびリサーチパートナーとして参加。「日本の生活者にとってのグッド・ライフ」を再定義するための意識調査を実施し、結果を発表しました。

本記事「グッド・ライフ意識調査から見えてきた日本人の幸せとは?(前編)」では、同会議で行ったインテージ取締役・CMO村上清幸の基調講演をベースに、意識調査とインテージの保有するデータから見えてきた日本の生活者にとってのグッド・ライフ像、そして、ブランドや企業が生活者のグッド・ライフ実現にどう貢献できるのかについてご紹介します。

 

日本人はグッド・ライフを送っているのか?

日本の生活者は、自分がグッド・ライフを送っていると感じているのでしょうか。また、日本の生活者にとって、グッド・ライフとはどのような生活、生き方なのでしょうか。インテージでは、全国18~75歳男女2,240人を対象に「日本人のグッド・ライフ意識調査」を実施しました。

●グッド・ライフを送っている日本人は多くない

「あなたはグッド・ライフを送っていますか?」への回答を7段階の選択肢から選んでもらったところ、「間違いなくグッド・ライフを送っている」「グッド・ライフを送っている」を合わせた割合(Top 2 boxes)は11%に留まりました。「どちらかといえばグッド・ライフを送っている」(Top 3 boxes)と答えた人を合わせても43%で、グッド・ライフを送っていると答えた人は半数に満たない結果となっています。では、同じ調査を実施したアメリカ、タイと比べるとどうなのでしょうか。Top 2 boxesでアメリカが16%、タイ46%で、日本が最も低い結果となりました。

また、日本では、「まったくグッド・ライフを送ってない」「グッド・ライフを送ってない」と回答した人が合わせて15%で、上述の11%より多いことも気になります。

図表1

GL01_Figure01_Goodlife_degree_04.png次に、グッド・ライフを送っている人の満足の理由は何か、また、グッド・ライフを送っていない人に提供できる解決法や価値は何かを見てみましょう。

●グッド・ライフを送る上で重要なのは?

グッド・ライフを送る上で、何が重視されるのでしょうか。24項目について回答いただいた中で、重視度の高い10項目が図表2のグラフです。この結果から、【健康でありたい】、【過剰ではなくて適度でシンプルな生活がいい】、【家族や社会とつながっていたい】の3つが、日本人のグッド・ライフにとって重要な要素であると言えるでしょう。

図表2

GL01_figure02_Key_items_04.png

●グッド・ライフの重視項目は、年代で変わっていく

グッド・ライフを送るための重視項目を年代別に見ると、それぞれの特徴が見えてきます。先ほどの「グッド・ライフを送るための24の重視項目」を、「回答者の年代」の軸でクロス集計した結果をコレスポンデンス分析でプロットしたのが図表3です。(コレスポンデンス分析についてはこちら

図表3

GL01_figure03_Correspondence_04.png

10代から20代・30代・40代と働き盛りにかけて、何かを持ちたいという欲や前向きさが出てきます。(とはいえ「自分の家を持つ」は他の所有欲とは違う意味を持っていて、寧ろ「家庭をもつ」ことや地域社会や他者とのつながりに近い、ということがプロットされた位置から分かります。)50代になると、健康が気になるという意識が出てきます。もう少し年齢が上がっていくと、人生で大事なことは、家族や社会とつながっていることではないか、という思いが強くなってきています。

一方、人生困難があっても総じて幸せだとか、過剰ではない適度な生活、シンプルできちんとした生活、ということは、各世代の共通項として、図の中心寄りにプロットされました。

また、回答としてはあまり大きく出てきていませんが、目標を持つとか、社会に貢献する項目も、マップ上で外に向かって広がっており、特徴的な項目となっています。目標を持つということはやや若い世代で出ており、年齢が上がっていくと、もっと貢献をしていきたい、環境も考えないといけない、というように意識の変化があります。年代によって、グッド・ライフを送るために重要と考える項目が変わっていくということが言えます。

●グッド・ライフを送っている人とそうでない人の違いはどこにある?

ところで、「グッド・ライフを送っている」人の割合(「間違いなくグッド・ライフを送っている」「グッド・ライフを送っている」「どちらかといえばグッド・ライフを送っている」)を性×年代別に見てみると、男性30代・40代で「グッド・ライフ度」が低いことがわかります。また、女性も、20代・30代と比べて40代で「グッド・ライフ度」が下がってしまっています。

図表4

GL01_figure04_Goodlife_by_age_05.png

そこで、30-40代について注目してみると、「グッド・ライフを送っている」人と「送っていない」人で重視する項目に差があることが分かりました。

図表5

GL01_figure05_Goodlife_comparison_03.png

鍵となるのは、「家族を持つ」「社会とつながっている」「目標を持つ」、「貢献をしたい」といったことが大事だという意識です。家族や社会とのつながり、目標といったものを持てていると、「グッド・ライフを送っている」意識につながりやすいようです。一方で、「お金をたくさん持っている」や「好きなときにリタイアしたい」と個人的な自由を意識すると、欲しいと思っている状態に比べて今の自分は持てていない、というネガティブな気持ちが出てしまっていることは注目に値します。

グッド・ライフを送る上で、商品やサービスの役割とは?

このような意識調査の結果を踏まえると、日本の生活者が期待する商品やサービスの役割は、”モノ”としての価値ではなく、人と人とのつながりや社会への貢献といった”コト”に対していかに役立てるか、という価値であると解釈できます。ソーシャル、デジタル化された時代では、話題も共感も含めて、生活者の行動が可視化され、共有されやすくなっています。そのため、”コト“へ貢献したときの商品やサービスへの評価が一層高くなるといえるでしょう。

図表6

GL01_figure06_Monokoto.png

●生活者は、グッド・ライフに役立つブランドを支持したい

それでは、生活者は、今世の中にある商品やサービスは、グッド・ライフの実現に貢献してくれると感じているのでしょうか。意識調査の結果では、48%の人が「手に入れられる商品やサービスの大半は、グッド・ライフを送る上で役に立たない」と少し厳しい意見です。一方、82%の人が「グッド・ライフに役立つブランドを支援する」と回答しており企業への期待が表れています。

図表7

GL01_Figure07_Brand_02.png

●ヒット商品から見える新たな価値カテゴリー

それでは、どんな商品が生活者の心をつかんでいるのか、インテージが保有する全国小売店パネル調査(SRI)のデータをもとに作成している「ヒット商品レポート」からその特色を見てみましょう。

「プレミアム」は商品やCMでよく見かけるようになった言葉ですが、しばらく前には「プレミアム」商品・ブランドとして、権威や希少価値を訴求することで生活者にアピールできていた時期がありました。しかし、いまやPB(プライベートブランド)でもプレミアムが出てきて、プレミアムなのかスタンダードなのか、市場におけるカテゴリーがややカオス化してきました。

一方、昨今のヒット商品を見ていくと、自分らしさ、他者との共有、話題性などが、うまく商品開発やコミュニケーションの喚起に活用されていることが分かります。

図表8

GL01_figure08_Hit_02.png

生活者は、企業から発信されるメッセージと同じくらい、時にはそれ以上に、自分たちの目線、自分たちの意見、話題性や共感できるということに新たな価値を感じています。いうなれば、それは、外から与えられた権威や希少価値ではなく、生活者自身が選び評価した「新・定番」とも言えるのではないでしょうか。そして、これらのヒット商品は日本人のグッド・ライフの価値観とも調和するものなのです。

図表9

GL01_figure09_New_standard_02.png

 

おわりに:生活者に価値を伝えるための着眼

長い間東芝の一社提供だった日曜夕方のTVアニメ『サザエさん』の番組スポンサーが変わりました。『サザエさん』は、戦後の4コマ漫画から始まり、家族構成や設定が変わることなく長い間安定して親しまれています。このアニメは、日本人にとってのグッド・ライフのエッセンスである【健康】、【過剰ではなくて適度でシンプルな生活】、【家族や社会とのつながり】を感じさせるだけでなく、マーケティング的にも非常に魅力的な番組といえます。図表10は、インテージのi-SSPという手法で、視聴者の傾向を分析したグラフです。

図表10

GL01_figure10_Sazae_03.png『サザエさん』には2世代以上の試聴層が全体に比べて多く、「家族で過ごす時間」「環境に配慮したものを選ぶ」など、ライフスタイルを見ても、これまで論じてきたグッド・ライフと近いライフスタイルや価値観を持っていることがわかります。また、注目したいのが、デジタルやバナー広告ではなかなかリーチしにくい、子どもと親が一緒に観ているお茶の間の存在です。よいクリエイティブの広告を出せば、それを見たお茶の間の子どもと親で会話が生まれるでしょう。新しくスポンサーになった日産やアマゾンは、どういった広告を出してくるだろうか、と興味深いところです。古いものにも、改めて価値を見つけ、新しく生活者にコミュニケートしていくこと、これも、企業がブランドをサステナブルにしていくためのヒントとなるのではないでしょうか。

続くグッド・ライフ意識調査から見えてきた日本人の幸せとは?(後編)では、写真とエピソードから浮かび上がってくる「日本の生活者にとってのグッド・ライフ」の姿をご紹介します。


今回の分析は、弊社独自に保有するSRI(全国小売店パネル調査)のデータ、i-SSPデータ、SCI Profiler、および下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。また、記事中で使用した写真は、生活者と企業の共創支援プラットフォーム「みんレポ」投稿写真を使用しました。

SRI(全国小売店パネル調査)
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約4,000店舗より収集している小売店販売データです。このデータからは、「いつ」「どこで」「何が」「いくらで販売された」のかが分かります。

i-SSP
i-SSPとは、インテージの主力サービスであるSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。

SCI Profiler
消費者パネルモニターに対し、自主企画として価値観やライフスタイル情報を年1回聴取し、データベースとして蓄積しています。生活・消費価値観、食、料理、健康・美容、環境等のテーマ別意識、メディア接触、他多様なプロフィール情報と、日々の買い物データを組み合わせることで、ターゲット理解にお役立ていただけます。

【日本人のグッド・ライフ意識調査】
調査手法 インターネット調査
調査地域:全国
対象者条件:18―75歳男女
標本抽出方法:弊社「キューモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2017年度の構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n= 2,240
調査実施時期:2018年1月22日(月)~2018年1月25日(木)

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